【インタビュー&レポ】GRAND FAMIL
Y ORCHESTRA「この曲たちでみんなの
人生がパッと華やぐ瞬間があると信じ
ている」

2016年に松山晃太(Vo.G)千葉龍太郎(B)ピクミン(Dr)を中心に結成された5人組バンドGRAND FAMILY ORCHESTRA。新体制として初の音源となる1stEP『EUREKA E.P.』を11月18日から会場限定リリースした彼らに、バンド結成時の話から、今作に収録された4曲それぞれについての制作過程までを語ってもらった。立ち止まらずに前を向いて歩み始めたメンバーたちがどんな想いを曲に込めているのかが知ってもらえるはずだ。さらに、取材当日はリリースツアー「大家族会議Vol.3 漢たちの挽歌」初日ということもあり、下北沢SHELTERで行われたライヴの模様も併せてお届けする。
■何を以て“GRAND FAMILY ORCHESTRA”と言うのかっていうところで

■僕の歌が一番頭に来ていないと意味がわからなくなるなって
──GRAND FAMILY ORCHESTRA(以下GFO)は2016年に結成したそうですが、どんなきっかけがあったのか教えてもらえますか。
松山晃太(Vo.G・以下、松山):もともと僕と千葉が仲良くしていて、お互いのバンドの活動が止まったタイミングで声をかけあって、ドラムのピクミン、ギターの良ちゃん(森山良太)にも声をかけて始めました。もう1人最初に、えばたA.F.あいという女性ギタリストがいたのですが、亡くなってしまって(2017年8月に急逝)。5人の音的な部分が大きかったんですけど、音楽的にどうしてももう1人ほしいなというのがあったので、サポートメンバーのギタリスト・OCHANを加えて現体制に至っています。
──それが今年の10月なんですね。お互いに違ったバンドをやってきたみなさんが集まる上で、GFOではどんな音楽をやろうと話したのでしょうか。
松山:最初は本当にまったく何も考えてなくて。僕とベース、ドラムが3人でスタジオに入って何も話し合わずになんとなくセッションしながらリフ1個から広げていったバンドなので、そもそもどんな音楽をやろうっていうことはまったく考えていなかったですね。
千葉龍太郎(B・以下、千葉):狙いみたいなものは別に何もなかったですね。
松山:歌詞は全部僕が書いているんですけど、曲はなんとなく弾き語りのものやリフだけというところから始めて、セッションしてみんなの反応が良かったものから広げていくことが多いです。だから特に、バンドを結成する上でこういう音楽をやろうということは本当に何もなかったです(笑)。
──森山さんはバンド加入にあたってどんな音楽をやるのか訊かなかったですか?
森山良太(G・以下、森山):僕はこのバンドに入るまでバンド活動をしたことがなくて、このバンドが初めてなんです。千葉とは10年来の友人で、久しぶりに会ってスタジオでセッションしたときに、GFOを始めたことを知って、「俺も混ぜてよ」って入れてもらいました。当時は、日本の音楽を知らなかったんですけど、入ってみたら思った通りのロックな音楽だなって。自分はそこのフィールドにいなかった人間なので、ロックでありつつそこにどんなエッセンスを加えていけるかなって戦ってきた感じですね。
──森山さんはこれまでどんな活動をしていたんですか。
森山:即興演奏とか、現代アート的な活動をやっていました。ライヴペインティングとかダンサーと2人でやったりとか。個人的に曲作りはしていたんですけど、バンドは初めてですね。
──ロックバンドに戸惑いはなかったですか?
森山:はい、あんまり僕は怖がらないタイプなので。
千葉:いや、戸惑ってましたけどね?戸惑いしか見えなかった(笑)。
森山:そう?(笑)。やっぱり、ギターが3本ある中でどこに入れて行こうかっていうことが。それはみんなそうだと思うんですけど、明らかに音数が多い中でどう立ちまわっていくかというのは、みんなそれぞれ違うと思うので。そこに対する苦悩みたいなものはあったんじゃないかと思います。
▲松山晃太


──戸惑いというよりは、どうアンサンブルするか考えたということですね。そのあたりは松山さんはどう考えているんでしょう?
松山:僕自身は、ギターを持ちたくない人間なんです。ただ曲作りの段階で、ギターを持つわけなんですけど、結局ギターリフを僕が考えると、僕が一番弾くのが得意になる。他のギタリストに弾いてもらっても、「何か違うな?」ってどうしてもニュアンスが変わってくるので。それでこれまでなんとなくギターを持つ羽目になったまま、ず~っと音楽活動を続けてきてしまったんです。このバンドを組むにあたって、今度こそはギターを置きたいなという気持ちがあって、ギターを2人入れようと思ったんですよ。でも結局また同じことになって。そうなってくるとアンサンブルが難しかったですね。そもそも、ギター3本って理にかなってないと思っているんですけど、音源にパッケージされたものには、結構どのバンドも絶妙にギターが3本鳴っていることもありますよね。でもそれを完全に再現するには、やはり2人だと不可能な場合があって。だったらちゃんと必要なギターのアンサンブルをライヴで表現できるバンド、同期を使わずにちゃんと必要な音が必要な状態で鳴っているライヴバンドになっていこうという思考になっていったんです。そうなると自分もギターを置くわけにはいかないなと。
──なるほど。サポートメンバーのOCHANさんはキーボードも弾いていますが、曲にアプローチする上で、ギターとどう弾き分けているんですか?
OCHAN(Gt&Key):最初にアイデアがあったりもするし、メンバーがやりたいイメージに沿って入れています。そこにプラスアルファで自分のアイデアを入れたりもしますね。
▲OCHAN


──ギターが3本いる中で、千葉さんはどう考えてベースを弾いてるのでしょうか。
千葉:とにかくギターにしてもドラムにしても個性が強いので、みんなが強い点で楽曲に対して楽曲にアプローチしてくる中で、いかに自分がちゃんと線でいられるかというのは考えています。みんなを繋ぐ意味でもそうですし、点と線をこのバンドではずっと考えてます。
──ピクミンさんはバンドに加入する上でどんなことを考えてました?
ピクミン:正直、特に何も考えてなかったというのが本音なんですけど(笑)。僕は大阪で前のバンドをやっていて、何も決めずに上京するタイミングで誘ってもらったので、「楽しそうやしやろうかな」くらいのノリで始めました。なのでどういうバンドにしたいっていうのはなかったですね。バンドって、「こういう風になりたい」って話しているときが一番楽しいと思うので、そういう気持ちを大事にしたいなと思ってます。
──個性的な楽器陣の中で、松山さんはボーカリストとしてどんなことを意識して曲作りをしているのでしょうか。
松山:極論を言ってしまうと、結局人間の耳って「誰が歌っているのか」がすごく大きいと思うんです。これだけひっちゃかめっちゃかしたバンドなので、何を以て“GRAND FAMILY ORCHESTRA”と言うのかっていうところで、僕の歌が一番頭に来ていないと、意味がわからなくなるなって思っていて。そういう意味で、どんなアンサンブル、曲であっても歌い方1つで表情を持たせることができるし、且つ遠い視点から見るとやっぱり同じバンドの曲になるっていう想像をしながら、曲を作ってます。
▲千葉龍太郎


──バンド名にオーケストラってついていると、曲やアレンジのイメージがすごく広がる気がします。松山さんの歌が真ん中にあるからこういうバンド名が付けられたのかなと。
松山:それはあると思います。若いバンドを観ていて思うことがあるんですけど、色んなバンドがいる中で、求められている同じような曲をマイナーチェンジしながら出していく、変化の乏しい感じがすごく悲しくなるんですよね。というのも、アルバムの1曲目と7曲目と8曲目も同じアイデアだし、みたいなことを感じるときがあるんです。統一感ってそういうことじゃないじゃないかと思うんですよ。だってバンドマンは、音楽が好きな人たちの集まりなはずなので、曲の好みはあれど、色んなタイプの曲の良い部分を聴いてきたはずなんです。その中で、わかりやすさを追求して出していくのは戦法としては良いと思うんですけど、最近はその戦法と音楽家としてのせめぎ合いみたいなもののバランスがすごく悪いように見えていて。それは自分がバンドをやって表現していく側としてはすごく嫌なんです。別に色んな曲をやりたいわけじゃなくて、表現として色んな曲をやることと、そのバンドが何をやりたいかは相反することではないと思っているし、色んな曲をやりながらも統一感は出せるし、音楽のそういう部分をすごく信じているんです。
──そういう思いが『EUREKA E.P.』の4曲にはある、ということですか。
松山:そうですね、確実にあります。
──ではそれぞれの曲について訊かせてください。まず「ユリーカ」は“EDM meets Led Zeppelin”をモチーフにしたそうですね。これはどんなイメージなのでしょうか。
松山:僕の中のLed Zeppelinは最強のロックバンドなんですよ。ローリングストーン誌に載っていた逸話で、「みんなで考えた最強のバンドを考えようぜ」ってメンバーを組んでいったらLed Zeppelinになっちゃったっていう話があるんです。僕が好きなバンドって、メンバーの名前も顔もプレイもちゃんと頭の中にいるんですよね。そういうバンドになりたいんです。Led Zeppelinの一番すごいところって、グルーヴがすごいしライヴのかっこよさがとてつもなくロックンロールだなって。まあ、「ユリーカ」は“EDM meets ロックンロール”っていうことなんですよ。そのロックンロールの象徴が僕の中でLed Zeppelinっていうことなんです。
──コーラスの高揚感に、EDMの要素がありますよね。
松山:そうです、そのイメージがあったんです。やっぱり、時代とは乖離しすぎるとダメだと思っていて。僕は一生Led Zeppelinを好きだと思うので、それと4つ打ちだからこその高揚感をマッチングさせてチャレンジしてみた曲ですね。タイトルの「ユリーカ」は、スタジオでその日録音した音源を聴いたときに、一番頭の“ユリーカ”という歌詞が浮かんだので、最初にタイトルだけつけてそこから歌詞を書いていきました。
千葉:この曲はひたすら難しかったですね(笑)。松山さんが持ってきた音がまず難しかったんですけど、どこからかそれが良いものに自分の中で変わっていった瞬間があって。それは歌詞の“熱源”っていう言葉も相まってシンクロしていった感じがあるので、表題曲になった意味があったなって感じています。
ピクミン:自分もこの曲はめっちゃムズいと思っていて、最初はやってることがムズ過ぎて全体を聴く余裕がないまま曲ができた感じだったんですけど、歌詞が乗って初めて一歩引いて聴いたときに、すごく良い曲ができたなって思いました。
森山:もともと僕はEDM寄りな人間なのでこういう曲は得意な方ではあるんです。EDM的な要素で言うと、隙間をどう残していくかが重要なファクターになると思うんですけど、このバンドはギターが多いので埋めて塗って埋めて、みたいな作業が多かった。でもこの曲は随分隙間を残しながら、疾走感とサビに行ったときの4つ打ちが、そのまま跳ねるだけじゃなくてロックンロール的な転がり方をするようなアレンジを心がけました。
OCHAN:僕も今回、曲作りから参加しているんですけど、一緒にスタジオに入り始めて3、4回目でこの曲を作り始めて、めっちゃムズいなと。
一同:ははははは!
松山:みんな“ムズい”しか言ってない(笑)。メンバーはみんな作曲をやってきた人間なんですけど、今僕がイニシアティブを取って曲作りをしている中で、作曲家の要求に対しての理解度って他のバンドより圧倒的に早いと思っているんです。だけど、自分の中にないものとか得手不得手の向こうにあるものを要求されたときに、そこが壁になってしまうのかなということもあって。それをとりあえず1回取っ払うところからこの曲は始まったんだと思います。
千葉:確かに。曲の解釈っていうところだと思うんですけど、そこが難しかったですね。
■「流星群の夜に」は一番音楽偏差値が高いと思っているんです

■複雑にならないようにするにはどうるかをみんなで考えて作った
──「早く寝なさい」は変則チューニングを使っているそうですね。どちらかというとむしろこの曲にLed Zeppelinっぽさを感じました。イントロのフレーズがジミー・ペイジっぽいというか。
松山:ああ~そうですね。これは僕が弾いています。変則チューニングを使ったフレーズはCDに毎回1曲入れているんです。
──それを2人のギタリストに任せずに自分で弾くというのは?
松山:いや、そこなんですよ(笑)。
千葉:それが松山晃太だと思っています(笑)。
松山:手癖みたいなところも多分にあって、いきなり人に弾いてと言ってもすげえ弾きづらいと思うんですよ。それなら自分で弾いた方が早いなって。「こういう曲なんだけど」って弾き出してセッションが始まると、みんな色々アイデアを出してくるから、結局自分が弾くことになるんですよね。
千葉:この曲は、唯一リフからセッションしてできた曲ですね。
松山:めっちゃ早くできましたから。1日かかってないくらいの。
──3曲目の「流星群の夜に」は対照的にすごく入り組んだアレンジが聴けます。
松山:この曲は一番音楽偏差値が高いと思っているんです。僕は好きな楽曲を聴いた後に頭の中で曲の構成やコード進行をある程度つかんでから、ネットで楽譜とかを見て答え合わせをするのが好きで。この曲は、自分が聴いたらそういう風にするだろうなっていう曲ですね。ただ、決して複雑に聴かせないようにするにはどうしたらよいかをみんなで考えて作った記憶があります。
千葉:この曲は、松山さんが持ってきた段階で色彩みたいなものがあったので、それを表現してかったこともあって、自分の気持ちもどんどん乗っていきましたね。GFO結成前、まだスタジオにも入ってない頃に、なんとなく「このバンドでどういう曲をやるんだろう?」ってなんとなくイメージしていたものに、この曲が一番近かったです。こういう曲をやりたかったし、最初にイメージしていたGFOがここにきてやれた気がします。
森山:「流星群の夜に」は“キャッチーな曲を作ろう”っていうのが、曲作りの根幹にあったので、できるだけリフレインするフレーズを作ろうと思いました。一番キャッチーで、ちゃんと口ずさめるようなフレーズをつけていこうという部分がアレンジのメインになりました。
ピクミン:僕はもともと手数が多くてドカドカやるのが好きで、シンプルにするのが苦手なんですよ。でもシンプルなビートが苦手っていうのはドラマーとしてちょっとなっていうのもあって、この曲ではそれに挑戦していたというか。でも、ただ手数を減らして必要最低限のドラムにすると僕の良さも消えていくし、曲としても“良い感じの中肉中背”を目指した感じです。
▲ピクミン


──最後の「祭りの後」はシンプルな曲調ながらドラムは一番暴れていますよね?
ピクミン:3ギターということもあって、ドラムが出過ぎるとバランスが崩れてしまうというのがあると思うんですけど、ドラムが出られる限界を突きつつ、楽曲を成り立たせたいという気持ちがありました。
──「祭りの後」は他の曲と違ってギターソロで歌メロを弾いてますね。このソロは森山さんですか?
森山:そうです。「ソロはAメロを弾いた方がエモくない?」っていう晃太君の発言で、この曲はうちのバンドで唯一ソロが順番的にも変則的で、Aメロをなぞるタイプのギターソロになりました。
千葉:この曲はリズム隊の得意技をぶち込んだというか。速い8ビートが俺もピクも得意だし自信があるところなので、それを良い塩梅で入れられたんじゃないかと思います。
OCHAN:ストレートな曲に見せかけて、結構コードは複雑だったりするんですけど、そこはリズム隊が締めて、ボーカルも中心にいるので、僕はなるべく派手なことはせずに上に乗る感じで弾いてます。
──1枚の作品を締めくくる上で、とても良い余韻を残す終わり方だと思いますが、松山さんはこの曲にどんな思いを持っているのでしょうか。
松山:この曲は僕の得意な方で。なんとなく「普通の8ビートの速い曲が欲しいよね」っていう会話から、スタジオでバーッと作って「できた!」っていう感じで作った曲。歌詞を付けたときに、ものすごく好きな曲になったんです。メロとバンドアレンジだけを聴くと、単純に普通の良い曲だなっていうくらいの感覚でいたんですけど、最後にギター1本「バーン」って鳴らして終わっていくところを家に帰って聴いたときに、「これは“祭りの後”だな」って思って、そういう曲にしたいなって歌詞を詰めていって完成したらすごく良い曲になって。実は僕もすごく気に入っています。
▲森山良太


──すごく素敵なメロディと歌詞だと思います。歌詞についてもう少し訊かせてもらってもいいですか。
松山:一番イメージしていたのは……えばたが亡くなったときに、4人で追悼ライヴをやったんですけど、そのライヴを俺は“祭り”にしたかったんです。追悼ライヴという名の祭りにしたくて。そのライヴをやったときの余韻みたいなものが自分の中に残っていて。でも直接的な表現をすると曲が重くなるのがすごく嫌だったので、なるべく他の人も入ってこれるような隙間を残しつつ、言葉を紡いでいきました。
──祭りという言葉と、「ユリーカ」で全員が歌い踊る感じが繋がっているように思えます。
松山:そうですね、それは考えました。最終的に楽曲を並べる順番で、もう1回リピートして聴いてもらうようなイメージがありました。
──さて、下北沢SHELTERからリリース・ツアーが始まりますが、それぞれ意気込みを訊かせてください。
ピクミン:すごく良いCDができたと思うんですけど、まだこれをお客さんに表現するまでには至っていないと思っているので、ツアーを通して確実に楽曲を自分のものにして、ファイナルを迎えたときにみんなが納得するところまで持って行きたいです。それと、この5人でツアーをまわるのは今回が初めてなので、それも含めて良いライヴをしたいです。
OCHAN:僕はこのバンドでライヴをやったこともまだ数回しかないんですけど、新体制ということでGFOファンのみなさんも期待してくれていると思うので、良い演奏をしたいと思います。
千葉:「リンディンドン」のときもそうだったんですけど、手拍子だったりとか、ライヴを通してお客さんも出来上がっていくライヴバンドだと思っていますので、MVを見たりしてみなさん仕上げてきてほしいなと思います。
森山:今回は4都市をまわるツアーなんですけど、僕たちは結成してまだ1年半ちょっとでまだまだ認知度が少ないので、新しいCD、MVを出して各地に自分たちのことを好きでいてくれる人が増えたら良いなと思っていますし、それを獲得できるようなライヴをすることが今回のツアーの目標です。
松山:良い歳をして尖った感じでちょっと恥ずかしいんですけど、最近売れてるアーティストとか、ちょいちょい名前を聞くアーティストとか、どうフラットな気持ちで考えても、僕らの方がカッコイイなって最近マジで思ってるんですよ。じゃあなんでまだみんな僕らのことを知らないんだろうって、悔しい気持ちでいるんですけど、自分たちの音楽がカッコイイのはわかり切っているので、この5人で作った4曲をなんとかお客さんにかわいがってほしいなって。すごく良い作品ができたと思っているし、この曲たちをかわいがってくれたおかげでみんなの人生がパッと華やぐ瞬間があると信じているので。ライヴだったら、その瞬間を一番ダイレクトに届けられるんじゃないかなって思っていますし、来てくれたみんながそれぞれ幸せな気持ちになれるような、見てくれた誰かの感情をグッと動かすライヴをしていきたいです。
取材・文:岡本貴之
リリース情報


「EUREKA E.P.」

発売 2017年11月18日

価格 1,200円(税込)

収録曲

1. ユリーカ

2. 早く寝なさい

3. 流星群の夜に

4. 祭りの後
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【GRAND FAMILY ORCHESTRAライヴレポート】


2017年11月18日(土)東京・下北沢SHELTER<GRANDFAMILYORCHESTRA presents ~レコ発 大家族会議 Vol.3 東京編~「漢たちの挽歌」>
「デカいこと言います!日本最強のロックバンド、GRANDFAMILYORCHESTRAです!」ライヴ前半で松山晃太(Vo.G)は叫んだ。11月18日(土)東京・下北沢SHELTERにて行われたGRANDFAMILYORCHESTRAのライヴ<GRANDFAMILYORCHESTRA presents ~レコ発 大家族会議 Vol.3 東京編~「漢たちの挽歌」>は、愚直なまでにロックンロールの熱源を振りまいた鬼気迫るほどの熱いライヴとなった。
このライヴは当日から会場限定リリースされた1stEP『EUREKA E.P.』のリリースを記念したツアーの初日として行われたもの。対バンにハルカミライを迎え、会場は立錐の余地もないほどの超満員に。
「お待たせしました!はじめます!」松山晃太(Vo.G)の第一声から始まったのは、「TAXI」。千葉龍太郎(B)、ピクミン(Dr)による重たいリズムに森山良太(G)、サポートメンバー・OCHAN(Gt.Key)によるファンキーなギターのカッティングが乗った、意外にもミディアム・テンポのクールな立ち上がりだが、沸々と高揚感がよじ登ってくるようにサビへとつながり、その沸点でフロアから一斉に右手が突き上げられた。パワフルなドラムを核としてかなりキメを多用するあたりに現在のバンドのコンディションや5人の一体感が伝わってくる。松山が指弾きでオリエンタルなリフを爪弾き、新作からのロックンロール・チューン「早く寝なさい」へと進む。性急なリズムでグングン突っ走るこの曲では、早くもサビで観客とも一体になる様子も見られた。新曲であろうとも観客を乗せてしまうあたり、GRANDFAMILYORCHESTRAがライヴバンドたる所以を感じることができた。
「新しい作品のレコ発にお越し頂きありがとうございます!素晴らしい作品ができたと思って、自信満々でステージに立ってます」とのMCから歌われたのは、新作EPのリード曲「ユリーカ」。既にオフィシャル・ウェブサイトでMVが公開されていることもあり、すっかりファンには浸透しているのだろう、サビのメンバー全員によるコーラスでは、観客も共に声を上げながら飛び跳ねる。続いてすかさず始まった「リンディンドン」「ラバーソウル」でも合唱が続き、祝祭感に満ちた光景が繰り広げられた。手数が多く派手なピクミンのドラムと、千葉の太いビート、タッピングを交えたトリッキーなプレイも見せる3本のギターの分厚さ、それに加えて全員がコーラスが行うものだから、ステージから放たれるサウンドは洪水のようで、観る者は巻き込まれざるを得ない。ステージが暗転すると、バスドラとベースの重いビートが響き出し、メンバーによるコーラスのハーモニーから深淵なサウンドが始まる。空間系のエフェクトを活かしたギターが絶妙にサイケなニュアンスを表現していた「ニコウエ」は、ここまでほとんどノンストップでロック・チューンを畳みかけた後だっただけに、良いアクセントになっていた。
「最高に楽しいー!ただ灼熱すぎるんじゃー!」と、髪からボタボタと汗の雫をしたたらせながら叫ぶ松山に、観客から笑いが起きる。メンバーは全員汗だくでびっしょりだが、観客も汗だくで、まさに会場は灼熱地獄、いや灼熱天国だ。そんなライヴの熱さは、松山のこんなMCからも。「今日という日に、東京の下北沢SHELTERでロックバンドとして歌を歌えている僕個人の人生としては、本当に100点満点です。そして、今日ここに好きなロックバンドの音楽を聴きに来ているあなたたちの人生も100点満点だと思うし、そうあってほしいと願っています」。そんな言葉から歌われたのは、「東京」。グッと音圧を抑えたメロディに寄り添った演奏で抒情的な歌を聴かせ、続く新作からの「流星群の夜に」では、抑揚のある演奏と歌で星空が浮かぶようなサウンドスケープを見せた。松山が歌う世界に、ふと自分自身の日常を重ねてしまうようなこの2曲は、この日のライヴの核となっていたように思う。


「ツアー行ってきます!俺、本当に今が一番音楽が楽しいです!ロックンロール・バンドが大好きです!ライヴハウスが大好きです!色んなことがあったけど、バンドで絶対前に進むって決めて、今日を迎えることができました。ここにいるみんなと作っているこの一瞬一瞬が、俺にとって宝物です。今日は本当に来てくれてありがとうございました!」


熱いMCから、『EUREKA E.P.』のラストを飾る「祭りの後」へ。2番に入った序盤の歌詞で松山が“青春とは何か?”と強調して叫んだのが印象的だった。ラスト・ナンバー「茜色」を終えてステージを降りたものの、観客の声に応えて強烈なギターリフからアンコールの「黄金になる」へ突入。ラストには千葉がベースを抱えたまま観客に飛び込み、クラウドサーフする中、エンディングを迎えた。「音楽は、ライヴバンドは、やっぱり最高だと思わねーか、オイ!」そんな叫びを残してステージを降りたGRANDFAMILYORCHESTRA。全力疾走で駆け抜けたライヴの余韻が、熱く熱くいつまでも会場に残っていた。


▲リラックスしたリハ風景

▲ライブを終えてほっと一息のメンバー


取材・文:岡本貴之

セットリスト


2017年11月18日(土)東京・下北沢SHELTER

<GRANDFAMILYORCHESTRA presents ~レコ発 大家族会議 Vol.3 東京編~「漢たちの挽歌」>

1. TAXI

2. 早く寝なさい

3. 大人の旅

4. スモーキーブルース

5. ユリーカ

6. リンディンドン

7. ラバーソウル

8. ニコウエ

9. 東京

10. 流星群の夜に

11. 祭りの後

12. 茜色

EN 黄金になる
ライブ・イベント情報


リリースツアー 「大家族会議Vol.3 漢たちの挽歌」

2017.12.14(木) 大阪Pangea w/ ジラフポットYellow Studsフィッシュライフ

2018.01.12(金) 仙台MACANA w/ 真空ホロウThe Cheserasera、ANABANTFULLS、小夜の聲

2018.01.18(木) 名古屋CLUB ROCK’N’ROLL w/ Outside dandy、ANABANTFULLS

2018.01.26(金) 新代田FEVER w/ ircle、ANABANTFULLS

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