高橋優、ニューシングル『ルポルタージュ』インタビュー

高橋優、ニューシングル『ルポルタージュ』インタビュー

高橋優、ニューシングル『ルポルター
ジュ』インタビュー

ー それで言うと優くんは勿論…。

歌います!というか、歌うことしか出来ないから。

ー 優くんの曲では最近よく人生に対して「素晴らしい」という言葉や、相手への賛美として「美しい」という言葉が出てくるよね。でも「美しい」も決して外見のことではなく存在のことを言っていて。

ああ、そうですね。「素晴らしい」に関しては、世界があんまり素晴らしくないからじゃないですか?多分。”ルポルタージュ”もそうですが、デビュー曲の“素晴らしき日常”という曲でも、どこをどう切り取っても素晴らしいとは言えない内容を歌っている。でも最後に「素晴らしい」と言っている。それは決して皮肉のつもりで言っているわけではないけれど、皮肉にも取れる場所にあえてその言葉を置く癖が自分の中にはあるんですよね。素晴らしいことを言って素晴らしいと歌うのが一番美しいのかもしれないけど、自分の場合はそれでもやっぱり素晴らしいって歌っていたい。音楽くらいはそういうことを口に出して言いたいというか。“明日はきっといい日になる“にしても「今日がどういう日だったとしても」という前提があって。

ー はいはい。“ルポルタージュ”でも、そういう部分は感じました。

そうなんです。この曲でも最後だけ「君がいる限りこの世界は素晴らしい」と歌っているので、もうそれくらいしか希望が残っていないと取られてしまうかもしれない。でもそれでも良いと思って。

ー そういえばオフィシャルコメントで「自分自身が大人になったと実感できることは少ない」と言っていたけど。

結構僕の周りでもそう言っている人が多くて。

ー 実際子供の頃に考えてた時の大人って、もっと完璧な人間なのかと思っていた(笑)。

やっぱり(笑)。世の中そのものがちゃんと成長していっているのかどうなのかにも結構疑問を感じる部分があって、物は便利になって短縮化されている。飛行機や新幹線も電波も早くなって便利になっているし色々便利なものがあるから、人間が努力しなくてもよくなっていくじゃないですか。

ー はいはい。

覚えなくて良くなるし、練習しなくてよくなるし、勉強しなくて良くなる。そうなると人は醒めていくから、怒ったり喜んだりしなくなるし、悲しんだりもしなくなって最終的には「無」になる。確かに便利なのは楽だけど、その半面すごく恐ろしいなと思って…。発明する人の脳みそは優れているかもしないけれど、使う人たちはどんどん退化して幼児化していっているみたいな。

ー 便利さの代償は大きいね。

だから30歳過ぎても大人になりきれていないというのは、自分の世代や少し上の世代ならではの言葉なんじゃないかと思っているんです。それよりもっともっと上の世代の人たちって…それが良いとは言わないけど「16歳過ぎたら働いていたから」とか「大人子ども言ってらんなかったんだよ。だから有無を言わさず頑張るしかなかったんだ」とか言うじゃないですか。

ー 確かに良し悪しは別だけど、よくそういう言葉を聞くね。

自覚とか、本当の意味での責任というのは僕らよりずっと前の世代の人の方がしっかりあったように思うんですよ。今回ドラマのタイトルが「オトナ高校」だったので、大人ってなんだろう?子供ってどういうことだろう?ということは曲を書くにあたってすごく考えました。

ー 優くんが考える子供の頃の大人像って?

何かしらのプロになっていたり、しっかり世の中を渡っていける人じゃないですかね。

ー でも優くんだって音楽のプロになってしっかり生きてるでしょ。

いやいや、僕なんてまだしっかり出来ていると言えないから。ただそれを良しとしちゃいけないですよね。例えば「自分なんて全然駄目なんですよ」って開き直っちゃったら本当に駄目じゃないですか。

ー そこで終わっちゃう。

そうそう!そう言いながらも実は工夫していたり、心の中で悔しがっていたりしていないと成長がストップしてしまう。もし自分が馬鹿である自覚があるならば工夫する努力くらいはやらないと、本当にただただ落ちこぼれになってしまうという気がするんです。僕は誰よりも馬鹿という自覚があるので…。

ー え、そうなの?

めちゃくちゃあります!多分この六本木(取材場所)の中で一番馬鹿だと思っているから。

ー ありえないし(笑)。

いや、本当に(笑)。でも馬鹿だからこそ出来ることがあるというか、馬鹿にしか出来ない努力もあるかもしれないと思えば、生きていく価値もあるし。100人いて99人が見捨てても残りの1人は見捨てないかもしれないって希望を残して頑張れる気がするんです。それが馬鹿なまんまで「見捨てればいいじゃん」なんて言い放ってしまえば、いよいよ100人中100人が本当に見捨ててしまうし構ってくれなくなる。

ー 最初は励ましていても、その人自身が開き直っていたらそのうち面倒くさくなってくるしね。

そうそう。だから何も出来なくても奮闘している人のドキュメンタリーとかを見ると面白いじゃないですか。

ー ええ。

それは僕が音楽をやるモチベーションの大きなひとつですね。自分が音楽家として才能があるとか、音楽の神様に振り向いてもらったとかいう実感は今まで一度も味わったことがないですけど、でも僕が人間として、ひとりの男として、泥に塗れたり誰かに中指立てられたり蔑まれたりしているにもかかわらず奮闘している姿を、物好きな人は楽しみにしてくれるかもしれない。そういう高橋優が、次に何を歌おうとするのか、次にどういうことをやろうとするのか、一億二千万人くらいの日本の人口の中で何人かはエンターテイメントとして見てくれるかもしれない…。

ー ちょっと待って(笑)。それは分かるけど言うに事欠いて何人って。

あ、何十人かはいるかも(笑)。まあ勿論それは冗談としても、1人でもいる、0ではないというは本当に大きいんですよ。僕もさすがに一人では歌いたくないから0人になったらさすがに考えるけど(笑)。でも一人でもいるならばやる価値はある!

ー まあ言わんとすることは分かりますよ。かなり飛躍してるけどね(笑)。でも優くんは歌どころか俳優もね…。

いやいや(笑)。

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