1年8か月ぶりとなる5thアルバム『変身』には吉田山田の生き様が詰まっていた?【インタビュー】

1年8か月ぶりとなる5thアルバム『変身』には吉田山田の生き様が詰まっていた?【インタビュー】

1年8か月ぶりとなる5thアルバム『変
身』には吉田山田の生き様が詰まって
いた?【インタビュー】

今回のアルバム『変身』のテーマ

──お願いします。ズバリ今回のアルバムのテーマから伺ってよろしいですか?
吉田:今回テーマがよく表れているのが、このジャケット写真です。
撮影でデザイナーさんといろいろ話をした時に、「『変身』っていうことなので、2人が生まれ変わってキリっとした表情でっていうのはどうですか?」っていう提案を受けたんですけど、「いやちょっと違うんです」と。イメージとしては、変身後の完成された姿じゃなくて、今まさに変わろうとしている最中なんです。
最初は、できれば僕らが変わってかっこいい姿を皆さんに見せられたらなぁと思っていたんですけど、もちろんこのアルバムの発売の時期とかもありで。その変わりゆく、まさに今変わっているという状況を皆さんにお見せするのもひとつの芸術だな、と。
完成されたものじゃなくて、本当に心の中が右にいったり左にいったり浮いたり沈んだりしているその状況を、そのまま聴いてもらう。それぐらい何か、トライするっていうことは失敗もあるし、それも含めて、吉田山田の生き様が、今回はちゃんと詰まっていると思います。

──この時期に、そういったテーマでアルバムを出そうとなったのには、何かお2人の変化というか、心情が反映されたんですかね。

山田:一番は、もうすぐデビュー8周年なんですけど、“10周年にこういう2人でいよう”っていう話をした時に、今のままじゃ全然ダメだねって気付いたところからですかね。
今まであまり目標を持たずに、とにかく今ある最高のものを作っていくっていう進み方をしたんですけど、初めてと言っていいぐらいの目標を作ったんですよね。そこから次第に変わっていった、このままじゃダメだって。

──新曲のテイストに関して、共通点が各々ある気がするなぁって思いました。寝ている時に観る“夢”っていうのは山田さんがずっと共通して持っているテーマかもしれないんですけど、そう言った夢感だったり、シャープとかフラットとかの半音が、今まで以上に目立って使われているというような。音の面で何か意識されたことはありますか。
吉田:すごく実験的な部分が今回のアルバムは多くて、結構今までよりもエンジニアさんだったりアレンジャーさんと密に話をする機会が多かったです。
例えばここのミッドを上げるとこんな感じ、ミッドを抑えるとこんな感じって、直に聴き比べをして、それを聴いた時の自分達の心の中に沸き上がる感情っていうのが、本当に少しなんですけど、違うんですよ。このコードをメジャーにするかセブンスにするかっていうすごく些細な差でも少しの感情の差があるので、それによって出てくる歌詞も変わるし、その辺にすごくこだわりましたね。

──なるほど。
吉田:今まではどちらかというと、もうちょっとざっくりした、わかりやすい部分、歌詞はこっちの方が伝わりやすいんじゃないかとか、というところにどちらかというと重きを置いていたんですけど、それよりもミュージシャンとして自分たちがどちらをどう感じるかっていうのを理解しようと思って。それってプロの人達からしたら結構手間なんですよ。そんなのわかるだろうって思うところなんですけど、もうそこは「お任せします」じゃなくて、「僕らにわからせてください」っていうところで、かなりこだわって。それがどこまで伝わるかわからないけど、やっぱりその僕らの手仕事の部分が、結果的には振り返った時にちゃんと残っていくなぁと思うので。そこはね、結構こだわりました。

──結構、今まで以上に時間がかかったんですかね、制作には。
吉田:うん。初心者みたいだった。

──なるほどなるほど。

吉田:だからそういう意味ではすごく初心にかえって、知ったかぶりしないで。長年やっているエンジニアさんだったらこっちを選ぶけど、「何となく僕らこっちの方が気持ちいいんだけど何でですかねぇ」みたいな。いやそれはまだちょっと耳のこの部分が素人だからだよ、とか。その人が信頼を置ける人じゃないと、まずその言葉を信じられないから、まずその信頼関係ができていって、なるほどなぁみたいなことが多かったです、今回の制作は。

──すごい、楽しそうですね。収録曲は春とか冬とか、いろんな季節がごちゃまぜになっていたりして、そこら辺に関してはあまりこだわりなく、できたものを詰めていくっていう感じでいったんですかね。
山田:そうですね、季節感はそこまでこだわってなかったですけど。何かこう、例えばこのアルバムの中で3年前くらいからもう原型があった曲もあって、最新曲ばかり並べたわけではないんですけど、結果的に自分達がチョイスした曲は、自分の内面を映し出しているような作品が多いなっていう風に、途中気付きましたね。自然と、この曲、この曲がいいねって並んでいくうちに、そういう曲が残った。
例えば応援歌、いろんな形の応援歌があると思うんですけど、誰かに届けたいっていうものよりも、言ってしまえばあまり人には見せたくなかったり、恥ずかしかったり、弱かったり、そういう部分をちゃんと表現したいんだなぁって、自分達の中で。それが多分、変身のための第一歩じゃないですけど、全部さらけ出して次に行きたいんだなって、思いましたね。
ヒーロー感ばりばりの「HENSHIN」
──話を聞くと、確かにそうですね。では、そんな曲たちについて聞いていきたいと思います。まずは「HENSHIN」。これをローマ字にしたのは何かヒーロー感が出るからですかね(笑)

吉田:あはは!ヒーロー感出てます?(笑)

──ヒーロー感出てます(笑)
山田:「HE」でヒーローのヒーだよね。
吉田:あ~、なるほどね。

──だからかな?なんですかね(笑)
山田:「CASSHERN!」みたいなね。
吉田:あはは!
でも、何となく言っていることはわかります。でもそこは絶対ローマ字がいいっていう風に思っていたわけではなくて、僕は普通の漢字の「変身」で最初デモを出していたんですけど、マネージャーが曲順を決める時にローマ字のまま書いてきて、それいいなぁと思って(笑)。

──(笑)!
吉田:「変身」っていう漢字のタイトルなんですけど、アルバムのタイトルは。それを代表する1曲ではあるんだけど、そのものずばり漢字にするよりも、やっぱり11曲ないし12曲の、本当にピースから成っているアルバムだから。その1曲が担うというよりも、本当にプロローグとして、という意味を込めて、ローマ字いいねってなったんですけど。

──この曲、歌詞が少なくてビックリしました。しかも始まりにセリフが入るじゃないですか。「街」の歌詞の冒頭のように、絶望感みたいなものに襲われるのかと思っていたんですけど、最終的に曲の最後で答えが出るじゃないですか。あ、そういう歌だったのねって驚きも。
2人:あ~!

──なかなか冒頭のセリフを聞き取るの大変だったんですけど、リスナーの方にはちゃんとそこまで聴いて欲しいとか逆に聞き流して欲しいとか隠れた要望はあるんですかね?

吉田:今回のアルバム全体的に言えるんですけど、この曲は特に、すごくわがままなんですよ。ちょっと不親切というか。こういう気持ちで聴いて欲しいっていう気持ちを、なるべく抑えて、今自分はこういう表現したいと。
このセリフはフランツ・カフカの「変身」っていう小説の一節なんですけど、僕がそれを学生時代から好きだったんですよ。それで、まさに今僕らが変わっていくっていうところと掛けて、フランツ・カフカの「変身」の一節を使いました。そんなのわかる人が多くないのもわかっているんですよ。今までだったら、わかりづらいからやめようと。でも今回はそうじゃなくて、わかろうがわかるまいが、今表現したいのはこれ!っていうのを、1回吐き出さないと、ちゃんと僕らの心の中がクリアにならない。っていうところが大きなテーマとしてあったので、感じる人は感じるし。

──理性抜きに感性だけで作られたような。
吉田:ちゃんとそれを冷静に見て、あまりにもわかりづらい、むしろ作品としてそんなにかっこよくないっていう場合はやめますけど、作品として成り立っているのであれば、それでいいんじゃないって言えるチームワークもあったので、大丈夫かなっていう思いも今までの作品より強いですね。ちゃんとわかるかなっていうか、そのものずばりこれはフランツ・カフカだっていうこと自体がわかってもらえなくても伝わる内容にはなっているので。冒険しましたね、そういう意味では。

──ちなみにどの部分が引用ですか?
吉田:冒頭の「ある朝、グレゴール・ザムザが」(「HENSHIN」の歌詞にはない、セリフの部分)

──なるほど、なるほど。グレゴール・ザムザですか?
吉田:うん。

──そこが聞き取れなかった(笑)
吉田:有名な一節なんです。自分が巨大な虫に変わっているのを発見したっていうのが、その「変身」っていう小説の有名な冒頭の一節なんですけど。これがちょっとでも引っかかって、例えば「グレゴール・ザムザ」を検索したら、一発で出てくるので、ひと手間加えるとより味わえる曲かなっていう。

今回のアルバムの特徴

──確かに、その部分の伝わりにくさだけじゃなく、全体的に情景を思い浮かばせるフレーズがすごく多いっていうか、断定しない、具体的に言わないフレーズがすごく多いですよね。今回のアルバムの特徴なのかなって思ったりもしました。
2行目の「自称自問自答 をただ繰り返す日々」っていうフレーズの“自称”って気になったんですけど、自問自答ってそもそも自己完結である動詞なのにどうしてあえて“自称”って言葉を入れたんでしょうか?
吉田:それはやっぱり僕らが音楽を作る上で、いわば吉田と山田が出会って、「楽しいね」なんて言いながら曲を作って、その曲を2人が素敵だなぁと思った時点で、素晴らしいんですよ、それは。100点満点。でもやっぱりそれを仕事にするとなると、それが多くの人に受け入れられて、CDとして売れないと、なかなか活動を続けるのが厳しいっていうこの現実。そこを行ったり来たりしているのが、ミュージシャンだと思うんですよ。1人のお客さんがいれば満足、その方が感動してくれれば。っていう思いと、やっぱり何千人の前に立った時の「うわぁ楽しい」っていう思いと。
だからこの自分が、苦しんでいる、もがいている、その自問自答っていうのは、あくまでも自称。それをやっぱり僕らは歌として、1人の人間の生き様として表現しないと、もうそこにいないのと一緒っていう評価になっちゃうんで。だからあくまでも自称だけど、自問自答をいつも繰り返しているっていう、その思いです。

──おもしろい言葉ですよね。そう言われてみれば、自問自答っていうもの自体が自称なんですよね。パッと浮かんだ言葉だったんですか?

吉田:そうですね。でもこの曲は、吉田と山田の作り方にしては珍しかったです。
山田って結構フィーリングで言葉を選んでいくんですよ。あとで考えたらここ日本語が間違っているとか、ちょっとこっちに変えようとか、これは変えないままの方がおもしろいとか、そういう作業が多いんですけど、僕はあまりそうじゃなくて文章から入っていく作り方なんです。だけどこの曲は僕にしては珍しくフィーリングで言葉を選んでいったんですよね。だから、「自問自答ってそもそも自称でしょ」って言われればそれまでなんだけど、なんか入れたかったんですよね。
山田:これは今回のアレンジャーさんとの出会いがすごく大きくて、今回のアルバムの中の9割くらいを、そのアレンジャーさんにやってもらったんですけど、その人の作るサウンドとの相性、そこに僕ら結構引っ張られてるっていうのもひとつあるのかもしれないですね。今までだったら自分達の歌詞、言葉で引っ張っていくとか、メロディで引っ張っていくっていうのがあったんですけど、僕らと素晴らしい化学反応が起きそうな楽曲を毎回作ってくれるので、そこに引っ張られて僕らも出ていく部分がありましたね。

──メロディラインもすごく独特ですよね。何だか気持ち悪い、ってところもあったりして(笑)、でもさっぱりしていて。特にこの曲の中で気になったのが、メロディラインで「Fly」の後、その後気持ち悪い音階になるじゃないですか(笑)
吉田:「は~」ってハモっている上と、「は~」って下がるやつね。

──そうそう、そっちじゃない!みたいな(笑)
吉田:あはは!

──ところにいくじゃないですか(笑)あえてこういう言い方をしますけど、あまり綺麗な音じゃないというか。そういう部分っていうのは、お2人からのリクエストがあったりしたんですか?それともアレンジャーさんの方から、こういうの持ってきたよみたいな感じだったりしたのか。
山田:やりながら、ですね。今回は本当に僕の歌い方もかなりやりながら変化していて、こっちの方が言葉が伝わるんだということを一から勉強しながら。だからメロディラインも、やりながら「こっちの方が変な違和感残るね」とか、そこはいい意味で時間をかけられたなぁとは思いますね。
吉田:だから必ずしも、理論として、理屈として、合っているものが良しとは限らないっていう。音としては半音でぶつかっているんだけど、表現としては正しいっていう。それはアレンジャーさんの若さと、勢いがないと、成立しないんですよ。正しい正しくないで言ったら、正しくなかったりするんですよ。でもこれいいじゃんっていう。特にそこはそうですね。「Fly~」って(笑)

──若いんですか?アレンジャーさん。
吉田:僕らより若いです。

──感覚的ですよね、確かに本当に。WindowsかMacでいったらMacみたいな(笑)
吉田:本当にそう。そのキャッチボールが結構できた。僕が作ったメロディラインに対して、ちょっとぶつかっているんだけどこんなのどうかなってアレンジとして返ってきたものが、「いやいいよ~、涌井くんいいよ~」って(笑)

──ふふふ(笑) 山田さんと吉田さんのコンビって、感覚と理論的な部分がうまく合致しているからこうやって生み出せるものがある思うんですけど、感覚人間の山田さんとさらにその感覚的なアレンジャーさんとのやり取りってどんな感じなんですか?日本語じゃないものが飛び交っているような気も(笑)
山田:あまり通じないので、よっちゃんを通して。

──なるほど!(笑)

山田:うん。僕わからないんですよ。多分僕の言っていることは向こうわからないし。よっちゃんを挟んで会話していましたね。
吉田:通訳が今回ハンパじゃなかったよね、だから。
山田:こうなるんだなって僕も思いましたよ。感覚で。

──おもしろい。ありがとうございます。すごく細かいことなんですけど、この曲の最後って息吸って終わっているんですか?あれ。
吉田:うん、息吸って終わってる。

──どうしてそういう風に終わらせようと?
吉田:これ最後のレコーディングでこの曲を作ったんですけど、この曲に今の自分達の最新の心情を込めたくて。本当に飛べるか飛べないかわからないけど、いく!っていう時の、怖いけど息を吸って飛び出す瞬間を表現したくて。

──なるほど。終わりじゃなくて“まだ続く感”みたいなものを感じました。
吉田:そう、だから、このアルバムの意味が本当にわかるのは、もうちょっと先だと思うんですよ僕。この次の作品、その次の作品を聴いた時に、今回のアルバムの意味がわかるような気がしていますね。

──もうイメージが沸いているってことですよね。
吉田:うん。

──このアルバムの収録曲の制作期間はいつからどのくらい?
山田:それで言うと、一番古くて3年くらい前から、本当に2ヶ月くらい前まで。

──その3年前の曲も、仕上がりに近い状態でずっと保存してあったような?
吉田:いや、例えば「浮遊」とかは曲のイメージ、この浮遊感のあるメロディとアレンジっていうのはもともとあったんですけど、歌詞はほぼゼロ。でもいいものになるっていう兆しを含んだデモでした。
このアルバムに向けての制作っていうところでいうと、今年に入ってからなので。やっぱりメロディはいいけど歌詞がいまいちのものは歌詞全部変えましたし、もちろん日常的にデモ作りはしていますけど、そういった意味で制作期間とすれば今年に入ってからですね、

──本当によくやるなぁって思いますね。ライブをやられている数が全然多いじゃないですか。
吉田:いや本当にね、褒めて欲しい。
山田:休みは大事だなって思いますよ。
吉田:もっとね、2千人くらいに褒めて欲しい。
──(笑)
吉田:いや、ウソですよ(笑)

──「浮遊」は3年前に元ができていた曲だったんですね。タイトルはもともとついていたんですか?
山田:最初は、「ふ~う~う~」っていうコーラスと「ラララ」しか入っていなくて、その時点で「浮遊」っていうタイトルはついていたんですよ。僕個人としてはこの頭のコーラスで、曲の全体が出来上がっていたように思えて。そこだけでも何かこの曲いいねって思えるっていうことはなかなかないので、パズルみたいによっちゃんと組み合わせていったっていう感じですね。この音とこのメロディに含んでいる言葉を2人で掘っていったような。

──恋が絡んでいる曲じゃないですか、歌詞が。こういう曲にしようと思ったのはどうしてなんですか?「浮遊」っていうタイトルで、恋の歌で、ほわほわした夢みたいな感じのメロディ?ちょっとずつずれている気がして。どれかを取ってそこに寄せても良かったと思うんですけど、その絶妙なバラバラ感みたいなものは、たまたま冒頭と曲全体と歌詞が違う時期にできたからそうなのなのか、あえてそうした意図があるのか。

山田:この曲は、何かすごく…受け口が広いなぁって思ったんですよ。こういう広い受け口のものに対して結構真面目に言葉を紡いでいくっていうよりも、遊ぶ余地があったので、そういう言葉遊びもちょっと織り交ぜつつ、最後よっちゃんが夢で終わるっていうのはどう?っていう面白いアイデアを出してくれた時もこの曲の受け口が広かったから入れられたんじゃないかなぁって。

──めっちゃ文学的な気がしますよね、この歌詞。頭を使う国語の勉強みたいな感じ(笑)
吉田:不思議なんですけど、すごく難しい言葉なんだけど、この音に乗せて歌うと、別に理解しなくていいっていうか、フィーリングで掴んでもらえる言葉にちゃんとなっているっていうのが曲の力なのかなと思いますけどね。

──よくよく考えたら最初に倒置法みたいなのを使っていたり、あと主語がなかったりって。さっきの曲は最後に「あぁそうだったんだ、良かった」っていうので終われたけど、ここは最後で落とされるじゃないですか、「あ、夢だったんだ」みたいな。うん、おもしろい曲。
2人:ウンウン。

──「フワリと世界の糸が切れて 風船みたいに浮かんでく」っていう歌詞では“世界の糸”っていう風に例えられていますけど、吉田さんと山田さんにとって、何かを縛り付けているもの、ここでいう“世界の糸”っていうのは何ですか?
山田:自分。自分ですね。自分でそれを知らずにくっつけちゃってる。
吉田:僕は常識ですかね。僕、結構常識にとらわれて生きているんですよ。それはもう多分育った環境なんですけど。“常識でしょ”って思ってしまう自分自身が嫌な時ももあるんで。でも縛られて、この地上に留まっていられるっていう利点もあるわけで(笑) いいところもあるんだけど、やっぱり恋した時とかテンション上がっている時だけ、糸が切れて浮かんじゃって、非現実にいけるのかなぁっていう。

──2人の糸が何なのかって聞いたら、この“世界の糸”って言っている意味が何となくわかった気がします。

入場で使いたい結婚ソング『宝物』

──またこれいい結婚ソングが!(笑) 
吉田:入場で使いましょう、ロックチューンを(笑)!
──こういう家族を歌っている歌詞の曲だと、「日々」テイストに寄せがちなのかなって思ったんですけど、全然違う感じで来たから、メロディーと詞どっちが先にできたんだろうなって気になりました。
山田: Aメロが一番最初に出てきて。もうメロディ付きで出てきたのを覚えていますね。

──曲の構成でいうと、サビ始まりですよね。泣かせにかかろうと思ったら、AメロBメロで情景描写だったりで盛り上げていって、このサビを歌うっていう構成が良かったと思うんですよ。確かにサビはパワーのあるメロディーだけど、どうしてあえて結論であるサビから始めようと思ったんでしょう。
山田:これに関してはよっちゃんが、「この曲はサビで始まったのが聴きたい」って言ったところからでしたね。もともとのサビ始まりじゃないバージョンに僕は入り込んじゃっていたんで、第三者的なちょっと引いた目で、よっちゃんがそう言ってくれるならそれもいいかもなぁってことでそうしました。
吉田:これはね、やっぱり派手さですかね。この曲って、一番付き合いの長いであろう僕から見ても「山田汁」がめちゃくちゃ出ているんですよ。だから表現の青さだったりとか、そういうこともあまり手を加えたくなくて、それも含めてパッケージにしたかったんです。
だけど、アルバムの中の1曲として人に聴いてもらう時に、もうちょっと派手に、聴き心地良くするためにはどうしたらいいかなって考えた時に、構成だけ。最初はもう少し、もうちょっと手垢が付き過ぎていたというか。すごくいい意味で生活感がその曲の中に入っていて。そこよりももう少し、吉田テイストもちょっと入れてっていう。その構成だけ。俺だったらこうしたいなっていうところをちょっとだけ入れされて、みたいな感じで。他はもうほとんどいじってないですね。

──なるほど。「山田汁」ですね。わかる気がする。
山田:このアルバムの中の曲を作っていて、本当に個人的な思いを、自分の心の中をほじくり返すっていうんですか、掘るというよりも。蓋を閉めていたところをパカっと開けてほじくり返す作業が多かったので、どういう評価かってわからないんです、あまり人のことを考えていなかったから。だから、そういう意味ではよっちゃんの意見だったりを、“そういう風に思うんだ”って、大事にしたというか。
あとは今まではライブをイメージしながら、“こんな反応だろうな”って狙っていた部分もあるんですよ。でも今回の作品に関しては、本当にもうそういう作業は自分の中でせずに、自分からの目線ばっかりだったから、ちょっとドキドキするんですよね。
いつもは、“詞的にはこっちの方が美しいな”って言葉選びをしながら歌詞を書くこともあったりするんですけど、この曲は青い表現だとしても自分の心に一番近い言葉だっていう方を優先するようにしましたね。

──特に、譲れなかった表現をしたフレーズってどこですか?
山田:一番最後の「宝物でした」の前の「苛立ち遠ざけた」。
ここをすごく迷ったんです。多分もしかしたら、来年とか2年後には、もっといい言葉あったなって思うかもしれないし、ちょっとグチャっとしているんですよ。この最後を整えようとしたら「〜〜が宝物でした」って終わっていたなぁと思うんだけど、今回そうしたくなかった。変な感じを残したまま、終わりたかった。その感覚が、「苛立ち遠ざけた」っていう言葉に一番近い。

──山田さんの中で「苛立ち遠ざけた」っていうことはどういうことだったのか。
山田:今回、「宝物」って付けているところがすごく自分の中の変化でもあり、ちょっとまだ恥ずかしいところでもあるんですけど、自分と親との繋がりを、宝物と言ってしまうんです。でもまだちょっとそこにはこっぱずかしさが残っているから、ただただ最後の締めとして綺麗なものにしたくなかった。恥ずかしさだけじゃなくてまだいろいろあるけどね。その心の中の現状を歌にしているんですよね。だからもっと大人になったら、きっとあ~まだ若いな、自分だっせぇなって思うんですよ。でも、宝物って言えるようになっただけ少しは成長したのかなって。Aメロとかは、ちょっと前の自分にあてた言葉なんですよね。でも、ただただ宝物ですっていうひと言で、綺麗にまとめたくはなかったっていう。

──このBメロの「強く握りしめたその手が離れても 独りにはなれない」、ならないじゃなくてなれないって言っているのも、ふてくされたような感情なんかがまだ残っているからこういう言い方をしたんですかね?
山田:そういう反抗心というよりも、受け入れたっていう感じですかね、自分の中では。さっき言ったように、よく似てるねって言われるのがすごく嫌だった時期もあるんですけど、今はその半分は受け入れてる。同じ道を歩んでいるなって結局、好きなものだったり。それがちょっと心地良くもあるんですけど。そうですね、受け入れてきたからですかね。ならないっていう意思よりも、ひとつの命なんだなって。

──ちょっとわかってきた 20代以上からの世代に、共感得られそうな曲ですよね。
山田:でも僕の、まだ34歳でこんな感じかって、ちょっとガッカリしちゃう部分もあるんですけどね(笑)、自分の中で。

──山田さん34歳でしたっけ?
山田:34歳ですよ。34歳っていったら、もっとちょっと大人っぽい性格でありたかったなと思うんですけど。でもまぁ自分のダサいところとか、恥ずかしい弱い部分もさらけ出すっていう意味では、これを形にしたかったっていうのはありますね。確かに20代なんですよ、この端的な感覚は、もしかしたら。

吉田:僕は「独りにはなれない」っていう言葉を最初見た時に、これ以上ない励ましの言葉だと思ったんですよ。そういう意味では、今の学生とかって、僕らの学生時代に比べて、すごく孤独を恐れているように思えて。それはTwitterとかいろんなものからの承認欲求っていうんですか?自分ここにいるよっていうのが、選べるってわかっちゃったから。多分そういう便利なものがない時は、ないのが当たり前で、すごく自分はちっぽけな存在っていうのが大前提としてあって。みんなそうだから、みんなある種孤独でっていうのがあったけど、今はどんな人でも、ちょっとひと工夫すればみんなに見てもらえるから感じてしまう孤独感みたいなのがある気がして。“寂しい、孤独だな。自分はひとりだ。”って思っても、「いやいやなれないから」って。ひとりにはなれないんだよって。携帯がなくても、何がなくても、もうあなたが生きているってこと自体が、ひとりじゃない。もうなろうとしたってなれないんだからねっていうのが、僕は最大の励ましの言葉だと思うんですよね。

──すごーい!そういう風な捉え方があったんですね。
吉田:あはは!うん。僕はそう感じたな、この曲。

──めっちゃ性格いいですね!!(笑)
吉田:あははは!僕、性格いいんですよ、そうなんです(笑)。

──何だろう、吉田さんの感覚をお聞きしたら、自分の捉え方ってめっちゃひねくれていたなぁと思って。
山田:いやいやいや、いいんじゃないですか。
吉田:それは育った環境が全然違うから。僕はあまり反抗期なくここまできちゃったから。だから山田の感情だったりって、すごくこう、興味深い。自分と違うから。

吉田山田"っぽくない"曲『YES!!!』

──本当におもしろいですね。これだから吉田山田さんの作る曲っていろいろ聴けば聴くほどおもしろい。「街」は前回のインタビューで詳しくうかがったので「YES!!!」について。この曲はテレビで聴いた時、吉田山田さんっぽくないって印象でした。
▼【前回のインタビュー】
吉田山田の新作を心の栄養に!ハードなツアーを終えてさらに深みの増した彼らの歌詞に注目!
吉田:(YES!!!を)ライブで山田がちゃんと歌えたのは、過去5回くらいです。
──(笑) ちょっとCDでも危ういですもんね(笑)
吉田:あはは!バレてる!バレてる!(笑)
山田:そうなんですよ。何でこんな曲作っちゃったんだろうっていうくらい。

──そうですよね。これだって自分で作ってるじゃんって思って(笑) 吉田さんの方がこなせてるんですよね(笑)
山田:そうなんですよ、自分が歌えるかどうかで曲作ってないんだなってちょっと思った。これいいなっていうのを形にしたんですけど、結果超むずいっていう。

──この曲って、特に書き下ろしではなく曲ができてからタイアップが決まったんですか?
吉田:うん、そうですそうです。

──だからかですね。聴く人の2017年の夏の思い出とダイレクトにつながれるタイアップだから、もっとカラオケで歌いやすい感じを狙って作ってもおかしくないのにとか思ったりして。聴くの楽しいけどカラオケめっちゃ歌えないじゃん!ってなりそうな(笑)。
吉田:本人歌えてないんだからね(笑)。
山田:むずいですよねぇ。

──めっちゃ難しい(笑)。音程もかなり動きあるのに文字数も多いですし。逆に吉田さんがパキパキ歌ってるのめちゃめちゃ気持ちが良いです(笑)。
吉田:本当にご注目いただきたいのは、僕ギターも弾きながらなのに歌えているっていうところなんですよ。こいつは、ギターも弾いてないのに歌えないっていう(笑)。

──(笑)
山田:そうなんです。
吉田:ある意味僕天才だと思いますよ。自分にできないことを作っちゃう。

──確かに。
吉田:自分の範疇を超えた作品を作れるっていうのは、すごいことですよ。

──作る時は、どうやって作ったんですか?
山田:疾走感。こんなもう細かいメロディで、歌詞も結構パッとできたんですけど…う~ん、歌えないんですよね~。
吉田:あはは!(笑) しみじみ…じゃないわ!(笑)

──あはは!(笑)
山田:歌えなかったですね。

──逆に吉田さんに聞きたいんですけど、これって何か特別な練習方法とかコツってありますか?

吉田:たまにカラオケとかどうやったら上手に歌えますか?みたいな質問とかあるんですけど、基本的には一番大事なのは上手に歌わなくていいってことなんですよ。上手に歌うと、サラーって流れちゃうから。それよりも、込められるものとか、ちょっとブサイクな部分を残したくて。それってやろうと思ってできないんですよ、だから加減が難しくて。

──なるほど。
吉田:多分このアルバムで山田は生まれて初めて歌うのって難しいんだなって思っていると思うんですよ。それはさっき言った、エンジニアさんがいることで山田の歌い方のどこが今足りていなくて、どうするともっと良くなるのかっていうのを理屈で100%説明されちゃったんで。今までフィーリングでやっていたものを、全部理屈化して数値化して、理解させてもらったので、いかに自分に足りないところ、フィーリングだけでは補えない何かを、これからやらなきゃいけないのかっていうのを、多分初めて本当に感じているので。
でも、人間そっちに集中すると今までできていたことがちょっと抜けちゃったりするわけですよね。それは、一般のリスナーからしたらわからないことかもしれないけど、僕らからしたら今はそこじゃないところを一番大事にしているからそれでいいんだよっていう風に思っていて。そういった意味でも、今回のこのアルバムは、数年後に聴いた時に、もうちょっと上手にやりたかったなぁって思うかもしれないけど、ちゃんとそこにこそ意味がある。歩んできた道を、アルバムを聴けばわかるっていう風になるんじゃないかなって思ってますね。

どうして作られたの?『しっこ』(笑)

──この曲って、どうして作られたのかっていうのを聞かせてもらってもいいですか?(笑)
山田:そうですね。これも結構前にあった曲なんですけど。もう日頃から、もうどんなことでも、いいなぁと思ったら、思いついたら、形にするっていう癖を付けたんですよ。頭の中で、このテーマはやめようって思ったらいろんな可能性もなくなっていっちゃうので。
だからこれは僕の実体験なんですけど、小学校6年生までおねしょしていた僕だからこそ、生まれたのかもしれないですね。ただ、すぐお蔵入りになったというか。僕的にはすごくいい曲なんだけどって言ってみんなに聴かせたんですけど、やっぱり大人の方々は「遊んでんじゃねぇ」って言って。まぁリリースされることはないだろうなって思っていたんですけど、よっちゃんが掘り出してくれたというか。

──確かに、今の吉田山田さんが作ったものではないなっていう意味での御蔵入り感がありますよね。
吉田:これもね、わがままなんですよ。これがアルバムの1曲として入っていることが、アーティストイメージとか、今の時期に必要なことかどうかっていうのは置いておいて、僕的には山田を最優先にしました。
──そうなんですね。

吉田:すごく極端に言うと、山田は突飛なことをしたい人なんですよ、やっぱり。人がしていないことをしたい人っていう性格なところがあるから、やっぱり1回それをやらせてあげないと。それで人がどうなるのか。それを見て自分がどう思うのか。それはもう売れる売れないじゃなくて、1人の人間の生き方として、それを見て、じゃぁ次はこういうアプローチでやってみようかなって思うことがすごく大事なことだから。
だから1回かっこいいものに仕上げようって全力を注いでみて、その代わり山田は、人がその曲をどういう風に聴くのか、それを見逃すなよって。11曲しかない中の1曲を占めるっていうことがどういうことなのか、それをちゃんと考えてくれよっていう思いが僕の中では大きいですね。

──吉田さんママですよね、子育て論みたいでした。時間がなくなってきてしまったので、収録曲の中からそれぞれ一番好きなフレーズだけ聞いていいですか?
吉田:この収録曲を全部選んで、まとめて聴いた時に、計算していたわけではないんだけど、大事なところに“変わる”って散りばめられているんですよ。それは「RAIN」もそうだし、「守人」っていう曲の最後にも。

──“まもりびと”って読むんですね。
吉田:うん。まもりんちゅじゃないですよ、これ。
──“もりと”かなって(笑) そうも読むみたいで。
山田:そうなんだ。
吉田:そうですね。“まもりびと”って読むんですけど、最後の「小さく世界は変わっていく 」ところは何か本当に計算したわけではなくて、全部決まってから改めて聴いてそれに気付いたんです。ちゃんと1曲目の『HENSHIN』の、「殻ぶち破ってそこにいくんだFly」っていう、自分達の意思と、それがちゃんと全体的に反映されているなぁって最近気付きましたね。こういうのがすごく大事だと思います。

──気持ちいいですね、その後から組み合わさるっていう。
吉田:無意識のやつ。それね、すごく大事だと思いますね。

──ありがとうございます。山田さんはありますか?
山田:そうですね。僕はもう、歌詞って言われたら『RAIN』が浮かびましたね。「ずっと変わらぬために ずっと変わっていこう」。これが、47都道府県回って出てきて、これが次の10周年に向かうテーマソングじゃないですけど、自分の中の。これがどんどんどんどん今よりも大事な曲になっていくような気がしていますね。入口として。
最後に一言
──ありがとうございました。最後にひと言短くギュッと、お別れの言葉をお願いします(笑)
山田:お別れの言葉。
──インタビューを見てくださった皆さんに。
吉田:そうですね。34歳の男2人の本気の生き様を、どうぞご覧ください。
──お~、かっけぇ。ありがとうございました。以上になります。大丈夫ですか?
山田:うん。ちょっと夢の中じゃなくて、僕今おしっこもらしそうなんで、ちょっとトイレ行ってきていいですか。
──あはは!いってらっしゃい。
Photo 片山拓

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