【インタビュー2/3】エイドリアン・
ブリュー「ミュージシャンシップに満
ちた音楽」

スチュワート・コープランド(Dr/ポリス)、エイドリアン・ブリュー(G/キング・クリムゾン、デヴィッド・ボウイ)、マーク・キング(B/レヴェル42)、ヴィットリオ・コスマ(Key/PFM)という布陣によるロック界のスーパーグループ、ギズモドロームがデビュー・アルバム『ギズモドローム』を発表した。ロックもポップもパンクもプログレッシヴも超越した唯一無二のサウンドは、一瞬先をも予測させないスリルに富んだものだ。
第1回のスチュワート・コープランドに続いて、この第2回ではエイドリアン・ブリューに語ってもらおう。
──あなたがギズモドロームに参加した経緯を教えて下さい。
エイドリアン・ブリュー:元々スチュワート(コープランド)とヴィットリオ(コスマ)が10年ぐらい前から毎年のようにイタリアで夏に共演していたんだ。数年前からヴィットリオとマネージャーのクラウディオ(デンテス)が私に「ぜひ遊びにおいでよ」とメールしてきたけど、これまではスケジュールの都合もあって参加できなかった。イタリアの太陽とパスタは魅力的だったけどね(笑)。でも去年の夏、ようやく行くことができたんだ。当初は彼らのプロジェクトにゲスト参加して、4曲ぐらいでギターを弾けばいいと思っていた。でもスチュワートは密かに、私をバンドに巻き込もうと企んでいたんだ。実際、一緒にやってみたら楽しくて仕方なかった。エネルギーやアイディアを共有して新しい音楽を作っていくのは最高の経験で、もう抜けることができなかったんだ。スタジオに入って数日経って、みんなで顔を合わせて「これは最高だよな。これからも続けよう」って合意したよ。1枚アルバムを作ってハイさよなら、というのはあまりにもったいないと思った。ギズモドロームとしてのライブもやることになったし、もう2枚目のアルバムについて話しあっているよ。
──アルバム『ギズモドローム』の曲作りはどのようにして行いましたか?
エイドリアン・ブリュー:アルバムの曲の多くは過去10年にわたってスチュワートとヴィットリオが書きためたものだった。中にはそれ以前にスチュワートが書いたものもあったよ。ラフな状態でずっとクッキーの缶にしまってあった音源を引っ張り出してきて、それを素材として、4人で完成させていったんだ。元はヴァース→コーラスのポップ・ソングでも、4人でスタジオに入ってリハーサルすることで、30分後には異なった生物に変化していた。刺激的なプロセスだったね。
──ギズモドロームの音楽性をどのように形容しますか?
エイドリアン・ブリュー:そんなのは無理だ。不可能だよ(笑)。ロック、ポップ、パンク、プログレッシヴ…そのすべてであって、どれでもない。ただ言えるのはハイ・エナジーで、遊び心があって、ミュージシャンシップに満ちた音楽だということだ。とてもアップビートで、聴くのも演るのも楽しい。そんな音楽だ。
──マーク・キングとは面識はありましたか?
エイドリアン・ブリュー:いや、今回のセッションまでマークとは会ったことがなかったんだ。でも彼と知り合うことができて本当に嬉しいよ。彼は最高のベーシストでシンガーで、何よりも最高の人間だ。すっかり友人になった。マークはスラッピングの名手といわれて、“100万ドルの親指”の持ち主といわれてきた。でも彼はギズモドロームの音楽を聴いて、スラッピング・スタイルは合わないと言ってきたんだ。それで指やピックで弾いたけど、それでも最高のプレイだった。マークとスチュワートのリズム・セクションは素晴らしいよ。これから一緒にプレイを重ねていくことで、さらにパーフェクトなものになっていくだろう。他のメンバーとの関係も新鮮なものなんだ。ヴィットリオと一緒にやるのも初めてだし、スチュワートとは1980年代後半に一度だけ共演したきりだった。ほとんど30年ぶりだったよ。
──あなたはギズモドロームで普段と異なるギター・プレイをしましたか?
エイドリアン・ブリュー:いや、何も変える必要がなかった。まるで自分のために書かれたようだったんだ。瞬時に自分がやるべきことを察知できたし、自分自身を解き放つことができたよ。こんなにピッタリすべてがハマったのは、トーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』(1980)以来のことだ。あのアルバムでもスタジオで曲を聴かせてもらった瞬間、自分が何を弾くべきかピンと閃いたんだ。バンドの考えていることがテレパシーのようにわかった。ギズモドロームは、それ以来の経験だったんだ。
──アルバムのギター・パートはどのように録音しましたか?
エイドリアン・ブリュー:レコーディングを始める段階でアルバム用の全12曲が既に存在していて、まるっきり何もない状態から曲を書き始めたわけではなかった。ベーシック・トラックを録音している段階からインプロヴィゼーションを加えていく余地があったし、その作業が楽しかったね。アルバムに入っているギター・トラックの多くは、初めてデモを聴いて直感で弾いてみたものだよ。作業が速かったことで、本能的にプレイすることができた。直感に忠実に弾いたことが良い結果を生んだね。
──バンドの4人はいずれもテクニシャンとして知られていますが、スタジオでインストゥルメンタル・ジャムは行いましたか?
エイドリアン・ブリュー:うん、初めて顔を合わせたときにジャムをやったよ。お互いに刺激しあって、すごいスリルを感じた。ただ、それをアルバムには入れなかったんだ。ライブのために取っておきたかった。だからアルバムで4分の曲が20分になる可能性だってある。
──ギズモドロームのライブでは、ポリスやキング・クリムゾン、レヴェル42など、各メンバーの別バンドの曲もプレイするのでしょうか?
エイドリアン・ブリュー:スチュワートと私は過去にさまざまなバンドでやってきたし、このバンドでプレイしたら面白いと思う。私の場合ソロ・キャリアもあるからね。ギズモドロームとしては1枚しかアルバムを出していないし、お客さんも私たちのバック・カタログの曲を聴きたいんじゃないかな。まだ、どの曲をプレイするかは話しあっていないけどね。あとマークはレヴェル42の曲は絶対にやらないと言っている。レヴェル42は現役で活動中だから、異なるメンバーでやる意味がないというんだ。
──たとえばポリスの「見つめていたい」をギズモドロームがプレイする可能性もあるのでしょうか?
エイドリアン・ブリュー:どうだろうね(笑)。私はあの曲が好きだし、プレイしてみたい気持ちはあるよ。スチュワートはキング・クリムゾンの「セラ・ハン・ジンジート」が大好きだと言っていたよ。年内にはライブに向けてミーティングとリハーサルを始めたいと考えている。2018年にはワールド・ツアーをやりたいね。
──あなた自身の2017年から2018年にかけての予定はどのようなものですか?
エイドリアン・ブリュー:2017年にはエイドリアン・ブリュー・パワー・トリオで60回のショーをやってきて、年内にあと数回のショーが予定されている。ただ、ギズモドロームにプライオリティを置いているから、あまりスケジュールを入れないようにしているんだ。全員が忙しいし、世界のあちこちに住んでいるから、スケジュールの調整が難しいんだよ。
──デヴィッド・ボウイに捧げるトリビュート・ツアー<セレブレイティング・デヴィッド・ボウイ>を行った感想を教えて下さい。
エイドリアン・ブリュー:デヴィッドの代わりになるシンガーはいないし、彼のいないステージで彼の曲をプレイするのは不思議な経験だった。でも、ショーの趣旨は彼の音楽にリスペクトを表することだったし、参加したミュージシャン全員がデヴィッドへの愛に満ちていた。3時間半のショーで、多くの参加ミュージシャンはデヴィッドと実際に共演したことのある人だったんだ。オーケストラ、コーラス、バック・シンガー、ホーン・セクションなど、大規模なショーだった。世界中からゲストが集まってくれて、とても名誉に感じたよ。もちろんデヴィッドがいなくて寂しいけど、全員が彼に敬意を持っていて、暖かいコンサートだった。
──デヴィッドのバンドで長く活躍したのに加えて、あなたのソロ・アルバム『ヤング・ライオンズ』(1990)の「プリティ・ピンク・ローズ」に彼が参加、ミュージック・ビデオでも共演していますが、あのビデオについてどんなことを覚えていますか?
エイドリアン・ブリュー:「プリティ・ピンク・ローズ」は私が曲を書いて、デヴィッドが歌詞を書いてくれたんだ。ロシアの農婦みたいな女性が登場するビデオは作っていて楽しかったね。<サウンド&ヴィジョン>ツアーのオフ日に、ドイツの廃墟駅で1日かけて撮影したんだ。寒かったのを覚えているよ。ガッチリしたロシア女性が私のポニーテールを掴んで引きずり回したり、クレイジーなビデオだった。
──現在のキング・クリムゾンについては、どう思いますか?
エイドリアン・ブリュー:今のラインアップのキング・クリムゾンは一度も聴いたことがないし、コメントのしようがないんだ。2013年にロバート・フリップがメールを送ってきて、「キング・クリムゾンの活動を再開するけど、君はこのラインアップに合わないと思う」と言われた。33年一緒にやってきて、一方的に通告されたんだよ。それで私はロバートと電話で話して、彼はドラマーがフロントになるとか、いろいろ教えてくれた。「じゃあ、ライブでは新曲ばかり演奏するの?」と訊いたら、「すべての時代の曲をプレイする」と言われた。でも“私に合わない”というなら、私がメロディや歌詞を書いた曲をプレイするのはおかしいよね?それで1981年から2013年の私の書いた曲はプレイしないという紳士協定を結んだんだ。でもどうやら、その約束は守られていないようだ。それから何も連絡がないし正直、傷つくよね(注:その後、エイドリアンとロバート・フリップは直接連絡を取り合って和解した)。でも今の私はギズモドロームでの活動が第一だし、ソロ・キャリアもあるから、やるべきことはいくらでもあるよ。ギズモドロームでプレイするのはすごく新鮮だし、早くツアーに出たくてウズウズしているんだ。毎日、何かすることがあるというのは幸せだよ(笑)。
取材・文:山崎智之

Photo by Lorenza Daverio
<ギズモドローム初来日公演 2018>


【大阪】

4/8(日)メルパルクホール大阪 17:30 open / 18:00 start

一般発売:11/4(土)

[問]大阪ウドー音楽事務所 06-6341-4506 udo.jp/osaka

【東京】

4/9(月)Bunkamura オーチャードホール 18:30 open / 19:00 start

一般発売:11/4(土)

[問]ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp

http://udo.jp/concert/Gizmodrome

ギズモドローム『ギズモドローム』

2017年9月15日発売

【50セット通販限定 CD+インストゥルメンタルEP+Tシャツ】¥5,500+税

【完全生産800枚限定CD+インストゥルメンタルEP】¥3,200+税

【通常盤CD】¥2,500+税

※歌詞対訳付き/日本語解説書封入

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