【THE 夏の魔物 インタビュー】
THE 夏の魔物が目指すサウンドが
1stアルバムに結実
みんなで歌詞を書いたら
向いている方向が全員一緒だった
「THE 夏の魔物のテーマ」はメンバー全員で作詞したそうですが、どんなふうに作っていったんですか?
成田
一番難産だったんですよ。曲は浅野尚志さんと俺の共作なんですけど、何回もリテイクを繰り返して、お互いに嫌になるぐらいやり取りしましたね(笑)。バンドのテーマを作るなら今だ!ってなったんですけど、やるからにはメンバーがひとりひとり見えるものが、このアルバムのコンセプトのひとつなんだから、それが詰まったものにしないといけないと思って。あれは何日前だったっけ? 2日ぐらいしかなかったよね。みんなに歌詞を書いてって言ってから締め切りまで。
鏡
楽屋で突然言い出したと思ったら、明後日までって。それでちゃんと期日を守れたメンバーもいれば、デッドラインを越して越して、ほんとにギリギリまで粘った私みたいなメンバーもいて(笑)。
成田
みんなが何を考えているのか興味があったんですよ。それで仮歌が入ったデモを聴いてもらって…何て言ったっけ?
鏡
細かいことは考えずに、この先もみんなで歌っていけるような、みんなの今を込めてって。だから、言葉遊びよりも、自分が今何を思っているかをしっかり書いてほしいと伝えられました。
成田
みんなが書いてきた歌詞を俺がまとめたんですけど、改めて向いている方向が全員一緒なんだと思いました。
鏡
魔物に入ってからもう1年半経つから、この話は止めようと思うんですけど、私はもともと魔物のファンだったから、客観的に考えながら書いたんですよ。成田さんがあの声でこれを歌ったら最高!とか、この感じでチャンさん(泉の愛称)が歌ったら大好き!とか。もちろん、みんなでステージに立って歌うってことも考えましたけど、昔も今も私が大好きな魔物の理想ですね。そんなふうに考えながら書いた言葉が使われたのはめっちゃ嬉しかったです。自分でスクリームしているところは、自分の中の想いを全部叫んでやる!と思いつつ、メンバーのことを叫ぶみたいになりました。《拓け 歌え 貫け 吼えろ 戦え》は、どれが誰でっていうのが自分の中にあるんです。《拓け》は成田さん。私たちの未来を拓いてくれるのは成田さんだし、成田さんの熱意と力で私たちは進んでいるし。《歌え》は魂で歌っているチャンさんで、《貫け》は大内さん。正義を貫いている感じです。《吼えろ》はアントンさんで、《戦え》は全員です。聴き直してみたんですけど、めっちゃいいんですよ。
成田
あ、自画自賛しちゃった(笑)。
曲がリテイクを重ねたのはなぜだったんですか?
成田
ポップになりすぎず、みんなのライヴ感が出るようにするのが難しかったんです。俺はヒロトさんとマーシーさんがものすごく好きで、ふたりに影響を受けているからこそ、自分が音楽をやるなら、ふたりがやっていない男女混成でやりたいと思っていました。ただ、それをバンドサウンドでやるのは、やっぱり自分の原体験に↑THE HIGH-LOWS↓のライヴがあるからで。未だに、その時の興奮が更新されることはないんです。キーボードの白井幹夫さんがいた時期の5人でやっている↑THE HIGH-LOWS↓が最強だと思っていて…ギターはレスポールで、オルガンあるいはピアノが入っていてっていう。今回のアルバムは全編通して、実はそれなんです。アルバムで言ったら『バームクーヘン』。ああいう狂暴なサウンドというか、『HOTEL TIKI-POTO』の時のツアー、そのセットリスト後半の攻め曲を畳み掛ける感じを表現できるバンドになりたいっていう想いがずっとあったんです。
新曲の「涙。」の作詞が森雪之丞さんというのも驚きでした。
成田
雪之丞先生とはずっといつか一緒にお仕事ができたらって思ってて。以前依頼した時はそれが叶わなかったんですが、今回Wiennersの玉屋2060%くんが曲を書いて、雪之丞先生が詞を書いたら絶対に素敵な曲になると思って、もう1回連絡してみたら、まさかのOKをいただけたんです。それからは結構すんなり進んでいったんですよ。
何かコネクションがあったのですか?
成田
いや、所属事務所のホームページから連絡しました。打ち合わせに行ったら“成田くんが作る作品は、作家が燃えている。自分もやるからには、そういうものじゃないと”と言ってくださって、すごく嬉しかったです。しかも、この曲をどういう感じにしたいかって話をした時、こう言おうと考えていたことを、いきなり雪之丞先生から全部話してくれて(笑)。その時もヒロトさんとマーシーさんの話をしましたね。何も言ってないのに“THE BLUE HEARTS的な歌詞だったらいいよね”って。
リリース後は、10月26日の渋谷CLUB QUATTROワンマンと対バンツアーが決まっていますが、最後にその意気込みを聞かせてください。
成田
出会いがもっと増えてほしいですね。今、このメンバーでやっていることは、どこに出しても恥ずかしくないし、今の俺たちのライヴは変わったことをやらなくてもちゃんと届くことをやっていると思っているので、アルバムも聴いてほしいし、気軽にライヴに来てもらえれば“こういうことか!?”ってすごくよく分かると思うんですよ。これまでもワンマンはやってきましたけど、今度の渋谷CLUB QUATTROはツアーファイナルではなく、ここから始まるスタートでもあるから、今後の俺たちが見えるライヴになるのかなって思います。そのあとに始まる対バンツアーは、全国に魔物っぽさを伝える機会になるのかな。
鏡
私は“対バンツアー”ってワードだけで、めっちゃドキドキします。私自身、好きなバンドのツアーに行って、そこで知った対バン相手のライヴを観に行って、さらにそこから広がって、いろいろなロックを聴いてきたんです。今回、対バンするバンドは素敵な方ばかりなので、そのバンドを好きな人たちにTHE 夏の魔物を知ってもらえたら嬉しいし、好きになってもらえる機会も増えるのかな。それが全国でできるんだと思うと、今からワクワクします。
取材:山口智男