昨年でデビュー15周年を迎える中島美嘉。そこで、歌手に女優にモデルにと、マルチな才能を持つ彼女のこれまでの歩みを今一度振り返ってみます。ゼロ年代初頭に彗星のごとく登場し、すぐさまトップスターへの階段を駆け上がったディーバの「これまでとこれから」。
中島美嘉 New Single 『A or B』

ゼロ年代以降のセックスシンボル

中島美嘉 – 『STARS( ショートver.)』

デビューアルバム『TRUE』からして最強の内容でありました。この曲はデビューシングルなわけですけれども、今聴いても古さを全く感じません。というかコレ、今の曲じゃないですか?作詞に秋元康、作曲に川口大輔、編曲に冨田恵一(冨田ラボ)という盤石な布陣を敷いた本作は、デビューシングルでありながらオリコンチャートで初登場3位を記録します。秋元康のメロディと同化する言葉選びのセンス、川口大輔による卓越したブラック・ミュージックの知識、冨田恵一のアレンジ力(特に揺れるシンセの音)・・・。どれを取っても完璧。さらに『TRUE』は、収録されている13曲のうち10曲がシングルカットされています。売れないはずがない。そして本作がリリースされた2002年の日本レコード大賞では最優秀新人賞を受賞し、紅白歌合戦にも出演を果たします。
中島美嘉 『TRUE』

そして忘れてならないのが女優としての中島美嘉。そもそも『STARS』とドラマ『傷だらけのラブソング*』はセットのようなものですから、元来彼女にとって歌手活動と女優業は同程度に重要でした。

*傷だらけのラブソング: 2001年に放送されたフジテレビ系連続ドラマ。中島美嘉が島崎未来(ヒロイン)役に抜擢され、『STARS』が主題歌に起用される。本作は不良グループの一員であった島崎未来のサクセスストーリー的な要素が重要であり、最終話では「中島美嘉」として取材を受けるシーンが用意されている。

そこから順調にキャリアを重ね、2003年には『偶然にも最悪な少年』で映画にも進出します。個人的には、本作が彼女の女優としてのキャラクターを確立したのではと思っております。
偶然にも最悪な少年 (予告編)

ゼロ年代前半から広く女性に支持を集めていた「赤文字系」の対極を行っていた中島美嘉。ポップアイコンと言うよりセックスシンボルと言ったほうがピタリとくる力強い女性像は、この頃に確立されたような気がします。

『NANA』の大ヒットと、揺るぎない地位
の確立

中島美嘉 – 『GLAMOROUS SKY( ショートver.)』

これまで書いてきた通り、この時点で既に中島美嘉は国民的な地位を確立しておりましたが、2005年に公開された映画『NANA』ではいよいよ文化論として重要なアーティストに位置付けられます。本作の観客動員数は日本だけで300万人を超え、明らかに社会現象となっておりました。筆者は20代ですけれども、僕らが恐らく直撃世代でしょう。当時は男女問わず原作漫画『NANA』を読み、『GLAMOROUS SKY』を聴いておりました。
L’Arc〜en〜Cielのhydeにプロデュースされたこの曲は、オリコンチャートで2週連続1位を獲得します。つまり、女優としても音楽家としても記憶と記録に残るヒットを飛ばしたのです。間違いなく、中島美嘉は2005年を代表するアーティストの一人でした。

一つの転換期を迎えた、ゼロ年代後半

中島美嘉 – 『ORION』

結果論ですが、あらゆる意味でエンターテインメントはシーンの転換を迫られますが、このときはまだ激動の予兆に気づく人間は極々少数でした。モバゲーやグリーが台頭していたゼロ年代後半、人々は情報の取捨選択が飛躍的にできるようになります。マスメディアを通さずとも、カルチャーに触れることが容易になりました。その結果細分化が進むわけですが、中島美嘉は当時から地殻変動に気づいていたのではと思います。
当時のインタビューで、彼女はこう語ります。

いいものにしなくちゃ、というプレッシャーは常にありますけど、でもどのくらい売れたかとかいままで聞こうと思ったこともないし、ぜんぜん知らないんですよ。みんな説明してくれるんですけど、ぜんぶ聞き流してるんですよね(笑)。そういう数字とかっていうのは私に必要なものではないので。 ―(音楽ナタリー インタビューより)

これは9年前の記事なのですけれども、限りなく現代的ですよね。今色々なアーティストがこの手の問題で頭を悩ませていますが、彼女はこのとき既に今のシーンを予測していたのかもしれません。(元来彼女が持つ性格によるところも大きいのでしょうが)

中島美嘉が切り開く新時代

中島美嘉×Salyu – 『Happy Life』

耳管開放症の療養のための休養、バレーボール選手である清水邦広との結婚などを経て、現在。正直、今の中島美嘉が僕は一番好きです。もちろん、楽曲を含めて。記事冒頭の最新シングルにも言えることですが、この力の抜け方が大変心地よい。どこか影のあるヴォーカルに変わりはないですが、今の彼女にはジャズマナー独特の軽やかさがあります。現行インディーシーンとも共振する内容で、今こそ全方位的に愛されるべきだとすら思いますね。

これまでずっと打ち出してきた女性的な強さも、今や性別を超えて支持されています。彼女はLGBTの関連イベント『TOKYO RAINBOW PRIDE 2017』にも出演しましたが、やはりタフでクールな中島美嘉だからこそ伝わるものはあったでしょう。

中島美嘉の「Old or New」。ゼロ年代に登場したディーバの過去と現在は、寸分のブレもなく繋がっています。


■中島美嘉最新シングル 『A or B』
2017年10月25日リリース

■MIKA NAKASHIMA FULL COURSE TOUR 2017~YOU WON’T LOSE~
<公式サイト>
http://www.mikanakashima.com/live/

祝15周年! 中島美嘉のOld or Newはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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