【恋愛】元探偵が明かす…「別れさせ
工作」の全実態と危険な裏側

調査会社に“カップルの別れさせ”を依頼する「別れさせ工作」。今回は元探偵という経歴を持つ筆者が、この別れさせ工作の流れやトラブルなどについて解説します。

依頼者は私だけど…「別れさせ屋は違法、契約無効」提訴:朝日新聞デジタル
この記事の完全版を見る【動画・画像付き】
今年2月、こんなニュースが世間を騒がせました(※朝日新聞サイトで現在記事は読めなくなっています)。ある女性が調査会社に「別れさせ」を依頼したものの期待したような結果が出ず、この依頼自体が公序良俗に違反しているから費用を全額返却せよ‥‥という珍しい訴訟です。
このニュースでひさしぶりに「別れさせ」というフレーズが脚光を浴びましたが、どんな依頼内容だったかは具体的には踏み込まれていません。そこで元探偵が、別れさせ工作がどんなものか解説させていただこうと思います。
特殊工作ってなに?
まずニュースでは各メディアで「別れさせ屋」と連呼していましたが、これは某社さんの登録商標ですから、一般名詞のように報道するのは間違いです。業界では「別れさせ工作」と呼び、特殊工作の中の1カテゴリという扱いをしています。
特殊工作とは、証拠集めという探偵の通常業務を超え、極端な言い方をすれば「相手に落ち度がなければ作ってしまえばいい」の発想で、ターゲットに働きかけて特定の行為(多くの場合は不倫などの不法行為)を促していくことを指します。
カップルを別れさせる他にもいろいろな特殊工作があります。
【特殊工作の例】
・別れさせ工作
・縁結び、復縁工作
・辞めさせ工作
・復讐工作
・スパイ工作
気になる異性と恋仲になるサポートをするのが縁結び工作、一度別れた相手との復縁を手伝うのが復縁工作、ある人間を会社から追い出す辞めさせ工作、恨みを晴らす復讐工作、企業や団体に潜り込んで(ゴニョゴニョ)するスパイ工作‥‥代表的なのはこのくらいでしょうか。
私が今まで一番怖いと思ったのは復讐工作でした。「うちの娘が部活の顧問教師に性的暴行を受けた。学校に訴えてもダメだった。報酬はいくらでも出すから、あの鬼畜教師を破滅させてくれ」という依頼です。まるでドラマのような世界ですね。
この記事では、別れさせ工作に絞って解説していきます。

photo credit: nelson.oliveira via photopincc
準備フェイズ ― ダブル不倫を例に解説
準備フェイズ
まず依頼者から詳しく話を聞きます。どんな相手を別れさせたいのか?希望する期間や予算は?ターゲットの個人情報は分かっている?などです。あまりに内容が自分勝手で不合理だったり、危険だったりするとお断りするケースもあります。
私のいた所では「不倫カップルの別れさせ」は受けるけど「夫婦の別れさせはNG」という内部ルールがありました。法的・倫理的にとてもまずいからです。なお、2002年から業界団体(日本調査業協会)が自主規制を発表し、ここに加盟している探偵社は特殊工作自体を受けられなくなりました。さらに2007年に「探偵業の業務の適正化に関する法律」が施行されて、ますます特殊工作から撤退する業者が増えています。
話が逸れましたね。今回はダンナが依頼者で、妻と不倫相手の別れさせを頼んできたとしましょう。
【サンプル依頼の人間関係】
依頼者: 38歳男性、会社経営
対象者1: 花子(仮名) 35歳、専業主婦、依頼者の妻
対象者2: 太郎(仮名) 35歳、会社員、既婚者、花子の不倫相手
仕事で忙しい依頼者を横目にダブル不倫しているという、実によくある(?)パターンですね。依頼者は子供もいるため離婚を考えておらず、二度と2人が付き合わないよう徹底的に別れさせてほしい‥‥という要望です。
こんな場合、花子と太郎の浮気現場を撮影し、本人に問い詰めてもあまり効果は見込めません。いったん別れたふりして、数ヶ月でまた不倫再開するのが目に見えているからです。だからこそ工作をするわけですね。
さて、依頼を受けるとなればターゲットの個人情報が必要です。まったく未知の相手なら、普通の探偵がやるように素行調査から入って、相手を家まで尾行するなりして名前や勤務先の情報を得ます。今回は太郎が依頼者の大学時代の後輩という設定にして、個人情報があらかじめ分かっているとしましょう。
太郎は既婚者で20代の妻がいて、まだ子供はいない。中堅企業に勤め、出社と帰宅の時間帯はだいたい毎日同じ。こんな感じです。
次に、ターゲットに合わせた工作員を調達します。工作員には「自社で常時抱えている」「必要に応じて外部から雇う」パターンがありますが、私の所は工作専門でもないので後者でした。
女性工作員の場合、若くてかわいいほうが当然ベターです。あとはターゲットが好きな女優に似ているとか、共通の趣味があるとか、できるだけ成功率を高めるように選んでいきます。工作員のプロフィールはもちろん架空のもの。ターゲットとの連絡用に、身元が判明しにくい携帯電話も持たせておきます。
次は本番、実行フェイズに移ります。
実行フェイズ ― プロが仕掛ける出会いの方法
実行フェイズ
男女の恋は出会いから‥‥ということで出会いの場を作ります。ここが上手くいくかどうかで工作自体の成否が7割方決まってしまう大事なところです。
プロが仕掛ける出会いの方法といっても、案外シンプルなものです。通勤電車の同じ車両に毎日乗って徐々に親しくなる、目の前でわざと転んで手荷物をぶちまけるなど結構なんでもアリです。変に凝るよりもベタベタな、恋愛ドラマやラブコメマンガのようなシチュエーションを用意した方が成功率は高いような気がします。
ともかく、こうして無事ファーストコンタクトに成功したら「お礼に食事でもごちそうさせて下さい!」などと持ちかけ、メアドを交換したりしながらデートを繰り返していきます。適度に仲が深まったところで、いよいよラブホテルなんかに行ったりします。当然、きっちり現地には撮影班がスタンバイ済み。決定的な証拠写真やビデオを撮影します。
これで後は仕上げフェイズを残すだけです。
ちなみに工作員は、出会いに成功すれば○円、メールのやりとり1通ごとに○円、ホテルまで行ければ○円のように、成功報酬を基本給に上乗せして支払うことが多いです。なにかと危険な仕事ですから報酬はけっこう高かったです。ただ、中にはプレッシャーや良心の呵責に耐えかねて逃亡する子もいました。彼女らをフォローする探偵社側もなにかと大変なのです‥‥。
仕上げフェイズ
ターゲットの太郎と工作員の決定的な写真が撮れたら、それを使って別れさせの仕上げに入ります。証拠をいつ、誰に突きつけるかは、状況だとか依頼者の意向とかで変わってきます。
ここで新たに別の工作員を投入しましょう。先の工作員とは性別が逆で、いかにもチンピラ風なガラの悪い男性を用意します。彼は女性工作員の交際相手という設定です。
オーソドックスなのは太郎と花子がデートしている場に、工作員の男が乗りこんでいくパターンです。「オレの彼女に手を出したのは貴様か!」と写真をヒラつかせながら一方的に凄んでいきます。花子は「私以外にもこんな若い子と‥‥奥さんと別れて結婚したいなんてウソだったのね」と幻滅して、2人の仲は終わります。
もっと大ダメージを依頼者が希望するなら、太郎の奥さんに証拠写真を突きつけるパターンも有効です。太郎が出社中、家でワイドショーを見ている奥さんに男性工作員が訪ねていき、同じように写真を見せながらまくし立てます。寝耳に水の奥さんとしては「うちの夫が浮気!?」「この子だれ?」「このヤクザみたいな人怖い!」と強烈なストレスを受けます。
数時間後、そのストレスから転嫁した怒りは120パーセントの濃度で太郎に叩き込まれるでしょう。もはや花子との不倫どころではなくなり、下手すると太郎の家庭まで崩壊させることができます。いい気分で「俺って最近モテ期?」と浮かれていた太郎は、不倫相手の花子とも妻とも疎遠になり、もちろん女性工作員とも連絡が途絶え、完全に孤立した人生を送ることになります。
いろいろ省略した部分も多いですが、これが別れさせ工作の大まかな流れになります。

photo credit: A - kuei via photopincc
別れさせ工作にまつわるトラブル
別れさせ工作にまつわるトラブル
うまくいけば問題ないですが、ただでさえトラブルの多い探偵業界で最高に詐欺被害のリスクが高いのも、別れさせを含めた「特殊工作」の依頼です。
これは探偵という職業カテゴリの構造的な問題も絡んできます。想像してみてください。たとえば皆さんが家電店でエアコンを購入したとして、その品質やサービスが気に入らなければ家族・友人に「あの店は最低だった」と文句を言えるでしょう。
では、探偵に依頼して騙された時も同じように周囲へ文句を言えるでしょうか? たぶん無理だと思います。今の日本では探偵に調査を依頼したということ自体、かなり大きなマイナスイメージが伴います。ましてや「別れさせ工作を依頼して詐欺に遭った」など、普通は誰にも話せません。被害者のほとんどは泣き寝入りと言ってもいいでしょう。
だからこそ悪質な業者にとって、特殊工作というのは非常に美味しい仕事です。なにせ相手を騙しても勝手に泣き寝入りしてくれる、しかも1件あたり報酬額が百万・二百万円なんてザラですから、1人でもカモを見つければ大金をせしめられます。報酬だけ受け取っておいて何もしなくても、依頼者に詰め寄られたらこう言えばいいのです。「ちゃんとやったけど結果が出なかったんですよ。気に入らないなら訴えてみます?」と。私のいた所は社内でルールを整えて真剣にやっていました(今は工作全般から撤退済み)が、中には危険な業者があることも知っておいてください。依頼者側も相当なリスクを覚悟しなければいけません。まさに工作の依頼は「人を呪わば穴二つ」なのです。
こちらのレポートもどうぞ!
【恋愛】どこからが浮気? 弁護士に聞いた"アウト"と"セーフ"の境界線 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/11243 ]
【恋愛】あなたの近くにも! 恐怖の「壇蜜女子」から身を守る方法 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/12311 ]
もう言い逃れはできない!? 法科学のプロに聞く最新の“浮気調査”事情 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/10426 ]
【恋愛】“婚期を逃さない女”になるための5つの鉄則 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/11099 ]
元探偵が明かす、個人情報の間違った守り方と正しい対処法【日常編】 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/10158 ]

アーティスト

ウレぴあ総研

新着