左より、鼓童 大塚勇渡さん、北林玲央さん 撮影:tama

左より、鼓童 大塚勇渡さん、北林玲央さん 撮影:tama

太鼓集団「鼓童」が人を惹きつける理
由とは? “イケメン若手コンビ”イン
タビュー&最新ライブから徹底解剖!

和太鼓演奏で知られる<鼓童>が35周年ツアーを開催中。今回は最新ライブレポートと、フレッシュなイケメン若手コンビ・大塚勇渡さんと北林玲央さんへのインタビューで、鼓童の魅力に迫る!

いま、中学・高校などの部活やクラブで“和太鼓”が盛んなのだとか。2020年の東京オリンピック開催を控え、日本の伝統文化としても今後注目を集める機会がますます増えていくかもしれません。
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そんな和太鼓の演奏で知られる太鼓芸能集団「鼓童」が今年創立35周年を迎え、記念ツアー<鼓童ワン・アース・ツアー2016「螺旋」>を開催中です。
筋肉隆々の男たちが一心不乱に和太鼓を叩きまくる――鼓童のビジュアルを見ると、彼らのライブにそんなストイックかつ硬派なイメージを持つかもしれません。それはそれで合ってはいるのですが、それだけと思ったら大間違い! 太鼓のイメージをガラッと覆される、驚きと刺激に満ちたステージなのです。
今回は先日パルテノン多摩で行われた鼓童の最新ステージの模様に加え、今年正式メンバーに加入したばかりのニューカマー、大塚勇渡さんと北林玲央さんの“イケメン同期コンビ”のインタビューで、鼓童のウラ側もご紹介。多方面から鼓童の魅力に迫ります!
とんでもない密度と興奮! 鼓童のド迫力ステージメンバーが輪になって体を揺らすリズムを刻む『炯炯(けいけい)』で幕を開ける約2時間半の公演。今回が鼓童初体験だった筆者の見終わっての率直な感想を記すなら、「太鼓ってすげえ! 人間ってすげえ!」という感じでしょうか。アホみたいな言い方ですが、鼓童のステージには、太鼓による表現の想像を超える多様性と、太鼓の音が持つプリミティブな迫力や美しさが、見事に同居しているのです。
人の体の何倍も巨大な大太鼓をドカドカと連打しまくったと思えば、全神経を研ぎすませて耳を澄まさないと聴こえないような極小音で高速連打を繰り出したり、さらには太鼓を叩きもせず手のひらでこすったり――。どれも人間ワザとは思えない、素人目にもハイレベルとわかるすさまじい演奏によって、緊張と緩和、集中と解放を自在に操るステージが展開されます。
公演で演奏されるのは和太鼓だけではなく、ティンパニーやスネアドラムといった打楽器類や笛の演奏、メンバーのダンスや歌を堪能できる楽曲もあります。
それぞれの楽曲のテイストも、いかにも和太鼓演奏然とした王道のものもあれば、異国のリズムを彷彿とさせるもの、現代音楽やアンビエントを思い起こさせるもの、さらにはテクノやダンス・ミュージックに感じられる瞬間もあったりと、大変バラエティに富んでいます。
つまり一度の公演の中でも「太鼓の演奏」というひと言ではとても済ませられない多種多彩な演目が繰り広げられるのです。情報量も刺激も大ボリューム、見終わると心地よい疲労感すら感じるほどの密度!
しかし、そんな濃密なステージを体験したあとに残るのは、小難しいことは抜きにして「太鼓ってすげえ! 人間ってすげえ!」と笑顔で言ってしまいたくなる、無邪気な興奮と心地よい解放感なのでした。終演後の客席を見渡すと、若い学生から年配層まで揃って気持ちのいい笑みを浮かべています。
この唯一無二のステージはどのように生まれるのか? ここからは終演後に行ったメンバーのインタビューで、鼓童の素顔に迫ります!
演奏中は何を考えているの?
今回登場いただいたのは、大塚勇渡(おおつか はやと)さんと北林玲央(きたばやし れお)さん。共に20代前半の若さで今年正式メンバーに加入したばかりの、鼓童の中でもフレッシュな同期のふたりです。今回の公演では“大太鼓”をタッグで叩き、見事なコンビネーションを披露しています。
ド迫力、鼓童のコンサートができるまで北林「同期のライバル心ですか? あんまりないかな…バチバチしてもあれなので(笑)」
大塚「でも、似ているところはあると思います。今回の“大太鼓”でも、僕が思っていることをすぐ気づいてやってくれたり」
北林「注文が多いんです(笑)」
大塚「(笑)。ツアー中の休みの日には太鼓を叩く練習はできないので、体幹トレーニングなどをやっています。筋トレが好きな人もいるんですけど、太鼓で使う筋肉と筋トレでつく筋肉はまた違うんですよね」
北林「僕は筋トレもやります。もともと体が細いので最低限やらないとすぐポッキーみたいに細くなっちゃう(笑)。でも休みの日に筋トレしすぎたりすると本番で疲れちゃったり(笑)。先輩たちは積み重ねてきた経験がありますが、自分たちはペースがまだわからないので、試行錯誤しながらやっています」

ときに息を呑むほどの緊張感を放つ鼓童のライブ。寸分違わぬタイミングで繰り出される常人離れしたバチさばきは圧巻……! いったいステージ上ではどんなことを考えながら演奏しているのでしょうか。
大塚「ライブ中は、集中しようと思えば思うほど雑念が生まれちゃったり……とにかくそのときの理想のかたちに近づけようと頑張るという感じですね。
曲の流れは一応決まっているんですが、新鮮さを保つためにちょっとアドリブでニュアンスを変えてみたりとか、毎回ちょっとずつの変化はあります。元々ある曲は譜面を見て練習することもありますが、新曲は演出の坂東玉三郎さんと話しながら、みんなでホワイトボードに書きながら少しずつ作っていきます」
北林「新しい曲を作るのはめちゃくちゃ大変ですね。『こうしたらいいんじゃない?』と言われても、その場では技術的にできないこともあって。でも次の日にはそれをやって見せなきゃいけないし、さらに新しい課題が来るので、毎日それをクリアするのに精一杯。今回の新曲『螺旋』は、できるまでにどれくらいかかったかな……」
大塚「『螺旋』は1ヵ月くらいかな? 他の曲の稽古と同時にやっているので、曲によってはかなりかかりますね」
北林「自分の演奏ができるようになって、やっとまわりの音が聴こえてくるので、そこでまた演奏が変わることもあって。いまでも演奏をしながら気づいたり、変わっていく部分はありますね」
大塚「今回玲央とやっている大太鼓は、坂東玉三郎さんから『これまでの大太鼓の型にとらわれずにいろいろ試してみたら』というお話があり、音色や表現を音楽的に構成して作ってみようと、これまでにない音づくりをしています」
スマホ禁止! 研修所での共同生活
スマホ禁止、まるで“精神と時の部屋”!? 2年間の研修所生活35周年の舞台で華々しく活躍するふたりが鼓童と出会ったのは、まだ10代のころ。それぞれの理由から鼓童の太鼓に惹かれ門を叩いたのが、新潟県・佐渡ヶ島にある研修所です。
ここで2年間の共同生活を過ごしたのち、見事に鼓童のメンバーへ……と数行でまとめてしまいましたが、この2年間の共同生活は、ふたりにとって大きな転機となりました。
北林「実際に研修所に入ってわかったのは、ステージで見せる技術や輝きの裏には、“下地へのこだわり”があったということ。太鼓の基礎の部分はもちろん、考え方も含めてです。
ただストイックなわけでもなく、それぞれがただ頑張っているだけではあの演奏にはならないんですよね。一緒にご飯を食べて、一緒に話をして、楽しいときはみんなで楽しんで……そういうすべてを含めて鼓童なんだなあ、ということが2年間の研修生活でわかりました。
逆を言えば「いっつも一緒かい!」(笑)。地元にいたときは、学校で仲が悪くなっても地元に別の友だちがいるし、そこで喧嘩しても家には家族がいるじゃないですか。研修生活には逃げる場所がないんですよね。寝ても覚めても一緒にいるのは同期のこいつらっていう(笑)」
大塚「(笑)」
北林「当時は寝ても研修生活の夢を見ちゃって辛かったです。まるで『ドラゴンボール』の“精神と時の部屋”(笑)。普通の2年間じゃ絶対に詰め込めない密度でした」
大塚「玲央が言ったように、朝みんなで集まって体操して掃除して、ランニングして農作業もやって……、自分が“生きる”というところから学び直された感じがあって。全部がつながってるんだということに研修所で気づきました。
みんなでいろんなことを分かち合って本気でやることの普遍性のようなものを学びました……って綺麗に言っちゃうとあれなんですけど。自分のこともすごい嫌になったりしましたし、そういう自分を変えていくのが辛かったです」

“自分と向き合い続けること”の辛さ北林「研修生のときに一度、“いままでの自分らしさがなくなっちゃったんじゃないか”と悩んでしまって。それは演奏だけの話ではなく、もっと深い自分自身のところで。
研修中は自分のことを考える時間も増えるんです。だって携帯やスマホも禁止だし、テレビも見られない。研修所には1日前の新聞が届くだけなんですよ(笑)」
大塚「いま思うと、あれはあれで恵まれていたなと思いますね。戻りたくはないですけど(笑)」
北林「いままであった余計なものがなくなった分、考えなくてもよかった部分を考えだして……、それに耐えられなくて辞めてしまう人もいるんですけど」
大塚「僕は研修所を出て、準メンバーになったときにすごく迷いました。研修所にいたときはカリキュラムが与えられていたのですが、準メンバーになると全部自分で選択しなければいけない環境になって。
それまではずっと受動的だったんですけど、はじめて自分が本当にやりたいことはなんなんだろう、と考えるようになりました。そこでやっぱり太鼓に戻ってきて、太鼓が好きだなと。いまもまだまだ未熟ですが、自分のことは前よりちょっとだけわかってきた気もします」
未来の鼓童はどうなっていく?
「人間ってみんな一緒だよね」―そんな場を作りたい厳しくもかけがえのない2年間の研修生活を経て、正式メンバーになったふたり。いまも変わらず日々葛藤しながら太鼓と向き合う日々を送っています。これからの鼓童を牽引していくのは、まさに彼らのような若い世代でしょう。最後に“鼓童の未来”への思いを聞きました。
北林「僕はずっと鼓童のことを単純にすごいと思ってきたので、これからも“鼓童はすごい”って思われるように頑張りたい。例えば演奏を聴いておじいちゃんがちょっと元気になれたり、なにか自分が吹っ切れるきっかけになれたり……そのためにも常に発信し続けたいですね。
鼓童が他のアーティストと違うところは、太鼓は言葉でしゃべったりとか、具体的になにかを伝えることは難しいんですけど、その分気持ちをシンプルに伝えやすい楽器なんです。そういうところを常にいい方向に発信し続けたいですね」
大塚「佐渡ヶ島の研修所で、流星群の日に流れ星を見たとき、その流れ星を見てドキドキする感じが舞台で感じるドキドキにちょっと似ていて。
舞台を見ている人も演奏している人も、すごく掘り下げた底のところにある、人間の魂の部分が共感できるようなものが作りたい。僕は太鼓という楽器にその力を感じていて、それをもっと身近に感じてほしいです。
いい意味で日常を忘れられて、もっと童心に戻って……『色々あるけど、人間ってみんな一緒だよね』と思えるような場を作りたい。舞台や太鼓にはそういう力があると思います」
言葉にならない感情を共有し、他者とつながる――これは音楽のもつ最も原初的な力です。鼓童のライブを見終えたときに湧き上がった「太鼓ってすげえ! 人間ってすげえ!」というアホみたいに無邪気な感動と解放感。その理由がふたりの言葉から見えた気がしました。
太鼓というはるか昔から存在する圧倒的にシンプルな楽器。そこに秘められた無限の豊かさと力強さを心と体で感じられる鼓童のコンサートは、性別、年齢、身分、国籍、さらには偏見、争い、差別――そんな余計な物事に日々縛り付けられているわたしたち現代人を、「人間ってみんな一緒だよね」と解き放ってくれる場でもあるのです。
全国ツアー<鼓童ワン・アース・ツアー2016「螺旋」>は、12月21日~25日の東京公演まで、このあとも各地を回ります。「鼓童? あー、あの太鼓の人たちでしょ?」――そう言う人にこそ全力でオススメしたい! きっとその想像を超える、とても刺激的なエンタテインメントに出会えるはずです。
鼓童ライブ情報
チケット好評発売中!
鼓童ワン・アース・ツアー2016 ~螺旋
11月23日(水・祝)14:00 新潟県佐渡市 アミューズメント佐渡
11月26日(土)14:00 栃木県日光市 日光市今市文化会館
11月28日(月)18:30 愛知県名古屋市 愛知県芸術劇場コンサートホール
11月30日(水)19:00 新潟県南魚沼市 南魚沼市民会館
12月1日(木)19:00 新潟県新潟市 新潟県民会館
12月4日(日)14:00 石川県金沢市 石川県立音楽堂コンサートホール
12月8日(木)18:30 岡山県岡山市 岡山市民会館
12月10日(土)14:00 広島県福山市 ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ
12月11日(日)17:00 広島県東広島市 東広島芸術文化ホール
12月14日(水)14:00 福岡市 福岡市民会館
12月17日(土)17:30 大阪府大阪市 NHK大阪ホール
12月18日(日)14:00 大阪府大阪市 NHK大阪ホール
12月21日(水)18:30 東京都文京区 文京シビックホール
12月22日(木)14:00 東京都文京区 文京シビックホール
12月23日(金・祝)14:00 東京都文京区 文京シビックホール
12月24日(土)14:00 東京都文京区 文京シビックホール
12月25日(日)14:00 東京都文京区 文京シビックホール

鼓童35周年記念「打男 DADAN 2017」アメリカツアー
2017年1月26日(木)19:30 ワシントン州、ヤキマ Capitol Theatre
2017年1月28日(土)20:00 カリフォルニア州、バークレー Zellerbach Auditorium
2017年1月29日(日)15:00 カリフォルニア州、バークレー Zellerbach Auditorium
2017年2月1日(水)19:30 オレゴン州、ポートランド Arlene Schnitzer Hall
2017年2月3日(金)20:00 ワシントン州、シアトル Meany Hall
2017年2月4日(土)20:00 ワシントン州、シアトル Meany Hall
2017年2月7日(火)19:30 カリフォルニア州、ロサンゼルス Walt Disney Concert Hall
2017年2月8日(水)20:00 カリフォルニア州、コスタメサSergerstrom Concert Hall
2017年2月10日(金)20:00 アリゾナ州、スコッツデール Virginia G. Piper Theatre
2017年2月11日(土)20:00 アリゾナ州、スコッツデール Virginia G. Piper Theatre
2017年2月14日(火)19:30 コロラド州、デンバー Gates Concert Hall
2017年2月15日(水)19:30 コロラド州、デンバー Gates Concert Hall
2017年2月19日(日)19:00 オハイオ州、シンシナティ Arnoff Center for the Arts, Procter & Gamble Hall
2017年2月22日(水)19:30 オハイオ州、ニューアルバニ― McCoy Community Center for the Arts
2017年2月24日(金)19:30 インディアナ州、グリーンキャッスル Kresge Auditorium
2017年2月26日(日)15:00 イリノイ州、シカゴ Chicago Symphony Center
2017年3月7日(火)19:30 ペンシルベニア州、クッツタウン Schaeffer Auditorium
2017年3月9日(木)19:30 コネチカット州、ストアーズ Jorgensen Center
2017年3月11日(土)20:00 フロリダ州、ジャクソンビル Florida Theatre
2017年3月13日(月)19:30 ノースキャロライナ州、シャーロット Belk Theater at Blumenthal Performing Arts Center
2017年3月15日(水)20:00 メリーランド州、ベセスダ Music Center at Strathmore
2017年3月17日(金)19:30 バージニア州、リッチモンド Altria Theatre at the Modlin Center for the Arts
2017年3月19日(日)17:00 マサチューセッツ州、ボストン Symphony Hall
2017年3月23日(木)19:30 ニューメキシコ州、サンタフェ The Lensic Performing Arts Center

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