NZインディーの急先鋒“Fazerdaze”
と僕らの出会い
渋谷 O-nestで鳴り響いたインディー・
ロック。
多くのファンが期待していた今回のライブですけれども、オープニングアクトのMONO NO AWARE含め、出演者のパフォーマンスは素晴らしかったです。両者ともに瑞々しく、ときにローファイでありながら豊かなサウンドスケープを聴かせてくれました。
「軽やかに」ひねくれるMONO NO AWARE
主旋律を弾かないギターサウンドのことを「サイドギター」や「リズムギター」と呼ぶのですが、ガレージ系のサウンドはこのパートが肝要であるように思います。ときにリードギターの音と同じくらい耳に残るんですよね。その意味ではMONO NO AWAREのバンドサウンドは、王道的ガレージ・ロック。ライブだともっとガレージ。そして、何となくサイケ。それから、ベースラインがCD音源より強調されていたのも良かったです。
歌詞が好きです。独特な言い回しと、ラッパーばりに韻を踏む遊び心。けれども、奇をてらっている印象は受けません。相当言葉を大事にしているように思います。『マンマミーヤ!』で「二段熟カレ~♪」というパワーワードをかまし、『イワンコッチャナイ』では華麗なライミングで日常をコミカルに描く。この“ひねくれ方”、やはり僕は好きですね。彼らの出番が終わった後、無意識に歌詞の一節を口ずさんでいる自分がいました。
あとに残ったのは爽やかな寂寥感。僕ら
はFazerdazeにまた会いたい。
で、自分でこんな導入をしておきながら、ぜひとも彼女のことはミュージシャンとして見ていただきたい。80年代~90年代を自由に横断できる造詣の深さ、それをベッドルーム・サウンドに転化するセンス、そしてそれらを実現できる高い技量。音楽の内容は極めてアーティスティックです。
グランジやシューゲイズが持つ危うさと、アメリアのイノセンスな声。CDを聴いている段階でも感じていたことですが、この組み合わせが妙にクセになるんですよね。例えば『Half-Figured』や『Misread』などが顕著。かと思えば、『Bedroom Talks』ではその名の通り内省的な音像へと変化させます。
ライブではここへバンドサウンド(彼らもまた辣腕の持ち主)も加わり、さらに内容が多層化するわけです。バンド編成になったことで聴き方が変わったのは、『Jennifer』。シンプルなプロダクションではありますが、ギターの音色が瑞々しく、リズム隊の抜け感も心地良かった。
(・・・こう聴くとソロも良いですね)まぁとにかく、『Shoulders』はバンドサウンドでも聴いてほしい一曲です。
ライブの終盤には代表曲である『Lucky Girl』が披露されましたが、さすがに会場の盛り上がりは格別でした。曲ごとに歓声は上がっておりましたけれども、この曲ではフロアが揺れるほどの熱気を感じましたね。隙間なく埋まったO-nestで夜明けを予感した次第です。「インディーシーンは元気だなぁ」冒頭で記事の書きましたけれども、こういう景色を見られるのが個人的には何よりの楽しみです。やっと200人収容できるぐらいの規模ではありますが、ここにしかない煌きが確かに存在します。
音楽性も含め、今回のFazerdaze来日公演はインディーの面白さを再確認できるような内容でした。「いいね」がたくさん欲しいわけではないのだけれど、SNSでそのアーティストの曲をシェアしたときに反応があったりすると嬉しい。ささやかな幸福ですね。けれども僕らはそれを楽しみに、日夜サウンドクラウドを漁り、ライブハウスへ足を運ぶのでした。
インディーはいいぞ。
Photography_Reiji Yamasaki
Text_Yuki Kawasaki
■Fazerdaze来日公演
日時: 2017年10月11日
会場: Shibuya O-nest
<イベント公式サイト>
http://www.tugboatrecords.jp/category/event
NZインディーの急先鋒“Fazerdaze”と僕らの出会いはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。
関連ニュース
ミーティア
「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。