末期ヤードバーズが生み出した、ツェ
ッペリン原型サウンド

以前からジミー・ペイジが公言していた通り、ファンにはいわくつきのアルバムとして知られていたヤードバーズのライブ・アルバム『Live Yardbirds』(1971年発売)に収められた、1968年ニューヨーク公演(アンダーソン・シアター)の音源が、ペイジ自身の監修でレストアを施され、初めてオフィシャルな形で再発された。
書籍『ブルース・ロック・アンソロジー[ブリティッシュ編]』に掲載した2016年10月取材のインタビューで、現在もヤードバーズを続けているドラマーのジム・マッカーティが「近々試聴会が予定されていて、僕らも呼ばれてるんだ。最新のオーディオ技術を使って、今のオーディエンスの耳に合う良い音に仕上がっている、という話は聞いてるよ」と語っているが、それから待たされること1年強…ようやくリリースが実現したわけだ。
レッド・ツェッペリンの人気に便乗するような形で、わざわざ“フィーチャリング・ジミー・ペイジ”という叩き文句を記載して発売された『Live Yardbirds』は、メンバーに無断で歓声や効果音が追加されていた。発売後間もなくペイジが抗議し、回収騒動に発展したことで知られている。しかし末期ヤードバーズのライブ演奏を克明に記録、レッド・ツェッペリンの青写真が確認できる作品として見ると、その歴史的価値は高い。
今回『Yardbirds '68』というタイトルで発売されたアルバムは、アンダーソン・シアター公演を収めたディスク1と、スタジオ・デモを集めたディスク2で構成された2枚組。CD、LPに加えて、サイン入りの豪華ボックス・セットもジミー・ペイジの公式サイト(www.jimmypage.com)で販売されている。
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2014年発売のムック『CROSSBEAT Presents ブリティッシュ・ビート』に掲載されたインタビューで、マッカーティは本作で聴ける末期の楽曲についてコメントしてくれた。
「「White Summer」は、確かジミーが考えたんだったかな。昔のフォーク・ソングのようなものをベースにしているんだ。バート・ヤンシュのような系統のものだね。ジミーはそれを、彼独特の風変わりなチューニングで弾いて、ああいう効果を生んだ」──ジム・マッカーティ
後にレッド・ツェッペリンのレパートリーとして有名になる「Dazed And Confused」も、すでに1968年のアンダーソン・シアターで披露されている。“ジミー・ペイジがジェイク・ホルムズから拝借した曲”というイメージがあるが、そもそもこの曲を取り上げることを思いついた張本人はマッカーティだったそうだ。
「ニューヨークでジェイク・ホルムズとギグをやった時に、私は彼の演奏をステージ脇で観ていたんだが、いきなり何やらとてもムーディな曲を弾き始めたと思ったら、それが「Dazed And Confused」だったんだ。私は早速、彼のアルバムを購入し、我々なりのバージョンに作り直しにかかった。そして我々の演目としてしばらくやっていたんだが…、ご存知の通り、その後、あれはツェッペリンの曲になってしまった(笑)」──ジム・マッカーティ
マッカーティの発言が本当なら、彼自身もツェッペリン・サウンドの創出に大いに貢献したことになる。ロックの次世代を示したあの鮮烈なサウンドが、末期ヤードバーズの試行錯誤を踏まえて生まれたものであることは、本作のリリースを機に改めて語られるべきだろう。
マッカーティとシンガーのキース・レルフは1968年のうちにバンドを去り、フォーキー路線を選んだトゥギャザーを結成。続いてルネッサンスとして活動を開始し、ペイジとは異なるベクトルで新しい表現を模索していく。この時期の活動については、『ブルース・ロック・アンソロジー[ブリティッシュ編]』でマッカーティが語っているので、是非ともご一読を(※本文で抜粋したジム・マッカーティの発言は、すべて白谷潔弘氏が取材したもの)。
文:荒野政寿(CROSSBEAT)

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