【THE PINBALLS インタビュー】
ユニークな歌詞で差を付ける
ロックンロールバンド
THE PINBALLSがメジャーデビュー!
通算7枚目の新作ミニアルバム『NUMBER SEVEN』は“7”にまつわる謎を散りばめた意欲作。バンドがひと皮剥けた印象もある。メジャーデビューとなる今回は、そんな新作の話のみならず、バンドのルーツも併せて古川貴之(Vo)に訊いた。
今回のメジャーデビューのタイミングでTHE PINBALLSを知る人も少なくないと思うので、改めてバンドがどんなふうに始まったのか聞かせていただけますか?
全員同級生なんですよ。森下とは幼稚園から一緒で、中屋とは小学絞から。それで、石原と僕が高校の同級生で、高校時代にはそれぞれが別のバンドを組みながらたまに一緒にやったりしていたんですけど、4人で本格的にバンドをやったことってなかったんです。23歳の時に他の友達が就職する中、僕はバンドを続けたいと思って、最後のチャンスだって気持ちで声を掛けたのが今の3人だったんですよ。
どんなバンドをやりたいと考えたのですか?
中屋とよく言ってたのは、“マイナーコードで速くて、ちょっとジャズっぽい感じがあるやついいよね”でしたね(笑)。
具体的なイメージはあったのですか?
みんな他にもいろいろ好きなんですけど、共通して“BLANKEY JET CITY最強だよね”って言ってました。
古川さんの作る曲がTHE PINBALLSの大きな魅力だと思うのですが、曲を作り始めたのはいつ頃でしたか?
中2です。中屋がリズムマシーンを使えたので、よく一緒に作ってました。
自分の感情をストレートな言葉で表現するのではなく、物語や比喩を駆使して詩的な表現に託した歌詞は他のバンドにはない魅力ですが、そういう歌詞は曲を作り始めた当初から書いていたのですか?
その後、自分たちらしい曲を作れるようになったと感じたのはどのタイミングでした?
これは自分にしかできない!と思えたのが、1stフルアルバム『THE PINBALLS』の「カルタゴ滅ぶべし」と「樫の木島の夜の唄」。ミックスした音源を聴きながら、“これ、俺が作ったのかぁ”って泣きそうになって、“こんな曲を作らせてくれて、ありがとう”ってメンバーとスタッフに言ったんですよ。そしたら、“何言ってたんだ、お前”“何ひとりでエモくなってんの? 気持ち悪い”みたいな空気になって(笑)。今回も聴きながら“これ、良くない!?”みたいなことをひとりでわちゃわちゃ言ってたら、“うるせぇ!”みたいな感じになりましたけど(笑)。
(笑)。今回はどんな作品にしようと考えたんですか?
謎があるものにしようと思いました。「that girl」と「ひとりぼっちのジョージ」以外の5曲は、今回が通算7枚目で全7曲だから“7”に関するテーマで作っているんですけど、それを言わない限り分からないようにしようというか…僕らの曲を聴いてくれる人って、いろいろ深読みするんですよ。それでも分からないものにしようと思って、今回はいろいろ仕掛けを作っているんです。でも、今って何でも答えがすぐ分かる世の中だと思うんですよ。想像できる余地を残すのは当然なんですけど、それプラス、すぐに答えが出ない、分からないものがあったほうが楽しいんじゃないかって。僕らのことを大好きでいてくれている人でも100パーセントは分からないだろうっていうくらい、ほんといろいろなものを詰め込んでいるんです。そういう人たちに対して秘密を1個持っているというのが愛情というか、分からないからって通じ合えないんじゃなくて、その人たちへの敬意として絶対見せない部分を持っていることで、関係がより良くなるんじゃないかって気持ちがあるんです。
なるほど。「七転八倒のブルース」という分かりやすいものもあったり、歌詞の中に仕掛けたのもあったり、言われてみると確かに“7”にまつわる秘密がいくつも隠されていますね。
THE PINBALLSを好きな人たちは歌詞をいっぱい読んでくれるから歌詞の中の秘密はたぶん分かると思うんですけど、絶対分からないやつが音の部分で1個あって。“誰も気付けないんじゃ意味がない”と中屋に言われたんですけど、自己満足でもいいからやりたかったんです。そしたらディレクターが乗ってきちゃって、“そういうのやることが楽しいんじゃない?”って。それで中屋も渋々“いいよ”って。
曲ごとにリズムに変化を付けるなど、ひと皮剥けた印象もありましたが。
そこは意識的に。他にもいい曲がいっぱいあったんですけど、なるだけ飽きないようにと考えて、毛色の違う曲を残したんですよ。
古川さん的な聴きどころは?
4曲目の「ひとりぼっちのジョージ」はリードじゃないんですけど、今、僕らを応援してくれる人たちに聴いてほしいと思います。その人たちのために作った曲なんですよ。
何か新たな試みはありましたか?
作っていた段階ではアルバム全体のテーマを歌った部分が5曲目の「神は天にいまし」のCメロにあったんですけど、それを削りました。それが面白かったです。アルバムを通して一番言いたかったことなんですけど、長すぎて入らないし、“もっとシンプルなほうがいい”とメンバーから言われて、僕としては悔しかったけど、確かにシンプルなほうがいいと思ってばっさり切ったんですよ。いろいろなことをたくさん考えて、そこからちゃんと印象に残るものを選んだっていうのが今回多くて。そういうところがチャレンジとしては良かったんじゃないかなと思います。言いすぎないところが。
曲も良くなったし、歌詞も良くなったと?
曲としては確実に良くなったけど、歌詞としてはどうかな? でも、男らしいと思います。全部言わないことが、お父さんの“俺は黙って食う”みたいな(笑)。喋りたがりなんですよ、僕は。その僕がグッと堪えられたんだから、確かにひと皮剥けたのかな。
取材:山口智男
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ミニアルバム『NUMBER SEVEN』2017年12月6日発売
日本コロムビア
2/10(土) 愛知・池下CLUB UPSET
2/11(日) 大阪・梅田Shangri-La
2/23(金) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
ザ・ピンボールズ:2006年埼玉で結成された4人組ロックバンド。『SUMMER SONIC』など数々のフェスやイベントにも出演し、アニメ『ニンジャスレイヤーフロムアニメイシヨン』第3話エンディングテーマ『劇場支配人のテーマ』が大きな話題に。17 年12 月のミニアルバム『NUMBER SEVEN』をもってメジャー進出。収録曲「七転八倒のブルース」はTV アニメ『伊藤潤二『コレクション』オープニングテーマとして抜擢。18年11月には待望のメジャー1stフルアルバム『時の肋骨』をリリース。20年12月に満を持してメジャー2ndフルアルバム『millions of oblivion』をリリース。21年2月よりワンマンツアー『millions of memories』を敢行する。ガレージともロックンロールとも形容しがたい独自ロックサウンド、荒々しくも歌心あふれる古川貴之のハスキーヴォイスとキャッチーで勢いのあるメロディー、物語のようなファンタジックで印象的な詩世界でロックシーンを揺らす。THE PINBALLS オフィシャルHP