【大人が出逢う、東京古着】9月OPEN
! 吉祥寺・cherrylovilleでジャンル
レスな楽しみを

—Cherry Lovilleという人がいた。
イギリス生まれ、波打つブロンドと海のような青い瞳。ヒッピーの恋人と熱く短い恋をして、今はその間に産まれた子どもと2人で暮らしているという。
好きなものは洋服、特にヴィンテージ。
アメリカに渡って、古着を買い付けて、この9月にめでたく日本でお店をオープンさせた。お店の名前はCherry Loville。吉祥寺駅北口から線路沿いを歩いて3分。ビルの2Fだ。
これは、オーナーである加藤由久さんが作り出した、実在はしない女性の物語だ。18年もの間、同じく吉祥寺の『mint』でメンズ専門のお店を営んでいた加藤さんが、レディース店舗をオープンするにあたって、作り出した架空の人物。もちろん、お店は実在する。
「ずっとメンズでやってきたものですから、別人格に選んでもらうくらいの気持ちでやらないとできない気がして」
そう笑いながら、加藤さんは答えた。
オープンして2か月と少しになるお店には、平日のオープン直後からもうお客さんが入っていた。
お店に入ると、コンクリート造りのアトリエのような広々とした空間が広がる。
手前にレディース、奥にメンズ、どちらでも使えるユニセックスな小物はそこかしこに散りばめられている。
年中を通じて重宝されるTシャツやロンT、スウェット。
色とりどりの柄シャツに、くたっとしたゆるさが可愛いレーストップス、フリルたっぷりの水玉。
Cherryさんはきっと、いろんな服を着てきた人なのだろう、となんとなく思う。
“レディース”と一口に言っても、もちろん、いろんな“レディー”がいる。
ボーイッシュな人も、ガーリーな人も。今日はガーリーだけど、明日はボーイッシュな人も。しいては男も女も。誰かしらに何かしらがバチッとハマる。
そんなアイテムたちがバランス良い比率で並んでいる。
そして、コンディションの良さや時代ジャンルのラインナップはさることながら、どれもがとてもリーズナブルなのだ。これはそうそうないことだ!
ロックも、アウトドアも、スポーツも、ワークも。
一通り通ってきたジャンル全部置きたい。
そういう思いで、幅広く買い付けをしているという加藤さん。
「ジャンルもそうだし、売れ筋ばかりを置くっていうのもあまり好きじゃなくて。主役より脇役を充実させるっていうイメージかな。脇役をいかに輝かせるか。いい作品も、だいたいそうじゃないですか(笑)」
 
「人間性が出てくるのは案外ベーシックなものだったりもする」
とびきり派手なわけじゃないけど、ディテールが変わっているもの。
見ている時より身につけた時、想像以上の存在感を発揮するもの。
服にはいろんな顔がある。
こんな面白いものとはもう出会えないんじゃないか。
形が変わっていたり、柄にインパクトがあったり、そのどっちもだったり。
いい意味で、“ヘンテコなもの”に出会うとピックせずにはいられないのだとか。
古着を愛する限り、着る側としても、そういう遊び心と攻めた姿勢は持っていたいなあと改めて思う。
飲食業志望だった20代の頃は、お金を貯めては海外に旅をするといった自由で刺激的な日々を送っていたという加藤さん。イギリスで古着を見るうちに、どんどんのめり込んで本業にしてしまったのだという。
旅は人生を変えるし、人生は旅だ、とも誰かが言っていた。
本当にそうかもしれない。
飛行機にも船にも載っていないけれど、私たちは毎日新しいことを知る。
海の向こうから遥々渡ってきた洋服に袖を通しながら、そんなことを思った。
 
Cherry Lovilleの青い瞳に、日本の国はどう映っているだろう。
愛する子どもとたくさんの洋服を抱えて海を渡ってきた彼女の旅は、どう続いていくだろう。
洋服が好きだということと、かつてヒッピーの恋人がいたということ。
私が知っていることは、これくらいだ。
美大出身の店長の田渡さんが4日かけて描いたという絵の中の彼女を眺めながら思う。
左から、店長の田渡菜月さん、スタッフの柴草涼さん
お店で働くクリエイティブな女の子たちの影響で、絵が大好きになったかもしれないし、お店の近くにある小劇場のおかげで演劇にハマっているかもしれない。
犬より猫が好きかもしれないし、ヒッピーの恋人と1年に何度か逢瀬を重ねているかもしれないし、もう別の恋人がいるかもしれない。
Cherry Lovilleという人は、実在はしないけど、存在はしてる。
このお店が始まった時から。
それは、私たちの中にもいるもう一人の自分、っていうとちょっとうまくいきすぎだけど、朝服を決める時に頭によぎる理想の自分、とか、服を買う時に想像するシチュエーションの中の自分、とか、そういうのにちょっと似てる。
毎日新しいことを知る私たちは、毎日服を着る。
物語ってそういうさりげないところから生まれてくることなのかもしれない。
そして、その無限で自由なイメージは、私たちの一番身近な旅先だ。
アウトドアスウェット ¥5400+tax
80’sフランスライダース ¥14000+tax
90’sデザイナーズチェックコート ¥15000+tax
 
Photo:Kayo Sekiguchi
Edit:Namiko Azuma
Text:Miiki Sugita
 
Cherry Loville
住所:武蔵野市吉祥寺本町1-32-11高村ビル2F
電話番号:070-4802-8972
営業時間:1300
Instagram:@cherryloville
出典:She magazine

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