【水樹奈々 インタビュー】
ヴォーカリストとしての変化を
如実に感じるベスト盤
ひとつひとつの内容を濃くして
2018年は活動をより楽しんでいきたい
そんな本作にはアニメ『バジリスク〜桜花忍法帖』のEDテーマ「HOT BLOOD」と「粋恋」という2曲の新曲も収録されていて。このアニメは13年前に水樹さんが声優として出演したアニメ『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』の続編で、その時もご自身の作詞による「WILD EYES」と「ヒメムラサキ」という、動と静の2タイプの曲を発表していましたね。
和をモチーフにした曲を作詞したのはその時が初めてで、当時もかなりハードルが高かったのですが…。学生時代は国語が好きで、百人一首クラブに所属していたほど和の世界好きだったので、それを活かして自分なりに世界観を落とし込みたいと、死にものぐるいで書いた覚えがありますね。
当時は本屋さんで本を集めて調べたそうですね。
まだガラケーの時代でしたし、今のように簡単にいろいろ調べることもできなくて(笑)。でも、改めて思うのは、本にはネットより深くてマニアックで専門的なことがたくさん書いてあるということ。今回も当時の本を引っ張り出して読んだり、新たに和歌集や百人一首を読んで勉強して、こういう表現があるのか!といろいろな言葉を学びました。結果、やっぱり自分はアナログ人間だなぁと実感した次第です(笑)。
しかし、1度作詞して昇華した作品のシリーズで、また作詞するというのは大変な作業ですよね。
1度自分の中では命を遂げた作品だったので、散った魂をこの世にまた引き戻すようで大変でした(笑)。『甲賀忍法帖』で私が演じた朧(おぼろ)というキャラクターは、その時に死んだと思っていたのですが、実は生きていて子孫を残していた…その子供たちが『桜花忍法帖』の主人公となるのですが、自分の娘や息子をどういう気持ちで見つめるのか想像して、気持ちをリセットして取り組みました。
思い入れのある作品の続編ということで、今回はどのようなことを意識して作詞されたのですか?
前作の意志を継ぎつつ、新しい要素も取り入れたいと、曲選びからとても時間をかけました。「HOT BLOOD」はキメが多く独特のメロディーラインなので、そこに心地良くはまりながら、背景や心情がしっかり伝わるものを…言葉選びもとても大変でした。作品への思い入れが強い分、自分自身で難易度を上げてしまっていた部分もあったと思いますが、3週間くらい唸りながら書いていました(笑)。
“HOT BLOOD”というタイトルはどういったイメージで付けたのですか?
血が滾るという意味と、『桜花忍法帖』の主人公が『甲賀忍法帖』の主人公の弦之介と朧の血を受け継いだふたりであることや、伊賀と甲賀の忍者の血筋、ことの発端である徳川家の中でも世継ぎ争いがあるということで、血脈をイメージして付けました。
サウンド面では以前の「WILD EYES」と「ヒメムラサキ」は和の感じではありませんでしたが、今回は和が全面に押し出された音になっていますね。
そうなんです。前作はどちらもバンドサウンドで構成していて和楽器を一切使っていません。今回は印象をガラリと変えたくて、逆に和楽器をふんだんに使う方向に振り切りました。例えば『桜花忍法帖』は最初から戦闘シーンが激しく、あらゆる忍術を使う忍者が入れ替わり立ち替わり登場します。そういったシーンをイメージして尺八や三味線、琴といった和楽器が、次から次へと登場するアレンジになっています。「WILD EYES」と「ヒメムラサキ」以降、「純潔パラドックス」や「悦楽カメリア」といった和モチーフの楽曲を制作する機会が増え、それらとも一線を画したものにしたいと、曲選びは悩みに悩みます。最初のデモ会議から数えると約1年がかりの制作になりました。
「HOT BLOOD」は熱く情熱的ですが、水樹さんのこれまでの曲でイメージする激しさとは少し違うと思いました。もう少しどっしりとしていて力強さに重きを置いている印象でした。
そうですね。『桜花忍法帖』の世界観を読み込んだ時に、トリッキーでテンポが速い曲ではなく、胸にズシンとくる大人の和ロックにしたいと思いました。これから敵陣に乗り込むという時の緊張感とふつふつと沸き上がるような熱さ、徐々に心拍数が上がっていくような感覚。感情的に動くのではなく、あくまでも冷静に。それが“忍び”というものじゃないかと。忍者は自分の感情を押し殺して、冷静に任務を遂行するものなので。
そして、もう1曲の「粋恋」は和のロックバラードで。
この曲は柔らかく、やさしく歌うということよりも、一本一本杭を打ち付けるように、言葉を相手に打ち込むようなイメージで歌いました。曲自体は儚さもあって女性的ですが、内側にとてつもない強さを感じたんです。切羽詰まった感情が今にも弾けそうで、でも弾けないギリギリのところで踏ん張っている…その感情を表現するために、何度も録っては聴いて、これだ!という歌唱法を追求しました。
聴くととてもスッと真っ直ぐ心に入ってきますが、歌うのは大変そうですね。
すごく体力を使います。「HOT BLOOD」よりも「粋恋」のほうが数倍難しいです(笑)。音圧を維持したまま堪える表現をするには繊細なコントロールが必要で腹筋がプルプル(笑)。一気に放出できないもどかしさを表現するためには集中力も必要なので、とにかく心身ともにエネルギーを使います。
そこまでしないとこの曲の持つ儚さや切なさ、ドラマは表現できないわけですね。あと、曲の頭と最後にフェイクが入っているのは新鮮でした。
この曲はデモの段階からフェイクが入っていて。それがとても素敵だったので、チャレンジさせていただきました。
「粋恋」ではMVも撮ったそうですが。
モダンジャポネスクを表現した、とても斬新なものになりました! 血や運命の赤い糸をイメージした赤色だけを印象的に見せるため、赤以外は全てモノクロの映像になっているんです。私はあえて洋装で、白塗りにした男女のコンテンポラリーダンサーさんが神秘的に踊る洗練された世界観がミュージアムととてもシンクロしていて。ぜひ、新しくて大人な水樹を観てほしいです!
2017年はミュージカル出演もあり、新しい挑戦がたくさんありました。このベスト盤のリリースと日本武道館7デイズで始まる2018年はどんなふうに考えていますか?
2017年は声優デビュー20周年という節目の年で、『ZIPANGU』ツアーに始まり出雲大社でのライヴ、そしてナナの月にはシングルの2枚同時リリース、初めてのミュージカル出演と、とても濃厚な時間を過ごさせていただきました。この一年に得たことは本当にたくさんあります。2018年はその学びを活かし、発展させて、ひとつひとつの内容を濃くして活動をより楽しんでいきたいです。特にここ2年は夏ツアーがなかったので、久しぶりに夏に全国を駆け巡って、“成長したね!”と言っていただけるようなパフォーマンスを目指したいです!
取材:榑林史章
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アルバム『THE MUSEUM Ⅲ』2018年1月10日発売
KING RECORDS
- 【CD+Blu-ray盤】
- KIZC-437〜8 ¥3,500(税抜)
- ※初回生産盤特典:スペシャルフォトブック仕様+特製BOX仕様
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- ※初回生産盤特典:スペシャルフォトブック
- 仕様+特製BOX仕様
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『NANA MIZUKI LIVE GATE 2018』
Day1:1/11(木) 東京・日本武道館
Day2:1/13(土) 東京・日本武道館
Day3:1/14(日) 東京・日本武道館
Day4:1/16(火) 東京・日本武道館
Day5:1/18(木) 東京・日本武道館
Day6:1/20(土) 東京・日本武道館
Day7:1/21(日) 東京・日本武道館
ミズキナナ:声優、歌手として高い人気を誇る。声優としてのデビュー作は1997年のプレイステーション用ゲーム『NOёL〜La neige〜』門倉千紗都役。歌手としては2000年12月にシングル「想い」でデビュー。09年6月に発売された7枚目のオリジナルアルバム『ULTIMATE DIAMOND』で声優として初のオリコンチャート1位を獲得し、11年12月と16年4月には東京ドーム2デイズライヴも大成功に収めた。水樹奈々 オフィシャルHP
アルバム『THE MUSEUM Ⅲ』
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