『デザインあ展 in TOKYO』レポート
 コーネリアス・小山田圭吾も関わる
“超とんがったデザイン番組”の企画
展がついに開幕!

2018年7月19日に、東京・お台場の日本科学未来館で開幕した企画展『デザインあ展 in TOKYO』。10月18日まで開催される本展は、2011年からNHK Eテレで放送中の『デザインあ』の番組コンセプトをもとに、「『みる』、『考える』、『つくる』ーその豊かさを体感する」をテーマにして展開される企画展。開幕前日にはプレス向けの内覧会が行われ、音楽ディレクターを務めるコーネリアスこと小山田圭吾らも来場。ここでは小山田氏のコメントなどを交えながら、本展の見どころをお伝えしよう。
小山田圭吾ら、テレビ番組『デザインあ』のクリエイターが結集
NHK Eテレで毎週土曜午前に放送中の『デザインあ』は、斬新な映像手法や音楽を交えた表現でデザインの面白さを直感的に伝えている子ども向け教育番組。本展はその番組コンセプトを体感できる場として企画された展覧会で、番組にも関わるクリエーターたちが制作した39点の作品が展示されている。2013年に東京ミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTで行われた前回展は、約4ヶ月間で22万人の動員を記録。展示を一層充実させた今回の展覧会も既に春に富山で開催され、連日多くの来場者を集めた。
内覧会で挨拶した映像ディレクターの中村勇吾氏(左)、総合ディレクターの佐藤卓氏(中央)、音楽ディレクターの小山田圭吾氏(右)
内覧会には、番組でも総合ディレクターを務める佐藤卓氏、映像ディレクターの中村勇吾氏、音楽ディレクターの小山田圭吾氏が来場。まず挨拶に立った佐藤氏は「すべての物ごとにおいてデザインと関わりのないものは何ひとつとなく、あらゆる仕事においてもデザインマインドが必要。そうした考えに基づいて子どもの時からデザイン教育が大切なのではないかと思った」と番組の根底にある思いを語った上で、本展を通じて「身近ないろんなところにデザインが潜んでいるということに気づいてもらえたら嬉しいです」と述べた。
総合ディレクターの佐藤卓氏
続いて挨拶に立った中村氏は、本展の展示構成が番組コンセプトを忠実に踏襲していることを解説しつつ、「詳しい説明や見方がほとんど書かれていませんが、いろんなオブジェを見て、そこから自由に何かを読み取ったり感じたりしてほしいです」と述べた。
映像ディレクターの中村勇吾氏
一方、コーネリアスとしての音楽活動にも精力的で、本展にも《じかんがくる》や《しくみの観察》などの作品に音楽を提供している小山田氏は、「音楽も『時間軸や空間を使った聴覚に向けてのデザイン』ということを意識しながら曲を作っています。僕も昨日初めて展示を見ましたが、すごく楽しい面白い展示だと思います」とシンプルなコメントを残した。
音楽ディレクターの小山田圭吾氏
身の回りのものに潜んでいる“デザイン”に親しむ
本展は大きく分けて、「観察のへや」「体感のへや」「概念のへや」の3章で構成されている。
観察のへや展示風景
はじめの「観察のへや」では、身の回りのモノ・コトの中にあるデザインをユニークな手法で紹介。「お弁当」「容器」「マーク」「なまえ」「からだ」という、誰もが関わる5つのテーマを取り上げている。
たとえば、お弁当のテーマの中にある《たまごの変身》の展示では、スタートは同じ形をしている卵が調理方法によってまったく別々の姿に変わり、お弁当箱に収まっていく流れを細かく表現。卵からゆで卵、卵から卵焼き、卵から目玉焼きなど、最初から終わりのビフォーアフターも当然ながら、それぞれに調理されていく一瞬一瞬にもさまざまな形、すなわちデザインがあるのだと気付かされる。
手前:「たまごの変身」 パーフェクトロン
一方、マークのテーマで見られる《抽象度のオブジェ》では、誰もが知っているであろうトイレのマークを題材にしながら抽象度の変化を段階的に表現。本来の色や形をそぎ落とし、シンプルな形に見せていくことで、マークの伝わり方がどう異なっていくかということを考えさせられる作品だ。
「全国名字かずくらべ」 パーフェクトロン
個人的に興味を持ったのは、なまえのコーナーにある《全国名字かずくらべ》という作品。この作品では、巨大なボード上に約8万の名字を表示。それぞれの名字の大きさは人口に比例している。最低で日本に10人ほどしかいない名字も書かれているそうで、佐藤、鈴木、伊藤のような名字は遠くからでも見えるような大きさなのだが、希少な名字はルーペを使ってようやく見えるような大きさ。名字の割合を具現化するという試みも興味深いが、膨大な数の名字をひとつの作品にまとめあげた作家の執念に感嘆させられた。
「目には「め」を 歯には「は」を」 パーフェクトロン

「目には「め」を 歯には「は」を」(部分)
スライドを用いた影絵で自由なマークを作る《マークをつくる》や、タッチパネルに打ち込んだ自分の名前が“顔”になる《名は顔をあらわす》など体験できる展示もあり、楽しみながら想像力を膨らませる仕組みが各所にちりばめられている。

「マークをつくる」 岡崎智弘

「デッサンあ」 阿部洋介+藤森吉昭+稲福孝信

空間や時間など、目に見えない「概念」の中にもデザインが隠れている
次の「体感のへや」では、展示室の中に『「あ」のテーマ』『解散!』『森羅万象』『ガマンぎりぎりライン』という4種の映像を四方の壁面いっぱいに投影。映像とシンクロした音楽とともに、テレビ番組『デザインあ』の世界を360度の視界から体感できる空間だ。
「解散!」 岡崎智弘/音楽:小山田圭吾
『「あ」のテーマ』では、その名の通り番組のテーマ音楽とともに様々な形の「あ」が四方を流れていく。小山田氏による音楽のリズムに合わせて踊る「あ」を見ていると、思わず自分も「あ~♪」と歌ってしまいそうな楽しい高揚感に包まれる。
「「あ」のテーマ」中村勇吾/音楽:小山田圭吾
続く「概念のへや」は、「くうかん」「じかん」「しくみ」という、目に見えない概念をデザインの視点によって感じてみようという展示が見られる。
概念のへや展示風景
「くうかん」のゾーンでは、ごく一般的な距離感や明るさに変化を付けてみたり、人々が無意識の間に作っている空間を可視化。そうした作品を見て、我々は見えないものでも自分たちが暮らしやすいように自然と整頓し、デザインしていることを実感させられる。
概念のへや展示風景
一連を通じて、どの作品からも生活のあらゆる刹那や空間の中にデザインがあふれていることが伝わってくる。そして、それは日々の中から面白いことや興味深いものをいかに見つけるかという、人生を楽しむヒントにも通じているように感じられた。
『デザインあ』ならではのアイテムをおみやげに
本展は企画展オリジナルグッズも充実。番組ロゴが大胆に描かれたTシャツ、作るのに果てしない時間がかかりそうなペーパークラフト、歩くと「あ」の文字が残るビーチサンダルなど、これまた“とんがっている”アイテムの数々は本展のおみやげにふさわしいものばかりだ。
左上/「あビーサン」1620円〜2160円 左下/「歯車カード」864円 右/「あT」2160円〜2376円
企画展『デザインあ展 in TOKYO』は、10月18日まで東京・お台場の日本科学未来館で開催中。大人も子どもも、見て、触れて、聞いて、デザインの世界を体感しに出かけてみてはいかがだろう。

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