ドイツロマン派 珠玉の名作『魔弾の
射手』、アガーテ役に初めて挑む木澤
左江子に聞く!

ウェーバーの代表作にして、ドイツロマン派のモニュメント的なオペラ『魔弾の射手』を、関西二期会が30年ぶりに上演する。会場となるのは4層構造、客席数2000席を有し、4面舞台を持つ兵庫県立芸術文化センター大ホール。この大きな会場で、主役の狩人マックスの恋人アガーテ役として、温かくも美しいソプラノの歌声を響かせるのが、先ごろ大阪交響楽団の定期演奏会で「4つの最後の歌」を歌い、好評を博した木澤左江子だ。今回初めてアガーテ役に挑むという彼女に、意気込みや聴きどころを聞いてみた。
―― 『魔弾の射手』のアガーテは、今回が初役だそうですね。
木澤左江子 ちゃんとお客さまの前でやらせて頂くのは今回が初めてです。実は、関西二期会オペラ研修所の予科生時代にアガーテ役をやらせていただいたことが有り、とてもしっくり来たことを覚えていました。いつか大きなステージでやってみたい!と、ずっと心待ちにしていた役です。「30年ぶりに関西二期会で『魔弾の射手』をやるらしい。それも兵庫芸術文化センターの大ホールで!」と聞いて、キター!と思いました(笑)。
―― 稽古は始まっていると思いますが、念願のアガーテ役を演じてみていかがですか?
インタビューに答えるソプラノ歌手 木澤左江子  
木澤 今回演出されるのは、菅尾友さんと云う新進気鋭の方です。菅尾さんのアガーテ像が、17歳のマリッジブルーを抱えた少女の設定。領地のしきたりとして、射撃大会の優勝者と結婚しなければならない事になっており……果たしてマックスは優勝できるのかしら? そして、私は本当にマックスの事が好きで、彼との結婚を望んでいるの? マックスが優勝できなければ、よく知らない優勝者と結婚しないといけないの? そんな優勝者の奥さんなんて私で務まるの? など、不安にさいなまれる悩み多き少女です。登場人物は一様に、しきたりや慣習に支配され、社会の抑圧を受けている人たち。菅尾さんの演出は非常に内面に踏み込んだものです。私が抱いていたアガーテ像はいつもマックスの事を考えている純真な少女で、アリアもしっとり歌うイメージだったのですが、菅尾さんからは「もっと若々しく歌って!」と言われています(笑)。最初は少々戸惑いもありましたが、そういった事もオペラの醍醐味なのです。今は17歳に近づけるように頑張っています。
―― 木澤さんは先日の大阪交響楽団の定期演奏会で、リヒャルト・シュトラウス『4つの最後の歌』を歌われましたね。ベートーヴェンの『第九』やバッハの『マタイ受難曲』や『ヨハネ受難曲』などのソリストとしてもご活躍ですが、オペラと宗教曲ではどちらがご自身に向いていると思われますか?
ニコライ作曲 歌劇「ウインザーの陽気な女房たち」(2015年11月)より (提供:関西二期会)
木澤 それぞれに魅力が有るので、どちらかを選ぶことは出来ませんが、オーケストラをバックにソリストとして歌曲や宗教曲を歌わせていただくのは特別な事だと思います。それが、先日の『4つの最後の歌』のようなオーケストラの定期演奏会なんかだと、緊張感も相当ですが、やり遂げた達成感も凄く、本当に幸せでした。オペラで培った表現力は宗教曲に活かせる部分もあると思いますし、宗教曲の経験はオペラにもプラスに働くと思っています。これからもチャンスを頂けるのなら、どちらもしっかりやっていきたいですね。
―― 最後に今回の『魔弾の射手』の見どころを教えてください。
ニコライ作曲 歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」(2015年11月)より (提供:関西二期会)
木澤 関西二期会として30年ぶり、待ちに待った『魔弾の射手』です。ここで云う“魔弾”とは、意のままに命中する悪魔の弾丸の事。思うように事が進まず落ち込んだ時などに、心の隙間に入り込む誘惑、悪魔の甘い言葉に耳を貸してしまう弱い心。これらは誰もが経験し、共感出来るのではないでしょうか。このオペラはそうした人間の弱さ、正義と悪と云った事がテーマとなっています。悪魔に魂を売って得た“魔弾”が引き起こすドラマの行方は?
指揮者のキンボー・イシイさん、演出の菅尾友さんともに大好きなオペラだそうで、思い入れも相当なものがお有りのご様子。菅尾さんの演出は、「悪魔ザミエルはデスノートの死神のように…!」「そこはバットマンみたいな…!」など、映画や漫画を引き合いに出されると云った、私たちには少々斬新なもの(笑)。アガーテだけでなく、例えば従姉妹エンヒェン像も私の持っていたイメージとは違い、二人の関係性が微妙に変わっていて新鮮です。今回の演出は、オペラ通の皆さまも『魔弾の射手』の新たな魅力に触れていただけるはず。どうぞご期待ください。それと、言い忘れてはいけないのが合唱団のクオリティの高さ! 関西二期会の公演でソリストを演じているクラスの歌手も今回は合唱で歌っています。第3幕の「狩人の合唱」も迫力満点!関西フィルの力強い演奏と合わせてお楽しみください。皆様のお越しをお待ちいたしております。
関西二期会 ウェーバー作曲 歌劇「魔弾の射手」チラシ (提供:関西二期会)
取材・文=磯島浩彰

公演情報

関西二期会 第88回オペラ公演
カール・マリア・フォン・ウェーバー作曲:『魔弾の射手』全3幕(ドイツ語上演・字幕付き)

■日時:
10月28日(土)16:00開演 
10月29日(日)14:00開演 
■会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELKO大ホール
■指揮:キンボー・イシイ
■演出:菅野 友 
■「魔弾の射手」配役
■「魔弾の射手」配役
・オットカール侯爵:萩原 寛明(10/28)/黒田まさき(10/29)
・クーノ:萬田一樹(10/28)/橘 茂(10/29)
・アガーテ:木澤佐江子(10/28)/老田裕子(10/29)
・エンヒェン:熊谷 綾乃(10/28)/末廣亜矢子(10/29)
・カスパール:西田昭広(10/28)/西尾岳史(10/29)
・マックス:竹田 昌弘(10/28)/竹内直紀(10/29)
・隠者ザミエル:片桐直樹(両日とも)
・キリアン:大谷圭介(両日とも)
・花嫁に付き添う乙女:小泉 文、野々村 瞳、安井裕子、矢内絵利子(10/28)|岩本美奈子、粉川陽子、中野 彩、沼田葉子(10/29)
■管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽 
■合唱:関西二期会合唱団 
■料金:特S¥12,000 S¥10,000 A¥8,000 B¥5,000 C¥3,000 D¥1,000 
■問い合わせ:関西二期会(06-6360-4651)
■関西二期会公式サイト:http://www.kansai-nikikai.com

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