現代音楽×アイドル?!引きこまれる一人称の世界観「Maison book girl/room」

現代音楽×アイドル?!引きこまれる一人称の世界観「Maison book girl/room」

現代音楽×アイドル?!引きこまれる
一人称の世界観「Maison book girl/
room」

まずはじめに現代音楽に対して、どのような印象をもっているだろうか。難しく、なかなか馴染みの少ない音楽というイメージが根付いているのではないか。
なぜなら複雑なリズムに加え、歌いづらいメロディ、そして不協和音がうみだす不思議なハーモニーが特徴であるからだ。
反対に、アイドルポップスは誰もが思わず口ずさんでしまうようなメロディーや、明るくてキャッチーなものが多い。
まったく違う2つのジャンルを融合することでサクライケンタが生み出したのが現代POPというジャンルだ。
聴きづらいと言われる現代音楽の特徴を全て癖になるリズムに変えた。現代音楽の仕組みを理解していなくてもなぜか引きこまれてしまうのがMaison book girlの楽曲達である。
2017年7月に発売されたアルバム「412」のリード曲である「rooms」もその1つだ。
Maison book girlの「room」

Maison book girlの歌詞は基本一人称から見える景色を綴ったものが多い。王道アイドルソングでよくあるキラキラしたものではなく、誰もが過ごしたことのある不安まじりの退屈な日常だ。
一見つまらなそうに思えるが、どこかミステリアスで神秘的な世界観がリスナーを魅了している。
1人ぼっちの部屋(=room)は 唯一自己を守れる空間である。しかしそこにいては変化することもなく、ただ時間が過ぎていくだけだ。
外に出れば出るほど傷つくとはたくさんあるが、眺めているだけでも自分が置いかれているような気がした。
「もう伝えたいことがなくなった 過去と嘘 カーテンの隙間から崩れる景色見てるの」
もう綺麗事を語ることすらできず、生きてくことに必死になってしまった。「伝えたいことはない」という切ない歌詞でありながら、悲しいとすら感じさせない。少女達が冷静に淡々と物語を語っているからであろう。
リスナーを引きつけるサビの途中の”間”

これだけモノにあふれた現代でも、結局自分には何もない。全てをなくすことはいとも簡単であったのだ。
サビの途中で音がなくなり、リスナーを引きつけるような”間”がある。この”間“こそ現代音楽の特徴と言えるだろう。
ただ音楽の流れがとまるだけでなく、リスナーが現実にもどる瞬間でもあるのだ。そして次のフレーズに入る瞬間少女達のブレスの音と共に一気に音楽に引き込まれる。実に面白い構成である。
現代音楽の複雑さは人生と似ているようにも思う。分かりづらいメロディーが繰り返されたり、いきなり山場がきたりする。
理解しにくいものが続くが、だんだん面白く感じてくることもあるのだ。諦めながら生きていくのは悪いことではないのだ。
何もなくても生きていれば”何もない“ということが存在する。だからこそMaison book girlの歌詞と現代POPSが綺麗に調和していて、聴きやすいのではないか。
新しいサウンド、新しい音楽の形を創造するMaison book girl

夢も居場所もなくなった。しかし生きていれば、いつかは同じようにこの苦しみだってなくなるのだ。
部屋には一人だが、一人ぼっちの部屋は複数存在する。だからタイトルは「room」ではなく「rooms 」という複数形になっているのではないだろうか。
ただ頑張れという応援ソングだけが人々を元気づけるのではない。現代POPという斬新で面白いサウンドにのせてシンプルに絶望を歌うからこそ、救われることもある。
新しいかたちを生み出しているMaison book girlから今後も目が離せない。

TEXT:松原 千紘

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