SuGが描いた「東京のシド&ナンシー」

SuGが描いた「東京のシド&ナンシー」

SuGが描いた「東京のシド&ナンシー

SuGの「桜雨」、コンセプトは「東京のシド&ナンシー」
『桜雨』は、ファンの間でもカラオケでよく歌われるなど、SuGの中でも特に人気のある楽曲である。
近年のSuGの代表曲と言っていいだろう。コンセプトは「東京のシド&ナンシー」だ。
シド&ナンシーといえば、同名の映画もあるが、英国のパンクバンド・セックスピストルズのベーシスト、シド・ヴィシャスと、その恋人であるナンシーのことに他ならない。
詳細はここでは省くが、ふたりとも重度のジャンキーで、その恋はふたりの死という形で破滅的に終わっている。
数多のロック伝説の中でも、根強くメディア化されるくらい、物語のような本当の話だ。
『桜雨』においては、描かれているのは悲恋ではない。破滅的で、少し幼稚な部分があって、でもお互い愛し合わずにはいられない、エモーショナルな恋愛。
そんなコンセプトが、「東京のシド&ナンシー」には込められている。
MVの雰囲気は映画「Buffalo’66」
特にミュージックビデオではそれがよりわかりやすい形で落とし込まれている。
篠崎こころ演じる少女と、北村諒演じる少年の儚い恋愛が、淡い白×ピンクの画面で描かれる。ユーチューブに投稿されてから、SuGのMVの中でも特に再生回数が多いようだ。
武瑠のスタイルブック『VISION』によると、シド&ナンシーよりも、映画『Buffalo’66』の方がイメージに近いという。
筆者はまだこの映画を観ていないが、MVが気になったら観てみるのも楽しいかもしれない。
さらに『VISION』の中で、武瑠は楽曲についてこう続ける。
「ちょっと情けない男と、自分も不安定なのにギリギリの母性で立っている女の子の物語。そこは形やバランスが変わっても、若い子たちが共感できるんじゃないかなと。」
MVの中の2人は、首を絞め合ったり、ブティックで万引きしたり、「HATE」と書かれたケーキを食べたり、まさに「不安定」「ギリギリ」という言葉がぴったりな行動をとっている。
共感する場面ももちろんどこかで見つかるかもしれないが、個人的には少し、憧れのような気持ちで観てしまう。
ヴィジュアルも含め、こんなカップル羨ましいな、とちょっと思ってしまうような何かがあると、MVを見てもらえれば、分って頂けるのではないだろうか。
多くのロックファンを魅了する楽曲のストーリー
以上は歌い出しからサビにあたる部分だ。バラード調の美しい旋律が奏でられ、盛り上がりに至るまで、この歌詞の果たす役割は大きい。
MVの中の恋愛も、「脆くて儚い夢」という言葉がしっくりくる。愛し合っているのに、ひっぱたいたり殴ってしまうくらいのケンカまでして、それでも手をつないではしゃいでいるカップル。
「ふたりぼっち」で「宵の口」な恋だけれど、それは今しか感じられないことで今だけを見つめ、けなげに生きようとする姿だ。
人の言う「しあわせ」よりも歪な恋かもしれないけれど、その「脆さ」は美しいと感じられる。ファンの間で根強く人気を保っていることも納得だ。
実際のシド&ナンシーよりも、ぐっとマイルドに描かれているわけだが、それでもこのキャッチコピー、テーマ性は若者に限らず、多くのロックファンを魅了するのではないだろうか。
この恋を自分たちの力で運命に変えたい!
「運命的な恋」なんて言ってしまえば、簡単に収まることかもしれないが、そんな風に「運命」と言ってしまうにはあまりに脆い。
という言葉で、曲は締められている。
『桜雨』に綴られたストーリーは、あらかじめ決められた「運命」なんかじゃないけれど、もしかしたら自分達で「運命」に変えられるかもしれない、という願いのような恋なのだ。
それはピストルズのシドとナンシーの恋愛を、より客観的に捉えた解釈でもあるだろう。
「東京のシド&ナンシー」の世界を、あなたも一度、覗いてみて欲しい。
Txt:辻瞼

アーティスト

UtaTen

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