Everything(it'you)で歌われる「夢追い人」が旅路の果てに手にした物とは。

Everything(it'you)で歌われる「夢追い人」が旅路の果てに手にした物とは。

Everything(it'you)で歌われる「夢追
い人」が旅路の果てに手にした物とは

ドコモとの25周年タイアップ、そんなタイミングで同世代の仲間内が口にした「BOLERO」。
1997年に発売されたMr.Childrenのアルバムなのだが、懐かしくなって聴いてみると大人になったからこそ。じわりとその歌詞が落ちてくる一曲があった。それは「Everything(it’you)」だ。
大人になった今だから考える、旅路の果てにあるもの。その答えがこの歌には描かれている。桜井和寿が両手に抱えた嘘と矛盾と共に。
Mr.Children「Everything(it’you)」
人には「人生」と呼ばれる、その人だけの道がある。日々生きる事でその道は過去になり現在を作り未来へと繋がっていく。
しかしその道は自分だけで作り歩いていくものではない。人との出会い別れを繰り返し、様々な経験を得て作られていく。
一人ではないからこそ、幸せすぎるくらい豊かな道であり。一人ではないからこそ、感情に苛まれる。そんな事を比喩するような歌詞が歌いだしから並べられている。
ここではバンド活動が出来る事、歌える喜び、大勢のスタッフや応援してくれるファンには心から感謝している。
それだけは本心である事を伝えたい反面、その感謝と比例して人気絶頂の自身に、覆い被さる多忙やプレッシャーに苦しんでいる様が見て取れる。
このEverything(it’you)は他ならぬMr.Childrenのボーカリストであり、この曲の作詞作曲を担当した桜井和寿自身の心の葛藤を歌い上げている。
もう一方で正直すぎて苦しいくらいのラブソングでもある。
歌詞から読み取れる2つの愛(君)
歌いだしからここに来るまで、愛という言葉は一切出てこない。ここへ来てようやくこの歌がラブソングである事に気がつく。
ここに出てくる『君』とは、『苦しみに似た想いを抱いているの』に込められている「自分を取り巻く葛藤で僕が苦しい様に、君も同じように苦しい想いをしているんだよね」という想いから、心が通じ合っていてとても愛し合っている様に取れる。
しかしこの一節を疑問系にすると「君」の気持ちが見え辛く距離を感じるのだ。そしてお互いの愛を堂々と表現出来ないでいる様にも取れる。その気持ちがより強く出ているのが、STAYから続く歌詞である。
『STAY』とは一般的に「留まる」と訳される。なぜ愛が出てきた途端に愛は愛に向かって歩むものであるにも関わらず、歯止めをかけるような言葉が出てくるのか。
そして、ここで想われている『君』が自分にとってどんな存在なのかを何度も何度も悩み考え抜いたかのような表現がされるのだろうか。
その答えは、この曲の中に存在する2つの愛(君)に気がつく事で浮き彫りになる。
容易には踏み出せない恋、でもただただ君を想い君に会いたい

この曲が発表された頃、桜井和寿は様々な葛藤の中にいた。その葛藤の大半がこの曲に存在する2つの愛(君)である事は、人気者であるがゆえに周知されている。
この2つの愛(君)を踏まえると『STAY』の矛盾と君という存在に答えが出るのだ。
この一節に出てくる『君』という存在。この君は、先に出てきている『愛すべき人』とされる「君」ではない。全くの別人なのだ。
ここに出てくる君は先に出てくる君が知らない、桜井和寿の「過去」を共にして来た人物である事が『古い荷物を捨て』という言葉から推測出来るのだ。
そして『古い荷物』この言葉の前後にくる歌詞。『僕が落ちぶれたら、迷わず捨ててくれ』には「新たな愛を見つけてしまった。
そんな今の僕を、君は変わらず支えてくれている。その君を欺く、どうしようもない(おちぶれた)僕を捨てて新たな人生を歩んでくれ」と自分を貶めている。
そうする事で相手から決別を誘おうとしているのだろう。一見、情けなく卑怯にも取れる部分だが「別れを告げられる」よりも「別れを突きつける」方が女性の体裁を守る事が出来る。
相手に最大の花を持たせている、今までの感謝を表す誠意なのだ。
『僕にとって今君が』という歌詞があったが、この表現は『今の僕にとって君が』と言い換える事が出来る。
『何を犠牲にしても守るべきもの』とまで想いを寄せる君の元へ今すぐにでも走っていきたい。そんな深い想いを感じるが『STAY』と想いに釘を打つ。
その訳は、2つの愛(君)があるから「踏みとどまらなくてはならない」のである。
1つの愛だけを持って走り出す恋ではないがゆえに容易には踏み出せない。踏み出してはならないのだ。
ここまで来ると、歌詞の中に繰り返される様々な矛盾に、はっきりとつじつまが合ってくる。そうなるとこの一節で表現されている事も明確になる。
『夢追い人』はまごう事なき桜井和寿自身を指している。ここで言う夢とは、愛すべき君の元へ何にも邪魔されず自由の身となって駆けていく事。そして、愛すべき君を守り抜く事だ。
しかしそれを実現させるには壁は高い。ゆえに願望を『夢』とし、その夢を叶えたいと心で願って止まない自分をその名の通り『夢追い人』と表現したのだ。
この一節では唯一『それも人だよと悟れるの?』と『?』が使われる。この意味は夢追い人である自分がその疑問に悩み苦しみ、何よりも答えを知りたいからだ。
『嘘や矛盾を両手に抱え』と言うのは、2つの愛を傷つけない為の優しい嘘。そして、様々な状況に揺れる自身の矛盾を指す。
そんな愛に対してつき続ける嘘に矛盾だらけの心の苦しみは、いきつくところまで行き着けば「仕方がない事」だと許されるのか。そんな心情を映し出している。
そしてもう一つ。この一節には疑問が提示されている。その提示はまるで苦しみ疲れた力のないうわごとにも思える。
『夢追い人は旅路の果てで一体何を手にするんだろう』その答えの全てはこの一節にある。
『例えばこれが恋とは違くても』とは、愛すべき君。守るべき君に対する想いが、不道徳な恋と世間に騒がれても関係ない。
人をただ大切に想う事を恋や愛とする事で今の自分では不道徳と想いを傷つけられて君に真実が届かないなら、恋とも愛とも言わない。ただ素直に『君に会いたい』と伝えようとする勇気を示している。
日々、アーティストでいられる感謝と幸せに嘘はない。しかし、その感謝に比例して『歌う言葉さえも見つからぬまま』『時間に追われ途方に暮れる』心の矛盾。
そして、そんな矛盾に苦しむ日々の中に2つの愛にも揺れる矛盾と嘘までも両手に抱えている『夢追い人』が『旅路の果てに手にしたもの』それは。
他人の目や過去に愛した人への情も覆す、愛すべき守るべき君への『勇気』なのだ。
そしてタイトル表記に注目してほしい。夢追い人が勇気と共に手にしたもの。それは2つの愛のどちらだったのか。そう(it’you)である。
この表記の仕方は「君」をあらゆる牙から守るために隠し通してきた事を意味していると取れる。
Everythingは最も大切なものと訳されるのだ。もうyouがどちらであるかは明白である。
深い愛に溢れたMr.Childrenの「Everything(it’you)」

ここまで、当時の桜井和寿が抱えた様々な背景を交えて歌詞を解釈してみましたが。
純粋にこの歌を楽しむにはそんな背景を度外視して、この最後の一節で歌われる『君』をただ大事な人に当ててみてください。なんて素敵な愛に溢れた歌になるのでしょうか!
『もう君の好きなようにして』なんて、よっぽど愛していて心から信頼していなければ言えないですからね。この言葉は「君になら何をされても不幸になることはない」という意味ですから。
TEXT:後藤 かなこ

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