INTERVIEW / スガナミユウ(下北沢T
    HREE) 「僕らが扱っているのは文化
    と人」――大きな話題を集めたプラン
    変更からわずか半年。さらに核心へと
    近づいた下北沢THREEの赤裸々な本音

    昨年秋のノルマ制廃止、そして今年3月には全ての営業時間ごとの独自のプランを打ち立て、ステートメントと共にそれを公表し、東京だけでなく全国のオーガナイザー、ミュージシャン、音楽ファンからの注目を集めた下北沢THREE。
    その店長であるスガナミユウは、 前回のインタビュー(https://spincoaster.com/interview-suganami-you-from-shimokitazawa-three) を行った際に「これはまだまだ変革の途中」であり、「さらなる歩みを進めるための準備段階」とも語っていたが、まさかこんなにも早く次なる一手を打ってくるとは。しかも、「出演者・イベンターにかかる全てのリスクを廃します」と掲げている通り、マイナー・チェンジというレベルではなく、明らかに彼が思い描く理想の核心をつくようなプランを打ち出してきている。
    さらには、およそ普通のライブハウスでは見かけない”THREEパス”という年間優待パスのようなものを発行、販売にも踏み出した。ということで、前回に引き続きSpincoasterでは店長であり自身もミュージシャンとしても活動するスガナミユウにインタビューを敢行。相変わらず斬新、そして突飛なアイディアのように見えて、その実はどこまでも現実主義な彼の本音と実情を聞き出すことに。
    Interview by Yui Tsuda
    Text & Photo by Takazumi Hosaka
    ――前回のプランを出されてからの反響はいかがでしたか?
    スガナミ:ありがたいことに反響はすごく大きくて。それこそ色んな人が取り上げてくれたし、箱のイベントの内容も充実してきています。そもそも前回のプランは今回発表したアクションに踏み込むための初期段階のトライアル的なもので、割とあの時の現実的なラインを提示したつもりだったんです。だから、あの時点では今までとそんなに変わっていなかったんじゃないかなって自分たちでは思ってたくらい。ただ、それを表層化してルールを定めたことによって、客観的に見えやすくなったのかなと。あとは箱の内実みたいなものを知ることができてよかったって声をすごくもらいました。
    ――そうやって表層化させることによって、出演者との関係性がよりフェアになったのではないでしょうか?
    スガナミ:そうですね。賛同してくれる人も増えたし、あとはそういうことも話していいんだと思ってもらえたのか、これまで異常に突っ込んでお金とか条件面のことを聞かれるようになりましたね。イベンターの方から、「イベントの見込み客はこれくらいで、チケット代はこれくらいにしたいと思っているんですけど、THREEの取り分としてこれは現実的ですか?」っていう感じで逆に相談してきてくれることもあって。その時はこっちも全部正直に話します。
    「週末の夕方帯だと本当はこれくらいは欲しいんだけど、イベントの主旨、内容的にぜひともうちでやって欲しいイベントだから、ちょっとここの料金をこういう風に変えよう」とか返したりして、深いディスカッションをできることが多くなってきたなと感じています。そもそも、イベントを打ってもらうということは箱の1日を作ってもらうっていうことなので、商売を預けてるのと同じなんです。だから、本当に腹割って話して進めていかないとおかしな話で、それがちゃんとできるようになってきたなって思います。
    ――前回のインタビュー時に、毎回決められたノルマを払う・請求するという従来のライブハウスの運営方法は思考停止に他ならないとおっしゃっていましたが、THREEでは様々なイベントに対してそういった親密なコミュニケーションを取ってイベントを進めていくのが基本だと。
    スガナミ:プラン変更によって色々なイベント形態が可能になったので、イベントを組む側のニーズを聞いてこちらから提案することもできるし、逆にこのプランを少し変えて開催したいという風に提案してもらうこともできる。ひとつのイベントを組む時に、いつものもう一歩先をイメージしてもらえる、新しいクリエイティヴィティが生まれるような店になってきたんじゃないかなって思います。そもそも思考停止にさせていたのは箱側だなと思いますし。
    ――持ち込まれるイベントに変化はありましたか?
    スガナミ:自分たちがどういう音楽が好きかをよりアウトプットしていくようになったので、ありがたいことに単純に僕ら自身が働いてて楽しい日が増えたというか、内容的に詰まってきたなと思いますね。
    ――自分たちの好きな音楽を表に出していくようになったというのは、〈KiliKiliVilla〉とTHREEが運営するレーベル〈6th sense, gut feeling〉のダブル・ネームでリリースされた”BLOCK PARTY”のコンピにも象徴されていますよね。
    スガナミ:そうですね、”BLOCK PARTY”に出たいって言ってくれるバンドも増えましたし。コンピ自体は実際うちにとってお金になるものではないのですが、そういうお金じゃない所の価値って後で付いてくるんですよね。”BLOCK PARTY”も新しい顔が増えてきているので、コンピも第2弾を作っていきたいなと思っていますし。
    ――来日公演の開催も増えたように思います。
    スガナミ:すごく増えましたね。各地でツアーを組む中で、東京だと平日でもお客さんが入るからということで、うちは平日に声がかかることが多いです。あとはツアー自体を一緒に組んで欲しいというお話もありますね。海外向けの東京カルチャー・ガイドみたいなサイトでTHREEが取り上げられてることもあって、海外からのお客さんも増えてきてますし。
    ――イベント主催の方とより深い話し合いをしたり、スタッフ側がイベントの趣旨を理解して行く中で、現場での雰囲気に変化はありましたか?
    スガナミ:僕らが何かやっている動きに対して、意味を理解して参加してくれる人は増えたと思います。出演してくれるバンドの人ともTHREEの運営面の話をするようになりましたし、「このバンド知ってますか?」という風にプレゼンしてくれたり、アイディアをくれたりすることもあります。”BLOCK PARTY”ではお酒の持ち込みが減って、バー・カウンターでお酒を頼んでくれる人も増えましたね。よりスタッフだけじゃなくて出演者、イベンター、お客さんで一緒に店を作り上げているなと感じます。そういう意味では、現場の熱量は上がってきてると言えるのではないでしょうか。
    ――THREEに来る人が増えたということで、以前大事だとおっしゃっていた現場でのコミュニケーションもさらに活性化されたのではないでしょうか?
    スガナミ:”BLOCK PARTY”などでは、入場無料ということも手伝い、色々な人が繋がっていくところをより見れるようになったかもしれないですね。あとは、THREEの箱バンみたいなバンドが増えてきているんです。お客さんとしてよく遊びに来てくれる女の子たちが主体となってやっているOCHA∞MEというバンドだったり、CHABEさんが始めた”9Party”でしか基本ライブをやらないCAFROMというバンドもあって。この場所だからこそ生まれるっていうものが増えて来ている感覚がありますね。バンドをやってみようとか、DJ始めてみようとか、そう言った瞬間に立ち会えるのはすごく光栄なことですよね。
    ――”BLOCK PARTY”に出演していたバンドが、他のイベントなどでもよく名前を目にするようになったようにも感じます。
    スガナミ:少しでも外の人が反応するキッカケになっていたらすごく嬉しいです。だからこそ”BLOCK PARTY”みたいな自分たちのイベントはクオリティをしっかり保つようにしていますね。わがままといえばそうなんですけど、自分たちが楽しくなかったら本当に意味がないんですよ。今回のプランも、言ってしまえば自分たちが楽しくなるための動きですし。でも、それは刹那的に「今日を楽しく」とかそういう意味ではなく、小箱としてこれからの10年を見据えた形で、どうやって舵を切って楽しんでいくかを考えようっていうことなんです。
    ――以前のインタビュー時に、1年後くらいにはまた新しくプランを作るかもしれないとおっしゃっていましたが、その想定よりも大分早いタイミングで新たなプランを発表することになりました。その経緯を教えてもらえますか?
    スガナミ:前回の変更後、ある程度想定していた成果を一旦残せたので、さらに踏み込んでいくことに決めました。前回のプランとは違って、今回はシステムを徹底的に完璧に変えることを目標としたものになります。そして大きなテーマとして、”良い音楽が鳴り、THREEに毎日100人が集っている状態を作る”ということがアクション全体を通したテーマになります。
    ――チケット代の最低保障や機材代を取らないと明記したのは、前回のプランで試してみて大丈夫だと判断されたからだと。
    スガナミ:そうですね。前回のプランでは一応最低保障を表記してはいたんですが、実際に赤字が出たところで最低保障を貰うということはほとんどなかったんです。今年に入っておそらく3日間くらいしか赤字をとっていないと思います。それができたので、最低保障と機材費は無しにしても大丈夫だろうと判断しました。もっと言えば、チケット代の最低保障を付けることがお互いにとって甘えになってしまうと感じることもあったんです。最低保証はあるけど、他の箱と比べればそれもかなり安い金額なので、お客さんが入らなくても最低保証を払えばいいや、という甘えに繋がってしまうんだなと。これは勉強になりましたね。30人、50人、80人入れましょうというのがお互いの信用なので、最低保障がない方が気合入るんじゃないかなと思うんです。
    ――なるほど。そして今回はついにチケット代を最大100%バックするというプランができましたが、これは前々からおっしゃっていたことが実現したことになりますよね。
    スガナミ:そうですね。ステイトメントにもあるように、チケット代は基本的に出演者とイベンター側のものだという認識を持ちたいなと思っているんです。持ち込みのイベントのお客さんは箱ではなくイベンター・出演者が九分九厘呼んでいるんです。それなのに箱側の取り分の方が多いのはおかしな話で、自分たちの箱を1日受け持ってもらう人たちへの敬意がない。もっと互いに腹を割って正直に何でも話すべきなんです、一緒に一夜を作るのだから。
    箱側が知識のないイベンターやミュージシャンからなんの努力もせずに、ウソみたいなお金を騙し取る時代は終わったんです。例えば、小箱の機材費なんかはすごく曖昧な提示の仕方で、トータルの箱の売り上げから機材のメンテナンスを行っているのだから、わざわざ外付けのオプションみたいに徴収するのは不親切な方法で。引っ括めた金額で提示しないのは、一見安そうにみせたいからっていう、それだけなんですよね。THREEはそういった曖昧な表現も来年からは一切外します。どれだけ使う人にとって誠実な答えを揃えられるかを考えました。
    もちろん箱を運営するに当たって必要なお金はあり、店として売り上げを立てていかなければいけない。なので、人がたくさん入るように努力し、うちはドリンクの売上げで稼いで、後は全部返そうと考えるのが理想だと思っています。今回平日に100人以上入るとチケット代を100%バックするという形になっているんですが、なにも暴挙に出ている訳ではなく、100人が集っている状態というのは店にとって大きなビジネス・チャンスなんです。その人たちがもう一杯づつドリンクを頼んでくれたらそれだけで平日の売上は立つ。チケット代を還元する分、イベンターへはドリンクを出すことに協力をして頂きたいなと。DJを入れたり、転換を長くとってお酒が出やすくなるように相談したり、中打ち(イベント終了後の会場での打ち上げ)をしてもらったり、方法は色々あるので。
    ――それでも東京というとても地価の高い場所で、実際にそれを行動に移せるということがTHREEが注目を集める所以だと思います。
    スガナミ:うちはクラブとライブハウスの間の子みたいな側面があるので、お酒を出すことに意識的なんです。例えば今までのライブハウスでいうと、チケットの売り上げが一次的な利益、ドリンクの売り上げは二次的な利益でした。まずはそこを反転させて考えて、THREEはドリンクの売り上げを一次的な利益として捉えて、チケット代はどんどん還元していく。ライブハウス/クラブというのは体験を売るもので、厳密にいうと音楽そのものは商売の道具ではないんです。だから、チケット代はなるべく出演者へ戻したい。THREEは現場の熱量と、音楽の力を借りてドリンクの売り上げを伸ばす。
    ただ、副次的な利益で商売をしているものって結構あると思っていて、今のエンターテイメントの世界は入り口が入りやすいものが多いですよね。無料/無償の入り口を経て、その後の課金へは満足度が勝負となっていく。そこではコンテンツの強さがカギになっていて、THREEでいうならそれが音楽になる。持ち込みのイベントのプラン・ページにはそれぞれ「THREEは音楽と人を選びます、内容によってはお断りさせて頂く場合がございます」と書かせてもらっています。いくらシステムが使いやすくなっても、箱全体のイベントの内容が上がっていかなければ意味がない。僕たちが扱っているのは文化と人なんだという突っ張った意識がなければ、ただの安い貸し出し箱になってしまう。だからブッキングにしてもパーティーにしても来年は内容をさらに上げなければいけないと思っていて、それは今の流行りに乗ったものではなく、しっかりとTHREE独自の審美眼が貫かれたものでないといけない。
    ――持ち込みイベントでチケットフリーのパーティーができるプランが加わったのは、どういった背景からでしょうか?
    スガナミ:これは今年何回か相談を受けてやってはいたことなんですけど、この間SEVENTEEN AGAiNがアルバム発売記念のライブを週末の昼にやったんです。その時はアウトストア的なイベントで、前もって購入したCDか帯を持参、あるいは当日THREEの受付にてCDを購入することで、2ドリンクのみで入場できるという内容で。いざやってみて驚きだったのが、来場したうちの50人以上が、当日にTHREEの店頭でCDを購入して入場したことなんです。これはすごくいいなと思いました。やはり直売できた方がバンドの利益も高いので、先行販売イベントや即売会的なイベントも打ちやすいプランになっています。そうすることでオーガナイザーの選択肢を広げることにもなるんじゃないかなと。そして、これもまた1日に100人THREEに来てくれる状態を作るためのものになっています。
    ――現状ではお客さんが100人来る状態というのは、どのくらいの頻度で達成できていますか?
    スガナミ:すごくまちまちなんですが、週に2回というところですかね。毎日100人入ってたらすごく楽しいですよね。だから、フリー・パーティーは動員予測80人くらいの人からお願いしたいところなのですが、ただ、40人くらいだったとしてもドリンクをいっぱい飲んでくれる猛者たちなら全然歓迎ですし(笑)。
    そういう我々側の判断っていうのがこれからはより重要になってくると思います。そこがしっかりできないと、赤字を取らない分大ゴケする可能性もあるので。
    ――「今は窓口を広げる時期」であり、「持ち込みイベントはスケジュールが合えば基本的に引き受ける」と以前おっしゃっていましたが、「信用で商売をする」という今回のステイトメントや、プランにも「THREEは音楽と人を選びます」と明記してある通り、現在ではさらに一歩進んだ段階にきているのではないでしょうか?
    スガナミ:それでもまだまだ知らない人はたくさんいるので、もっともっと色々な人たちに出会いたいとは思っています。ただ、チケット・フリーのパーティーに関しては、THREEに来たことがある人じゃないと想像しづらいと思うので、簡単に受けることはできないかなと。単純に「誰でも格安で貸しますよ」という話ではないということが重要なので。あとは、すごくよくあることなんですけど、電話で名前も名乗らずに「いついつにイベントをやりたいんですが空いてますか?」って言われることがあって。うちは名前も知らない人に店の商売を預けることなんてないので、まずは自分たちのことと、イベントの趣旨を説明してほしい。でも、それくらい簡単に見られちゃってるんですよね、箱って。どっか空いてるところがないか、片っ端から電話して探そう、みたいな。
    ――ノルマさえ払ってもらえれば何でもいい。そういう箱貸しスタイルがスタンダードになってるからこそとも言えますよね。言ってしまえばリハーサル・スタジオと同じようなシステム。
    スガナミ:そう。だから、彼らの気持ちもわかるんですけどね。そういう面で、THREEは最初の取っ掛かりは面倒だなと思われるかもしれない。でも、その分受け入れた時のサービスを高めようということです。やっぱり信用で商売するってことが一番にあるので、近所付き合いみたいなものに近いですね。隣の家からお醤油を借りてくる、みたいな。普通そこに対して何か契約を交わしたり、保証を付けることはしないですよね。人を見て信用で商売するということはそれと同じで、チケットの最低保障も機材費も貰わない。
    ――ただ、そこまでストイックなスタイルを貫くためには、本当にフル稼働しないと成り立たないですよね。
    スガナミ:実は、売上的と人件費を照らし合わせて、稼働しない方がよかったという日も中にはあるんです。それでもフルで稼働させる理由は、ひとつにスタッフの雇用を作るためという部分が大きいです。例えば、チケット代を最大100%までバックするというと、やはり海外のライブ・バーなどのスタイルが引き合いに出るのですが、状況が違う点も多々あります。THREEは家賃の高い東京・下北沢で、1日に6人、イベントが2本ある場合は1日に12人が働きます。音響スタッフ、受付、バー・スタッフ、イベントの運営スタッフ。THREEのクオリティとして、おもしろい音楽をいい音、いい環境で届けるためにはその人数が必要であり、いくらフリー・パーティーが増えても、持ち込みイベントの条件が下がっても、それをサポートするスタッフの人数を間引くことはできない。さらに、ドリンク収益を主として稼ぐとなると、仕入れの原価は売上の2割を超えてきます。そんな高カロリーな状況の中、ユーザーへのさらなるサービスへ踏み切るためには、もう徹底的にブチあげるしかない。それが”平日・週末問わずTHREEに100人が入っている状況を作る”という来年の大きなテーマに繋がってくるんです。
    ――では、今回のプランで最も革新的な、年間パスについて詳しく伺いたいです。まず、どういったところからこの発想が生まれたのでしょうか?
    スガナミ:これは入場無料の”Block Party”や”9Party”を開催していく中で、フリー・パーティーの継続が難しくなってきたというのがまずあって。というのも、入場が無料な分、現状では出演者のギャラをどうしても圧縮せざるを得なくなっているんですね。こういった中で継続していても、自分たちの中で全然納得がいかないんです。アーティストは作品で稼ぐのが難しくなってきている。なので、少しでも現場でお金を回すことができたらいいなと思っていて、そうしないと音楽を続けていけないと思うんです。
    そこで思いついたのがTHREEパスで。最初はクラウドファウンディングを使おうかなとも考えたんだけど、別にわざわざそうする必要もないなとも思いまして。THREEパスの収益は出演者のギャラとして運用していきます。一口3000円で、仮に1万人が買ってくれたら年間で3000万円。お客さんがゼロ人の状態でも1公演につき大体5万円以上のギャラからスタートできることになります。これは単純に持ち込みイベントを安くするということとは別の視点というか、出演者のギャラをお客さんから募ってどんどんイベントを安くしていくことができるかもしれない、という考えに基づいていて。
    ――パスで集めたお金は全て出演者に還元化していくと。
    スガナミ:はい。全額出演者に渡したらTHREEに一体何の得があるんだろうと思われるかもしれませんが、THREEとしてはその分の顧客を得ることができる。それは大きな利益です。
    ――パス購入者には様々な優待があるとのことですが、現時点では一体どのようなことを想定していますか?
    スガナミ:まず、クラウドファンディングのような確実性のあるリターンを求める方もいると思いますが、THREEパスは基本的に出演者のギャラの支援を目的としてお求め頂きたいという想いがあります。その上で、購入者には様々な優待を受けられるようにしたいと思っています。例えば、”Block Party”や”9Party”以外にもうち主催のイベントがあるんですが、そういった箱主催イベントの入場を無料にしたり、持ち込みのイベントにも我々が交渉して、なるべくパスを買ってくれた方向けのディスカウント枠を設けてもらう予定です。もちろん全てのイベントに招待・割引が有効になる訳ではありませんが、できる限り尽力しますし、THREEパス限定のイベントも行っていく予定です。年間フリー・パスではなく、株主優待券のようなものだと思ってもらえれば。具体的には、今THREEのスケジュールは概ね1/2が持ち込みのイベント、1/4がフリー・パーティー、1/4がTHREE主催のチケット代のあるイベントになっています。なので、THREEパスを持っている方は、月の半分が入場フリーになり、残りの1/4がディスカウント、残りの1/4は優待はなし。そのくらいのバランスまで持っていきたいです。適用はTHREEのTwitterアカウントにて、イベントの当日までにアナウンスします。
    持ち込みイベントの主催者は、THREEパスをお持ちのお客様をゲスト・ディスカウントとして受け入れるかどうかを自由に決めて頂けます。優待者として受け入れる場合は、THREEパス来場者のチケット料金を自分で決めて頂き、その全額をバックします。THREEパスの適用はイベントの前日まで保留にも出来るので、動員を予測した上で決めて頂けたらと。
    ――なるほど。
    スガナミ:あと、さっき持ち込みのイベントのお客さんは九分九厘イベンターと出演者が呼んでいるという話をしたと思うんですけど、それ自体が小箱の現状の大きな問題でもあるんです。お客さんの層がイベント毎に完全に分断され、毎回同じ人しか観ていない。そしてイベントの分断を突破できるような求心力を持った箱が少ないことに原因があります。そこでTHREEパスを運用することで、イベントにいつもとは違ったお客さんが5人でも10人でも増えたら、現場の盛り上がりというのは変わってくると思うんです。小箱というのはそれだけひとりひとりの人間の”そこに存在することの力”というのが大事になってくる。例えばインダストリアルやハードコアのパーティーで、知らないお客さんもごっちゃになって楽しんでいる景色を僕らも見たいじゃないですか。

    THREEパスってちょっと誤解を招きやすい名前だとは思いますが、持って頂いた方を仲間として迎え入れたいという気持ちでこう名付けました。これはお客さんだけでなく出演者もそうで、参加してもらうことで相互扶助のようなものになればいいなと。
    ――単純に出演者に全て還元していくことでカルチャーが育つ手伝いができるし、そういったカルチャーが育った先でファンの母数が増えれば、結果的にTHREEもちゃんと潤う仕組みになりますよね。
    スガナミ:そうなんです。よく「THREEってどういう風に経営が成り立っているの?」と訊かれることが多いのですが、THREEは丸腰で、グループ内や外部から何か直接的な支援やサポートを受けている訳ではないので、すべて店の中だけで商売が完結しています。そうでないと新しい小箱のカタチを提案できないし、本来DIYというのは全員が利益をシェアして幸せな状況にないといけないんです。なので、「うちも商売なので稼ぎますよ」ということをきちんと言えないといけないし、その上で出演者にもできる限りお金を戻して、お客さんはどんどん安く楽しめるようにする。それが本来的なDIYの姿勢だと思うんです。本意ではないんですが、うちが価格競争の先人を切っていると思っている箱もあると思うんです。確かに今まではそう誤解されても仕方ない部分はあったかもしれません。でも、今回のTHREEパスに関しては明らかに違くて。他の箱でも応用できる現実的な案だと思ってます。うちは一口3000円の全てをそのまま出演者のギャラにあてるけど、例えば5000円にして、そのうちの2000円は店の運営費に回すという風にも変えて使うこともできるのではないでしょうか。大きい規模のところでもパスの値段を高くして活用することができると思います。とにかく全ての方法、手段をシェアしていこうと思っています。THREEパスが成功を示せたらぜひ応用してもらいたいですね。
    ――平日・週末問わず毎日のように100人入るような箱になったとして、THREEとしてその先にはどのようなヴィジョンを描いているのでしょうか?
    スガナミ:究極的なことを言うと、全部のイベントを無料化したいです。THREEパスの売上でイベントを作っていく形に持っていきたいですね。THREEパスを持っている人が1万人いたら、その3000万円の資金で、年間通してイベントを作っていくという形。現状、イベントを打ってもらう時は箱代がこれくらいかかって、出演者のギャラはこれくらいで、というマイナスの計算から入るんですけど、そうじゃなくて、最初から「この予算でおもしろいことやってください」っていうプラスの話からスタートできる。それってすごい楽しいことになるんじゃないかと思っていて。
    ――THREEの方からどんどんイベンターなどに頼んでいけると。
    スガナミ:そう。その形もできたらやりやすくなるだろうし、安心してイベントを打てるじゃないですか。そしてTHREEパスを持っている1万人が順繰りに各々好きな時に来てくれる状態にできたら超理想的ですね。
    ――それはある種サロンのような機能ですよね。
    スガナミ:だから、THREEパスに関してはこれまでの僕らの動きを知ってくれている人以外にも発信していきたくて。普段はTHREEでライブをしないような名の通ったアーティストを呼んで、チケットを買ってくれたそのファンの人たちにもTHREEパスを手にしてもらえるようなイベントも考えています。もちろんTHREEパスを元々購入している方の招待枠も用意しながら。
    ――THREEパスを買った人は、自分の目当てのアーティストやイベントがなくても、普段から「今日はTHREEで何やってるんだろう?」と、気にかけるようにもなりますよね。
    スガナミ:そういう意識の変化はとても重要だと思っています。あと、音楽をやる人間にとって始まりの場所である小箱のライブハウスやクラブが、少しでも出演者にお金を回せないと、才能の芽はどんどん潰れてしまう。その協力をお願いしたいと思っています。それと同時に、少しでも多くの人に観てもらう機会を作らなければいけない。だから盛んにフリー・パーティーを行ったり、THREEパスをお持ち頂いた方へ優待を設けて足を運んでもらいやすくする努力を箱が行う。
    一口3000円という金額は普段ライブハウスへ行って1日で使うだろう値段にしました、日本のチケット代というシステムへの皮肉も込めて。THREEは一切そのお金を利益にしないので、流石に「あれをやれ」とか「これができてない」とかまでは言われたくはないですが(笑)。
    ただ、自分たちが出来る最大限の優待を年間を通して提案していきたいと思っています。なので、本当の勝負は来年からですね。THREEパスを年毎に持ち続けてもらえるように、内容を詰めていかなければいけない。都内近郊の小箱で遊んでいる人口は2万人くらいはいるはずなので、その人たち全員に気にしてもらえるくらいにイベントの質を、内容を高めていきたいです。

    ステートメントにも書かせてもらった通り、仮にTHREEパスを持つ方が1000人で300万円、1万人で3000万円の出演者のギャラを運用できます。これは今までTHREEが行ってきた、ノルマの廃止や持ち込みイベントの料金改定などの、安くする・使いやすくするという概念から進んで、小箱のライブハウス/クラブのお金の回し方自体を変える提案です。出演者への支援を先に募り、どんどんイベントを安くしていく。箱はドリンクを売る努力をする。冗談でもなんでもなく、まっすぐに、10年後、20年後のライブハウス/クラブの未来への提案として、ご支援を頂けたら嬉しいです。
    【店舗情報】

    “shimokitazawa THREE (LIVE & CLUB)”

    住所:〒155-0032 東京都世田谷区代沢5-18-1 カラバッシュビルB1F
    TEL:03-5486-8804(16:00〜)
    FAX:03-5204-9120
    E-mail:3@toos.co.jp
    オフィシャル・サイト:http://www.toos.co.jp/3/

    アーティスト

    Spincoaster

    『心が震える音楽との出逢いを』独自に厳選した国内外の新鋭MUSICを紹介。音楽ニュース、ここでしか読めないミュージシャンの音楽的ルーツやインタビュー、イベントのレポートも掲載。

    34コメント
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