【インタビュー】エルヴェンキング、
原点回帰から更にエピックなものへ

イタリアのペイガン/フォーク・メタラー:エルヴェンキングが、2014年作『THE PAGAN MANIFESTO』に続くニュー・アルバム『SECRETS OF THE MAGICK GRIMOIRE』をリリースした。
この作品はオリジナル・スタジオ・アルバムとしては通算9枚目で、ドラマーを交代しての第1弾作となる。見事に原点回帰を果たした『THE PAGAN MANIFESTO』の路線を引き継ぎながらも、フォーキーなパートはよりフォーキーに、メロディアスなパートはよりメロディアスに、アグレッシブなパートはよりアグレッシブに、そして壮大なるオーケストレーションを随所に配し、さらなる飛躍と進化を見せている。今や唯一のオリジナル・メンバーとなったギタリストのエイダンに、『SECRETS OF THE MAGICK GRIMOIRE』をたっぷりと語ってもらった。
──2016年秋に初来日公演が行なわれましたが、振り返ってみていかがでしたか?
エイダン:素晴らしい体験だったよ。俺達みんな、日本に行くのはあの時が初めてでさ、バンドとしてだけでなく個人的に誰も行ったことがなかったんだ。だから音楽的にも、また文化的な面でも、本当にあらゆる面で信じられないほど良い経験をさせてもらった。日本はとても魅力的な国だ。みんなとても親切にしてくれたし、俺達が慣れ親しんでいる(イタリア/ヨーロッパの)文化とはかなり違っている。ライブでのオーディエンスの反応も最高だったよ。日本にエルヴェンキングのファンがどれぐらいいるのかどうかさえ知らなかったのに、ライブに来てくれたみんなは俺達のショウを大いに楽しんでくれたようだった。ファンと交流したり、話したりする機会もたくさんあって、その度に驚かされたし、みんな俺達の音楽の真価を認めてくれているということが分かって嬉しかったな。日本では大阪・名古屋・東京でライブを行ない、それぞれの都市で違う印象を持ったんだけど、どこも素晴らしかったよ。特に東京に滞在したのは未知の体験となった。東京の街はとても素敵で、すっかり魅了されてしまった。都市から都市へ移動するために新幹線に乗って窓から美しい日本を眺めたのも、生涯心に残る体験となったね。
──来日公演の後はどんな国を誰とツアーしましたか?
エイダン:ヨーロッパではサポート・バンドを連れてヘッドライナーとしてツアーしたし、ENSIFERUMと一緒に中南米でも数日間ツアーを行なった。どっちも素晴らしかったけど、後者では、メキシコ/アルゼンチン/ブラジルを廻り、これらの国々はヨーロッパとも日本ともまた違う文化を持っていたから凄くいい経験になった。そうやってて世界中を旅することができるのは、本当に素晴らしい。文化の違いや音楽に対する在り方の違いを知ることもできるからね。色々な国でファンと会うと、みんな俺達の音楽を高く評価してくれているようだけど、音楽に対する反応や俺達との接し方が国ごとにそれぞれ異なっているのも、実に興味深いことだと思う。
──長いツアーは行なっていないようですね。
エイダン:俺達は何ヵ月もツアーを続けるのが好きじゃないんだ。ツアー・バスにずっと缶詰になったりするだろ?だから、大きなフェスティバルに出演するようにしたりして、ショーの回数が適切になるよう心掛けているんだ。年に300回もライブをやるようなことは避けたいから、適正な回数でショーを行なえるようツアーをしたい国を選んでいる。より賢いやり方…というか、適切な時に適切な状態でツアーすることができるようにしているのさ。だから、これまでに訪れたことがない国へ行くというのが、バンドとしての俺達の指針と言えるかな。
──今年に入ってドラマーがチェンジしましたが、サイモンはどうして脱退したのでしょう?
エイダン:サイモンは、俺がこれまでに出会った中でも最高のドラマーのひとりだと言える。きっと、イタリアはもちろんのこと、ヨーロッパでも屈指のドラマーと言えるんじゃないかな。ただ、彼は自分の技を見せることに一生懸命になることが多くて…。俺達はバンドをひとつのマシンとして捉えている。つまり、メンバーはみんなそのマシンの一部であり、それぞれが役割を持っているんだから、自分の力をことさらに誇示したり個人技に走ってしまうことなく、ちゃんとバンドとして機能するよう、みんなで共通の目的を持たなきゃならない。だから、俺達がやっている音楽にもっと興味を持ってくれるドラマーを探すことにしたんだ。自分のドラミングのためにスペースを設けたりすることなく、シンプルなプレイを心掛けてくれるドラマーを見つけようと、ね。そして、新しいドラマーとしてランクスを見つけたんだけど、彼は人間的にも素晴らしいし、当然ドラマーとしても最高だ。単にそれだけじゃなく、このバンドの音楽によりフィットしたプレイができることが重要なんだよ。
──新作『SECRETS OF THE MAGICK GRIMOIRE』の曲作りを始めたのはいつですか?
エイダン:全行程に要した期間は1年ぐらいだったと思う。前作『PAGAN MANIFESTO』(2014)からは、ほぼ3年半も空いてしまったけど、これはこれまでのキャリアの中でも最長だ。『PAGAN MANIFESTO』で俺達はこれぞという“自分達のサウンド”を遂に見つけ、決定的なアルバムという境地に達することができた。ファンやプレス・評論家などからのウケも凄く良かったしね。でも、それで新しいアルバムの曲作りに取り組むのがちょっと怖くなってしまったんだ。まだ新作の曲作りをする準備はできていない…と、ずっと感じていたのさ。ただ、そうこうしているうちに、そろそろ新曲を書いて様子を見ても大丈夫なんじゃないか…と思えるようになり、実際に1~2曲書いてみたら自信が持てるようになった。自分達が正しい方向に進んでいると、ようやく感じられるようになったんだよ。そうして、それから1年ほど曲作りやデモ制作といったプリ・プロダクションを行ない、その一方でどんどん新曲を書いては、それらの曲がアルバムに収録するに相応しいできかどうかを検討し、場合によっては書き直したりもしていた。当時は、自分達の作品に関して、何というか…とても自己批判的になっていてね。俺達が作りたかったのは、単に聴きやすい曲が入った標準的なアルバムではなく、もっと壮大でエピックなモノだったんだ。だから新作は、1~2回聴いただけですぐに気に入ってもらえるような、聴きやすいアルバムではないかもしれない。聴いたらすぐに好きになるようなシングルも入っていないしね。このアルバムを完全に把握するには、少なくとも4~5回は聴かなきゃいけないだろう。要は、それだけ内容が深く混み入っていて、理解するのに時間が掛かる類のアルバムなんだ。ただその代わり、すぐに飽きられたりはしないので、ある意味で息の長いアルバムになるんじゃないかな。
──曲作りの時点でアルバムの方向性やサウンドの傾向は見えていましたか?それとも特に計画せずただ曲をどんどん書いていっただけでしょうか。
エイダン:今回、このバンドで初めて計画を立てたよ。これまでのアルバムを振り返って見ると、たとえ前作がとてもウマくいったとしても、次のアルバムはそれとは違うものにするべく、アルバム制作のたびに毎回違うモノを目指してきた。ビジネス的な観点から見れば最悪かもしれない(笑)。せっかくファンに好評を博したアルバムがあっても、次に作るのは全く違うモノになるから、常にファンは驚いてばかりだ。でも、『THE PAGAN MANIFESTO』はあまりに出来が良かったから、初めて「次もこの路線に沿ったアルバムを作る必要がある」と思った。要するに、今回はそれが“当初の計画”だったんだね。ただ結局のところ、そうはいかなかった。このアルバムは前作の延長線上にあるとは言いつつも、やっぱりちょっと違っていて、もう少しダークなフィーリングが込められているし不可思議で不気味だったりもして、より壮大でエピックな仕上がりになっているからね。俺達は単に自らをコピーすることなんてできなかったし、きっとそうしたくなかったんだろうな。そんなワケで、今回のアルバムは、より不気味で謎めいていて、とてもディープで興味深い仕上がりになっている。
──前作『THE PAGAN MANIFESTO』については、以前“原点回帰したアルバム”と言っていましたが、その“原点”を意識したということは?
エイダン:ここ数作を手掛ける中で、俺は個人的にちょっと“道に迷ってしまった”と感じるようになっていた。音楽的な実験を色々とやっていく中で、当初からのコンセプトや本来の音楽的ルーツ、独特な歌詞世界、ビジュアル・コンセプトなどを見失ったような気がしてね。アルバム毎にサウンドを変化させていった結果、何枚もそういうことをやっていると、時の経過と共に、ファースト・アルバム(2001年『HEATHENREEL』)にあった自分達独自のやり方が失われてしまっていたんだよ。だから、夢を抱いてバンドを結成した当初のサウンドや、このバンド独自のコンセプトを取り戻したいと思い、『THE PAGAN MANIFESTO』で原点やルーツに立ち戻り、その手のサウンドを再構築したというわけだ。実際のところ、新作『SECRETS OF THE MAGICK GRIMOIRE』は『THE PAGAN MANIFESTO』の延長線上にありながら、より壮大でエピックになった。つまり新作は、『THE PAGAN MANIFESTO』で取り戻した“原点”をさらに高いレベルへと押し上げ、よりエクストリームな仕上がりになっているんだと思う。
──『SECRETS OF THE MAGICK GRIMOIRE』はコンセプト・アルバムですか?魔術や魔法がテーマなのでしょうか?
エイダン:一貫したストーリーがある本格的なコンセプト・アルバムではないけど、どの曲も互いに関係し合っていて、それぞれにつながりがある。“grimoire”とは黒魔術の手引き書のことだ。そこには、魔法の呪文や民間伝承について書かれてある。だから、収録曲はそれぞれその手の書物の1ページを意味しているんだよ。ひとつの物語が綴られているワケではないものの、個々の楽曲には共通のテーマがあり、どれもつながっているからね。
──レコーディングには、シモーネの他にもイヴァン・モニ・ビディンやクリストフェル・ブレッリが関わっていて、ヴァイオリンやコーラスの録りは後者2人が担当し、ボーカル録りはあなたが行なったようですね。パートごとにスタジオやエンジニアを変えて作業を行なった理由は?
エイダン:それぞれ最適な時期に作業を行ないたかったから。特にボーカルに関しては、1週間スタジオを借りて一気に全て録るなんてことはしたくなかった。ボーカルをレコーディングするには、ちょうどよい時を見計らう必要があるからね。例えば、「今日の調子はどう?」「なかなかイイ感じだ」「ならば、1曲レコーディングしてみる?」「よし、やってみようぜ」…という感じで、じっくり時間をかけてボーカル録りを行なったんだよ。近所のスタジオに行って、じっくり試してみて、調子が良ければその時レコーディングしたモノを使い、今イチだったらまた翌日出直して録り直す、といった具合さ。そうして、アルバムのどのパートに関しても、完璧なテイクが録れるまで、時間を掛けてレコーディングしていった。パート毎にスタジオや場所や時期などを変えて作業を行なったのも、同じ理由だよ。ドラムとギターとベースに関しては、シモーネがレコーディングを担当し、一気に録ったし、ヴァイオリンやボーカルなどアコースティカルなパートに関しては、もう少しフィーリングや解釈が必要だと思ったから、ゆっくり時間をかけ調子がいい時にレコーディングしたんだ。
──BAL-SAGOTHのジョニー・マードリングがオーケストラ・アレンジを手掛けているのにも驚きましたが、彼とのコラボはどのようにして実現したのですか?
エイダン:俺もダムナもBAL-SAGOTHの大ファンで、彼等のアルバムが大好きでね。でも、それだけじゃない。真の理由は、MY DYING BRIDEの『EVINTA』(2011)というアルバムにあるんだ。これは、MY DYING BRIDEの過去曲をピアノとオーケストレーションだけで再アレンジしている作品で、その作業を行なったのがジョニーだった。あのアルバムを聴いて「実に素晴らしい」と思ったんだ。内省的でとてもロマンティックな仕上がりだから、正直言ってメタル・ファンにはあまり好かれないアルバムなんだけど、俺はこのアルバムが大好きてピアノとオーケストラのアレンジをとても気に入っていた。だから、次にELVENKINGのアルバムを作る時は、1曲でも2曲でもイイから、何としてもジョニーにオーケストラル・アレンジをやってもらいたいと思っていたんだ。俺がこのバンドの音楽に採り入れたいと思っていたフィーリングを、彼は山ほど持っている。それは彼ならではのロマンティシズムで、そんな彼が手掛けたオーケストレーションが加われば、よりロマンティックな仕上がりになるという確信があった。そこでジョニーに連絡を取り「1~2曲だけでもイイから、興味を持ってもらえないか」と訊いてみたら、快く引き受けてくれた。それどころか、1曲だけにとどまらずアルバムのオーケストレーションの大半を手掛けてくれたんだよ。結果は言うまでもなく、とにかく最高だったね。
──オーケストラル・アレンジには、もうひとり元SECRET SPHEREのアントニオ・アガテも関わっていますね。
エイダン:アントニオは前作でもオーケストラのアレンジを手掛けてくれていたから、今回も何曲か彼に頼むのは当然のことだったよ。もともとジョニーにオーケストレーションを頼むのは1~2曲だけのつもりだったからさ。アントニオもまた最高のアレンジャーであり、素晴らしいキーボード奏者だね。
──グロウル・パートを担当したWITCHERYのシンガー:アングストことアングス・ノルデールのゲスト参加のキッカケも教えてください。
エイダン:新作には非常に力強いグロウル・ボーカルが必要だと感じていて、強烈にアグレッシブなデス・メタル系ボーカルを起用しようということになったんだけど、俺達は有名なシンガーをゲストとして呼ぶことには興味がなかった。でも、ツアー中にWITCHERYのアルバムを手に入れたダムナが、「おい、この新しいシンガーは驚くほど凄いグロウル・ヴォイスを持っているよ」と言うから聴いてみたら、「本当に凄い!」と驚き、「ニュー・アルバムでグロウルのパートを歌ってもらえないかどうか、連絡して訊いてみよう」ということいなったのさ。彼のグロウルは正に完璧でとてつもなくアグレッシブで、これこそ俺達が探し求めていた声だったよ。
──「At The Court Of The Wild Hunt」にはスノーウィ・ショウが客演していますが、冒頭でダムナと一緒に歌っているのがそうですか?終盤のチャントでも彼の声が聴けるような気がしますが。
エイダン:彼が歌っているのは、冒頭と中盤のアコースティック・パートだ。それらのパートには違う声が必要だったからね。特にイントロにはマジカルな歌い手が必要だった。残りは全てダムナが歌っているよ。スノーウィもまた、俺達にとって長年お気に入りのミュージシャンでさ。彼は世界でも指折りのドラマーのひとりというだけでなく、素晴らしいシンガーでもあり、素晴らしいギタリストやベーシストでもある。それに、KING DIAMONDやMERCYFUL FATE、DREAM EVIL、SABATON、DIMMU BORGIRなど、様々なバンドでプレイしていたし、THERIONでは見事なボーカルも聴かせてくれた。メタル界広しといえども、彼ぐらい完璧に何もかも兼ね備えたミュージシャンはいないんじゃない?そこで参加を依頼してみたところ、ありがたいことに引き受けてくれたんだ。本当に素晴らしい仕事をしてくれたよ。俺達のアルバムに彼を迎えることができて、本当に光栄に思うな。
──最後に、今後のツアー予定を教えてください。
エイダン:ちょうど南米から戻って来たところなんだけど、次は2017年12月のイタリア・ツアーで、その後もイギリス、スペイン、オーストリアなどヨーロッパで行なわれる冬のフェスティバルにいくつか出演する予定だ。そしてそのあとは、多分ヘッドライニング・ツアーを行なうことになるんじゃないかな。
──再来日公演も楽しみにしています。
エイダン:実はまた来日して欲しいという要請があって、既にプロモーターと話をしているところなんだ。最も可能性が高いのは、ヨーロッパでの(2018年の)サマー・フェスが終わってからかな。現時点ではまだ何も決まっていないものの、2018年の夏の終わりから秋頃に掛けてまた日本に行けるかもしれない。今後の状況次第でどうなるのかまだ分からないけど、日本では本当に素晴らしい経験をしたから、可能な限り早くまた日本をツアーしたいと思っているよ。
取材・文:奥村裕司

エルヴェンキング『シークレッツ・オブ
・ザ・マジック・グリモア』

2017年12月29日

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4.ザ・ホーンド・ゴースト・アンド・ザ・ソーサラー

5.ア・グレイン・オブ・トゥルース

6.ザ・ウルヴズ・ウィル・ビー・ハウリング・ユア・ネーム

7.3 ウェイズ・トゥ・マジック

8.ストレート・インサイド・ユア・ウィンター

9.ザ・ヴォイニッチ・マニュスクリプト

10.サメン・ザ・ドーン・ライト

11.アット・ザ・コート・オブ・ザ・ワイルド・ハント

12.ア・クローク・オブ・ダスク

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13.ペタルストーム

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3.スワロウテール(プリプロダクション)

4.エルヴェンリージョンズ(ライブ・アット・ラグナロック2017)

5.トローズ・カインド(ライブ・アット・ラグナロック2017)
【メンバー】

ダムナ(ヴォーカル)

アイダン(ギター)

ラファエル(ギター)

レジエン(ヴァイオリン)

ジェイコブ(ベース)

ランクス(ドラムス)

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