初の単独来日公演開催間近! ネオン
・トゥリーズの過去と今を徹底解説

結成当初より、『ローリング・ストーン』誌から”ニュー・ウェイヴ・ポップを掻き鳴らすエネルギッシュなバンド”と称賛を受け、その実力を証明したデビューアルバムは、ビルボードの新人/注目株部門を占うチャートでは堂々の1位を獲得。そのリード曲はヒットシングルへと花開き、順風満帆なデビューを飾ったのはアメリカが生んだ次世代のポップロック・アイコンとなり得るバンド、ネオン・トゥリーズ(NEON TREES)だ。
あのキラーズ(THE KILLERS)のオープニングアクトに抜擢されるほど、本国アメリカでは名声も実績も残しているネオン・トゥリーズ。しかし日本では、2011年に『SUMMER SONIC』へ出演したのが最後であるためファンにとっては待望の来日であるが、今回の来日情報、または新譜で彼らを初めて知った人も多くいることだろう。
そこで今回は、記念すべき来日公演に先駆けて、過去と現在のネオン・トゥリーズの魅力を紹介していきたいと思う。

■ネオン・トゥリーズとは?
ユタ州を活動拠点とし、バンド構成は2006年の結成時から変わることなく、男性3人、紅一点であるドラムスのエレインの4人で成り立っている。余談だが、かつてボーカルのタイラーは、日本に交換留学生として留学していた過去があり、ナカヤマという小さな漁村でホームステイをしながら通学していたそうだ。そのときの体験を「すごく刺激的で人生が変わるような経験で、10代の僕は日本とその文化に魅了されてたよ」と語っており、タイラーにとって日本は特別な国であるようだ。
タイラー・グレン(Tyler Glenn)/リード・ヴォーカル/キーボード
クリス・アレン(Chris Allen)/ギター
ブランデン・キャンベル(Branden Cambell)/ベース
エレイン・ブラッドリー(Elaine Bradley )/ドラムス/ヴォーカル
冒頭で述べた通り、デビュー当時にはヒット作を引っ提げての世界的なツアーを行うなどの活動において、ここ日本でも鮮烈なデビューを果たしていたのだが、その後はメンバーそれぞれがソロ活動をしていたものの、バンドとしては音信が途絶えていた。
そんな状況が3年続いた今年の夏、突如バンドのSNSにて「こんなこと言うのも変な感じだけど、僕たち戻ってきたよ」とボーカルのタイラーが投稿したことで、バンド再始動が突如告げられた。また、その直後には“ネオン・トゥリーズ、ここにあり!”を体現しためちゃくちゃポップでダンサブルな楽曲「Feel Good」を発表し、軽快なステップで表舞台へと帰還したのだ。時を同じくしていくつかの国でのショー開催もアナウンスされ、その中のひとつに10月30日の東京公演が含まれていたのだ! この公演は彼らのキャリア史上、初の単独来日公演となる。

■ネオン・トゥリーズが注目される理由
ネオン・トゥリーズが注目される理由はズバリ、その音楽性と楽曲のクオリティーの高さにあると言えるだろう。そのことを裏付けるのは結成時から多くのチャートを賑わせ、多くの実績を残してきている点だ。
まず、2010年にリリースしたデビューアルバム『ハビッツ』(日本での発売は2011年)は、その色鮮やかなサウンドと明確なスタイルで瞬く間に注目を集め、デビュー作にも関わらず、ビルボード・ヒートシーカーズ・アルバムチャートで1位を獲得している。
また、アルバムからのリードシングルの「アニマル」は、テレビや映画、ビデオゲームのサウンドトラック、CMなどの幅広い分野で起用され、7500万回の楽曲再生回数を叩きだしてラジオのエアプレイチャートの上位を席巻、ビルボード・オルタナティヴ・ソングズチャートでは、バンド初となる1位に輝いた。さらに、2011年のビルボード・ミュージック・アワードでは「トップ・オルタナティヴ・ソング賞」を受賞し、「アニマル」はダブルプラチナムに認定された。
2012年にリリースした2ndアルバム『Picture Show』は、クワドラプル(4x)・プラチナムを獲得、大ヒットとなったシングル「Everybody Talks」はビルボード・Hot 100でトップ10にチャートインする快挙を成し遂げた他、Hot AC・チャートでも1位を獲得し、現時点で再生回数は1.3億回を超えている。
その2年後にリリースした3rdアルバム『Pop Psychology』は、サウンドスキャン/ビルボード200で初登場でトップ10入りを果たす。このアルバムを成功に導いたのは410万回を超える再生回数でゴールドディスクに認定されたシングル「Sleeping With A Friend」のヒットによるもので、バンド史上最大となったチャートアクションを記録した。耳に残るフレーズとメロディは、何度でも聴きたくなる中毒性が強い。
こうして作品と実績を並べてみると、華々しい経歴で苦なく成功しているバンドのように見える。しかしながら、今夏の再始動宣言以降、彼らが手にした栄光の影には苦悩も多くあったという事実が、ボーカルのタイラーによってポツリポツリと語られ始めている。
「世界中を旅して夢も叶えた。何年もバンド活動を続けてきた中で、今後やりたい事にフォーカスしてバンド全員がリフレッシュするために、休憩を取るのは重要な事だったんだ。これまで僕たちを支えてくれた皆に感謝している。最後のアルバムから3年、その間ずっと温めてきたことを皆の前で披露するのを楽しみにしてるよ」
彼らは、復活宣言としてひとつの楽曲を用意していた。それはネオン・トゥリーズの最新曲「Feel Good」である。ともすると軽やかで明るさだけが印象として残る、リズミカルでキャッチーな楽曲だ。しかし、その根底には楽曲の印象からはまったく想像できない深い苦しみと想いがあることをタイラーは告白している。
■ネオン・トゥリーズの“今”の聴きどころ
復活作である「Feel Good」
カラフルでポップな世界では、プールサイドにいる皆がサウンドに乗せられて一斉に踊りだし、メンバーも思うがままに体を揺らして演奏をしている。頭上の空はピンクや黄色、パープルへとどんどん変化して、プールではシンクロナイズドスイミングさえもその一部として取り込まれている。これはタイラーの夢の中での世界をそのまま映像にしたものだそうだ。
こんな世の中だったら毎日がさぞハッピーだろうにと思わせるその映像をのせるサウンドは、気分をあげていきたいときに大音量で聴きながら歌いたくなるアッパーな仕上がりになっているものの、そこはかとない哀しさとノスタルジーも少々感じられる不思議な魅力を持っている。この曲を書いたタイラーは、今夏のリリース時に次の言葉をSNS上に残している。
「「Feel Good」は幸福で満たされているように聞こえるかもしれない。けれど、この曲のベースとなったのは、不安や孤独、恐れなんだ」
この言葉は、楽曲が与える印象と作家の制作思考とが必ずしも同じではないということを、痛烈に感じさせられるものである。この言葉以外にも「不安と鬱に押しつぶされそうになって自殺も考えた」といったようなネガティブな発言を実に明け透けにパブリックに晒すタイラーとは、一体どんな人物なのだろうか。
タイラー・グレンを語るとき、彼がゲイであることを避けては通れない。2014年にそのことをカミングアウトした彼は、正直に生きていることに誇りを持っていると広く語っていた。きっと基本はポジティブで信仰に厚く、母親想いの彼は、非凡な音楽的才能以外は自分とあまり変わらないように映るが、大きく異なる点がひとつある。
多くの人は何かしらの負を抱えて生きている。本当は明るく前向きに生きていきたいからその苦しみは胸にしまって表面的には明るく振る舞ったり、自分を鼓舞して生きている。それは誰しもが日々経験していることだろう。こうした人間の持つアンバランスさがねじ曲げられることなく素直に収まった楽曲にこそヒット曲が多いような気もするし、タイラーもまた、こうした一連の行為をすべて音楽に注ぎ込むことができる才あるアーティストの一人なのだと思う。
ゲイであるが故に抱える深い苦悩、しかしアウトプットは底抜けに明るく、超絶ポジティブなメッセージへと変えて世の中に発信するタイラーの作品からは、人間くささと生命力を感じる。これこそがタイラーの魅力であり、ネオン・トゥリーズの音楽が人々を惹きつける根源なのかもしれない。
しかし、これらは筆者の想像の域であるため、彼らの魅力の元を紐解くべく、来日前インタビューを申し込んでいたのだが、今回は残念ながらタイムアウトになってしまった。この記事を読んでくれたあなたには、ぜひとも記念すべき初の単独来日公演となる10月30日のネオン・トゥリーズのライブに足を運び、あなたの五感で彼らの魅力を確かめて欲しい。
【ネオン・トゥリーズ/メンバーからのコメント】
ネオン・トゥリーズ(NEON TREES)
■エレイン(Dr)
初の単独だからすごく楽しみだわ。より長いセットだと音楽性も広がってバンドの色んな側面が表現できるし、ステージに長く立てるからサマソニの時よりもっとパワフルになると思う。単独公演が本当に楽しみよ。
■ブランデン(B)
前回東京に滞在した時、僕はタワーレコードに行ったんだけど、日本でCDショップが存続してるのは皆が音楽を愛してサポートしてる証だよ。だからまた東京でタワーレコードに行きたいな。
■タイラー(Vo)
日本の皆を愛してる。サマソニで皆に会った事を覚えてる。さらに多くのファンに会えるのを楽しみにしてるよ。10月30日にduo Exchangeで会おう!

文=早乙女‘dorami’ ゆうこ
イベント情報
ネオン・トゥリーズ来日公演
10月30日(月) duo MUSIC EXCHANGE(東京)
開場 18:15/開演19:00
スタンディング ¥7,500 (税込・別途1Drink代)
※未就学児入場不可
 

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