井上陽水、コンサートツアーが
東京国際フォーラムで千秋楽
10月より開催された『井上陽水コンサート2017 秋“Good Luck!”ツアーが、12月3日に東京国際フォーラム ホールAにて最終公演を迎えた。
妖艶なイントロが奏でられ、万雷の拍手の中、井上陽水がゆっくりと登場する。「この頃、妙だ」から始まり、「Make-up Shadow」まで、MCなし、ノンストップのまま5曲を披露する。時にはささやくように、力強く。その艶のある声を無限に変化させながらハーモニーが紡ぎだされると、一読しても解読困難な歌詞にも説得力が生まれて来るから不思議だ。
後ろに控える豪華なミュージシャン陣(山木秀夫/Dr、美久月千晴/Ba、長田進/Gt、今堀恒雄/Gt、小島良喜/Key、Lyn/Cho、佐々木詩織/Cho)の存在も欠かせない。空間が歪んでいくかのようなエキゾチックなアレンジから、すべてを弾き返すような硬質なサウンドまで、変幻自在のバンドと、井上陽水の歌声の魔法が、満員の国際フォーラムを包み込む。
息を吸い込むことも忘れてしまうような、自身が作った緊張の糸を自ら切ってしまうのも陽水本人。「こんばんは」の一言だけで、会場は笑いに包まれる。井上陽水にとっては、ただのあいさつですら魔法の言葉だ。 独特のアングルから、不思議な言葉のチョイスとともに放たれるトークは、コンサートに来場するファンもお目当ての一つ。この日一番の爆笑を誘ったトークは「カニを家で1人で食べる背徳感」に関する話であったが、凡百の話者では同じ話をしても笑える話にならない。そこにも井上陽水の声の魔法があるのだろう。
この日のトークでもう1つ特筆すべきだったのがアルバム『氷の世界』にも収録された忌野清志郎との共作の名曲「帰れない二人」に関する貴重なエピソード。フォーク喫茶“青い鳥”でのRCサクセションとの出会い。そして、下宿先の風呂なしアパートで、この曲の歌詞を「2人で1〜2行ずつ順番に書いていったような気がする」と言う。半世紀近い前の話のため、本人も記憶がおぼろげなようだ。その当時の時代背景を語りながら、「帰れない二人」がアコースティック編成で奏でられると、陽水と世代の近いファンは、決して豊かではなかったけれど、古き良き時代を懐かしみながら、聴き入っているようだった。
本編では最新リリースの映像ベスト盤「GOLDEN BEST VIEW 〜SUPER LIVE SELECTION〜」にも収録されている「女神」「瞬き」「氷の世界」「結詞」など、代表曲をはじめとした豪華なセットリストで会場を盛り上げた。
アンコールではヘヴィなロックサウンドで大胆にアレンジされた「アジアの純真」を披露すると会場は総立ちに。そして続くは「夢の中へ」。自分自身も本来弾くべきであったであろう、ギターを思わず置いて、ハンドマイクで体を弾ませながら歌う。それほどに自身も楽しくなってしまう空間だったようだ。
にも関わらず、一筋縄ではいかないのが井上陽水。10月から始まった今回のツアーでおそらく最高潮にハッピーな空気が会場いっぱいに広がり、大団円を迎えるところだったが、おもむろにギターを抱えた陽水。おなじみのアコースティックのストロークから、バンド陣の重厚な演奏が続く。これ以上ない楽しい空間から、奈落の底まで突き落とされるような、ハードなイントロダクションが明らかに会場の空気を変えたが、「都会では・・」と歌い始めると、会場からは「待ってました」とばかりの大拍手。
オーディエンスにとっては、予想もつかないライブ展開に幻惑させられながら、いつの間にか大満足させられてい流、そんなコンサートだった。次回のツアーでは、オーディエンスにどんな魔法をかけるのか、今から楽しみだ。
photo by 有賀幹夫
【セットリスト】
1.この頃、妙だ
2.Pi Po Pa
3.フィクション
4.青空、ひとりきり
5.Make-up Shadow
6.お願いはひとつ
7.My House
8.なぜか上海
9.ワインレッドの心
10.女神
11.瞬き
12.帰れない二人
13.神無月にかこまれて
14.Just Fit
15.コーヒー・ルンバ
16.とまどうペリカン
17.夜のバス
18.愛されてばかりいると
19.氷の世界
20.結詞
〜アンコール〜
21.アジアの純真
22.夢の中へ
23.傘がない
妖艶なイントロが奏でられ、万雷の拍手の中、井上陽水がゆっくりと登場する。「この頃、妙だ」から始まり、「Make-up Shadow」まで、MCなし、ノンストップのまま5曲を披露する。時にはささやくように、力強く。その艶のある声を無限に変化させながらハーモニーが紡ぎだされると、一読しても解読困難な歌詞にも説得力が生まれて来るから不思議だ。
後ろに控える豪華なミュージシャン陣(山木秀夫/Dr、美久月千晴/Ba、長田進/Gt、今堀恒雄/Gt、小島良喜/Key、Lyn/Cho、佐々木詩織/Cho)の存在も欠かせない。空間が歪んでいくかのようなエキゾチックなアレンジから、すべてを弾き返すような硬質なサウンドまで、変幻自在のバンドと、井上陽水の歌声の魔法が、満員の国際フォーラムを包み込む。
息を吸い込むことも忘れてしまうような、自身が作った緊張の糸を自ら切ってしまうのも陽水本人。「こんばんは」の一言だけで、会場は笑いに包まれる。井上陽水にとっては、ただのあいさつですら魔法の言葉だ。 独特のアングルから、不思議な言葉のチョイスとともに放たれるトークは、コンサートに来場するファンもお目当ての一つ。この日一番の爆笑を誘ったトークは「カニを家で1人で食べる背徳感」に関する話であったが、凡百の話者では同じ話をしても笑える話にならない。そこにも井上陽水の声の魔法があるのだろう。
この日のトークでもう1つ特筆すべきだったのがアルバム『氷の世界』にも収録された忌野清志郎との共作の名曲「帰れない二人」に関する貴重なエピソード。フォーク喫茶“青い鳥”でのRCサクセションとの出会い。そして、下宿先の風呂なしアパートで、この曲の歌詞を「2人で1〜2行ずつ順番に書いていったような気がする」と言う。半世紀近い前の話のため、本人も記憶がおぼろげなようだ。その当時の時代背景を語りながら、「帰れない二人」がアコースティック編成で奏でられると、陽水と世代の近いファンは、決して豊かではなかったけれど、古き良き時代を懐かしみながら、聴き入っているようだった。
本編では最新リリースの映像ベスト盤「GOLDEN BEST VIEW 〜SUPER LIVE SELECTION〜」にも収録されている「女神」「瞬き」「氷の世界」「結詞」など、代表曲をはじめとした豪華なセットリストで会場を盛り上げた。
アンコールではヘヴィなロックサウンドで大胆にアレンジされた「アジアの純真」を披露すると会場は総立ちに。そして続くは「夢の中へ」。自分自身も本来弾くべきであったであろう、ギターを思わず置いて、ハンドマイクで体を弾ませながら歌う。それほどに自身も楽しくなってしまう空間だったようだ。
にも関わらず、一筋縄ではいかないのが井上陽水。10月から始まった今回のツアーでおそらく最高潮にハッピーな空気が会場いっぱいに広がり、大団円を迎えるところだったが、おもむろにギターを抱えた陽水。おなじみのアコースティックのストロークから、バンド陣の重厚な演奏が続く。これ以上ない楽しい空間から、奈落の底まで突き落とされるような、ハードなイントロダクションが明らかに会場の空気を変えたが、「都会では・・」と歌い始めると、会場からは「待ってました」とばかりの大拍手。
オーディエンスにとっては、予想もつかないライブ展開に幻惑させられながら、いつの間にか大満足させられてい流、そんなコンサートだった。次回のツアーでは、オーディエンスにどんな魔法をかけるのか、今から楽しみだ。
photo by 有賀幹夫
【セットリスト】
1.この頃、妙だ
2.Pi Po Pa
3.フィクション
4.青空、ひとりきり
5.Make-up Shadow
6.お願いはひとつ
7.My House
8.なぜか上海
9.ワインレッドの心
10.女神
11.瞬き
12.帰れない二人
13.神無月にかこまれて
14.Just Fit
15.コーヒー・ルンバ
16.とまどうペリカン
17.夜のバス
18.愛されてばかりいると
19.氷の世界
20.結詞
〜アンコール〜
21.アジアの純真
22.夢の中へ
23.傘がない