【インタビュー】TRIPLANE、温かみと
煌びやかさを湛えた楽曲を軸に新たな
顔を見せるアルバム『1/4802のすべて

前作から約2年10ヶ月ぶりとなるTRIPLANEのフルアルバム『1/4802のすべて』が、12月6日にリリースされた。同作は彼らが新たな環境で作り上げた第一作であると同時に、メンバーそれぞれの音楽やバンドに対する情熱、未来に向けた決意などが随所に散りばめられた必聴の1枚といえる。TRIPLANEの真骨頂といえる温かみと煌びやかさを湛えた楽曲を軸としつつ、新たな顔を見せていることも見逃せない。バンド結成から15年を経て、今なお進化し続ける彼らの最新の声をお届けしよう。
■ここまで積み重ねてきた日々がテーマの作品を作りたいなと思って

■“4802”はTRIPLANEがデビューしてからの日数を現しているんです
――新しいアルバムを作るにあたって、テーマやコンセプトなどはありましたか?
江畑兵衛(以下、江畑):今までは制作に入る時は何もないところから取り掛かっていたんですけど、今回は珍しくテーマみたいなものがありました。僕らは今年の7月に独立して、その時点で今後の展開に向けた仕込みをしていたんですね。実現させたい目標の一つとして12月にアルバムを出したいというのがあって、今回は先にタイトルを決めようということになったんです。どんなタイトルにしようかなと考えた時に、独立するに際して今までの自分達の軌跡を振り返る時間が多くなっていて。そういう中で、独立してまでもう一度この4人で大きな夢を見られているという状況は、ここまで積み重ねてきた日々があるからだよなと思ったんですよね。それで、そういうテーマの作品を作りたいなと思って、新しいアルバムは“1/4802のすべて”というタイトルを付けることにしました。“4802”という数字は、TRIPLANEがデビューしてからの日数を現しているんです。
――13年間の重みを改めて感じます。初の試みとなった“テーマありき”の曲作りは、いかがでしたか?
江畑:結構大変でした。今まではアルバムを作る前にシングルが出ていたり、タイアップが付いている曲があったりして、そういうものの集合体みたいなアルバムというのが通常の流れだったんです。今回みたいに先にタイトルが決まっていて。そこに向けてゼロから曲を書き下ろしていくという作業はしたことがなかったので、ちょっととまどいがありました。苦労しながら曲を作っていったけど、7曲目に入っている「浴衣の君」が出来た時に、バラバラだったところに一本糸が“スッ”と通った感じが僕の中であって。そこで、アルバムの全体像が見えたというのはありましたね。
――その感覚は、なんとなく分かります。「浴衣の君」は、薄く和の香りがありつつスタイリッシュ&ドリーミィーという新機軸の曲ですからね。
江畑:そう。この曲を作った時は、僕にしては珍しいことですけど、日本の夏のイメージ……花火だったり、お祭りだったりを表現したいなと思って。そんなことを考えていたら、出だしの“タンタンタンッ”というキーボード・リフが降りてきて、後はもうひたすらそれに沿っていて心地好いものをいろいろ重ねていって、最後に歌と歌詞を乗せて形にしました。この曲を作っている時は、すごく楽しかった。これはボツになるかもしれないというのがあって、だったらもう好きなように作ってみようと思っていて。それが、“これは、いけるかもしれない”と思えるものになったことが、今回のアルバム作りの中で本当に大きかったです。
広田周(以下、広田):「浴衣の君」があるかないかで、『1/4802のすべて』というアルバムの印象は大きく変わっていたと思う。そういう意味で、外せない曲と言えますね。それに、僕の中では、最後に入っている「スポットライト」も印象が強い1曲です。(江畑)兵衛から話があったように、僕らは今回独立するということになって。今回のアルバムは3年弱ぶりになるんですけど、その間の兵衛は曲を作れるような雰囲気じゃなかったんです。独立したら気分が変わって、また絶対に曲は出てくるから信用してくれと言っていたけど、2~3年も曲が出来ていないと心配になりますよね。そういう中で独立して、一致団結して、もう一回4人で上を目指していこうということが決まった時に、「スポットライト」が出てきたんです。兵衛的には出来上がった時に感慨めいたものはなかったみたいだけど、この曲が持っている意味とか、これまでのTRIPLANEがやってきたこととかを考えた時に、僕はすごく良い曲が出来たなと思いました。絶対にファンの人に100%伝わるな、ライブで演奏することで、どんどん大きくなっていくなということを感じて。だから、独立するにあたって会場限定という形だったけど、この曲をシングルにしたんです。そんな風に「スポットライト」には思い入れがあるし、これから20年、30年という風に時を経ても、この曲のことは忘れないと思います。
江畑:「スポットライト」は今回のテーマとは関係なく、純粋にTRIPLANEとして良い曲を作ろうと思って作った曲です。この曲は、作ってすぐにライブで演奏したことが大きかったですね。ライブでやるまでは、僕の中では特に自信作という感じでもなかったし、広田以外はメンバーの反応も薄かったんですよ。でも、ライブでやっていくうちに自分達らしい空気とか、エネルギーとかがステージから出ているなということをみんなが感じて。そこで良い曲なんだという確信が持てて、アルバムの最後に持っていった。もしライブでやっていなかったら、最後には持ってこれなかったと思います。
▲Vo/Gt.江畑兵衛


――「スポットライト」は王道的なスロー・バラードでいながら、TRIPLANEならではのものに仕上がっています。ラブソングとも、ファンの皆さんに向けたメッセージとも取れる歌詞も注目ですし。
江畑:歌詞は、ファンの人達に向けた想いが主軸になっています。それに、メンバーに向けた部分もありましたね。活動してくる中でいろんなバンドを見てきたけど、他のバンドで曲を作っている人達と比べた時に、自分は大した人間じゃないわけですよ。みんなしっかりしているし、一生懸命がんばっているのに対して自分は…と思う。なのに、この4人で続けていられるというのは本当に幸せなことだし、あり難いなというのがあって、「スポットライト」の歌詞を書くにあたって、そういう想いも織り交ぜたいなと思ったんです。ただ、そういった心情をダイレクトに書くのは恥ずかしいので、ラブソングにも取れる歌詞にしました。
武田和也(以下、武田):今回のアルバムの中で僕が一番好きなのは、「アンブレラガール」です。僕は良いものにしかリアクションしないんですけど、この曲は最初に聴いた時に良いなと思ったんですよ、珍しく(笑)。それで、もうすぐに兵衛に、良い曲じゃんとLINEしました(笑)。その時はサビしかなかったけど“ビビッ!”と来て、そのまま良い曲に仕上がったし、パワフルな曲でアルバムの良いフックになっているという意味でも印象が強いです。
江畑:「アンブレラガール」は、STVの『熱烈ホットサンド!』という番組のオープニングテーマという話をいただきまして。番組の制作サイドから元気がある、アップテンポの曲が欲しいというリクエストがあって、それを踏まえて書き下ろした曲です。そういう作り方だったので歌詞を書くにあたって、どういう風に番組側との整合性をつけようかなというのがあって。『熱烈ホットサンド!』は、お笑いの番組なんですよ。なので、お笑いというものが視聴者に提供しているものと僕らがファンの人達に提供しているものの共通項をいろいろ考えて、最終的にライブをイメージした曲にしました。
川村健司(以下、川村):僕は1曲あげるとしたら、「サクラのキセツ」ですね。「スポットライト」と同じように王道的な曲ですけど、13年やって来ても王道を作れる強さというのはあるかなと思って。この曲はサビのメロディーの中にフックがあって、それを捻り出せたのは13年活動してきた江畑兵衛の良さでもあり、強みでもあるなと思うし。それに、ライブの時にステージからお客さんを見ていると、「サクラのキセツ」で笑顔になったり、泣いている方とかがいて、やっぱり凄いパワーを持った曲だなと感じるんです。TRIPLANEの主軸になるものの最新形という意味で、ずっと応援してくれている人にも、ここ最近僕らのことを知った人にも、これから出会う人にもぜひ聴いて欲しい1曲です。
江畑:『1/4802のすべて』という作品を作るにあたって、アルバムをリードしていけるような曲を作りたいという想いが僕の中にはあったし、今回のアルバムは一つの区切りになる。そこで提示するTRIPLANEの真髄といえるものとなると、いろんな意味でハードルが高いんですよね。そういうものを形にしたいと思って曲を作っていく中で、単純に「サクラのキセツ」はサビのメロディーが歌っていて気持ち良かったんです。今までそういう曲はあまりなくて、どちらかというと考え方が作家寄りというか、シンガーよりは作家の脳になって心地好いメロディーを模索するというやり方だったけど、この曲は本当にシンガーとして書けた。そういう手法を採ることで、アルバムをリードする曲……自分達の真髄であると同時に新しいものになったんです。そういうところで、僕もこの曲には満足しています。
▲Dr.広田周


――「サクラのキセツ」も必聴の1曲といえますね。江畑さんも特に気に入っている曲をあげていただけますか。
江畑:好きなのは、「東京ヒロイン」かな。これは本当にデッサンから入って、試行錯誤を繰り返していって、自分のイメージ通りのものに出来たなというのがあって。サウンドとか歌詞の内容、アレンジといった全てが自分の好みなんですよ。だから、聴いていてすごく気持ち良い。自分の脳の中にあったものがそのまま形になったから、人にこの曲のどこが良いのと聞かれても説明できないんですけど。でも、きっと良いなと感じてもらえると思うので、ぜひ「東京ヒロイン」も聴いて欲しいです。
――同感です『1/4802のすべて』の歌詞についてもお聞きしたいのですが、“ここからまた自分の信じる道を歩いていく”という意志表明やラブソングなどいろいろな歌詞がありつつ、“永遠”ということが裏テーマとしてあるような印象を受けました。
江畑:“永遠”という裏テーマでアルバムを作ろうとは思っていなかったけど、どの曲の歌詞を書いていても、自分の中にそういう意識があったというか。“永遠”というほど大それたものではないけど、脈々と続いていく感じとか、止まらずに繋がっていくようなイメージがあった気はしますね。僕はあまり哲学的な人間ではないので、それはたぶん今の自分が置かれている状況だったり、今の自分が感じていることが無意識に反映されたんだと思います。独立する前は、あまり未来が見えてなかったんですよ。もしかすると、それこそ終わり方を考えていたかもしれない。それが独立したことによって、もう一度自分の前に道が“ガッ”とできたというのが大きくて。これからもずっとバンドマンでいるんだという一つの覚悟みたいなものが自分の中にできて、それが歌詞を書く時に自然と滲み出たんだと思います。
■メンバーが何ができるかというのはもう明確に分かっている

■だから、兵衛は音楽以外のことはやめて欲しいんです(笑)
――続いてプレイに関する話をしましょう。それぞれ今作を録るにあたって、プレイ面や音作りなどでこだわったことは?
広田:今回も作詞/作曲に関しては兵衛が中心ですけど、スケジュールとかはメンバー4人で決めていったというのがあって。つまり、役割分担がしっかりできていたんです。これだけ長く一緒にバンドをやっているからこそ、こいつは何ができるかというのはもう明確に分かっているんですよ。だから、兵衛は音楽以外のことはやめて欲しいとか……。
川村:やめて欲しいって(笑)。
武田:音楽以外のことは無能みたいじゃん(笑)。
江畑:まぁ、否定はできないけど(笑)。
広田:いや、そういう意味じゃなくて(笑)。周りのことは僕らに任せて、兵衛には音楽に集中して欲しかったんです。そんな風に各々がやるべきことがはっきりしていて、それと同じように自分が今回のアルバムで叩くべきドラムは明確に見えていた。「アンブレラガール」とかはちょっと特殊ですけど、他の曲に関しては表立って主張することのない、楽曲に寄り添ったドラムということを最重視しました。そもそも15年前にTRIPLANEを組んだ時に自分がどういうドラムを叩きたかったというと、めちゃめちゃロックなことがやりたかったわけではなくて。僕がイメージしたのは、美しいメロディーの後ろでさり気なくドラムを叩いている。でも、やっていることは地味にかなり難しいというスタイルだったんですよ。それが、僕がずっとこのバンドでやってきたことで、今回はその最新形といえるドラムになっています。「サクラのキセツ」とかは、如実にそれなんですよね。自分のスタイルを突き詰めてきたからこそ、サウンドとかフィルはもちろん、一つ一つのゴーストといったところにまで気を配れるというのがあって。パッと聴くと簡単に感じるかもしれないけど、奥の深いドラムになっているんじゃないかなと思います。
――たしかに。それに、ドラムは普通にビートを刻むのではない“パターン系”の多用やループと一体になってリズムを作るアプローチなどが印象的です。
広田:パターン系は叩いていて楽しいし、楽曲の世界観をより深められるというのがあって。なので、使用頻度が高いですね。ループを使う場合は兵衛と話をして、生ドラムとループの割合をちゃんと決めるようにしています。「星空のメリーゴーランド」とかはループ主体の感じにしようとか、「浴衣の君」はループと生ドラムを区別したいから、わりと自由に叩いて良いよとか。そういうことを兵衛に聞いて、そのうえでどういうアプローチを採るかを考えるようにしました。
武田:ベースに関しては、TRIPLANEはいつもそうですけど、楽器隊がレコーディングする段階で歌メロが決まっていることはほぼ無いんですよ(笑)。
――えっ、本当ですか?
広田:本当です(笑)。
武田:だから、他のバンドマンに、よくそれで録れるねと言われます。そういう意味では、今回のベースもいつも通りでした(笑)。メロディーがないことにはもう慣れてしまっているので、デモを聴いて自分が感じたままのものを弾く。レコーディング当日に、それを兵衛に聴いてもらって、そこからディスカッションしていくんです。といっても話し合うのはフレーズでのことではなくて、8割くらいは音符の長さですね。音符の長さによってグルーブはかなり変わってくるから兵衛はそこにはかなりこだわっていて、僕も兵衛のお陰でいろいろ勉強になっています。兵衛は、うるさいんですよ(笑)。普通に弾くと、置きにいくなと言うし。ソツのないベースを弾くんじゃなくて、僕らしさを出して欲しいと。でも、それは大事なことなので、常に意識するようにしています。フレーズに関しては、デモと違うフレーズを弾いてもそれで良いよと言われることが多くて、どんな風になるのかは分からないけど、じゃあこれで…みたいな(笑)。でも、歌が乗ってあがってきたのを聴くと、めちゃめちゃマッチしていることが多いんですよ。そういう時に、俺はさすがだなと思います(笑)。
▲Ba.武田和也


一同:アハハ(笑)。良いね、自画自賛(笑)。
武田:ただ、それはみんなも言ったように、このメンバーで長年一緒にやっていることがデカいのは間違いない。もし自分がベースを始めて1年とかだったら、多分どの曲も弾けていないと思います。今回の曲のベースで印象が強いというか、録るのに一番時間が掛かったのは「浴衣の君」でしたね。この曲は自分で考えてきたベースを弾いたら兵衛にデモを聴かされて、ここのパートをスラップでやって欲しいと言われて、“えっ、こういう曲調でスラップ?”みたいな(笑)。
江畑:迷ったんですけどね。スラップはサウンド的にインパクトがあるから、僕としては欲しいけど、曲に合うのかどうかというのがあって。でも、武田にやってみてもらったら良い感じにハマったので、活かすことにしました。
川村:あのスラップは、すごくカッコ良い。ギターは、今までは自分を出そうということをすごく考えていたけど、今回は逆にそぎ落とす方向で考えました。それこそギターがなくても成立する楽曲であれば、弾かなくても良いくらいな。洋楽とかを聴くと、すごくシンプルなギターでも成り立っていたり、絶妙なエッセンスを醸し出していたりする曲も多くて、自分もそういうギターを弾きたいなと思ったんです。そのためにはギターが薄くても成り立つ楽曲じゃないとダメだというのがあるけど、TRIPLANEはちゃんとそういう曲を作っているから、広田のドラムと同じようにギターも主張しなくても良いかなと思って。なので、今回はどの曲も本当にちょっとしたアクセントやフックになるものがあればOKというところから入っていきました。
――楽曲に溶け込ませたうえでリードギターらしいリフや単音を弾いているパートが多いことが印象的です。
川村:うちのバンドは兵衛が結構ギターを弾くので、ベーシックなバッキングとかは彼に任せられるんですよ。それに対して自分はどういうものを弾くかということを考えるので、たしかにシンプルといってもコードを鳴らすだけみたいな曲は少ないですね。
――ただ、ギター録りの段階では歌メロがないわけですよね。そういう状態で効果的なリード・プレイを考えられるというのが不思議です。
川村:そこに関しては、僕はコードに沿ってフレーズを考えるんじゃなくて、キーに対して考えるようにしているんです。そうすると、どんなメロディーが乗ってきたとしても合いやすいんですよね。ただ、今回は作業の効率を良くするために、可能な範囲でメロディーをもらうようにしました。僕の中で特に手応えを感じたのは、「はじまりのうた」とかかな。この曲は間奏とかも含めて普通にアプローチするとU2みたいになってしまって、それは面白くないなというのがあって。なので、ファズとかを使ってゴリッとさせて、バンドっぽさを出すことにしました。
▲Gt.川村健司


――正解だったと思います。いわゆるギター・ソロではなくて、インパクトの強いフレーズを弾いている間奏も効果的ですし。
川村:間奏はメロディーを弾いているギター・ソロとテーマを弾いているパターンのどっちが良いかを兵衛に聞いたんです。そうしたら、テーマを繰り返したほうが印象が強いと言われて。僕自身もこの曲はギタリストとしていくよりも、バンドで攻めるほうが映えるんじゃないかなと思っていたので、迷うことなくテーマを弾く方を選びました。
江畑:歌は……これもおかしな話ですけど、僕は自分の声があまり好きじゃないんですよ。でも、良いなと思う部分もあって、それが今までの作品の中では一番出せたかなと思います。それは、低い音域の声で、今までは低音の出方がどうしても嫌だったんです。今回は低音域の歌が良い感じになって、シンガーとして一番納得いっているのはそこですね。
――深みのあるローボイスに加えて、内面のひたむきさが伝わってくるハイトーン・パートも魅力的です。
江畑:僕は、テクニックがないんですよ(笑)。だから心で歌うしかなくて、それがひたむきな感じに聴こえるんだと思います。自分の中では、もっとテクニック磨くということが今後の自分の課題だなと思っているんですよね。
――どうなんでしょう。表現するうえでテクニックは絶対的に必要ですけど、江畑さん特有の少年っぽさが消えてしまうのは淋しい気がします。
江畑:そこは大丈夫だと思います。テクニックを身につけたとしても、歌というのはテクニックだけで終わるものではないことは分かっているから。今回の自分の歌で印象が強いのは「ラブソング」とか「浴衣の君」「Evergreen」辺りかな。「Evergreen」は、たまたま1曲通して心地好く歌えるレンジの音域だったから楽しく歌えたし、録りも早かったんですよ。ニュアンスとかで苦労しつつ上手く落とし込めたのが「ラブソング」とか「浴衣の君」という感じですね。「ラブソング」みたいな曲は今までにも沢山あったからスンナリいくだろうと思っていたけど、歌詞に込めている気持ちとかもが違うし、オケの感じとかも違うから、今まで通りサラッと歌うと成立しないなということになって。それで、深く振り下げ直して歌ったんです。
■今度のツアーは僕らの成長した姿を見て欲しいし

■まだまだ成長できるということを感じてもらいたい
――エモーショナルなボーカルと職人気質のバック陣のプレイという取り合わせも『1/4802のすべて』の大きな魅力になっています。話は変わりますが、皆さんカラオケには行かれますか?
江畑:行きます。カラオケでは、いつもZIGGYさんを歌っています(笑)。僕は10代だった頃からZIGGYさんが超好きで、アルバムは全部持っているんですよ。だから、ZIGGYさんを聴いたり、歌ったりすると初心に帰れるというのがあって、カラオケに行くと必ず歌います。カラオケというのは、楽しむものですよね。僕はミュージシャンになったので、歌うということが仕事になってしまった面がある。でもZIGGYさんを歌っている時は、完全に歌うことやカラオケを楽しんでいた頃の自分に戻れるんですよね。“歌いたい欲求”に任せて歌えるから、歌うとスカッとするんです(笑)。
――その感覚は、よく分かります。ZIGGYを歌う時は、森重樹一さんの歌い方を意識したりしますか?
江畑:自分らしく歌う時もあるし、マネすることもあるという感じです。マネしたくなるポイントが、あるんですよ。たとえば「I’m Getting Blue」のサビの“どしゃぶりの雨が”というところのビブラートとか(笑)。自分らしく歌っていても、そういうところだけ森重さんになったりします(笑)。
広田:僕はこの4人の中で一番歌わないと思いますけど、カラオケには行きます。友達と行くんじゃなくて、関係者と飲んだ時の二次会とか、三次会で行くことが多いんですよ。で、そういう時はX JAPANさんを歌います(笑)。
一同:出た! やっぱりな(笑)。
広田:アハハ(笑)。僕の唯一の持ち歌がX JAPANさんの「ENDLESS RAIN」なんです(笑)。僕はサングラスをかけるとToshiさんに似ていると言われることが多くて。それで、カラオケに行くとX JAPANさんを歌いなさいと言われて、「ENDLESS RAIN」を歌うという(笑)。一度、ライブハウスでも生バンドで歌わされたことがあるんですよ(笑)。それをメンバーが観にきていて、TRIPLANEのライブでも一節歌わされたことがある気がする(笑)。
一同:あった、あった!!(笑)
武田:またやって欲しいよな(笑)。僕は、中~高校生の頃は毎日のようにカラオケに行っていました。僕らはその頃からの同級生で、よくみんなで家の近くカラオケ屋に行っていたんです。最近はカラオケに行くと三代目J Soul Brothersさんの「R・Y・U・S・E・I」とかを歌うことが多いですね。J Soul Brothersさんが好きというのもあるけど、カラオケに行った時は盛り上がる曲を歌ったほうが良いんじゃないかなと思って。しっとりラブソングを歌うとかはないですね。
江畑:昔、女の子とカラオケに行った時の武田の“ああ、落としにかかってるな”という時はすごく分かりやすかった(笑)。必ず山根康弘の「get along together」を歌うんですよ(笑)。
一同:ハハハッ!!(爆笑)
武田:いや、それは10代の頃の話ですよ(笑)。下心とかがあったわけじゃない。そこは絶対に書いておいてください!(笑)
――でも、カラオケには想いを伝えるツールという側面もありますよね。
武田:今にして思うと、ツールになっていたかどうかは分からない(笑)。終電間近の時間に“もう放さない”とか歌われて、“帰らせて!”と思っていた気がする(笑)。
一同:ハハハッ!!
川村:僕は、SMAPさんとかを歌います。ジャニーズ系の曲は歌いやすいし、曲のパワーが凄いんですよ。ほぼ確実に盛り上がるので、歌うことが多いです。あとは、WANDSさんとかT-BOLANさんとか。
広田:川村は、B'zさんでしょう(笑)。
武田:うん、めちゃめちゃB'zさんの印象がある(笑)。
川村:要するに、“Being系”だよね(笑)。Being系アーティイストの歌メロは、いきなりトップに行ったりすることが多くて、歌うと楽しいんですよ。あと、密かなカラオケの楽しみ方として、僕は他のアーティストさんの歌詞を見るのが好きなんです。僕はこのバンドでは歌詞を書かないけど、歌詞を書くことがあるんですね。歌詞には世界観が強く出るし、こういうワードを使うんだと参考になることも多くて。友達とかと行くと、普段は聴かないようなアーティストの曲の歌詞も見れますよね。歌うのが苦手な人とかがカラオケに行った時は、歌詞に注目して楽しむというのはお薦めです。
――カラオケは、いろんな楽しみ方ができますよね。カラオケでTRIPLANEの曲を歌いたいと思っている人へのアドバイスなどもお願いできますか。
江畑:TRIPLANEの曲は音域のレンジが広いから、歌うのが難しいと思うんですよ。結構高い声を出さないといけなくて、高い声に合わせてキーを下げると低いほうが出ないという状態になると思う。でも、僕も昔は高い声が出なかったんです。なので、それこそカラオケに行って、好きな曲のキーをわざと3つ上げとか4つ上げにして歌うようにしたんです。もう全然歌えないんだけど、これで歌えないとダメだという思いでずっと歌っていたら高い声が出るようになりました。自分が好きな曲のキーを上げて歌うというのは、カラオケじゃないと中々できない。TRIPLANEの高い声が出ない人は、カラオケをそういう風に使って、声域を広げてから歌ってもらえればと思います。
――ハイトーンの曲を選ぶのではなく、好きな曲のキーを上げて鍛錬するというのは盲点でした。さて、話をTRIPLANEに戻しますが、『1/4802のすべて』のリリースを経て、2018年の3月から4月にかけて全国ツアーも行われます。
川村:今度のツアーは久しぶりに行くところもあって、何年かぶりにTRIPLANEを見る人もいると思うんですね。そういう人に僕らの成長した姿を見て欲しいし、まだまだ成長できるということを感じてもらいたい。それに、通常ライブとアコースティック・ライブが混ざった日程になっているので、両方を味わってもらえると嬉しいです。
武田:今の僕らは、常に背水の陣という意識でバンド活動をしているんです。本当に、いつ終わってもおかしくない状況なので。でも、僕らは前を見ているから、ネガティブな気持ちになることはなくて。精一杯音楽やバンドと向き合っているので、今度のツアーではそういう姿を見せたいと思っています。カッコつけるんじゃなくて、もうありのままの自分達をぶつけたい。僕らは独立してから何か変わったなとよく言われるんですけど、それは気持ちが変わったことの現れなんですよね。生身の自分達で勝負したいという想いがあるし、それを感じてもらえるツアーにしたいと思っています。
広田:今回『1/4802のすべて』というすごくTRIPLANEらしいアルバムができて、今後の僕らに期待してくれている人が多いんですよね。そういう人達はツアーも楽しみにしてくれていると思うので、それに応えられるようにしたいです。ただ、だからといって変に肩に力が入っているようなところはなくて。楽曲のクオリティーという面では各自がしっかり練習しないといけないけど、今のこの4人の感じを出していけば良いツアーになるという自信があるんですよ。観て良かったと感じてもらえるライブになると思うので、ぜひ遊びに来て欲しいです。
江畑:僕はバンドのサウンドとか、演奏といったものに関してはそんなに気負っていなくて。ツアーがあるたびに毎回思うのは、MCが上手くいくと良いなということなんですよね(笑)。今回も上手くいくと良いなと思っています。
一同:“良いな”じゃないだろう(笑)。お前が自分で上手くいかせるんだよ(笑)。
江畑:ああ、そうか(笑)。いや、がんばっているんですけど、なかなか上手くいかなくて……。
武田:良い時もあるんですよ。ただ、非常に打率が悪いという(笑)。
江畑:そうなんだよな(笑)。なので、今回のツアーはダメな自分に目を背けずに、良いMCが出来るように一本一本がんばっていくことが目標です。ツアー後半になった頃には脂が乗った状態になっていると思うので、期待していただければと思います(笑)。
取材・文●村上孝之
リリース情報


『1/4802のすべて』

発売中

EGSL-0702 / ¥2,778 (税抜価格)+税

1.はじまりのうた

2.bridge

3.サクラのキセツ

4.ラブソング

5.東京ヒロイン

6.アンブレラガール

7.浴衣の君

8.Evergreen

9.星空のメリーゴーランド

10.スポットライト
ライブ・イベント情報


TRIPLANE LIVE TOUR 2018

『1/4802のすべて~ひとつかみの無限大~』

2018年3月20日(火) 広島BACK BEAT

2018年3月21日(水) 岡山 Penny Lane *アコースティック

2018年3月23日(金) 仙台 カフェ ド ルシール *アコースティック

2018年3月24日(土) 岩手 the five morioka

2018年3月25日(日) 福島 Player's Cafe

2018年3月31日(土) 大阪 2ndline

2018年4月01日(日) 名古屋 ell.SIZE

2018年4月06日(金) 福岡 DRUM SON

2018年4月07日(土) 長崎 Music Bar Paranoia

2018年4月08日(日) 熊本 B.9V2

2018年4月15日(日) 東京 TSUTAYA O-WEST

2018年4月20日(金) 京都 SOLE CAFE *アコースティック

2018年4月21日(土) 金沢 NOEL fusion *アコースティック

2018年4月22日(日) 新潟 GOLDEN PIGS /BLACK STAGE

2018年4月29日(日) 札幌 PENNY LANE 24
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