【インタビュー】フィンランド臭たっ
ぷりな、コルピクラーニ『北欧コルピ
ひとり旅』

フィンランドのフォーク・メタル・バンド、コルピクラーニの10thアルバム『北欧コルピひとり旅』が9月7日にリリースとなる。
『北欧コルピひとり旅』は、「旅」をテーマとしているということもあり、いつもの「酔っぱらって大騒ぎ」というイメージを封印している感もある作品だ。その代わり、北欧のお家芸である哀愁は300%増しで、北欧メタルの美しさ、悲しさが大好きな人には、非常に聴きごたえのある作品でもある。
──ニュー・アルバム『北欧コルピひとり旅』は、以前の作品と比べると、少々毛色の違う作品のようですね。

ヤルッコ(B):そうだね。確かに以前とは違った風にやろうと思った部分はある。ここ最近のアルバムは、ずっと同じプロデューサーAksu Hanttuと一緒に作ってきた。おかげで俺たちも成長することができたし、作品もサウンドもどんどん良くなっていったと思う。一方で前回のアルバム『Noita』を作った時点で、これ以上は進みようがないという地点に達したと感じたのも事実なんだ。だから今回の作品では、ちょっと違ったアプローチをしたいと思ったんだ。サウンド的にも、過去を振り返るような…といっても俺たち自身の過去という意味ではなく、前の時代の自然で本物の音が欲しかった。ドラムもコンピューターのサンプル・ライブラリーのような音でなく、本物のドラムキットらしい音で、ギターも70年代~80年代のマーシャルらしいクランチーな音が欲しかった。こういった点で、今回のアルバムは以前のコルピクラーニのアルバムとは異なったものになっていると思うよ。

──テンポの遅い曲が目立っている印象を持ちました。アルバムの冒頭からして、ゆっくりなパートで始まりますよね。故意にこのような作風にしたのでしょうか。

ヤルッコ:故意とは言えないな。俺たちはアルバムをレコーディングする前にデモを作るんだ。たいていはデモができあがった時点で「ああ、アルバムはこういう方向性になるのか」なんて思うんだよ。「よし、遅いアルバムを作ろう」とか「速い曲をたくさんいれよう」みたいに、前もって方向性を決めてやるわけじゃない。たまたま今回はこういう曲が揃っただけだね。次のアルバムもこういうスタイルになるのかはわからない。もちろんいつものような速い曲も入っているけれど、確かに君が言うようにスローでムーディでヘヴィな曲が目立っているね。

──今アルバムは70分もあります。これまでのコルピクラーニのアルバムは40分~50分とコンパクトにまとまっていましたが、今回これほど長大な作品になったのは何故でしょう。

ヤルッコ:基本的には良い曲がたくさんできたからというだけだよ。せっかく出来が良い曲をボツにはしたくないからね。今はCDやダブルLP、ストリーミングなどで、それほどアルバムの長さを気にする必要もない。せっかく70何分の素晴らしいマテリアルが完成したわけだから、それを全部入れようと思ったんだ。以前は日本盤用のボーナス・トラック用に曲をとっておいたりもしたけど、今回はレコーディングした曲を全部入れた。

──7曲め「幻の髑髏杯」は10分もある大作で、『Korven Kuningas』のタイトル曲を例外とすれば、コルピクラーニ史上もっとも長い曲ではないですか?

ヤルッコ:「Korven Kuningas」は、ずっとドラムが続くシャーマニックな曲だからね。一方で、「幻の髑髏杯」は、確かに10分もの長さのドゥーム・メタル・ソングとも言える面白い曲だよ。曲調が面白いわけではないけれど。1990年代のドゥーム・メタルみたいなヴァイブがあって、俺個人的には非常にCandlemass的な雰囲気がある曲だと思っている。Leif Edlingが書いた曲みたいだろう?たまたまこの時期、こういう曲ができあがったんだ。このバンドの面白いところは、どんな種類の曲を書いたとしてもコルピクラーニになってしまう点で、自分たちを制限することがない。「いくら何でもこれはやすぎだ」と思う人もいるかもしれないけど、俺たちは自分たちの意見しか気にしていないからね。

──次の「巨人が分かつ橋」もCandlemassというかエピックなヘヴィ・メタルですよね。

ヤルッコ:そうだね。「幻の髑髏杯」「巨人が分かつ橋」はどちらもヘヴィな曲だしヘヴィ・メタルだよ。ただ、「巨人が分かつ橋」に関しては、過去にこういうスタイルの曲もやったことがあると思う。近い曲調のものがあった。だけど「幻の髑髏杯」は、過去の俺たちのどの曲とも似ていない。面白いことに、この2曲はどちらも最初に作った5曲のアルバム用デモにすでに入っていたんだ。アルバムの製作の始まりとしては、とても奇妙なものだったよ。何しろ2曲合わせて16分のドゥーム・ソングなのだからね。まあ結局は、他の7~8曲はもっと普通のコルピクラーニらしい曲になったけれど、はじめはとても奇妙だったね。

──アルバム・タイトル『北欧コルピひとり旅』は「さすらい人」という意味とのことですが、テーマは「旅」ということですか?コンセプト・アルバムになっているのでしょうか。

ヤルッコ:いわゆるコンセプト・アルバムではない。いくつかの曲は旅についてであり、いくつかの曲はホームシックについて。俺たちはツアーをやっているから、いつもどこかへ行ったりどこからか帰ってきたりする。さらに、歌詞のいくつかは旅人のアウトサイダーとしての視点を持っているんだ。そういうわけで、何曲かは共通のテーマを扱っているけれどコンセプト・アルバムというわけではない。

──アートワークも非常に美しいですね。

ヤルッコ:家があって道がある。つまり「さすらい人」というコンセプトと明確なつながりがあるよね。このアートワークは実在の場所で、そこの写真を元に描かれている。俺は最初この絵を見せられたとき、「いくら何でもこれはウソっぽすぎる。こんな場所はないよ」って文句を言ったんだ(笑)。ところが写真を見せられてさ、本当にこういう風景だったんだ。
──コルピクラーニは、どんな音楽から影響を受けているのでしょう。メタルとフィンランドの民族音楽ははっきりとわかりますが、それ以外の音楽からも影響を受けているのでしょうか。

ヤルッコ:あらゆる音楽だね。このバンドのメンバーが聴いている音楽は、本当にバラバラだから。民族音楽好きなメンバーもいればヘヴィ・メタルやハード・ロックが好きなメンバー、俺みたいにカントリー・ミュージックの大ファンもいる。やっていることに一切の制限がないというのは、とても気に入っているよ。ツアー・バスで、ずっとヘヴィ・メタルばっかりかかっている状況はキツイよ。

──メタルに限ればどのようなバンドからインスピレーションを受けていますか?

ヤルッコ:俺もリード・シンガーのヨンネも、オールドスクールなバンドが好きなんだ。ブラック・サバス、モーターヘッド、それからもちろん1980年代のバンド、W.A.S.P.アイアン・メイデン、アクセプトとか1980年代中盤にピークを迎えた音楽だね。

──歌詞はフィンランド語ですが、これは普段使われる現代的なフィンランド語ですか?

ヤルッコ:いや、現代的とは言えない。かつてほどオールドスクールではないけど、非常に詩的な書き方をしているんだ。詩的というのは…つまり面倒臭いということ。例えば俺たちの歌詞をコピペしてグーグル翻訳にかけても、全く意味のわからないものしか出てこないよ。

──コルピクラーニの初期は英語で歌っていましたが、だんだんフィンランド語へとシフトし、現在はすべてフィンランド語です。これは何故でしょう。

ヤルッコ:フィンランド語の方が響きがいいんだよ。ストロングなサウンドというのかな。それに英語で歌うよりも母国語の方がもっと感情を込められるしね。もともとヨンネはフィンランド語で歌詞を書いていたのだけど、彼は自分の書くフィンランド語の歌詞に満足できなくて、それで英語を使い始めたんだ。フィンランド語というのは難しい面もあるから。やがて外部のライターによるフィンランド語の歌詞を使うようになって、結局はすべてフィンランド語ということで落ち着いたのさ。

──コルピクラーニの音楽は、フィンランド人が聴くと非常にフィンランド的に感じるものなのでしょうか。

ヤルッコ:そうだね、特に歌詞もフィンランド語だし、フィンランド人にとって、とてもフィンランドっぽく感じられる音楽だよ。非常にオールドスクールなフィンランドという感じがするんじゃないかな。何と言うか、田舎者のジョークというか、フィンランドの郊外の音楽の雰囲気。俺たちはまったくオシャレじゃないからね。

──では最後にアルバムを心待ちにしている日本のファンへのメッセージをお願いします。

ヤルッコ:まずはニュー・アルバムを買いに行ってくれ。これは素晴らしいアルバムだよ。愛情を持ってこれを聴いて、それからプロモーターに、俺たちを日本に呼ぶよう伝えてくれ。

取材・文:川嶋未来
写真:Peero Lakanen

コルピクラーニ 『北欧コルピひとり旅

2018年9月7日 世界同時発売予定
【50セット通販限定 直筆サイン付きCD+Tシャツ】 WRDZZ-783 / ¥6,000+税
【CD】 GQCS-90631 / ¥2,500+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.旅は道連れ死は情け
2.涙の密造酒
3.無常のたゆたい
4.ズグロムシクイ故郷に帰る
5.ふるさとは遠きにありて思ふもの
6.カラスのうた
7.幻の髑髏杯
8.巨人が分かつ橋
9.因循農夫
10.豊穣神に捧ぐバラード
11.神か悪魔か
12.眠れる森のタンゴ
13.至高の饗宴
14.帰路

【メンバー】
ヨンネ(ヴォーカル, アコースティック・ギター, マンドリン, パーカッション, ヴィオラフォン)
ロウナカリ(フィドル)
サミ(アコーディオン)
ケーン(ギター)
ヤルッコ(ベース)
マットソン(ドラムス)

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