本当の意味で“心に寄り添う曲”とはこのことだった。メジャーデビューを果たした実力派バンド、アンテナにロングインタビュー!

本当の意味で“心に寄り添う曲”とはこのことだった。メジャーデビューを果たした実力派バンド、アンテナにロングインタビュー!

本当の意味で“心に寄り添う曲”とは
このことだった。メジャーデビューを
果たした実力派バンド、アンテナにロ
ングインタビュー!

アンテナプロフィールと、夜の始まり『アルコール3%』
──初めに皆さんに自己紹介をお願いします!
Vo.渡辺諒(以下、渡辺):ヴォーカルの渡辺諒です。
Dr.本田尚史(以下、本田):ドラムの本田尚史です、よろしくお願いします。
Gt.池田晃一(以下、池田):ギターの池田晃一です、よろしくお願いします。
Ba.鈴木克弘(以下、鈴木):ベースの鈴木克弘です、よろしうお願いします。

──楽器隊の皆さんもコーラスに入られるんですよね?
渡辺:そうですね、全員コーラスに入ってもらっています。

──渡辺さんと池田さんはキーボードも担当されるとか。
渡辺:そうですね、俺のはオルガンで、ギターはシンセで細かいところまで弾いてくれます。

──ライブがどんな感じなのかすごく気になります!
渡辺:是非一回見に来てください!

──結成は7年目でメジャーデビューとなりましたが、メジャーシーンでやりたいことや今掲げている目標は?

渡辺:自分たちの気持ち的には何か変わったりっていうことはそんなにないんですけど、関わる人が増えたりする分自分たちの音楽を評価してくれる場所がどんどん増えてくるというか、音源が流れる場所にしてもライブをする場所にしても、与えられる場所が増えてくるので、その時に自分たちの力を思い切り出して、身になっていくように常に挑戦するっていう気持ちは膨らませていきたいなと思います。

──聴く人の層が広がったり、アンテナを全く知らなかった人の耳に触れる機会もあるかと思いますが、そういった意味で曲作りに変化はありましたか?
渡辺:うちらはライブとかフェスでみんなと一緒にワァーッとやるタイプではないので、どこまで聴く人の日常に溶け込めるかっていうところの音楽だと思っていて、曲作りで何かを変えようっていうよりは自分たちの本質をより深く高めてあげられるっていう意識は上がりましたね。

──なるほど。アーティスト写真もなかなか印象的ですが、アンテナさんのバンドとしての特徴が表れているような?
渡辺:そうですね、バンドのコンセプトとして“ニューレトロ”っていうのを掲げているのでそのアー写がクラシックカーを借りて海外っぽいところで撮っています。昔のクラシックカーに乗っているのに現代っぽいiPadとかのアイテムを持っているっていう、古いものと新しいものの融合をアー写でも表現したかったです。

──このアイデアも皆さんの方から?
渡辺:そうですね、こういうことをしたいっていうのをスタフチームに投げかけて、スタッフチームが形にしてくれたていう形ですね!

──作詞と作曲はどなたが?
渡辺:渡辺がやっています!

──歌詞や曲に触れて、アンテナさんの曲が生まれるきっかけがとても気になりました。
渡辺:普通に日常生活をしていて嬉しかったりムカついたり悲しかったり、瞬間のことをなるべく覚えておくようにしていて、自分の感情が動いた瞬間のことを歌にします。
お酒飲んでて悲しい気持ちになったらお酒の曲を書いてみたり、自分の気持ちを代弁してくれるモノっていうのを探すようにしています。

──ストレートに感情を言葉にするっていうよりはニュアンスっぽい言い回しをされているのもそういうところなんですかね。
渡辺:そうですね。

──収録曲の『アルコール 3%』はまさにそのお酒を飲んでいる時に生まれた曲なんですね!アルコール度数3%のお酒を飲まれるんですか?
渡辺:多分初めて飲むお酒って、ジュースみたいなお酒でも“これがお酒か”って飲むわけじゃないですか、大人になってお酒を飲めるようになっていくと“こんなのジュースじゃん”ってだんだん飲まなくなっていったりすると思うんですけど、その“ジュース”を飲んだ時に身体が疲れていたりするとちょっと酔っ払っちゃったりもするし、自分って大人になれているようでなれていなかったりするのかなっていうことを考えることがあって、そういう時に書いた曲ですね。
──3%のお酒からそういう考えに至って曲が生まれるって素晴らしいですね!
全員:(笑)
渡辺:そういうことが全曲通してあると思います。

──日常生活のすべての瞬間に曲のきっかけがあるってことはそれだけ常に、それこそ“アンテナ”を張っていらっしゃるんですね。(ドヤ!笑)
渡辺:そうですね、あとはバンド的に、誰かの背中をドンと押してあげるっていうより誰かの背中を支えながら寄り添っていたいっていうコンセプトもあるので、なるべく歌詞を見たときに自分もその世界にいるような錯覚をさせられるところまでいけないと背中を支えられなくなっちゃうと思ってて。
人の演劇を観ている感覚だと背中を支えられている感覚がしなくなっちゃうと思うんで、聴く人がなるべく感情移入できるように、みんなが経験していて共感できるような、より日常的なものをきっかけに自分の気持ちを載せるようにしています。

──曲と歌詞って同時に作られるんですか?
渡辺:一緒に出てくることもあるし、どっちかから先に出てくることもあるのでその都度曲によってですね。

──『アルコール3%』をインタールドからの歌詞が入る曲としては1曲目になりますが、この順番に入れてきた意図が何かあるんですか?
渡辺:今作は夜の話をテーマにしていて、最後の曲『ぼやけた朝陽』で「朝を迎えよう」って終わってるんです。逆に『アルコール3%』は「今日も疲れたなあ」って夜の始まりを書いているので最初に持ってきました。

──曲順が時間軸とリンクしているんですね。
渡辺:そうですね!

──アレンジはみなさんでされるんですか?
渡辺:基本的には居ればデモテープ作ってみんなに投げて、一回俺の頭の中のものをみんなで表現してみて、ちょっとずつ微調整をしていくっていう感じですね。

──楽器隊のみなさんはどういったところで主張していこうっていうところはあるんですか?

鈴木:あんまり元のデモから外れたことはやろうと思っていなくて、本当に彼の頭の中のものを1回再現するのが1歩目で、打ち込みで入ってる音を生でやってみたらどうなるか、人間味を出したほうがいいのか、出さないほうがいいのかっていうところを含めて調節していきますね。

──『アルコール3%』に関してはいかがでしたか?
鈴木:最初のドラムとかは打ち込みじゃ作りづらそうなフレーズが入ってるかなって思いますね。
本田:ものによっては一定の音が鳴ってる機械感の中でも機械には出せないような強弱とかニュアンスで人間味を押し出すっていうところは意識しました。
池田:俺は曲を通してずっと同じフレーズが続くんですけど、作った本人はどう思っているかわかんないんですけど、後半のサビだけちょっと展開を入れたりしてます。展開してるって思われないくらいの最小限の動きで、なんとなく飽きなくなればいいなと思ったりして。

メンヘラチックな一面に触れた『呼吸を止めないで』
──最後のフレーズはどういう意味だったんだろうと気になっているところですが、まずこの曲がどうして生まれたか、ということから聞かせてください。
渡辺:例えば誰かの失恋の話とか、誰かの恋愛が実るっていう歌っていうのは自分の中でそんなに響かないことが多くて、それより“どう生きていくか”とか“生と死”みたいなところのテーマに惹かれることが多いんです。
この曲はまさに「呼吸を止めないで」って言っているから“生き続けていきましょう”っていう歌なんですけど、最後に「あなたの呼吸を止めてあげるよ」っていうのは、ひとりぼっちだったあなたの呼吸を止めてあげるよっていうことなので、呼吸が止まるのは孤独だったあなたで、その先僕と一緒にいるあなたは呼吸を止めないで生きていきましょうっていうことです。そこを伝えたいがための言葉遊びを最後に入れました。

──そういうことだったんですね!
渡辺:ちょっとメンヘラ的な告白の仕方というか、“あなたと生きていきたいです”っていう告白のために「孤独だった あなたの呼吸を止めてあげるよ」っていい方をしていますね。
──確かに、ちょっとメンヘラチックだったり女々しい部分がアルバム全体を通して見られましたが、渡辺さんご自身はそういった部分を自分に対して感じることはあるんですか?
渡辺:そうですね、男っぽいところだけをずっと押し通すより、男っぽさの裏側にある葛藤の部分を全部書きたいっていう想いがあるので、自分の弱さとか女々しいところ、っていう誰しもが少なからず持っている部分は書いていきたいです。

──『呼吸を止めないで』では分かりやすく反映したわけですね。
渡辺:俺の中にある女々しい部分とか、「呼吸をとめてあげる」って言いきっちゃうある種の強さも全部書きたかったです。表面と裏側の両面をどの曲にも残していきたいと思っています。

──この歌詞に共感したり、情けなく思ったり、時々わかりすぎて恥ずかしくなるような感情になったりするのは、そういった書き方をされているからなんですね。
渡辺:そうだと思います、そう感じてくれていたら嬉しいです。歌詞に対してそこまで触れていただけるのもすごく嬉しいです。

──歌詞って楽器隊の皆さんにはどの段階で渡されるんですか?
渡辺:後から歌詞を渡すことが多いですね。

──楽器隊の皆さんが、渡辺さんの歌詞に対して思うことは?
鈴木:いつも思うのは、性格出てんなぁってことですね。多角的にものを見ているというか、そういう人なんですよね。
自分が全然何も考えてないんで、スゲェなぁって思います。
全員:(笑)

本田:いいなって思う歌詞でも、レコーディング終わってみたら歌詞が全然変わってたなんてこともあるんですけど、それはめちゃめちゃ考えてるからこそだと思うんで、言い回しとか毎回出来上がりを楽しみにしていたりしますね。レコーディング終わってみたら歌詞変わってたっていうのが実は楽しみだったりとかもします(笑)。
渡辺:歌入れの直前まで気になるところは直しますね。
池田:普段思ってるけどなかなか言葉にしづらい部分とかを端的に書いてくれてて、わかりやすくもあるし、深読みしないとわからない部分も多いので本当に興味深いですよね。一緒に歌詞カードを見ながら深読みしてわかっていくことも多いです。

──深読みしないとわからないようなフレーズとかを、答えあわせのようにメンバー内で共有されるんですか?
渡辺:基本的には各々の解釈に任せています。

──歌詞がレコーディング終わったら変わってたなんてことがあるということでしたけど、言葉選びの基準や、どう言ったところで迷って歌詞を変えていくのかっていうことを聞かせてください。
渡辺:文脈見ての意味合いもあるんですけど、歌を入れた時の言葉の乗り方とか、リズム感がぴったりくる言葉じゃなかったりした時に、他の言葉がないかって探しますね。

──なるほど。そこも考えた上でこの歌詞が出来上がるっていうのは本当にすごいことですね。
渡辺:そうですね、歌詞は本当に一番時間がかかるのでギリギリまで悩みまくってることもあります。その分愛情が出てくるので、全部大事な曲になっていると思います。

──このアルバムが出来上がるまではどのくらい時間がかかたんですか?
渡辺:レコーディングは割と短かったんですけど、制作期間でいうと今回は時間とれた方だったのかなって思います。最終的にプロデューサーに見せた時に「ここ、もうちょっとこうした方がいいんじゃない?」って言われて直したりもありました。

──そのプロデューサーさんは今回のアルバムから一緒にやられるようになった方なんですか?
渡辺:そうですね、前作の『天国なんて全部嘘さ』っていうアルバムから半分くらい加わってくれてはいたんですけど、表向きにがっつりプロデューサーとして加わるのは今回が初めてです。

──第3者的な目で見てくれるプロデューサーという立場の方がいてくれる方がいいなっていう想いは生まれました?
渡辺:やっぱり違う視線から物をみてもらったりすると気付けなかったところに気付けたりしますし、基本的に自分の色を押し付けるようなタイプの方ではないのでバンドのやりたい事をもっと良くするためにはどうしたらいいかってバンドを尊重してくれる方なので、やってて色んな意見が飛び交うから楽しいです。

──「いつか全部わかるだろう やさしくなれるだろう」というフレーズからも感じ取れるように、渡辺さんご自身の中でも答えが見つかっていないような、曲の中で答えを言わないっていうそのスタイルについて聞かせてください。

渡辺:先ほど言った夜をテーマにしているっていうところなんですけど、夜って悩むことに悩みがちだったりとか、センチメンタルになりがちだったり、そういうモードに陥りやすい時間だと思うんです。でも意外と考えてることってどうしようもないことだったりするんですよね。
だからあえて曲の中で明言しなくてもどうせ分かるから考えすぎなくていいじゃん?っていうマインドがどの曲にも入ってきつつ、この曲では、いつか全部わかるだろうから僕と一緒に生きましょう。っていう繋がりにしています。

──『深海おまじない』は特に、夜考え事している自分と重なります。
渡辺:時間軸でいうと一番深い時間ですね。そういう時に寄り添える音楽であればなって思っています。

──楽器隊の皆さんもやっぱり夜に病んだり考え事したりってことはありますか?
池田:ある。
鈴木:人並みにって感じですね。現実逃避にゲームしたりしますけど。

──なるほど、何か別のことを始めちゃえばいいんですね。もしかしたら、なんだかんだ悩んでるのが好きなのかもしれないです。
渡辺:やっぱ悩むことに悩みたいっていうのはありますよね、頭で考えているから辛いのであって、思っていることがあるなら行動しちゃった方が以外と早かったりする。

──なるほど〜。人生の師匠になって欲しいです(笑)
全員:(笑)
渡辺:なんかもうどうでもいいことは 自分にとって納得のいくものを選んでいけば多分みんな楽しくなると思うんですけど、人間関係だったり会社の付き合いがあったり恋人関係があったりとか、そうはいかないところとかも絶対出てくるかと思うのでそれでも結局選ぶのは自分なんで、あなたがしっかりしなさいよって(笑)。あなたがしっかりするためにそばに寄り添えるものっていうポジションでありたいですね!

サウンドと歌詞のギャップがよく現れた『無口なブランコ』

──アルバムの初めから順を追って聴いていると『無口なブランコ』で曲の雰囲気が変わるから驚きもあったりしました。切ない歌詞をこう言ったメロディーに乗せた意図は?

渡辺:このアルバムでは一番女々しい自分というか、好きな人を引きとめられなかったけど、本当の気持ちを言いたいのに言えなくて、もじもじしている自分を歌った曲なんですけど、楽曲が明るい分その逆をついて女々しいところをふんだんに歌いたいっていう気持ちです。

──なるほど。
渡辺:明るい楽曲を明るい歌詞で歌っていたら普通のことになっちゃうので、明るいサウンドにモジモジした部分を乗せたりしてみると歌詞のそういった部分がそんなに気にならなくなるっていう不思議な魔法が、歌ってあるんです。だから極端に女々しい部分を『無口なブランコ』では出しています。
──なるほど、歌詞から入った人も曲から入った人も驚きのある曲なのかなって思います。
渡辺:人の想像していたものの中に収まっちゃうと刺激にならないことが多いので、人が想像している以上のところから刺激とか感動いんつなげていきたいと思うのでいい意味でのギャップっていうのは常に作ろうと思っています。

──刺激やギャップと音楽性のバランスっていうのは後から微調整していくんですかね?
渡辺:そうですね、やっぱり“歌モノ”って言われるものの中には収めなきゃいけないと思っているので、俺らが急にシャウトとか!バランスもクソもなくなっちゃうので(笑)、自分たちが大事にしたい自分たちが勝負したいものは言葉であってメロディーである本質は崩さないようにします。

──その軸がぶれずにいるからやりやすい部分もあったりするんですかね。
渡辺:そうですね、タイアップが来た時とか、どんなテーマを求められても、自分たちの出したいものと求められているもののバランスは楽しみながらやれると思います。

──なるほど。今後アンテナとして取りたいタイアップとか、チャレンジしたいものってありますか?
渡辺:伊坂幸太郎さんっていう作家さんがいるんですけど、仙台に住んでいる方なので、伊坂幸太郎さん原作の映画の主題歌はいつかやってみたいなって思っていますね。
鈴木:東京オリンピックとかどうなんですかね!?
池田:俺も思った!

──やっぱり狙っていきたいところですよね!
鈴木:スポーツはアツいですからね!スポーツ選手の人たちもこういうこと考えてるかもしれないし、見てる側の視点の曲が多いけど、やっぱりアスリートの内面から出てくるところを表現した曲って意外とこんな感じなのかなぁって。面白いと思いますね!

──確かに!面白いですね、テレビでは見せない、それこそ裏側の部分ですね。どういった場面で流れるのを想定してますか?
鈴木:9回裏2アウト満塁でドーンとか。
全員:(笑)
渡辺:バッターボックスに入る登場曲ではなくて、バッターボックスに入る前までにベンチとかで聞いて欲しいですね!自分がやらかして失敗しちゃった時とかにも聞いて欲しいですね。

池田:俺は今思いついたんですけど、めざましテレビ!朝見るんですよ、最近やっとテレビを買って。
全員:(笑)
池田:あ、買ってじゃない、貰ってだ。ニュースとかって生活している中で自然と入ってくるものなのでいいなって思いました。
渡辺:スッキリ!の方かなぁ〜うちは。
全員:(笑)
鈴木:どっちでもいいわ〜!!
池田:俺朝スッキリ!まで見れないんだよね(泣)。
全員:(笑)

──本田さんはほしいタイアップ、ありますか?
本田:そうですね、疲れてる人向けのCMとか…。バンテリンとか。
全員:(笑)
本田:急激に効くタイプのやつよりじんわり効いてくるような商品のCMで、疲れてる人の耳にすんなり溶け込む感じで。

──アンテナさんの曲は聞き流せちゃうくらい気持ちがいいサウンドだから、何かのバックとか、CMソングとか、それくらいが丁度いいのかもしれないですね!
渡辺:そうですね、BGMになれれば一番いいですね。1日24時間の中のほんの3分か4分くらいの間のBGMとして入られたら音楽としては願ったり叶ったりです。

夜の一番深い時間を歌った『深海おまじない』
──先ほど少し触れた『深海おまじない』の歌詞に触れていきますが、「本音を言えるような 例えば友達がいてほしい」っていうフレーズ、見て見ぬ振りをしたかったところ突かれたような。
渡辺:自分の中で仲がいい人っているけど、いざ本当の自分の悩みを包み隠さず言える人はいないとか、いわゆる友達はたくさんいるけど親友って何人いる?っていう話と似ている感覚で、包み隠さず自分の悩みを話せなくてもある程度の人間関係って作れるし、ある程度充実できるんですよね、でも、ふとした時に本当の友達って誰だろうとか考え始めた時期が自分の中にあったからここにも書きました。

──なるほど。
渡辺:「最低限の生き方は飽きたよ」っていうのは、本当に自分が求めているものをもっと探したいとか、自分が好きな人と付き合っていたいとか、「本音を言えるような 例えば友達がいてほしい」っていうことも含めた意味だったりしますね。

──SNSが当たり前のようにある今の学生の“友達”の概念って、ちょっと前の世代が思う“友達”の概念が違ったりすると思いますし、友達に関する悩みってもしかしたら今の学生の方が多かったりするかもしれないですね。
渡辺:そうですね、男女でも違うと思いますし。どこまで友達なのかって突き詰めると、周りが決めることじゃなくて自分の中で居心地がいいと思える友達がいたりすることがいいのかなって思いますね。LINEのグループに入っていれば友達なのかって言ったらそうじゃないかもしれないし。
──確かに。インスタにイイネしてくれる人が多い人は友達が多くていいなって思ったり、かといって親友と言える人がイイネをしてくれるわけではないと思いますしね。
渡辺:そうですね、”いいね”の数と中身が伴っているのかって言ったら意外とそうじゃないし、何が一番自分の中で説得力があるかっていうのは、考えなくても充実はできるんですよね。上辺の充実感と中身のギャップをふと考えるのってやっぱり夜の時間だったりすると思うんで『深海おまじない』は一番夜の深い時間に自分のディープな部分に触れた感覚です。

──本当に、このアルバムを多くの人に聞いて欲しいし、このインタビューを見てもらいたいです!悩んでる人にも聴いて欲しいですし。
渡辺:悩んでいない人が悩むきっかけになっても一歩進歩だと思います!悩んでる時点で一歩進もうとしてることだと思ってて、一番問題なのは悩んでないことで、一番平和で一番愚かだと思うんです。悩まなければ苦しい思いもしなくて済むんですけど、悩んでるっていうことは自分の中で今の気持ちをどうにかしようって思っていることなので、本当は進んでいるんだよっていうことも知って欲しいし、曲を聴いて悩む人がいたらそれはその人の一歩を後押しできたことだと思うので、そういうバンドでありたいですね。

タイトル曲『モーンガータ』

──モーンガータという曲のタイトルの意味を教えてください。
渡辺:翻訳はできない言葉なんですけど、直訳すると、水面に映る道のように光る月明かりっていう意味です。

──モーンガータっていう言葉との出会いってなんだったんですか?
渡辺:最初はぜんぜん違うタイトルだったんですけど、この曲を今回のアルバムのリード曲いんしようってなった時にもっと人を引きつけられるようなタイトルがあるんじゃないかっていう話になって、いろんな言葉を探している中で出会いました。歌詞の中の意味合いとも結びつきそうだなって思って提案したらそのまま決まりました。

──意外と後付けだったんですね。
渡辺:そうですね、最初はライブハウスの明かりとか、ライブハウスで歌ってる自分たちをイメージして“明かり”っていうシンプルなタイトルだったんですけど、もっと規模を大きくしてもいいんじゃないかっていう話になったので、自分たちの場所をライブハウスに限定しないで、ライブハウスをずっと通り越して、みんなが目にできる月っていうものまでゲン担ぎの意味も込めて行ってみました。
情けなさ全開で朝を迎える『ぼやけた朝陽』
──この曲が一番情けなさとか女々しさも全開にさらけ出している気がします。
渡辺:そうですね、朝ってみんなが頑張りましょう!って思ったり言われたりするのが世間一般だと思うんですけど、夜が終わって朝を迎えることとか誰かとの関係が終わるっていうのも、新しい何かが始まるっていうことの裏返しでもあるので、終わりの始まりとして捉えた時に、誰もが思う朝の迎え方じゃなくても自分の中でも受け入れてあげられるってことは“進んでみます”っていう意思表示でもあるのかなって。違った目線からの朝の迎え方を書くのはギャップとしてやりたかったことですね、なのでこれも『無口なブランコ』と似て爽やかでアップテンポなテイストになってます。

──曲の終わりの方では「明け方過ぎに一人で見てた 朝陽みたいにぼやけたあなたと」とそのあとの「ぼやけた朝陽に照らされたこと」というフレーズでちょっとしたトリックを使われていますね。国語の勉強をしているみたいな(笑)。
渡辺:はい、朝陽とあなたが比較対象になっています。このフレーズに限らないんですけど、なるべく歌詞の世界に入り込んでもらいたいので“僕”とか“私”っていうワードはあまり使いたくなくて。省けるところは省こうとしてるんです。“君”っていう言い方をしちゃうと男の人が女の人に言っているような結びつきがJ-POPで多いのでそういうイメージになっちゃうじゃないですか、なので最近はずっと“あなた”っていう言い方をしてるんです。

pick up phrase
──歌詞のある6曲の中から、皆さんのいちばん好きなフレーズをご紹介頂きたいです!

渡辺:俺はやっぱり『呼吸を止めないで』の最後の「孤独だった あなたの呼吸を止めてあげるよ」ですね。あと、そこともちょっと似ているんですけど『モーンガータ』の「僕とあなたも終わらないのさ」っていうサビの最後のワードも好きです。これからもずっと続いていきますようにっていう気持ちは、自分たちがこれからも音楽を通して誰かと結びついていたいっていう気持ちも乗っかってくるので。

──それらのフレーズが出てきた瞬間ってやっぱり“よっしゃ!”みたいな感覚なんですか?
渡辺:『呼吸を止めないで』なんかは気持ちよかったですね。でもあんまりそういうことって多くなくて、自分の中でよくできたなって思っても、もっと何かないかなってずっと考え続けちゃうので、どっかで「もうそれでいいよ」って言ってくれる人がいないと満足しちゃうのが怖いっていう気持ちがもしかしたらあるのかもしれないです。満足しちゃったらそこで終わっちゃうと思うので、常に飢えて色んなものを探していたいです。

──おぉ〜。ありがとうございました。皆さんはいかがですか?
池田:『モーンガータ』の2サビの「遠回りしていても それも歩み」っていうフレーズと、そのあとの「今 目にしてるのが その全てだ」っていうところが好きです。

──そこを選ばれた理由は?

池田:このサビ全部が好きなんですけど、「間違ったことなら数え切れずあって」ってあるように、間違いなくいろいろ間違ってきたし、そういったものの積み重ねであるとは信じているじゃないですか、人って。それをちゃんと言ってくれているし、それだけじゃなく「なんて時には嘘くさいけど」っていうところで崩すところも好きです。その結果が今目の前にある全てだっていう言葉に説得力がありますよね、結局自分ができることしかできないし、自分が見えるものしか見えないし、感じられることしか感じられないし、っていうことを自分もよく考えるのでそこを上手く言葉にしてくれているから一番好きなフレーズですね。

──綺麗事のように言わないから素直にこのフレーズが入ってきますよね。
池田:そうですね!「なんて時には嘘くさいけど」って一回崩すところが良いんですよ!

──そうですね!ありがとうございます。鈴木さんはいかがですか?
鈴木:僕は『アルコール3%』の「これでいいのさ ちょうどいいのさ」ですかね。本当にそうだと思うんですよね、“これでいいのさ”ってすごい丁度いいと思うんです。小さいころ先生とかに「これでいい、じゃなくて、これがいいっていうところまで自分の意見をまとめて言葉を発しなさい」っていうようなことの道徳の授業がめちゃめちゃ嫌いで、人の意見聞いてから意見が変わるのも全然ありだと思うんですよね、“これでいい”って一回提出しないと発展しないというか、そこから頑張るっていうところが丁度いいと思います。だからこのフレーズが好きです。

本田:僕は『アルコール3%』のサビも好きなんですけど、『モーンガータ』の落ちサビの「暗闇を駆け抜け遊ぶ子供達 会社に残って働く人 腹を空かせてる野良犬たち それぞれがそれで良くて」ってとこが、最初にデモをもらった時からこのフレーズが耳に残っていて、頑張れとか、頑張ろうってことじゃなくて「それぞれがそれで良くて」って全肯定してくれている感じが好きですね。
渡辺:SNSとかでもそうなんですけど、外野に対して反応することが多すぎる。それぞれの世界でやらないといけない役割があって、それを頑張ることに一生懸命になるから辛いこともあるし、それぞれが守るべきものと向き合うことが人と人との関わりなのに、他の人のことを悪い意味で気にしすぎてる人が多くて。本来自分がやるべきことにもっと目を向けられるのにって思うんですよね。このフレーズも、そこに気がついて欲しいなっていう僕の願望なんです。

──単なる情景描写じゃなかったんですね。
渡辺:そうですね、SNSでどうとかって具体的に言ってしまうと押し付けがましくなっちゃうから、こういう言い方をしています。聴いてくれた人がそれぞれ考えてもらって、無駄なことに時間を費やすより、大事にできるものを大事にして欲しいなっていう願いです。

最後に
──ありがとうございました。最後に、ここまでインタビューを見てくれた皆さんに一言お願いします。
渡辺:10年20年先まで、一生をかけて聴いてもらえる音楽と、自分が好きなものや大事にしたいものをちゃんと大事にするためのきっかけになればいいなと思っているので、これからも音楽を通してリスナーさんとはそういう関係でありたいなって思っています。
Photo 片山拓
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