「臼井孝のヒット曲探検隊
~アーティスト別 ベストヒット20」
国民的アーティスト、
宇多田ヒカルのヒットを探る

タイトル通り華やかな色調を楽しめる
「COLORS」が総合10位

総合10位は2003年の12thシングル「COLORS」。TOYOTAのCMソングを存分に意識したスピード感のある曲調や歌詞に加え、タイトル通り青、白、赤、黒、オレンジと様々な色を登場させてタイアップを離れても華やかな色調を楽しめる楽曲で、CDセールスでは約89万枚、年間3位となる大ヒットとなった。

この翌年以降、04年~06年あたりダークでシリアスな楽曲が多くなっていくのもあって、尚更に本作がカラフルに思えてくる(なお、2016年のアルバム『Fantome』は、そうしたシリアスな曲が増えたことがアルバムの幅を広げているので、結果的にとても有意義な時間だったと言えよう)。

受け手や送り手の音楽を愛する力を受け
“最高の音楽”に挑む宇多田ヒカル

ここまで10曲について語ってきたわけだが、10曲ではまったく語り切れないことこそ、彼女の楽曲面の魅力が満ちあふれているという何よりの証拠だろう。

そもそも宇多田ヒカルが売れ続けるのは、タレント自身よりも楽曲そのものが好きなリスナーや、そういったリスナーとアーティストの関係性を応援するWebやラジオ局、音楽専門チャンネルなどのメディアやCDショップが、“音楽の良心”を信じて、彼女を支援し続けていることも大きいのではと強く感じている。

現に、これだけヒットを飛ばしているにもかかわらず『日本レコード大賞』でのノミネートはほとんどない代わりに、『MTV JAPAN』の音楽ビデオ賞やCD店員が選ぶ『CDショップ大賞』は何度も入賞や最優秀賞を受賞している。それは、宇多田ヒカルが常に安心できる最高の音楽を届けてくれる、また彼女自身も常にそれに挑み続けるという信頼関係ができているからではないだろうか。

2018年、彼女はおよそ12年ぶりとなる全国ツアーが予定されているが、それに先だって1月に男性アーティストの小袋成彬(おぶくろ・なりあき)のプロデュースを手掛けソロシンガーとしてデビューさせている。
実際に聴いてみると、00年当時の平井堅を想起させるほど繊細なボーカルで(というか、平井堅がブレイクしたのは、宇多田ヒカルが成熟させた女性R&Bのマーケットから男性R&B路線をより意識したことが大きいので、この“想起”はある意味自然)、男性ソロ・アーティストのシーンに大きな影響力をもたらしそうだ。そして、このことによって、宇多田自身の作風も更にステップアップするような気がする。

今後も受け手や送り手に音楽を愛する力がある限り、宇多田ヒカルの音楽は記録に、そして記憶に刻み続けると信じている。

プロフィール
臼井 孝(うすい・たかし)
1968年京都府出身。地元国立大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽系広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のマーケティングに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽市場の分析やau MUSIC Storeでの選曲、さらにCD企画(松崎しげる『愛のメモリー』メガ盛りシングルや、演歌歌手によるJ-POPカバーシリーズ『エンカのチカラ』)をする傍ら、共同通信、月刊タレントパワーランキングでも愛と情熱に満ちた連載を執筆。Twitterは @t2umusic、CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、カラオケ、ビルボード、各番組で紹介された独自ランキングなどなど、様々なヒット情報を分析してお伝えしています。気軽にフォローしてください♪

OKMusic編集部

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