プログレアイドル・キスエクの白熱イ
ベント「THE 頭脳改革番外編〜昼下が
りのプログレトーーク!〜」完全再現
レポート by 深見ススム

現代日本。世はアイドル戦国時代である。アイドル達は戦いの場を歌やダンスといったカテゴリから食や格闘技など多方面に展開している。まさに群雄割拠。そのような中、主戦場の音楽の分野で静かにアイドルの進出を拒み続けてきたジャンルがある。プログレッシブ・ロックである。「重厚」「長大」「複雑」「陰鬱」。プログレッシブ・ロックが持つイメージはアイドルが目指す姿の極北と言って良いだろう。
そんな、プログレッシブ・ロック界にアイドルが誕生したと耳にした。そのアイドルとは誰か?
「ステラ・ヴァンデちゃん!!」と答えたそこのあなた。情報が昭和で止まっています。(ステラ・ヴァンデは1960年代から活躍したフランスの女性シンガーでプログレッシブ・ロック・バンド マグマの女性女声ヴォーカリスト)
答えは「キスエク」ですよ!! 正式には「xoxo(Kiss&Hug) EXTREME」(キス・アンド・ハグ・エクストリーム)。とくに平成30年(2018年)6月27日にリリースされた全国流通シングル「The Last Seven Minutes」は、前述のマグマが公認したカバー曲ということもあり、国際的な注目を集めている。
xoxo(Kiss&Hug) EXTREME「The Last Seven Minutes」6/27発売
とはいえ、恥ずかしながら、私も知らなかった。マグマでプログレの洗礼を浴び、プログレッシブ・ロック関係の依頼しか来ないプログレ・ライターの私としては、汗顔の至りである。情報を手にするために、ライブに行きたかったのだが、いかんせんマインド的に極北に位置するアイドルに会いに行くのは気が引けていたのである。そんな折、キスエクのトークイベントの取材依頼が舞い込む。これぞ天恵。早速、会場に駆け付けた。
平成30年(2018年)6月9日。6月にしては高い30度を超える気温の中、会場となるライブハウス「NAKED LOFT」を目指す。「NAKED LOFT」は、歌舞伎町とコリアン・タウン化している新大久保の境に位置しており、駅から会場に向かうだけで、非日常感が高められる。開場前の取材セッティングが許可され、準備をしているとキスエクのメンバーが挨拶をしてくれた。取材準備のために当然ネット等で写真は拝見していたが、メンバーの皆さん、実物は写真以上に本当にカワイイ。私の中で日本のプログレ・グループ・ランキングの1位は四人囃子と美狂乱が20年以上デットヒートを繰り返していたが、キスエクのメンバーを見た瞬間に1位がキスエクになりました。恐るべきアイドルの魅力。
12時開場。続々とファンが入場してくる。さすがにアイドルイベントとあって男性が95%以上を占める。しかし、アイドルファンか、プログレファンかの見分けはつかない。会場にはキング・クリムゾンの「スターレス」やマグマの「M.D.K.」「The Last Seven Minutes」などがしきりと流れており、プログレ気分が盛り上がる。
開演直前にロフトの宣伝動画が流される。学生時分にロフトプラスワンに通っていた私の印象としては、以前はサブカル、お色気の割合が多かったが、それらに加え今はアイドルの割合もかなり高くなっている。宣伝動画からもアイドルの隆盛を感じ取ることができる。
12時30開演。
キング・クリムゾンの「スターレス」、ELPの「ホウダウン」をバックにキスエクのメンバー4人が登場。楠芽瑠(通称「めるたん」)、小日向まお(通称「ちゃんまお」)、一色萌(通称「萌ちゃん」)、小嶋りん(通称「りんりん」)の順にステージ上の長テーブルに座る。ステージ上手(かみて)脇にはキスエクの運営を手掛けるプロデューサーの大嶋尚之が控えており、トークの補足や、曲の紹介を担当する。司会進行はキスエクリーダーの楠芽瑠。今回のイベントの趣旨は「プログレッシブ・ロック」についてキスエクメンバーがより詳しくなるために、プログレに詳しいゲストを招いて、お客さんと共に学ぶというもの。
(左から)小嶋りん、一色萌、小日向まお、楠芽瑠
早速ゲストが登場。
まずは、いま最も勢いのあるプログレッシブ・ロック・バンド、金属恵比須のリーダー髙木大地。自己紹介の際、客席に向かって「金属恵比須を知らない方は挙手を」と問いかける。知らない方は2名ほど。知名度は高いようだ。代表曲の「紅葉狩」を紹介。NHKラジオの「今日は一日プログレ三昧」という番組で紹介されるや否や、人気が爆発的に高まったエピソードを披露。
続いては作曲家の諸田英慈が登場。代表曲として自身が作曲した、女性シンガーの春奈るなの「とこしえロンド」を紹介。往年のロシアのアイドルユニット、t.A.T.u.を意識したデジロックとなっており、キスエクメンバーから「かっこいい」の声が上がる。諸田が所属する凄腕バンドのSilent Of Nose Mischiefはキスエクのセカンドワンマンのバックで生演奏を担当している。さらに、キスエクに楽曲を提供している作曲家のコジマミノリと太いパイプを持つとのことで、裏情報の披露を約束した。
次に作曲家の宮野弦士が登場。キスエクの新曲「Time and tide wait for no man」の作曲を担当。代表曲として、アイドルグループ、フィロソフィーのダンスの「ダンスファウンダー」を紹介。一色萌から「私この曲、めっちゃ好き」の声が上がる。曲がかかった瞬間、メンバー全員身体を動かしてノリノリ。「カッコイイ」「オシャレ」「サイコー」とメンバーたちから賞賛の声が次々に上がる。
(左から)髙木大地(金属恵比須)、宮野弦士、諸田英慈(Silent Of Nose Mischief)
ゲストの紹介が終わりここから本格的にトークがスタートした。設定されたプログレテーマについてキスエクとゲストがトークする。マニアックな話もあったが、プログレを知らない人でも十分に楽しめる内容のトークとなった。あまりに面白かったので、当日の状況をできるだけ再現してみることにした(なお、本記事タイトルは昨今の来日プログレバンドのコンサートの顰みに倣い「完全再現」と銘打ってしまった……)。イベントの趣旨が趣旨なので出てくる人名や音楽用語がマニアックなのだが、注釈をつけると、それだけで膨大な量になってしまう。よって極力避けるようにしたことをご容赦いただきたい。気になった曲はyoutube等でご確認いただくと当日の臨場感がさらに増すと思う。トークはキスエクやゲストのおかげでプログレの魅力が再発見されたものになっている。少々長いが、是非楽しんでいただきたい。

【プログレッシブ・ロックとは何か】
芽瑠:「プログレッシブ・ロックとは何か」というところからスタートしましょう。キスエクのメンバーは分かりますか?
りん:一言では語れないね。
芽瑠:それで2年間逃げてきたよね(笑)。
萌 :とうとう逃げられなくなりましたね(笑)。
りん:私は「1日1プログレ・チャレンジ」という挑戦をやっていました。最初は全然わからなかったけれど、youtubeで関連動画を次々に見ていき、気に入った曲をTwitterで紹介していました。
萌 :曲が長いからすぐ時間が経つよね。
りん:1枚のアルバムの中に1曲しか入っていないとかあるしね。
芽瑠:キスエクメンバーは色々やってきたけど、結局よくわからずに過ごしてきちゃったから、ゲストの方々に、プログレにはまったきっかけを聞いてみましょう。まずは、諸田英慈さんから。
諸田:高校生の時にキーボードを演奏していて、キーボードの雑誌をよく読んでいました。そうしたら、キース・エマーソンっていうおじさんがよく出ていまして「誰だこれ」って気になっていました。そんな時に、友人の家に行ったら「展覧会の絵」というレコードがあってそれが、キース・エマーソンが所属するELPというバンドのレコードでした。元々知っていたクラシックの曲をシンセサイザーで色々な音で演奏をしていて面白いと思ったのが、はまったきっかけです。
諸田英慈(Silent Of Nose Mischief)
~会場に「展覧会の絵」が流れる~
りん:めるたん、これ聴いたことあるよ。
芽瑠:知ってる!! これは、何かの歌だ!!
一同:そりゃ、何かの歌でしょ(笑)。
芽瑠:これを聴いて、はまったんですか……。
一同:(笑).
芽瑠:いや、いや(笑)。悪い意味では言ってないです!! 感性が素晴らしいですね。
大嶋:これが46分続きます。
芽瑠:えー。46分!!
りん:めるたんも46分聴いたらはまるよ。
芽瑠:ウソ―!! 1分くらいで止めちゃうかも(笑)。46分間、諸田さんは何をやっているんですか?
一同:(笑)。
諸田:集中して曲を聴いているんです(笑)。
大嶋:諸田さんはキスエクのライブでバック演奏をする際、もろに「展覧会の絵」のフレーズを弾いていまして、そうするとお客さんは笑ってくれるんです。
萌 :ライブで「何でお客さん笑っているんだろう」と思ってたんだけど、そういうことだったんですね。
芽瑠:では髙木大地さんはどういうきっかけで、はまりましたか?
髙木:親がキング・クリムゾンやピンク・フロイドが好きでその影響です。物心付いたころからそういったバンドのレコードを聴かされていました。純粋培養の英才教育です。小学生の時にレッド・ツェッペリンというバンドが好きで、そのバンドが出演している「アトランティック・レコード40周年コンサート」というビデオをよく見ていたんです。レッド・ツェッペリンが見たかったんですが、ビデオテープなのでレッド・ツェッペリンを見るには早送りとか、巻き戻しとかが必要なんです。その前や後ろに出ている、ジェネシスやELPにはあまり興味がなかったんですが、早送りするのが面倒で見ていたら、ELPがだんだん好きになっていきました。ただ、後に大好きになるジェネシスはこの頃はまだ苦手でした。
髙木大地(金属恵比須)
~会場にレッド・ツェッペリンの「ブラック・ドッグ」が流れる~
芽瑠:宮野弦士さんはいかがですか?
宮野:僕も両親が音楽好きだったんです。キーボードが活躍しているYESというバンドが好きでした。家で母親がYESの「ラウンドアバウト」を弾きながら「ここのフレーズが難しいの」とか言っていました。それが小学校4年生くらいの時でした。
~会場にYESの「ラウンドアバウト」が流れ始める~
萌 :「ラウンドアバウト」といえば、アニメ版の「ジョジョの奇妙な冒険」のエンディング・テーマ曲でしたよね。
宮野:子供の頃、修学旅行のバスの中で「ラウンドアバウト」を流したら、阿鼻叫喚の地獄絵図になったんですよ。それ以来、何人かの友達がちょっと冷たくなっちゃって(笑)。
髙木:僕は中学校のスキー教室の起床の合図放送でキング・クリムゾンの「レッド」流してました。みんなすぐ起きた(笑)。
芽瑠:学校の行事でプログレ流す人なんているんですね。
宮野:普通はいないんですよ。でも、自分としては、随分加減したつもりだったんです(笑)。その後はプログレだけではなく、70年代、80年代全般の音楽が好きになっていきました。
宮野弦士
芽瑠:皆さんありがとうございます。では、次にプログレッシブ・ロックの5大バンドについて語っていきましょう。
【5大プログレバンドについて】
りん:5大プログレバンドについては前にテストをしたことがありますね。
芽瑠:以前、DVDの特典映像でプロデューサーの大嶋さんが、ひたすらプログレについて、熱量すごく語ってくるというものがありまして。その時に基本については、学びました。キスエクの皆さんは、5大バンドのバンド名を言えますか?
まお:イエス、ELP、ピンク・フロイド……マグマ?
一同:(笑)。
髙木:これ読みます?(といって『プログレッシブロック入門(河出書房新社)』を、バッグから取り出す)
芽瑠:(髙木から体を遠ざけて)いりません、いりません!
宮野:髙木さん何でも出てきますね(笑)。
萌 :5大プログレ・バンドの四つ目は髙木さんが最初嫌いだったというバンドだよ。
まお:う~ん?
髙木:ジェネシスですよ!!
芽瑠:あと一つは?
萌 :レッド・ツェッペリン?
大嶋:あと一つは、今年結成50周年のバンドです。
芽瑠:その情報じゃあ分からないですよ(笑)。
宮野:「ジョジョの奇妙な冒険」がヒントです。
萌 :そのヒントで分かるの私だけです(笑)。
宮野:(アルバム「クリムゾン・キングの宮殿」のジャケットの顔真似をする)
芽瑠:キング・クリムゾンだ!! メンバーは5大バンドにどういう印象がありますか?
りん:大嶋さんも諸田さんもELPが好きだから、親近感があります。
萌 :私は「ジョジョの奇妙な冒険」の印象が強いです。作者の荒木飛呂彦さんがプログレ好きなようでして、技やキャラクターの名前に、プログレ用語が出てきてました。キング・クリムゾンは敵キャラのボスのスタンドの名前でした。何気なく目にしていた言葉が後にプログレ用語だと知りました。
芽瑠:まおちゃんはなにか印象ありますか?
まお:特にないです(笑)。
芽瑠:ゲストの皆さんはいかがですか?
髙木:その前に……今日のお客さんでプログレ好きな方はいますか?
~客層の2割はプログレ自体をよく知らない様子~
髙木:皆さんの状況により、話す内容の濃さが変わります。
宮野:それ重要です!!
髙木:いきなりヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターの話をしてもいいんですか?
宮野:それは、僕も微妙です……。
りん:では皆さん、キスエクと一緒にプログレの勉強をしましょう!!
髙木:では、基本的なところから。5大バンドは曲が長いのが特徴なので、代表的なELPの「タルカス」を聴きましょう。
宮野:間違いないですね。
~会場に「タルカス」が流れ始める~
髙木:この曲はNHKの大河ドラマの「平清盛」で、クラシックのオーケストラ演奏にアレンジされて流れていました。
宮野:プログレがクラシックをアレンジすることは多いですが、「平清盛」ではクラシックがプログレの曲を取り込んでいましたね。
萌 :この曲は、一時期キスエクのライブの時の入場曲でしたね。入るタイミングが分かりにくかった(笑)。
(曲開始後2分ほど)
芽瑠:そろそろ終わるんですか?
大嶋:いや、20分以上ありますよ。
芽瑠:歌う人はいるんですか。
髙木:いますが、2分以上経っても歌は出てきません。
芽瑠:何でですか。
髙木:壮大にしたいからじゃないんですか。ちなみに歌はグレッグ・レイクさんですね。当時はイケメンでしたが、歳をとって太ってしまいました。最近お亡くなりになりましたね。
芽瑠:そうですねぇ。
髙木:本当に知ってるの?(笑)
芽瑠:テキトーに答えたの、ばれましたね(笑)。
宮野:キング・クリムゾンのボーカルもやっていましたね。プログレは、バンド間のメンバー異動が激しいんです。
りん:キスエクも妹分をつくって交換とかありですか?
宮野:もめるよ~(笑)。
萌 :うん。もめそう(笑)。
【新語出現? 「○○○○・ハラスメント」】
芽瑠:ELPといえば……沖縄で写真集の撮影をした時にヤシの木の下にキスエクメンバーで並ばされて、変なポーズとらされたことがある!!
ゲスト一同:そりゃ、「ラヴ・ビーチ」だな……(笑)。
芽瑠:なんで水着でこんな変なポーズしなきゃいけないのよ?!って思いました。
諸田:(大笑)。
髙木:それ、「プログレ・ハラスメント」だよ。ここで命名しよう。こういうのは「プログレ・ハラスメント」。
宮野:わはは。新しい(笑)。
芽瑠:よくあるんですよ!!
髙木:よくあるの? プロハラが?
芽瑠:後から元ネタ見せられても、納得できないんです!!
髙木:大嶋さん。気を付けたほうが良いですよ。
大嶋:……。
芽瑠:大嶋さん何も言えなくなってる(笑)。
右下に控えるのが大嶋尚之
【プログレから影響を受けた曲】
芽瑠:ゲストの皆さんが作った曲で、5大バンドから影響を受けた曲はありますか?
髙木:5大バンドはばれるから、その影響が分かられてしまうような曲は作ってないです。
芽瑠:有名すぎてすぐバレちゃうんですね。
髙木:つかまっちゃうよ。
りん:キスエクは大丈夫ですかね。
芽瑠:キスエクは5大プログレ・バンドの影響はあるのかな?
りん:結構あると思う。
大嶋:ロバート・フリップさん(キング・クリムゾン)は最近まるくなったみたいなんで多分大丈夫でしょう。昔は訴訟ばかりしていたけれど。
髙木:昔、金属恵比須がキング・クリムゾンの「ディシプリン」のジャケットのマークをパクったグッズを作ろうとして、レコード販売店さんに止められました。「訴えられますよ」って(笑)。
諸田:僕も影響はありますが、世間にはあまり知られてないかな。5大バンド以外で影響を受けてる曲はちょこちょこ作ってます。
宮野:仕事柄、プログレの影響を感じさせる曲は作ってないです。でも作りたくってうずうずしてるんです。
大嶋:宮野さんは、5大バンドはどういう印象を持っていますか?
宮野:特にELPとイエスはキーボードが派手で好きですね。ジャカジャンジャンっていう派手な感じ。
髙木:音源を聴くと、音数が多いので一曲当たりの音単価が安いですよね。
宮野:音単価!!
髙木:リック・ウェイクマンとか安い。
宮野:確かに、確かに。でも、ピンク・フロイドとかって。
髙木:ピンク・フロイドは音数が少ないので音単価が高いです。
宮野:その観点はなかったなぁ(笑)。
萌 :話がマニアックで、ゲストとキスエクメンバーとの間に壁ができているんですけど。
髙木:「ザ・ウォール」ですね!!
宮野、諸田:(大笑)
萌 :でも私、音単価の話は面白かった(笑)。
大嶋:ピンク・フロイドなんて音が中々出てこないことが多いですからね。
芽瑠:音が出てこない? 何でプログレはすぐに曲が始まらないんですか?
宮野:たとえば映画やドラマとか、登場人物がすぐに出てきたりしないでしょ。景色とか、スタッフクレジットが出てきて、その後に登場人物が出てくる。プログレはストーリー性の強い音楽だから、その音楽の景色とかを音で示して、歌でセリフを語ったりするんです。
会場:(拍手)
髙木:素晴らしい話ですね。キスエクメンバーはメモっときなさい。
萌 :音がなくてもイントロとして成り立っているんですね。
宮野:無音はもしかして、風を表現しているかもしれませんよ。40分の曲って聞くと長いって感じるかもしれませんが、ドラマは30分だし、映画は2時間だし。頭の中でストーリーを想像すると長くないんです。
萌 :なるほど。キスエクの「悪魔の子守唄」っていう曲は11分あるし、曲調も変化が激しいんですけど、演劇性や物語的にとらえてくれている人には、確かに評価が高いかもしれない。今、すごく腑に落ちました。
芽瑠:自分の中で物語を作って聴けば46分でも「苦」じゃないってことですね。
髙木:「苦」が前提なの?
芽瑠:私、集中力ないから46分の曲は厳しいんですよ。
宮野:寝る時に聴けばいいんです。
芽瑠:そうすればすぐに寝られる……。
一同:(爆笑)。
りん:以前、宮野さんから、寝られないときはピンク・フロイドの「狂気」がいいよって言われて試したら、「ジリジリジリ」っていう音が鳴るし、不穏な空気が流れるし。怖くて……。
萌 :私は今日の朝「狂気」を聞いてきました。
芽瑠:えらい!!
【5大プログレバンド以外】
芽瑠:5大プログレバンド以外にはどういったバンドがあるんですか?
髙木:イタリアだと代表的なバンドでPFMとか。プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ。メンバーの名前も、イタリア語だからわかりにくい。
芽瑠:日本にもプログレバンドはいるんですか?
髙木:金属恵比須がいます。
芽瑠:いますね(笑)。他にはいますか?
髙木:四人囃子とか。
宮野:高円寺百景とか。
髙木:昔、金属恵比須が高円寺の公民館で練習していた時に、高円寺百景が同じ日に練習してて感動しました。高円寺百景は高円寺で練習しているんですよ。
芽瑠:え。高円寺百景は高円寺のご当地アイドルなんですか?
一同:(大爆笑)
宮野:アイドルじゃないよ!!
芽瑠:日本にもいっぱいいるんですね。
楠芽瑠「高円寺百景は高円寺のご当地アイドルなんですか?」
髙木:新月とかカルメン・マキ&OZとかフライド・エッグとか美狂乱とか。聴いたことない?
キスエク一同:うーん。
髙木:ドイツはどうでしょう。
諸田:トリアンヴィラート。ドイツのELP。
髙木:そのまんまELP。
芽瑠:それ、ありなんですか。
髙木:なしでしょうね。このバンドは音はELPなんだけど、ELPと違ってビジュアルがついていけなかったんですよね。あまり人気が出なくて、確か1981年に解散してます。
芽瑠:見た目は大切ですね。アイドルに通ずるものがあります。
萌 :トリアンヴィラートはジャーマン・プログレですか?
髙木:トリアンヴィラートはドイツのプログレバンドだけど、「ジャーマン・プログレ」というのはまた別ジャンルかな。
萌 :国ごとの傾向とかあるんですか?
宮野:イタリアは弦楽器が入ったりして、曲がきっちりしてる印象がある。
髙木:アレアなんかだと地中海の音楽を取り込んでいるから、民族音楽のにおいがする。
宮野:民族音楽との結びつきはありそうですよね。
大嶋:日本の人間椅子や金属恵比須も“和”な感じはありますね。
宮野:妖怪的な要素もありますね。
萌 :人間椅子さん好きです。
髙木:僕も大好きです。好きすぎて、金属恵比須の現在のドラマーは元・人間椅子の後藤マスヒロなんです。
萌 :人間椅子はフェスでみて格好良かった。
髙木:格好良いよね。人間椅子もプログレ要素があります。
芽瑠:よくわからないかんじで盛り上がったところで、いったん休憩です。休憩後はキスエクの得意分野のマグマです!!
……さて、休憩中も「NAKED LOFT」はおいしい料理が食べられるので飽きが来ません。
後半戦は乾杯でスタート。(※キスエクメンバーはノンアルコールです!!)
【マグマ】
芽瑠:後半戦はフランスのマグマさんからです。マグマについては、私たち詳しいんじゃないの?
萌 :そんなフリしちゃうの?(笑)(といいながら、ハマタイ・マシーンを取り出す。ハマタイとはマグマの名曲「コンタルコス」の最初に聞けるシャウトのこと。ハマタイ・マシーンとはその「ハマタイ!」というシャウトが鳴る小型の玩具)
髙木:ハマタイ・マシーンはどこで手に入れたんですか?
萌 :ディスクユニオンのプログレッシブ・ロック館で手に入れました。私たちのリリースイベントの際にいただきました。
一色萌が手に持つ「ハマタイ・マシーン」
髙木:先日或る有名プログレマニアの方と飲んだ時に、ハマタイ・マシーンを使って、いろんな人の耳元で「ハマタイ」って鳴らしてた。
大嶋:プロハラですね!!
芽瑠:私たちがマグマさんのことを詳しくなったのは、公認で「The Last Seven Minutes」をカバーさせていただいてからです。
~会場には「The Last Seven Minutes」が流れ始める~
芽瑠:これがきっかけでマグマさんにFacebookで紹介されました。
髙木:それはすごいね!! しかし、マグマはFacebookやってるんだね。SNSのイメージないなぁ。
萌 :最初に大嶋さんから「この曲をカバーする」といわれた時に、芽瑠さんが「この曲なんですか?」ってビックリしてたのを覚えています。
芽瑠:この曲をカバーするとは思えなかった。この曲が送られてきたとき、怖すぎて1分で止めたもん。
一同:(笑)。
芽瑠:「これを、カバーしてください」って言われても、最初は何を言ってるのかわからなかった。
りん:最初は、コバイヤ語の原曲が送られてきたんです。
芽瑠:そうなんです。で、「これをカバー?」って思ったんです。
髙木:それはプロハラだね。
キスエク一同:本当に。
大嶋:でも、Facebook等で紹介されたおかげでライブ映像が1日2000回以上再生されてありがたかったです。
髙木:2月のワンマンライブで見させていただきました。あの曲で、すごい踊りを踊っていて、酸欠になるんじゃないかってビックリした。すごかったです。
キスエク一同:ありがとうございます!!
りん:振付をしてくださるAz+(アズプラス)さんも本家のマグマを研究してくださっています。
萌 :最近、NHKのヒャダインさんのラジオ番組「ガルポプ」でこの曲が褒められました。
芽瑠:「名があるアイドルがやったら大変なことだ」といわれました。すごいことをやっているんだと思いました。
宮野:相当すごいことだと思いますよ。
芽瑠:皆さんから、すごい反響をいただいたので、またカバーをやりたいんです。
大嶋:カバーはほかにもやりたいとは思っています。
髙木:何やるんですか。
大嶋:マグマだと予定調和的になってしまうから、他を考えています。
髙木:マグマじゃないのであれば金属恵比須が何かやりますよ。
キスエク一同:本当ですか?
髙木:い、いや。口約束だから。飲んでるから。覚えてないかもしれないけど……。
芽瑠:えー。写真撮影もされているし、取材も入っているので、証拠が残ってます!!(取材カメラマンに)写真撮っておいてください!!(※写真がどのように証拠になるかは定かでない……)
髙木:んー。じゃあ、アネクドテンとかどうかな?
一同:おぉ!!
芽瑠:反応良いですね。
萌 :どういう風に協力してもらえるんですか。
髙木:例えば、金属恵比須でバックトラック作るとか、ライブ一緒にやるとか。
大嶋:アネクドテンが良く使っている楽器のメロトロンは使っていただけるんですか?
髙木:金属恵比須のキーボーディストが本物のメロトロン持ってますので可能です。まぁ、なんか考えますか。
一同:(拍手)
髙木:まあ酔ってるから。酔っぱらいの発言だから……。
芽瑠:トークのこの場でこんなことが決まるなんて思っていませんでした。
髙木:バンドメンバーと相談せずに約束しちゃった……。
萌 :もう私たちその気になっちゃったんで。
髙木:もう一杯ビールください!!
宮野:飲むしかないですね!!
芽瑠:さて、ここでカバーが決まったところで。
髙木:き、決まってないよ。決まってない……。
芽瑠:次の話題はオマージュです。
【オマージュ】
芽瑠:次はプログレからのオマージュ作品について語りましょう。オマージュと言えば、キスエクには「えれFunと”女子”TALK〜笑う夜には象来る〜」という曲があります。メンバーは原曲聴きましたか?
りん:聴きました。名前も原曲そのままだし分かりやすいです。
萌 :「エレファント・トーク」という曲があるんですよね。
芽瑠:私は知ってるんですけど、知らない方のために一応曲をかけておきましょうか。
髙木:知ってると強気だね(笑)。
~会場に「エレファント・トーク」が流れ始める~
芽瑠:これですか?
萌 :そのまんまですね。
芽瑠:でも、「えれFunと”女子”TALK〜笑う夜には象来る〜」は原曲からだいぶアレンジはしてるよね。
りん:ライブで生演奏が入った時には本家に近づけていただきました。すごい格好良かった。
芽瑠:そうなんだ。ただただ、格好良いアレンジだと思っていた。そりゃ格好良いわけですね。本家ですもんね。あとは「progressive be-bop」もオマージュ入ってますね。
~会場には「progressive be-bop」が流れ始める~
萌 :原曲がELPさんの「ホウダウン」ですね。これはもっとそのまんまですね。
芽瑠:セカンドワンマンの時にSilent Of Nose Mischiefさんが生演奏してくださいましたよね。
諸田:イントロのモーグ・シンセサイザーの音が一緒ですね。
芽瑠:ライブではSilent Of Nose Mischiefさんがまず「ホウダウン」を演奏している間に、衣装替えをして、「progressive be-bop」が流れたら再登場っている段取りだったんですけど、曲が似すぎていて、再登場のタイミングが分からなかった。みんなで「どっちが流れてるの?」って(笑)。
大嶋:ELPの「悪の教典」や、キング・クリムゾンの「21st Century Schizoid Man」も入ってます。
髙木:これを初めて聴いた時にオルガンの音が原曲そのままでビックリしました。
大嶋:これは諸田さんから音を提供していただきました。
宮野:モーグ・シンセサイザーの音もそのままですごいですね。
諸田:プラグインで音を入れてます。
芽瑠:「ホウダウン」の中にも色々な曲が入ってますよね。
宮野:「オクラホマミキサー」ですね。
芽瑠:「ホウダウン」の原曲とかってあるんですか?
髙木:作曲家アーロン・コープランドの「ロデオ」の第4楽章ですね。クラシックをアレンジしたものですね。
芽瑠:それを私たちがまたアレンジしているんですね。
髙木:アレンジが連鎖してますね。
~会場には宮野のリクエストで「ロデオ」の第4楽章が流れる~
萌 :そういえば、日経新聞のコラムでプログレの連載始まりましたね。
髙木:難波弘之さんの「プログレの軌跡」全四回ですね。ビックリした。
萌 :新聞読んでいたら「あ、プログレだ」ってなって(笑)。
髙木:プログレが日経新聞で連載ということは、とうとうプログレもメインストリームですね。
りん:今流れている「ロデオ」は先日テレビ番組の「題名のない音楽会」でクラッシックの演奏で流れているのを見ました。
髙木:「ロデオ」は、言うなればディズニー音楽っぽいんです。
芽瑠:そう聴こえますね。
大嶋:エレクトリカル・パレードの曲もそうですね。
宮野:「バロック・ホウダウン」という曲ですね。
芽瑠:ディズニーといえば、「トゥモローランド」で流れている曲がプログレっぽいという話を聞いたことがあるんですけど。
髙木:ディズニーランドで流れる曲は、映画やミュージカルのサウンド・トラックの要素があると思う。プログレもそういうところから影響を受けているんじゃないですかね。
萌 :ディズニー好きなめるたんがプログレをやっているのは意味があるのかもしれないね。
りん:めるたんに聴いてほしい曲があって。長いんですけど。ELPの「恐怖の頭脳改革」はとてもディズニーっぽいんです!!
芽瑠:それは、アルバム?
りん:アルバム。1時間くらいの。
芽瑠:い、1時間……。
会場:(笑)
~会場には「恐怖の頭脳改革」より「悪の教典#9 第1印象 パート2」が流れる。ちなみにこのイベント・シリーズのタイトルも「THE 頭脳改革」ではあるのだが……~
芽瑠:いい感じですね。
髙木:ELPは5大バンドの中でも、割と明るい曲が多いですね。
芽瑠:確かに、ディスニーっぽいですね!!
髙木:新しい視点ですね。プログレを「ディズニーっぽいか」「ディズニーっぽくないか」で分けるなんて。
芽瑠:私はそれで、聴くかどうか判断してみようかな。プログレじゃなくて、ディズニーっぽい音楽ってことならいけるかも!!
髙木:それはいいかもしれないね。って、プログレに拒否反応示してる証拠だよね!!
会場:(爆笑)
宮野:ELPはロックなファンタジーですね。
芽瑠:この曲で歌っている人はプログレっぽいですね。
髙木:キング・クリムゾンにもいた、グレッグ・レイクですね。
大嶋:諸田さんは、キスエクのライブでこの曲を演奏してますよね。
諸田:ライブではオマージュではなくこのまま演奏してます(笑)。
大嶋:オマージュと言えば、キスエクのセカンドワンマンの際に、アレンジを担当したコジマミノリさんから諸田さんに無茶ぶりがあったって聞いてますけど。
諸田:その時にコジマさんから色々ネタをもらったので、今日ここで発表します。
~「悪魔の子守唄」「えれFunと”女子”TALK〜笑う夜には象来る~」「キグルミ惑星」「週末幻想曲」「革命」「鬱」アニメ「はなまる幼稚園」のエンディング・テーマ等が流れる~
作曲家のコジマミノリが手掛けた、これらの曲のネタ晴らしを諸田が披露していく。有名バンドからのオマージュや、オーケストラ・ヒット(「ジャン!!」というサンプリング音源でプログレではYESの「ロンリー・ハート」での使用が有名)の使い方。没ネタまでも披露。難解な曲をサラッとアイドルの曲に組み込む最高にクオリティの高い仕事が披露され、会場全体が関心しきり。
さらに、諸田からゲーム音楽の作曲家にはプログレ好きが多いことから、ゲーム音楽の分析が披露される。プログレのストーリー性の高さが、ゲーム音楽とマッチするという分析。特に「タルカス」については、多くのゲームに影響を与えていることが判明した。題して「タルカスの系譜」皆さんも聴いてみてほしい。
~「クロノトリガー」「フロントミッション」「ブシドーブレード弐」「ファイナルファンタジーVI」等の音楽が流れる~
また、マイク・オールドフィールド「チューブラー・ベルズ」が影響を与えたホラー映画が紹介される。
~「エクソシスト」「サスペリア」「金田一少年の事件簿」「トリック」等の音楽が流れる~
諸田:色々ありましたけど、実は私たちが普段の生活の中で、プログレに触れているということを紹介させていただきました。
会場:(拍手)
宮野:深い考察でしたねぇ。
萌 :「チューブラー・ベルズ」を聴いて、映画「着信アリ」の音楽を個人的には思い出しました。
~「着信アリ」の音楽が流れ始める~
一同:あ~。分かる、分かる。
宮野:楽器の音色は人間の間隔と結びつくと思うから、恐怖を感じさせる音ってあると思う。和音で言うとディミニッシュというコードが使われているとかあるかもしれません。
大嶋:宮野さんにはキスエクの「Time and tide wait for no man」という曲を作曲していただきましたが、その曲について解説していただけますか。
~会場には「Time and tide wait for no man」が流れ始める~
宮野:元々、プログレ好きだったので、プログレアイドルがいるっていうことに、いち早く気付きまして。「曲書きたい!!」って思っていた時に、大嶋さんと出会ったんです。
大嶋:「Time and tide wait for no man」は70年代、80年代の曲の感じを取り入れつつ、ちゃんと現代っぽくアレンジされていてすごいんですよ。
宮野:大嶋さんと、僕のプログレ感が少しズレているのが良いのかもしれません。「Time and tide wait for no man」はYESを意識しています。ベースは特にベーシストのクリス・スクワイア(故人)を強く意識していて、彼が使っていたリッケンバッカーという楽器を友人に借りました。ギターは父の所有するギターがYESのギタリストのスティーブ・ハウに似た音が出るのでそれを借りました。音のディテールにこだわって作りこみました。オーケストラ・ヒットも使ってます。バンドが何の楽器をどうやって使ってるか徹底的に調べるのが好きなんです。
~会場にはYESの「シベリアン・カートゥル」が流れる~
萌 :最初に「Time and tide wait for no man」のデモ音源いただいた時に「YESっぽい」って思いました。
芽瑠:みんな大嶋さんと盛り上がっていましたよね。でも、私は入れなかった。
一同:(笑)
萌 :YESは聴きこんでいたわけではないけど「ラウンドアバウト」は好きだったから、そう思ったのかもしれない。
宮野:エイジアからも影響を受けています。ベースが同じ音で上のメロディが変わっていくところとか。
髙木:そうやって「孤独なサヴァイヴァー」みたいなことをやると誰でもプログレができます。
諸田:誰でもプログレ(笑)。
宮野:歌詞のイメージを聞いた時に「時間」の話が出てきて、プログレは時間をモチーフに使うこともあるので今回も時間をモチーフにしてみました。
髙木:(キスエクメンバーを見て)話が難しいからって、半分聞いてないでしょ。
キスエク一同:聞いてますよ!!
芽瑠:次はお客さんからの質問コーナーに行きましょう。
【お客さんからの質問コーナー】
「キスエクのファーストワンマンライブで『The Last Seven Minutes』を二回やっていましたが、誰の判断ですか?どんなやり取りがあったんですか?」
芽瑠:あれはその場で決まったんだよね。
萌 :私が芽瑠さんに、「もう一回やりたくないですか?」って声をかけたんだよね。
芽瑠:本当はアンコールは別の曲をやる段取りだったんです。急遽私たちの判断だけで決めたことをプロデューサーの大嶋さんが表にいて知らなかったので、急いでステージ上から伝えたらOKもらえたんです。
萌 :リハーサルもきちっとできたのに、本番がちょっと納得できない出来だったんです。
芽瑠:リハーサルで失敗したことのない部分を初めて本番で失敗したんだよね。
萌 :「これじゃ、終われない!!」って思ったんです。あのライブは「The Last Seven Minutes」を楽しみにして来ていたお客さんが沢山いたから。「これじゃ、終われない」って思った。
りん:出来はみんな納得できてなくて、話題性のある曲を失敗して「キスエクってこんなもんか」って思われたら嫌だなって思ったんです。
芽瑠:そういうやり取りがあっての、急遽の2回目でした。
かなりアツい話に多弁を極めたゲスト3人も黙して話を聞き入る展開!!
芽瑠:では、次に行きましょう。
「キスエクと金属恵比須のツーマンはいつやるんですか?」
髙木:決まってないから!! もう、ビール3杯目だから!!
一同:(笑)
萌 :コラボも決まったことだし、今決めちゃいましょう!!
髙木:2019年の3月くらいにやりましょう。……って酔ってるから約束にならないよ!!
会場:(拍手)
「プログレ曲の振付をつける時のエピソードを知りたい」
芽瑠:プログレの曲に仮歌入れた段階では、「どうやって振付をやるんだろう」ってメンバー全員が毎回思っていると思うんですが、ダンスの先生のAz+さんが毎回考えてくださって。「この曲がこういう振付になるんだ!!」って思えると、作品として出来上がった感じがする。けど、最近は結構難易度が上がっているよね。
萌 :「Time and tide wait for no man」は滅茶苦茶難しい。
芽瑠:曲も難しいし、振付も難しいの。
りん:フォーメーションも前とは比べ物にならないくらい難しくなってる。
芽瑠:足の使い方とか、ターンの仕方とか、手の振りとか複雑な動きが入ってくるから、ここ最近では一番みんな苦労した曲だと思います。
萌 :だんだん難しくなってる。「The Last Seven Minutes」も「キグルミ惑星」もその時は難しいと思った。
芽瑠:基本的に1曲が長いから、「振り入れ」が大体1回2時間なんですが、教わるの必死だよね。
りん:他のアイドルさんは3~4分の曲で、割とお客さんと一緒にできる振付が多いから、キスエクは難しいと思う。
芽瑠:先生にも「3分経ったから、ここで半分だね」って言われると「まだ、半分!!」って思う。
萌 :「あと、1分だから頑張って」とか言われる。
髙木:苦行ですね。
宮野:苦行だとしたら達成した時のカタルシスが大きいんですよ。
キスエク一同:そうですね!! 達成感ある!!
「ライブ、演奏前のルーチンやジンクスはありますか」
芽瑠:ゲストの皆さんは何かありますか?
髙木:首の運動をします。この歳でライブをやると首が筋肉痛になる。
諸田:指を30分くらいは動かします。準備運動として。
宮野:ぴょんぴょん跳びます。
りん:あ~。ぴょんぴょん跳ぶの分かります、分かります。
芽瑠:キスエクは円陣を組んで「キスエクいくぞ!」っていう掛け声をやりますね。あとは各自それぞれですね。ストレッチとかやります。ただ、りんりんは急にボイストレーニングを本気でやり始めるんです。
りん:(笑)
萌 :いつも突然始めるよね。
りん:キーが高いけど、地声で出さないと声が届かないところが難しいからそこを練習してます。
【イベントの感想】
芽瑠:最後に皆さん一言ずつ感想をお願いします。
宮野:滅茶苦茶楽しかったです。シリーズ化しましょう!!
会場:(拍手)
大嶋:本日判明したんですけど、私とゲストの皆さんが同じ沿線沿いに住んでることが分かりましたので打ち合わせをしましょう。
宮野:プログレ路線ですね!! いや、今日は僕も勉強になりました。色んな楽しみ方ができるのがプログレだっていう再発見がありました。
諸田:僕も今日は勉強になりました。プログレの可能性は無限だと思いました。今後も面白い曲が生まれると良いなと思いました。
髙木:僕は口約束しすぎちゃったな……。
一同:(大笑)
髙木:帰って、今日のことをバンドメンバーに相談します……(と言って、ビールを飲み干す)。
まお:私もとても勉強になりました。プログレはまだまだ全然知らないので、寝る前に聴いてみます!!
萌 :諸田さんから、コジマさんの作曲秘話とか聞けたのが嬉しかったし、髙木さんと口約束できたのも「イエイ」って感じだし、フィロソフィーのダンスがとても好きなので、宮野さんとトークでもご一緒できて嬉しかったです。
りん:「1日1プログレチャレンジ」をまた続けてみようかなと思いました。
芽瑠:私はとりあえずプログレを「ディズニーっぽい」か「ディズニーっぽくないか」で聴き始めてみようかなって思いました。
一同:(爆笑)。
髙木:ざっくりしすぎでしょ!!
芽瑠:ディズニーっぽいプログレ曲があったら教えてください(笑)。
【各々の告知】
髙木:「武田家滅亡」というアルバムを出します。「武田家滅亡」は、元々は歴史小説家の伊東潤先生の小説です。伊東先生とのコラボとなりました。小説とCDのセット販売という、おそらく史上初の試みをします。今年の8月29日に発売です。今日は少しだけ曲を流します。
~会場には「武田家滅亡」が流れ始める~
髙木:歌詞は伊東先生の作詞で、歴史用語満載です。でも、サビは分かりやすくしています。
りん:音単価安いですね(笑)。
髙木:そうですね(笑)。結構文字数多いからね。ライブもやります。キスエクさんもリツイートしてよ。口約束したからね。関係ないけど、ライブ告知してね。
諸田:Silent Of Nose Mischiefで7月22日に小岩のライブハウスのオルフェウスでメタル系のイベントをやります。プログレ・メタルな曲もやります。
宮野:僕は告知はないんですがTwitterのフォロワーが増えるとうれしいなぁ。
一同:(笑)。
芽瑠:キスエクは新宿MARZさんで7月1日に楠芽瑠 生誕ライブを行います。この日は生バンドとゲストの皆さんと私のコラボを予定してます。今年も素敵なTシャツを作ってもらえます。ぜひ来てください!!
キスエク一同:今日はどうもありがとうございました!!
大団円。

トーク内容は以上である。いかがだっただろうか。「長いよ!!」という感想には「これがプログレ(ハラスメント)です」という答えになってしまうが、イベントの雰囲気は、少しは伝わったと思う。
最後に参加したメンバーの印象について触れておこう。ゲストの髙木大地は、今最も勢いのあるプログレバンドのリーダーらしく膨大なプログレ知識を余すことなく披露し場を盛り上げた(再現レポートなので、口約束の件も掲載させていただいたことについてはご容赦願いたい)。宮野弦士は「質の高い音楽を作るクールな作曲家」というイメージがあったが、プログレについて、熱く、優しく語るその姿に心を奪われた人は多かったと思う。諸田英慈はその深い分析により、我々の気付いていないプログレの影響力や魅力を再発見させた。
キスエクメンバーはそれぞれ違った魅力を見せた。リーダーの楠芽瑠は抜群の司会能力を発揮。難解なテーマにもかかわらず盛り上がった要因は、この司会能力が大きい。プログレとの正直な距離感も場を沸かせた。小日向まおは、トークでの発言回数は少なかったが、イベント終了後に誰よりも大きな声を出しファンサービスを行っており、その場が幸せな空気に包まれていた。優れたミュージシャンは一声で場の空気を制圧する。そんな声を小日向まおは持っている。一色萌は多方面への博識ぶりが披露された。プログレのみならず、他の音楽やアニメ、映画等の情報を投げ込み、トークの幅を広げていた。小嶋りんは努力の人である。「1日1プログレ・チャレンジ」の成果は存分に発揮されていた。歌や踊りでも、最大限に努力をしていることが垣間見られ、ファンとしては応援しがいのあるアイドルであることが分かる。
今回のイベントでプログレの魅力が再発見された。本日の主役であるキスエクは、話題にのぼった「The Last Seven Minutes」をはじめとして、さまざまなリリースやイベントが控えているのでしばらくは目が離せそうにない(下記情報欄参照)。かくして今後もキスエクが日本のプログレを高い位置に連れて行ってくれることを大いに予感しつつ、筆を擱くこととしたい(しかし、今回のレポートは一字当たりの単価が安いなぁ)。
終演後、キスエク、高木大地、諸田英慈(※宮野弦士氏は諸用のため先に戻られました)
取材・文=深見ススム  写真撮影=安藤光夫(SPICE)

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