THE BOHEMIANS×山中さわお(the pi
llows)×小沢一敬(スピードワゴン
) 真面目にロックンロールをやって
きたバンドへの御褒美(!?)鼎談

結成11年目を迎えたTHE BOHEMIANSが、キャリア初のベストアルバム『That Is Rock And Roll』をリリースした。メジャーデビュー前からデビュー後、そしてthe pillows山中さわおが主宰するレーベルへの移籍から現在に至る中で、彼らがライブで磨き上げてきた楽曲の中から選りすぐりの全16曲を収録した今作。旧曲は新たにレコーディングし直したことで、現在のTHE BOHEMIANSのバンド力をリアルに感じることができる、“現時点での最高のセットリスト”と言える一枚になっている。そんな初のベストアルバムのリリースを記念して、「ずっと真面目にロックンロールをやってきたTHE BOHEMIANSへの御褒美!」(山中さわお談)ということで、インディーズ時代の作品から彼らのファンだったというスピードワゴン・小沢一敬、THE BOHEMIANSが敬愛する現レーベル主宰者・the pillows山中さわお、そしてTHE BOHEMIANSから平田ぱんだ(Vo)とビートりょう(Gt)による鼎談が実現した。
――7月25日にリリースされた、THE BOHEMIANSの初のベストアルバム『That Is Rock And Roll』を記念したスペシャル対談ということで、the pillowsの山中さわおさんと、スピードワゴンの小沢一敬さんと、THE BOHEMIANSの平田ぱんだくんとビートりょうくんにお集り頂きました。さっそくですが、馴れ初め的なところからお聞きしていけたらと。
山中さわお(以下、山中):小沢くんは、馴れ初めはないよね。
小沢一敬(以下、小沢):そうなんです。僕が一方的にthe pillowsとTHE BOHEMIANSのファンなだけなので、今、とても幸せです。すみません。
山中:ウチのDELICIOUS LABEL(※現在、THE BOHEMIANSも所属する、山中が1999年に設立したレーベル)というのは、素敵な人がちょっとでもTwitterとかで呟こうものなら絶対に逃がさない!っていう手法を取っていて(笑)。“今、いいって言いましたよね?”ってグゥ~ッと追い込んで、改めて“いい”と言わせるという(笑)。まぁそんなんで、小沢くんがTHE BOHEMIANSをいいって言ってくれていたということもあり、THE BOHEMIANSが初めてベストアルバムを出すということで、彼らへのご褒美としてこの場を設けさせて頂いたという感じで。ある種、ベスト盤というのは2回目の入門編となる節目でもあると思うので、著名な小沢くんの力をお借りしたいということで、お越しいただいたということです。なので、小沢くんとTHE BOHEMIANSは、まさにこの瞬間が初対面の場なんですよ。本当に来て頂いてありがとうございます。
小沢:いえいえ、何をおっしゃいます! (THE BOHEMIANSに向かって)すみません。こんにちは。初めまして。
平田ぱんだ(以下、平田)&ビートりょう(以下、りょう):いえいえいえ。こちらこそ、本当にありがとうございます!
――さわおさんとしては、自分の子供のような存在のTHE BOHEMIANSを、それほどまでに好きでいてくれるというのは、本当に喜ばしいことですよね。
山中:THE BOHEMIANSって、普通にテレビを点けたら出ていたり、曲が流れてくるような存在のバンドではないので、“いいロックバンドいないかな?”って探していないと見つけることができないバンドでもあるからね。ライブハウスのバンドなので、ある程度アンテナ感度が高くないと出逢えないから。だから、小沢さんがTHE BOHEMIANSを好きっていうのを聞いて、センスあるなぁって思ったんですよね。
小沢:いやいやいや、そんなそんな(恐縮)。
――小沢さんとさわおさんは、面識がおありなんですね。
小沢:そうなんです。もともと僕がthe pillowsのファンだったこともあって、さわおさんに誘って頂いて、Theピーズのコピーバンドをやらせてもらったんですけど。終った後、ご飯を食べに連れて行って頂いて、そこで“どういうバンドが好きなの?”って聞かれたときに、THE BOHEMIANSの名前を出させて頂いたんです。そしたら、さわおさんが“おぉおぉ! それウチのバンドなんだよ!”って、“え!? そうなんですか!?”っていうお話しになったのが、ご縁なんです。
味が濃いけど臭くない。本当に思います、THE BOHEMIANSみたいなバンドやりたかったって。それが本当に憧れるってことだと思うんです。(小沢)
――そうだったんですね。小沢さんがTHE BOHEMIANSを見つけたきっかけというのは、どういうタイミングだったんですか?
小沢:僕、ロックが好きで、いろいろとライブに行ってるんですね。そこで気に入ったバンドを見つけたり、ジャケ買いしたりしていて。そんな中で、THE BOHEMIANSに出逢って、最初に見たときから“ヤベエ!”と思って、一気にCDを買い集めた感じでした。いつ頃だったかな? 出始めてすぐくらいだったと思います。
平田:(間髪入れず)8年前です。俺、エゴサーチして“おぉ~。有名な人がTHE BOHEMIANS好きって呟いてくれてる!”って思ったんです。
りょう:たしか、インディーズ1枚目のアルバムの頃だったと思います。
平田:そうそう、そう。そのときからマークしてました。
山中:あははは。いつか会えるんじゃないか? と(笑)。
平田:はい。
りょう:びっくりしたよね、俺ら。小沢さんが好きって言ってくれてる!って。
山中:言っちゃあなんだけど、その頃なんて全然売れてないでしょ? 名前だって全然知られてないときなんじゃないの?
りょう:そうです。
平田:だから、よく見つけてくれたなと思って。不思議で不思議で。
山中:だよなぁ!(笑)
小沢:初めて聴いたとき、俺、笑けたんですよ。これはもちろんいい意味で。上手く言えないんですけど、いかがわしいじゃないですか。いかがわしいって、僕、すごく好きなんです。いい意味でイカレテルというか。そこに惹かれたのが最初です。
――分かります。ニヤケますよね。私もTHE BOHEMIANSの音を最初に聴いたとき、顔がニヤケてニヤケてどうしようもなくなったのを覚えてます。
小沢:ですよね! 笑けるんですよ! なんていうのかな……、好き過ぎるので、上手く伝えられるかわからないんですけど、とりあえず、色鮮やかでカラフルだけど、これ、褒め言葉なんですけど、イカサマ感がすごいんですよ、THE BOHEMIANSって。
山中:あぁ~、それ! そこね、俺も毎回THE BOHEMIANSに対して思うことなんだよね。イカサマ感って、すごく重要なとこだと思うんだよ。ロックンロールというものを表現するバンドって、チャック・ベリー直結、ザ・ローリング・ストーンズ直結っていうスタイルもあるんだけど、それだと“本物でいいじゃん?”って思っちゃう。90年代~2000年代にロックンロールを好きな人間が、オリジナルを作って新曲としてそれをやっていくときに、ニセモノ感とかイカサマ感とかイロモノ感が大事だと、俺は思っているんだよね。俺自身がそういうバンドが好きっていうのもあるんだけど。硬派過ぎると、ロックンロールなのに教科書どおりっていう感じになっちゃうっていうか。それってなんかちょっと違うんじゃないかな?って思うから。ちょっと教科書からはみ出しているTHE BOHEMIANSって、カッコイイなって思ったんだよね。でも俺ね、最初に間違えちゃって。もっと分かりやすい方がいいだろうと思って、DELICIOUS LABELにTHE BOHEMIANSが来たとき、全員にビシッとした黒いスーツをオーダーで作ってやったの。そしたら、“あれ? なんか最初に見たときの魅力がなくなっちゃったな”って思ったんだよね。普通の教科書に嵌めてしまったというか。“あのスーツ、やっぱ違うな……”って、すぐ却下したんだよね(笑)。
――今日の平田くんも、イカサマ感満載ですからね(笑)。
平田:普段着っす。
りょう:通常です(笑)。
小沢:いやぁ、カッコイイです! 僕、パンクが好きなんですね。ザ・クラッシュっていうバンドがすごく好きなんですけど、当然セックス・ピストルズも好きで。セックス・ピストルズってふざけてるというか、なめてるというか、むちゃくちゃじゃないですか。呪文で言うと“パルプンテ”みたいな。
山中:??? 分からない分からない!
平田:『ドラゴンクエスト』シリーズに登場する呪文(魔法)です。
小沢:“メラ”という呪文は火を出すんです。
山中:ほ、ほぉぉ。
小沢:“ホイミ”っていうのは、体力を回復させるんです。
山中:あ、あぁ。
小沢:“ヒャド”って呪文は冷やっとさせるんです。
山中:う、うん……何言ってるかわかんねぇし、まったく覚えられる気がしねぇけど。
小沢:つまり、“パルプンテ”っていう呪文は、攻撃するかもしれないし、自分がダメージをくらうかもしれないしっていう、何が起るかわからないんですよ。
山中:あ、う、うぅん……。
小沢:僕は、そんな“何が起るか分からない”というのが、パンクだと思っているんです。
山中:な、なるほど。
小沢:なので、THE BOHEMIANSの音楽性がパンクなのかどうかっていうのは、僕には分からないけど、存在はパンクだなと思って好きになったんです。イカレタとか、イカサマとか、インチキとか、そういう部分のカッコ良さというか。
山中:パルプンテね。いいねぇ。
平田:MPを一番使う呪文なんですよ。
山中:そこに食いついてくんなよ!(笑)
平田:うんうん。でもたしかに、それは言えるかもしれない。うん。その発想はカッコイイかもしれない。たしかに、パルプンテはロックンロールだ。
山中:それは共通言語なのか!?
平田:わりと共通言語です。
山中:そうなのか(笑)。でも、ぱんだは忌野清志郎さんも好きじゃん? 清志郎さんって、もともとそうだったと思うんだよね。ニセモノ感とかイカサマ感とかイロモノ感とか、そっち。“なんかやってやろう感”というか。あんなにリズム&ブルースが好きって言いながら、やってることがそれだけでもないし、服装も教科書どおりじゃないし。そういう存在は、いつの時代も1人いて欲しいんだよね。でも、1人でいいんだよね。あんまりいっぱいいると鬱陶しいから(笑)。
後輩バンドにモテるのは慣れているんだけど、「恋はスウィンギン・イン・ザ・レイン」を聴いて、急激に興味を持ったんだよね。(山中)
――さわおさん的には、平田くんが、自分のメールアドレスの一部に“SAWAO”って入れるくらい、the pillowsや山中さわおさんを好きだと知ったとき、どういう感覚でしたか?
山中:最初、いろんな人から“THE BOHEMIANSのボーカルの平田ぱんだって子がthe pillowsのことすごく好きなんだよ”って聞いていたんだけど、長くバンドをやってるから、後輩バンドにモテるのは慣れていて。“あぁ、またモテちゃったな”っていうくらいで、特になんとも思ってなかったんだよね。でも、『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012』で初めて会って、初対面だったとき、俺、ベロンベロンに酔っ払っていたのもあって、紹介された瞬間、ぱんだにハグとかしちゃって。
りょう:してましたしてました! すごくハグしてました!
山中:だよね(笑)。まぁ、ぱんだは直立不動だったけどね(笑)。それで、そのときCD貰って。俺は貰ったCDは絶対に聴くので、それで後日聴いて。『THIS IS POP !!!』(※2012年4月発売3rdアルバム)だったんだけど、そのアルバムの1曲目の「恋はスウィンギン・イン・ザ・レイン」を聴いて、“あ、こんなに音楽的なバンドなんだ!”と思ったんだよね。もっと、コード3つくらいでワーッって叫ぶ感じの、音楽よりも先に“人前でなんかやってやろう!”っていう、楽器はそんなに弾けないけどとにかくステージに出て人前で言いたいこと言ってやろう!っていう、街のやからみたいなところから始まってるようなバンドだと思っていたから、ちょっと驚いたんだよね。で、そのまま聴きながら寝たんだけど、ウトウトしてるときに、ずっと「恋はスウィンギン・イン・ザ・レイン」のメロディが頭の中にやってきて。<雨あがりに君が綺麗なら/きっと僕なら恋せずにいられない/誰にも言わない 誰にも言えない/恋はスウィンギン・イン・ザ・レイン>っていうサビのメロディは、自分でもなかなか作れないなって思ったんだよね。山下達郎さんとか、それくらい音楽の幅があるソングライターが作ってるんだなと思って、急激に興味を持って、ちゃんと聴こうって向き合って聴いたらすごく好きになって。そのとき、ちょうどTHE PREDATORSのツアー中だったから、“打ち上げに来い! 仲良くなろう!”って呼んで。りょうくんだけ来れなかったんだけど、他のメンバーは全員来て、そこで仲良くなったの。
――自分が憧れだった人に、自分達の音楽を“好き”って言ってもらえる気持ちって、どんな感覚?
平田:うん。望んではいなかったけど、しょうがねぇなって。
――え!? どういうこと?(笑)
平田:あんまり好きな人の人生に登場したくないから。
りょう:それは分かる!
平田:だから、本当はイヤだったけど、呼ばれたし、気に入られたからしょうがねぇなって。もう開き直ろうと思って。今に至っては、甘え尽くして、CDを出させまくってます。“ベストアルバム出して下さいよ~”って。
山中:なんか、そういう部分は俺もあるけど、極端過ぎてね(笑)。
――さわおさんも、憧れのアーティストには会いたくない方ですか?
山中:うん。俺も好きなアーティストのライブは見たいけど、そんなに仲良くなりたいとは思わないというか。僕の場合は理由が、緊張してしまうからで、緊張してる自分が好きじゃないから見たくないんだよね。楽屋に行くのも緊張しちゃうから、イヤだなって感じ。でもぱんだは、2人で普通に呑みに行ったりもするのに、the pillowsのライブを見に来て、すごい良かったライブの後は、打ち上げも出ずに帰っちゃうんだよね。“呑もうぜ!”って電話しても、“いや。もう帰ってるんで。今日はもう完結したんで”って、絶対来ないんだよ。楽屋にも来ないからね。
平田:僕がライブの後、打ち上げに現れることがあったら、その日のライブは良くなかったってことですよ。
山中:やかましいわ! 気ぃ悪いわっ!
一同:(爆笑)
りょう:気ぃ悪いわ。
山中:良くないライブなんて1回もないんだよ、俺たちは! 大丈夫だから!(笑)
――あははは。多くのアーティストから憧れられる存在のさわおさんの、憧れのロックスターはどなたなんですか?
山中:日本人だったら佐野元春さんかな。佐野元春さんは、いままで8回会ったことがあるんだけど、って、会った回数まで覚えてるくらいだからね(笑)。
――ぱんだくんも相当ですけど、会った回数を覚えてるって、さわおさんも相当ですね(笑)。
山中:そうなんだよね(笑)。ガッツリ会ったのは、そのうちの3、4回かな。空港ですれ違ったのもカウントしてるんで(笑)。他の先輩とかとは、仲良くなっちゃったりしてるんだけど、佐野さんだけはリラックスできない。生身の人間な感じがしないくらい、スター感がすごいから。おそらく佐野さんは、結構、僕のことを可愛がってくれてるはずなんだけど、僕は緊張しちゃって受け入れきれてないっていう(笑)。
――ぱんだくんとりょうくんが感じている感覚と同じですね。
山中:うん、まぁね。でもね、佐野さんは俺みたいなキャラじゃないからさ。小沢くんは、(甲本)ヒロトさんとマーシーさん(真島昌利)さんには会ったことあるの?
小沢:会ったことありますし、誘って頂いたこともあるんですけど、“いや、大丈夫です!”っていう感じなんです、やっぱり……。昔、同じ飛行機に乗り合わせたことがあって、僕の左隣に設楽さん(バナナマンの設楽統)が座ってて、通路を挟んで右隣にヒロトさんとマーシーさんが乗ってらしたんですよ。当時、まだ↑THE HIGH-LOWS↓だった頃。
山中:なかなかだね、その飛行機。
小沢:それで、設楽さんとは↑THE HIGH-LOWS↓のライブに一緒に行くくらい好きだったので、2人とも“おぉ~っ!”ってなってたんですけど、そしたら設楽さんが“握手してもらおう!”って言うから、俺はそれは絶対ダメだって止めてたんです。なのに、設楽さんが“うるせぇなぁ、どけよっ!”って、俺を押しのけて“握手して下さい!”って言ったら、ヒロトさんもマーシーさんも全然気さくに“いいよ”って握手してくれて。それを見て“俺もっ!”って、握手してもらったんですけどね(笑)。ですけど、ですけども、やっぱり一緒に呑みたいとは思えないんですよ。緊張するし。なんなら、呑んでるところを遠くから見ていたい。
山中:あははは。分かる分かる、その気持ち(笑)。
小沢:さわおさんは、誘って下さって、一緒にバンドもやらせていただいて、ご飯も連れていってくださって、本当におこがましいんですけど、仲良くさせて頂いていて。でも、本当のところは、会いたくなかったですもん。
山中:あははは。そんなこと言うなよぉ~(笑)。
小沢:いやいや、嬉しいんですよ。嬉しいんですけど、やっぱ、会いたくなかったです。
平田&りょう:分かります分かります!
小沢:分かりますよね! 僕、さわおさんに最初に会ったとき、好き過ぎて、いろんな余計なことをいっぱい言っちゃったんですよ。“コインロッカー・ベイビーズが~”とか“ケントリ(KENZI & THE TRIPS)が~”とか、いろいろと自分の好きな音楽の話を一気にしちゃって。僕、『ジョジョの奇妙な冒険』も好きなんですけど。
山中:いきなり!?
小沢:昔、荒木飛呂彦先生に会ったとき、ジョジョの話をしすぎて“ファンって、そういうこと言うから苦手なんだよね”って言われたんですよ。それがずっとトラウマになっていて……。
平田&りょう:あぁ~。
――まぁそうなりますよね(笑)。りょうくんもそういう経験ある?
りょう:俺はとにかく先輩たちに関しては、おこがましいと思っているので。まさに今、この現場もおこがましいと思ってますから。“なんで此処にいるんだろう?”っていう感じですよ。
山中:今日はね、毎日毎日音楽を真剣にやってきて、1つベストアルバムというモノが残せたということでね、そのご褒美ですよ。
りょう:いや、本当にありがとうございます!
――すごいですよね、人の心をこんなにも動かすものって。
山中:音楽ってそういうものだからね。ロックンロールだけじゃなく、音楽というものがね。
――そうですね。“憧れ”って繰り返されていくものなんですね。話を戻しますが、本当にTHE BOHEMIANSの魅力ってすごいですよね。キュンとするというか。
小沢:キュンとしますよね~。
小沢さんとさわおさんが対談してくれるくらいすごいアルバムです! 本当に嬉しかったです。(ビートりょう)
――歌詞もすごくキュンとするんですが、平田くんの中では、サウンドありきで生まれてくる言葉だったりするの?
平田:いや、僕は普段からロマンティックなんで、普通です。普通に使ってる言葉そのものですね。
山中:でも、たしかに、ぱんだの歌詞は日常だよね。そう思うと俺の歌詞の方がずっと作られた歌詞なんだと思う。
小沢:僕が言うのも生意気なんですけど、味が濃いけど、臭くないんですよ。“クサッ”っていうバンドも中にはいるんですよ。もちろん、その臭さがいいっていうとこもあるんですけど。でも俺は、味は濃いけど臭くないバンドが好きなので、THE BOHEMIANSはまさにそうなんです。…………。いや、なんか、この表現違うなぁ。やめます。
一同:(爆笑)
山中:いやいやいや(笑)。そっちの芸風の真骨頂なのにさぁ!(笑)
小沢:あははは。たしかに。俺、“クサい”で家賃払ってるんですけどね(笑)。なんかちょっとしっくりこなかったなぁと思って(笑)。つまり何が言いたかったかといいますと、“味が濃いけど、臭くない”ってことなんですよ。
――って、さっきもおっしゃってましたよね(笑)。
小沢:あ、言ってましたね(笑)。じゃあそのままで(笑)。僕ね、言っちゃいますけど、言っちゃっていいですか?
山中:どうぞどうぞ(笑)。今日はそういう会なんで(笑)。
小沢:僕、Twitterとかいろんなところにも書いちゃってるんですけど、the pillowsとザ・クロマニヨンズだけが、歳を取るほど若くなっていってると思ってるんです。漫才師って、歳を取ると、若い奴らと一緒にライブをやると速さが違うんですよ。若い子のテンポ感で見たいんでしょうね。きっと音楽も同じだと思うんですけど、the pillowsとザ・クロマニヨンズは、若い子たちとライブをやっても、“わっ!”とさせてるから、それがすごいなと思うんです。そこがthe pillowsとザ・クロマニヨンズの共通点だと僕は思うんです。THE BOHEMIANSも、これから歳を取って行く過程の中で、“若っけな!”っていう感覚にさせてくれるんじゃないかなって思うんです。
山中:エヴァーグリーンですよ、エヴァーグリーン。
りょう:演奏がエヴァーグリーンな自信はあるんですけどね(笑)。
一同:(爆笑)
小沢:俺はバンドをやることは出来なかったけど、もし今、自分が中学生だったら、THE BOHEMIANSみたいなバンドをやりたいなって思うんですよね。
山中:いいね~! いい褒め言葉だね! 『憧れられたい』(※2011年8月発売メジャー1stアルバム)だからね。
小沢:俺が言うべきだったな……それ……。
一同:(爆笑)
小沢:でも本当に、好きな漫画とか好きな映画みたいなものだと思うんですよね。“あ、俺、この物語の中に出たかったな”みたいな。本当に思いますからね、THE BOHEMIANSみたいなバンドやりたかったって。それが本当に憧れるってことだと思うんです。
――素晴しいですね。本当にそうなのかも。2人は、今回ベストアルバム『That Is Rock And Roll』を作ったことで過去曲たちと向き合ってみてどう感じた?
平田:変わってないなと。
りょう:うん。いい意味で変わってないよね。
山中:今回16曲中9曲録り直したんだよね?
平田:はい。そうです。
山中:まぁ、ぶっちゃけた話、レーベルを跨いでいるので、いろいろな事情もあって録り直したりもしたんですけど、俺自身もそうなんだけど、昔の音源って全部録り直したいよね。
平田&りょう:そうですね。
小沢:へぇ。そういうものですか?
山中:そう。絶対に今の方がいいと思うからね。スキルももちろんなんだけど、当時のスタジオの環境とか機材の環境とか、絶対に今の方がいいからね。知識も増えてるし、“ここにいきたい!”っていう道筋がちゃんと出来てるから。それに、昔は予算もないし、今の方が絶対にいい環境で、いい状態で、いいものが作れると思うからね。『I WAS JAPANESE KINKS』(※2010年5月発売インディーズ1stアルバム)には、あれはあれにしかない当時の若者エネルギーがあるけど、音圧も低いし、今のTHE BOHEMIANSがライブでやっている「おぉ!スザンナ」の印象がないわけ。過去のTHE BOHEMIANSの「おぉ!スザンナ」だから、俺は今の「おぉ!スザンナ」を今のTHE BOHEMIANSの音で聴きたかったから。ということで、いいですよ、このベストアルバム。俺は今、すごく宣伝したぞ!(笑)
小沢:いやいや、宣伝しましょうよ! 本当にいいんですから! 本当に聴いてほしいんですよ、1人でも多くの人に、THE BOHEMIANSを!
りょう:いやぁ、本当にありがとうございます。嬉しいです。
平田:これ(『That Is Rock And Roll』)を1stアルバムと呼んでほしいですね。
小沢:おぉ~! すごいカッコイイ!
山中:なんかね、メジャーのレコード会社でベスト盤を出すっていうと、会社の年末調整みたいな感じとか、バンドがレーベルを離れることになったから契約上あと1枚音源を出さなくちゃいけないっていうときとかなんだよね(笑)。でも、そういうベスト盤って、予算をかけずにパパッと作ることが多いから、あんまり自分達の意志が尊重されない形で出されることが多くてさ。でも、今回みたいに自分達が出したいタイミングで出せるベストって、すごくいいと思うんだよね。
小沢:本当のベストですよね。幸せですよね。健全だし。
山中:そうなんだよ、すごい健全だと思う。俺が出したくて出す訳じゃなくて、再録もしたいし、“こういうベスト盤作りたいんだ!”って楽しんで作れるベスト盤って、本当に最高だと思うんだよね。本人が“これ(『That Is Rock And Roll』)を1stアルバムと呼んでほしい”って言えるベスト盤って、なかなか作れないと思うからね。
――本当にバンドにとって、すごく幸せな形でのベストアルバムだなって思います。ぱんだくんとりょうくんは、ベストアルバムというものに対しての憧れみたいなものはあったの?
平田:本当は、レコード会社に勝手に出されるっていうのが理想なんですよ。
山中:あははは。それだけお金になると思われて、求められて出されちゃうっていう意味ね?
平田:そうですそうです。そっちの方がロックっぽいんですけど、タイミング的に、今しかないなって思ったんです。もともと、さわおさんが“オマエら、アルバムが多すぎるから物販のところに置けるようなベスト盤作れば?”って言ってくれたんですよね。
山中:そうそうそう。2~3年前に、新しいファンがグッと入ってきたなって思った瞬間があったから、ライブの定番曲が各アルバムに2曲ずつくらいしか入ってないっていう状態もなんだかなって思ったのがきっかけでもあったんだよね。だから、ライブの定番曲が1枚にまとまっていたら、新しいファンの子達の魂をガッツリ鷲掴みにできるんじゃないかな?って思ったんだよね。だから、物販でひっそりと置くくらいのイメージで提案したんだけどさ(笑)。
平田:俺もそう思ったんですよ。レコード会社に勝手に出されるか、物販でひっそり売るか、どっちかかなぁって。でも、みんなというか、メンバーがなんか結構商売したがってたんで(笑)。それに、いろんな歴代のバンドをみると、だいたい8枚目くらいでベスト盤を出していたりするから、タイミング的には今なのかなって。そしたら、ビートりょうが、“今年ベストアルバムを出せ”という夢を見たってLINEを送ってきて。おぉ、なんてタイミングがいいんだ! と思ったんです。
――え!? 本当の話?
りょう:そうなんですよ、夢をみたんです。
山中:なら“今年ベスト盤を出せ”という啓示があったというスタンスでここに座っててくれよ(笑)。そういうロックエピソードを持ってんのに、こっちに伝わってこねぇんだよ! エピソードと二人の画が合ってないから、バランス悪いじゃねぇか!(笑)
一同:(爆笑)
平田:寂しがりやだし、恥ずかしがり屋なんです。
山中:もっと偉そうでカリスマみたいな人のとこに啓示ってくるんじゃねぇの? 恥ずかしがり屋でモジモジしてる子のとこにも来てくれんだ、神様って(笑)。
平田:来ます。カッコ付けると笑っちゃうんで。
――本当に啓示が?
りょう:はい。たしかに、そういうLINEは平田くんにしました。去年、ちょうど上京10周年だったんです。
平田:でも、なんか周年でベストってカッコ悪いというか、ロックじゃねぇなって思ってたりもして。
山中:いや、俺はそこかな?って思ってたんだけど、そこではなく、変なタイミングに出したいって言い出して。突然ぱんだから“いかにベスト盤を出したいか”っていう、なっがい屁理屈が書かれたメールが送られてきて。とにかく長いメールだったんだよ。それを見て俺、笑っちゃってさぁ。分かった分かった、出そうって(笑)。周年じゃなくて周年の次の年に出すのかよ、とかいろいろと疑問はあったんだけどね。そのメールに書かれていたのが、「THEE MICHELLE GUN ELEPHANT も↑THE HIGH-LOWS↓もthe pillowsもTHE YELLOW MONKEYもそうですよ! 8枚目だったんです!」ってね(笑)。そこかよ! みたいな(笑)。
――あははは。新鮮な裏切りですね(笑)。
山中:そうだね(笑)。まぁでもね、本人たちが“出したい!”っていうタイミングで作った方が、絶対にいい作品になると思うからね。レコーディングしはじめて、やっぱり今やって良かったなって思ったしね。ジャケットもすごくいいのが出来てるし。「ダーティーリバティーベイビープリーズ」でMVを撮ったんだけど、すごくいい仕上がりになったしね。今、すごく上手くいくバイオリズムがバンドに来てるんだなって思ったんだよ。それに、こうしてベスト盤を出すっていうだけのために、小沢くんまで来てくれてるんだから!
小沢:いやいやいや、何をおっしゃいます! いつでも飛んできますよ! 僕、思うんですけど、今、名前の上がっていたTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT 、↑THE HIGH-LOWS↓、the pillows、THE YELLOW MONKEYという中にTHE BOHEMIANSが並んでも、何の遜色も無いですもん。本当に日本のロックシーンに名を残すバンドだと僕は思ってますから。
山中:嬉しいことを言ってくれるよね。ほら、後は人気だけだ! 実力はあるんだ。弱点は人気がないだけだ!(笑)
小沢:本当にもっと届いてほしいんですよ! 知ってほしいんですよ! で、みんなが知って、すごく人気が出たら、俺、そのときは、もっと痛いファンになって、“俺、めっちゃ昔から知ってんだよね~”って自慢しますから!!
一同:(爆笑)
山中:言っちゃう言っちゃう(笑)。“あんときはこうだったんだよ~”とかってね(笑)。
小沢:でも、火薬は揃ってるから、後は着火だけですよね。本当にすごいんだから! 本当にずっとすごいんだから、THE BOHEMIANSは!
現時点でのTHE BOHEMIANSの最高のセットリストって思ってもらえたらいいかな。(平田ぱんだ)
――今回のベスト盤の選曲はどういうチョイスだったの?
平田:ライブの最高のセットリスト。ライブを観て、帰りにベスト盤を買って帰ってもらうっていうのが、最初の始まりでもあったから。現時点でのTHE BOHEMIANSの最高のセットリストって思ってもらえたらいいかなと。だいたい、ライブもこういう流れでやってるんで。まぁ、そんな感じです。
山中:とにかく、本人たち発信だったから、選曲も早くて。並びもね。もぉ“そこまで考えてたんかい!”って感じだったんだよね。細かいアイディアとかも。
――THE BOHEMIANSの古くからのファンでもある小沢さん的には、この曲の並びはどうですか?
小沢:そう言われると照れちゃうし、なんか失礼なこと言いそうで怖くて何も言えない。でもね、究極のこと言っちゃえば、ファンって、何やっても好きなんだもん。だからもぉ、最高なんです! なんか、また特にこのベストアルバムは、ずっと聴いていたい感じ。僕、家でずっと音楽をシャッフルでかけてるんですけど、シャッフルだから自分でも何がかかるか分からなくて。映画も好きだから映画も流しっぱなしにしたりするんですけど、映画って、すごくいいシーンでBGMがかかるじゃないですか。それと同じで、僕、女の子とデートするときも、ヘッドフォンで音楽を聴きながら歩いてるんですね。後から“あの子と歩いてたときにあの曲かかったな”って思い出せるでしょ? もぉね、自分が映画の主人公になる感じなんですよ。だから、デート中にシャッフルでTHE BOHEMIANSがかかったら、“絶対にこの子とウマくいく!”って感じの曲ばっかだと思います。
――小沢さん、それって、1人MV状態ですよね(笑)。
小沢:そうそうそう(笑)。本当にそう(笑)。酔ってるの。MVで思い出したけど、THE BOHEMIANSはMVがいい。本当にこれもキュンとしちゃう! 昔、子供の頃に画質の悪いMVを夢中になってみていた頃のワクワク感になれるというか。“あの日のロックンロールの引力は万能で”(※the pillows「About A Rock’ n’ Roll Band」)みたいな感じ。
山中:おぉぉぉぉぉ! 急に来たな今! いきなりthe pillowsの歌詞かっ!(笑)
平田&りょう:おぉぉぉぉ!
――今回、どうして「ダーティーリバティーベイビープリーズ」でMVを撮ることになったんですか?
山中:「明るい村」にするか、「シーナ・イズ・ア・シーナ」にするか、「ダーティーリバティーベイビープリーズ」か、めちゃくちゃ迷って。結局は俺が決めたんだよね。途中で気づいたんだけど、ベスト盤なんだから、全部良い曲だからどの曲を選んでも問題ねぇやって。そう思ったときに、ミュージックビデオの具体的な絵が浮かんだのが、「ダーティーリバティーベイビープリーズ」だったんだよね。the pillowsでもよくあることなんだけど、メイン曲以外にも2~3曲MVを撮ることがあるのね。1曲は絶対に推し曲として選ぶんだけど、他の2曲は、曲で選ぶんじゃなくて“こんなところで演奏してみたいけど、あるかな?”って場所を探して、素敵な場所があったらその場所に合う曲にするっていう流で。「シーナ・イズ・ア・シーナ」だったら、お客さんに囲まれた状態で演奏できる場所があったらいいなって思ったんだけど、そういう場所が見当たらなくて。「ダーティーリバティーベイビープリーズ」は、すごく画も浮かんだからね。最近新しくTHE BOHEMIANSについてるお客さんを見ると、男もすごく増えたし。ちょっと洋楽っぽいテイストは「ダーティーリバティーベイビープリーズ」なのかなって。「明るい村」の方がキャッチーで分かりやすいんだけど、あの曲が、他のバンドにはないセンスがなくちゃ出来ない曲だっていうのは、聴く側にもセンスがないと分からないと思うから。本当に、ただポップでキャッチーなだけじゃないからね、「明るい村」は。本当にクオリティの高い曲だから。そこに気づかせるにはちょっと難易度が高いのかなって思ったので、「ダーティーリバティーベイビープリーズ」にしたんだよね。
――なるほど。
山中:本当に何回も言うけど、どの曲も最高だからね。
――本人たち的には?
平田:さわおさんがいいって言うのは、本当に信頼できるというか。
りょう:そう。現役で音楽やってる人の感覚で、THE BOHEMIANSのことをすごく知ってくれて選んでくれたということでは、本当に信頼しているので。
平田:さわおさんが言ってくれたように、本当にどの曲が選ばれてもいいなって思っていたので。すごく満足してます。
りょう:自分達で言うのもおこがましいですけど、ここ1~2年ですごく良くなってきているという自信も持てているので。本当にそういう時期にベストアルバムを出せて良かったなって思ってます。お客さんも本当にすごく良くて、嬉しいんです。
平田:おじさんの追っかけがいてくれたりするんです。それがなんか、めちゃめちゃ嬉しいんです。
山中:“これはロックンロールなんだろうか?”っていう感じの、はみ出すロックをコイツらが2000年代にステージでやっていても、素晴しくロック感があるというところがいいなぁって思う。とっても夢があっていいね。
――そうですね。では、ゲストさんにすみませんが、小沢さんからこのベストアルバムを宣伝して頂いてよろしいでしょうか。
小沢:はい。このベストアルバムは、“ライブの最高のセットリストだと思って作った”と、先ほど平田くんから聞いたので、本当かどうか、みんなライブに確かめに行こう!(※「確かめに行こう」:the pillows の1999年発売アルバム『RUNNERS HIGH』収録)
山中:おっ! また急にthe pillowsぶっ込んだぞ!(笑)
山中&平田&りょう:ありがとうございます!
――じゃあ、最後に2人から素敵にプロモーションしてもらおうかな(笑)。では、一言お願いします!
平田:ライブそのものなので、是非、みんなライブに確かめに行こう!
山中:被せるなぁ(笑)。
りょう:今回は、小沢さんとさわおさんが対談してくれるくらいすごいアルバムです! 本当に嬉しかったです。ありがとうございました!
山中:お礼かよ! プロモーションしてくれよ、頼むから(笑)。
りょう:それくらい間違いないアルバムになったので、是非、聴いて下さい! よろしくお願いします!
山中:今回のこのベストアルバムのキャッチコピーである【画一的な時代を駆け抜けるのは、いつだってロックンロール。ずっと鳴っていた、今も鳴っている】という言葉は、僕が付けたんですけど、それを知ることができるいい機会なんじゃないかなと思いますね。ぱんだが言ったみたいに、“これが1stアルバム”と言えるくらいの力作になったと思うので、是非、聴いてみて下さい。
平田&りょう:よろしくお願いしますっ!
取材・文=武市尚子 撮影=大塚秀美

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