©2017 TIFF

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知らない人はいない!?『ゴジラ』シネ
マ・コンサートで“あのテーマ曲”の
魅力を改めて考えてみた

初代『ゴジラ』シネマ・コンサート上映をきっかけに、「ゴジラ」といえばあの曲!という音楽の魅力を語ります。

地上波初放送でもTwitterを中心に話題を集めた2016年公開の『シン・ゴジラ』。1954年に公開された初代『ゴジラ』から長い時を経ても、「ゴジラ」という存在は、映画ファン・特撮ファン以外の人でも心を動かす存在だと再確認できました。
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映画・特撮・さらにはアニメにも多大な影響を与えた初代『ゴジラ』ですが、その魅力のひとつは日本映画界を代表する作曲家・伊福部昭氏が手がけた重厚かつ壮大な音楽といえるでしょう。『ゴジラ』シリーズを1度も見たことがないという人でも、あの「ゴジラのテーマ」なら耳にしたことがあるはず――。
その音楽を、映画本編の上映に合わせて生演奏で体感できる贅沢なイベントが、第30回東京国際映画祭の特別企画『ゴジラ』シネマ・コンサートとして実施されました。
“しんちゃん”にも影響が!? 「ゴジラ」を呼び覚ます音楽の力さて、筆者は平成元年生まれ。『ゴジラvsビオランテ』と同い年といえば、ファンの方の聞こえがいいかもしれません。いわゆる「平成ゴジラ」シリーズも数多くの作品が作られ、筆者も物心ついたときには、常に最新作の情報とともに、TVにゴジラがいた世代です。
もちろん、TVからはカッコいいゴジラやキングギドラ、メカゴジラ、デストロイアといった怪獣たちとともに、『ゴジラのテーマ』が流れてきます。幼少期のすり込み効果は絶大で、脳内ではいまでも『ゴジラのテーマ』が「ゴジラ! ゴジラ! ゴジラがやって来た!」と歌詞付きで流れるほど(これは映画本編と言うよりも、当時放送されていた『ゴジラアイランド』という番組の印象が強いですね)。
熱心な特撮ファンというわけではなかったのですが、高校生になりアニメや映画を本格的に観始めた時、本多猪四郎監督や円谷英二監督といった名前とともに、初代『ゴジラ』や名作『ゴジラ対ヘドラ』などを振り返って観ていきました。
惜しむらくは、そのころは2004年公開の『ゴジラ FINAL WARS』以降、コンスタントに新作が作られなくなっていたこと。いちばん映画館に通い、むさぼるように映画を観ていた高校生時代には、『ゴジラ』は冬の時代だったのです。
リアルタイムで待望の新作が登場するのは、2014年のギャレス・エドワーズ監督版『GODZILLA ゴジラ』でした。劇場公開時にリアルタイムで観る「ゴジラ」の迫力に圧倒され、公開時期に初代『ゴジラ』も劇場上映される機会があり、合わせて観に行ったのも良き思い出です。
2016年の『シン・ゴジラ』も、総監督を庵野秀明氏が手がけるという情報が出た時から注目していましたし、ここまでの大ヒットも納得の内容でした。筆者はアニメファンでもあるので、ゴジラと自衛隊の戦闘シーンは、『新世紀エヴァンゲリオン』の旧劇場版を彷彿させ、そこを観るために再び劇場へ行ったほどです。
そういったマニア的な下地がなくとも、同世代の多くの若い人にとっては、『シン・ゴジラ』が、子どものころの「体験」とつながる、初めの「ゴジラ」だったといえるでしょう(初代『ゴジラ』と太平洋戦争、『シン・ゴジラ』と東日本大震災といった関係性もありますが、その言及は評論家の方にお任せします)
63年前の初代『ゴジラ』から、さまざまなシリーズが作られてきました。すべての作品に使用されているわけではありませんが、やはり伊福部昭氏の音楽は、観るすべての人に共通して「ゴジラ」を呼び覚まさせる力があります。
たとえば、第30回東京国際映画祭でも特集上映が組まれた映画監督・原恵一氏の『映画 クレヨンしんちゃん 爆発! 温泉わくわく大決戦』に、こんなワンシーンがあります。
しんちゃん名パロ&樋口監督ウラ話
巨大ロボット迎撃に向かう自衛隊の戦車部隊。景気づけにとかけられるは、同じく伊福部昭氏が手がけた『怪獣大戦争』のマーチ。意気揚々と砲撃を開始するも、巨大ロボットからスピーカーが出現。「殺人光線か?」と警戒するも、そこから流れてくるのが、『ゴジラのテーマ』なのです。「ゴジラ」の威光を借りた巨大ロボットの前から、戦車部隊は撤退を余儀なくされます。
大の映画ファンでもある原恵一監督渾身のパロディシーン。『シン・ゴジラ』を観たあとだと、思わずにやけてしまいますが、『怪獣大戦争』マーチと『宇宙大戦争』マーチの違いを語るのは、また別の機会にしましょう。
『ゴジラ』シネマ・コンサート上映前には、音楽プロデューサーの岩瀬政雄氏と、平成『ゴジラ』シリーズプロデューサー・富山省吾氏、『シン・ゴジラ』監督・樋口真嗣氏によるのトークショーが実施。そこで樋口監督からも、こんな言及がなされました。
「(庵野総監督による)脚本のト書きから、劇中で使用する音楽の指定がありました。『宇宙大戦争』の曲を入れたい気持ちはよくわかるが、『ゴジラ』ですらないじゃないかと(笑)。その理由は何かというと、カッコいいから」
(ちなみに『シン・ゴジラ』の劇中で『宇宙大戦争』のマーチが使用されたシーンは、無人在来線爆弾のあのシーンです)
『ゴジラ』音楽の理想の形ーーシネマ・コンサート『ゴジラ』シネマ・コンサートでは、伊福部昭氏に師事していた和田薫氏が指揮を取り、上映に合わせた生演奏により、かの名曲たちが臨場感たっぷりに響き渡ります。
「平成ゴジラ」シリーズに伊福部昭氏が再登板されたとき、氏が提示した条件は「生演奏による一発撮り」でした。まさしく『ゴジラ』音楽の理想の形を体験できる、またとない機会となったのです。
その演奏は、冒頭のスタッフロールで伊福部昭氏の名前が出たところから開始。その場にいたすべての映画ファンが、万感の思いを込めて敬意を表し、『ゴジラ』という作品を再体験しました。
何度もなく『ゴジラ』を観てきた人はもちろん、元の作品を知らなくても、音楽を聞けば「ゴジラ」を思い起こすことができる。そんな共通性を持ったうえで、音楽とともにスクリーンに描き出される「ゴジラ」のカッコよさ。そこに理屈はありません。
映像と音楽の力によって目の前に浮かび上がるゴジラに、それぞれ何を想うのか――。そのひとつひとつが映画をはじめとするアニメ・特撮映像作品の楽しみ方であり、魅力なのではないでしょうか。

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ウレぴあ総研

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