集大成の一夜 ORESAMA ワンダーラン
ドへようこそ~in AKASAKA BLITZ~ラ
イブレポ

2018.9.13(THU)『ワンダーランドへようこそ~in AKASAKA BLITZ~』@マイナビBLITZ赤坂
快進撃を続けるORESAMAの単独ライブ『ORESAMA ワンダーランドへようこそ~in AKASAKA BLITZ~』が2018年9月13日に開催された。全16曲で繰り広げられたのはイラストワークとPVで展開されるPOPなORESAMAの世界観と、音源とは違う生のライブパフォーマンス。彼らが紡いできた二つの軸が重なり合う瞬間を感じたステージをレポートする。
『Hi-Fi POPS』を作り上げたことで、一区切りがついた。

開口一番に言い切ってしまうとするなら、今日のマイナビBLITZ赤坂の公演ほど、ORESAMAの快進撃を象徴する一夜はなかったと思うし、彼らの魅力が詰まったライブもなかったと思う。
そんな彼らの道のりを一度振り返ってみよう。2016年にほぼ1年かけてつづいた自主企画『FLAT NIGHT CARNIVAL』、それを引き継ぐように2017年からは『ワンダーランドへようこそ』シリーズを定期的に行い、その間をみて音楽フェスや対バンイベントにも参加し続けてきた。2016年ごろを境にして、ORESAMAはほとんど休みなくライブイベントに出演。彼らはライブという瞬間を愛してやまないユニットなのは元より、そのパフォーマンスに磨きをかけ続けてきたのだ。
そんな中、2017年5月に「ワンダードライブ」をリリース。「Trip Trip Trip」「流星ダンスフロア」「ホトハシル」、そして2018年4月にはメジャー1stアルバム『Hi-Fi POPS』を発売。彼らは楽曲制作に力をいれ、それぞれにヒットを飛ばし続けてきたわけだ。音源制作/ライブ活動、その双方を継続的に行なっていくバイタリティとタフさは、彼らを見知るうえで、実は見過ごされがちなところだったようにも思える。
「アルバムを作り上げたことで、一区切りがついた」というのは、ぽんと小島、並びにORESAMAスタッフの共通見解だったという。つまりそれは、どのようにORESAMAの音楽を届けるか?見せていくか?ということにある程度の統一性をもたせられるということであろう。その集大成が、この『ワンダーランドへようこそ~in AKASAKA BLITZ~』には表現されていたと思う。
数年来のライブ経験が凝縮されていたライブ前半
開演前の会場は前方から後方まで、フロアは埋まっている。BGMは日本のミュージシャンがほとんどだが、どれもがファンキーかつブラックミュージック由来で、たまにエレクトロな楽曲も流れる。彼らの音楽性にピッタリとハマった選曲に、始まる前から観客も開演に向けてテンションを上げていく。
客電が落ち、右から人が現れる。緑色のライトを印象的に使ったパフォーマンスから、どんどんとクラブ会場のようなサーチライトの海波が広がっていく。メンバーが登場、「鏡よ鏡、わたし世界を変えたいの」と歌い始め、「ワンダードライブ」からライブがスタート。紫のサーチライトが6本光指すと、思い思いに観客は踊り始めていく。サポートメンバーのDJ MONICOが手拍子をすれば、手拍子で応えていく観客達。快調にライブを滑り出した証だ。
2曲目「Waiting for...」3曲目「cute cute」とエレクトロ/エレクトロ・ジャズの2曲がきたときに驚かされたのは、ポップミュージックにもかかわらず、まるでダンスミュージックと相違ないくらいにベースサウンドとキックサウンドが図太く鳴らされていたということだ。まるでEDM系統のクラブのように音が分厚く、それでいてベースはファンキーなスラッププレイをどんどんと繰り出していく。
こうなると、ボーカルのぽんの歌声がかき消されてしまうのでは? などと思ったが、この厚いボトムサウンドと歪んだシンセ音のなかでも、彼女の歌声はしっかりと観客席に届いていく。それも歌詞がちゃんと聞き取れるくらいに精度が良いのだ。担当したPAのテクニックもさることながら、ORESAMAがライブ活動を続けてきたことで得てきた経験を、しっかりとフィードバックしてきたがゆえの成果なのだろう。
「じゃあ今日ここにしかない夜、みんなで楽しみましょ!」3曲続けたあとのこのMCから、ORESAMAディスコタイムが始まった。
ロッテ雪見だいふく「雪見家の日常はほんわりで〆る」主題歌として書き下ろした「ようこそパーティータウン」では、DJ→ベース→ギターの順でインプロヴィゼーションを披露し、見事に楽曲へと繋いで見せる。リズムやフレーズに合わせて、ぽんは首と体を小刻みに揺らし、自分の声を楽曲にノセていく。調子よくフェイクも織り交ぜていく彼女のボーカルは、音のスキマを自在に使い分けて踊らせるディスコサウンドに乗っかり、このライブハウスに詰めかけた観客をしっかりと捉えていく
そんな彼女につられて、ギターの小島英也、サポートベースの三浦光義(パレードパレード)も、原曲にはないフレージングやスラップベースでもり立てる。彼らが常々口にしているように、ライブ会場のこの一瞬で新たに音楽を作くっていったのだ。
THE ORESAMAワールド 「楽しい」と「悲しい」を抱きしめて
一旦3人のメンバーは舞台裏にさがり、舞台転換、サポートメンバーMONICOのDJタイムが始まった。レイヴサウンドがバチバチと鳴っていく楽曲が幾度も繋がれていっても、この日集まった観客はほとんど動じずに、各々それぞれに体を揺らし、楽しんでいく。
センターにマイクスタンドがサっと置かれ、メンバーが再登場、2人のダンサーとともに始めたのは最新シングル「ホトハシル」だ。ステージ後方の背景に、楽曲のMVが流れ、歌詞と演奏がほとんど完璧にシンクロし、楽曲が表現していた世界観が一気に広がりをみせていく。
さらに、ここで「Trip Trip Trip」を披露すると、ここまでで一番の拍手と声が上がる。ここでも楽曲PVと演奏がバッチリとシンクロし、彼らのカラーがどんどん会場を染まっていくのを感じた。
曲を終え、一呼吸を置き、チューニングしているメンバーに対して、観客から呼びかける声があがる。メンバー各々ちゃんと答えているのを見ていると、メンバーと観客の間に、この会場に良いムードが漂っていくのをよく感じた。
このタイミングで、ぽんが話したMCはとても印象的で、彼らの音楽性やメッセージに深くつながっていくように感じた。
「わたしたちは、それぞれ一人ひとりが抱えているものすべてを、みんな全員が共有できるわけではないと思うんです。でも、音楽を通してなら、分かち合うことができると思っていて。いまここで出会ったみんなの空気やテンション、そして私達のパフォーマンスで新しい音楽を作りましょう!」
彼らの音楽は、きらびやかで眩しいシティポップや、明るく踊れるディスコ/ブギーミュージックに端を発し、サウンドとイメージから「楽しい音楽」だと感じることが多々ある。しかしながら、先立って発売された「Hi-Fi POPS」を聴き好むファンなら周知の通り、彼らが音ともに絡めようとする詞は、どことなく内省的で、悲しみを帯びていることが多い。直前に披露された「ホトハシル」「Trip Trip Trip」の歌詞にもあるように、彼らは悲しみにも嬉しさにも移ろいゆく、「心の表情」を歌ってきたユニットなのだ。
このMCのあとに披露されたのは、「耳もとでつかまえて」「「ねぇ、神様?」」の2曲。ミドルテンポの楽曲のなかで、ぽんは人の弱さや愚かさ、悲しみを歌ってみせる。「弱さをすべてさらけだしても 誰にも触れられない」「夜が来たらみじめな僕 青く小さく滑稽で いっそ朝が来なければいいのに なにも変わらない」そうして歌うことで、どことなくブルースな空気が場内に広がっていく。
悲しみと喜びを引き連れながら、僕らは踊り明かしていく
このムードを引き連れて、彼らは一気に音楽で観客を踊らせていく。披露されたのは、「オオカミハート」「銀河」「Hi-Fi TRAIN」「流星ダンスフロア」とシングル曲と人気曲のラインナップ。これら4曲は総じて、「キミに出会えたことで新しい世界へと飛び出していく」というムードへと誘っていく楽曲であり、ずらりと並べられたこの4曲の楽曲イメージは、ぽんが先に述べたMCの意味と重みも加わって、爆発的に観客へと伝播していった。
ライブの序盤では、上にジャンプする人、肩をゆらしながら聴き浸る人、首で軽くリズムをとって踊る人、それぞれに楽しんでいたのだが、ラスト4曲になったときには、前方も後方も腕を振り上げ、ほとんど全員がジャンプして楽しんでいく。休むことなく飛び交うサーチライト、会場の背景に流れていくMV、メンバーの演奏もバッチリとキマって、最高潮のムードで本編は終了した。

暗転後、5分ほど経ってアンコールが始まった。スペシャルゲストとしてアナウンスされていたFoggy-Dは、『ACCA13区監察課』OP曲である「Shadow and Truth」を歌う。観客にむけてジャンプを煽りに煽ったこの曲のつぎは、この日ラストとなる「乙女シック」だ。エレクトロサウンドとブギーなグルーヴが混ざりあった初期の曲のなかで、ぽんはこう歌う。
「キミと僕は同じじゃないから、本当のことは分からないまま」
「愛は止まらないの 世界よ微笑め」
「アルバムを作り上げたことで、一区切りがついた」と語っていた彼ら。その集大成として見えてきたのは、悲しいときにも嬉しいときにも音楽は横にいてくれるということ、そうやってタフに生きていくことで、身の回りの世界は変わっていくものだということだったのではないか。この日のライブで、彼らは一貫したメッセージを投げかけてきたのだ。キミとボクは完全には分かり合えない、でもこの瞬間に楽しく踊りあえる、その尊さに胸が震えてくる。彼らORESAMA、現時点の集大成に、この日の観客は最高の笑顔で応え、踊り明かした。

取材・文:草野虹

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