DJみそしるとMCごはんの圧倒的”コメ
ニケーション”力

アーティストや作品がゴロゴロ転がりながらいつの間にか大きな存在になってゆくのが、サブカルチャーの面白さの一つです。DJみそしるとMCごはん(以下、おみそはん)は、それこそおむすびころりんです(言いたいだけ)。周りを巻き込みながら、その独特の魅力でもって僕らの耳を掴んで離さない。最新アルバム『コメニケーション』でも、その能力は遺憾なく発揮されています。本作に収録されている8曲全てに客演を呼ぶという大盤振る舞い。これが掛け値なしにかなり良いのです。
DJみそしるとMCごはん『コメニケーション』
DJみそしるとMCごはん 『ジャスタジスイ』

まず音楽が良い。爽やかなホーンセクションに、小気味の良いドラム。脱力系のトラックに涼しい顔でギミックを凝らすおみそはん、ニクいですね。それからやはり彼女のストロングポイントは歌詞の豊かさでしょう。飯テロとセンチメンタルな日常が同居し、僕らの心にすっと寄り添ってくる。一人暮らしがたまらなく寂しい日は筆者もおみそはんのお世話になってます。表層だけで判断するとネタに流されがちですけども、実は彼女の曲は日本人の心象を鋭く突いているのでした。一曲に込められた情報が何層にも分かれていて、ミルフィーユ的な奥深さがある。その意味で多層的。

で、今回の『コメニケーション』。まずは総制作時間1887時間を費やした力作MVが印象的な『わたし、ごはん』を聴いてみます。MVに登場する「コメ」の顔は全てプロのネイリストによるものだそう。
DJみそしるとMCごはん – 『わたし、ごはん』

トラックはスチャダラパーのSHINCOが担当。そこへ、おみそはんが膨大な数のコーラスを録音し、歌にしました。壮大なスケールで「お米と私」の関係性がシュールに歌われる本作ですが、やはり節々にはセンチな生活感が溢れています。今回のおみそはんも、しっかりおみそはんでした。

そしてもう一つ。今作の特筆すべき点は「非常にアルバム的である」というところ。海外と比較すると、日本ではまだアルバムという単位が生きています。曲単位で音楽と接するリスナーが世界的に増えつつある中、『コメニケーション』はアルバムの順番に意思を感じるのです。今作は、杉並児童合唱団との共作『ライスマイル』が一曲目でなければいけないような気がしますね。
DJみそしるとMCごはん – 『ライスマイル』

この次に『恋はコメ色 r.t.m Homecomigns』、『おにぎりはお守り r.t.m 関取花』と続くのですが、ここには間違いなくカラーがあります。アルバム全体を俯瞰したとき、この2曲の連なりは「ギター・ポップゾーン」とでも言うべき色を帯びているのです。客演のHomecomings、関取花は共にヒップホップのアーティストではないですが、彼女たちのサウンドと喧嘩せずに共存していますね。特にHomecomings(オルタナティブ・ロック)との相性の良さを見せられたことは、おみそはんの音楽的範疇を拡張する意味でも出色でしょう。

『CITY RiCE』が出てくるタイミングも完璧でした。日本のマルチプレイヤー、mabanua(マバヌア)との共作なのですが、個人的にはこの曲がベストです。「『コメニケーション』の中で」ではなく、DJみそしるとMCごはん名義の曲の中で、ベスト。インディーR&Bのスムースな雰囲気と、おみそはんの相変わらず脱力感のあるヴォーカル。アンバランスな質感がドラマティックですね。色々な意味でレンジの広い彼女の音楽ですけれども、この曲に至っては「深さ」もあるように思います。「超自家製ラッパー。くいしんぼうHIP HOP。」を標榜する通り、純粋にヒップホップのトラックメイカー、ラッパーとしての進化もある。

そして、アルバムのラストを飾るのは米米CLUBを客演に呼んだ『どんまい』。本当に曲の順番に意図があるのかは推測の域を出ませんが、この曲が最後に来ることは恐らく決定事項だったはず。カールスモーキー石井の艶やかなハイトーンが、まさにラスボスのごとく最後に現れるわけです。歌詞の内容も含め、この曲が大団円であることは明らかでしょう。

もはや使い古された言葉かもしれませんが、文字通り「捨て曲」なし。それどころか、曲の並びにまで意思を感じるクラフトマンシップが本作にはあります。あなたの生活に「食」があれば、きっと本作は心まで満たしてくれるはず。


■DJみそしるとMCごはん 最新アルバム『コメニケーション』
2017年10月25日リリース
<アーティスト公式サイト>
http://misosiru.jp/

DJみそしるとMCごはんの圧倒的”コメニケーション”力はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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