【ライブレポート】アクセプトが放つ
、真摯でカタルシスに満ちたメタルワ
ールド

今や世界最大のメタル大国のひとつであるドイツにおいて、40年近くにわたって第一線で活動してきたアクセプト。2017年8月、母国の<ヴァッケン・オープン・エアー>フェスでは8万人の大観衆を前に、(1)バンド編成、(2)ギタリストのウルフ・ホフマンのソロwithオーケストラ、(3)バンド編成withオーケストラという3部構成のスペシャル・ライブを行った彼らだが、その1ヶ月後の2017年9月14日に中野サンプラザにて日本公演を敢行した。
アルバム『ザ・ライズ・オブ・ケイオス』にともなう今回のツアーでは、ウルフ・ホフマン(G)とピーター・バルテス(B)、これが加入して4作目となるマーク・トーニロ(Vo)を軸に、ウヴェ・ルイス(G)、クリストファー・ウィリアムス(Dr)が参加、ジャーマン・メタルのオリジネイターならではのカミソリのように研ぎ澄まされ、玄翁のように重量感のあるライブ・パフォーマンスで魅了した。
興味深いのは、この日のステージがやはり“3部構成”になっていたことだ。もちろんオーケストラを帯同したわけではないが、バンドの豊潤なレパートリーから大まかに時期を区切ってすることになった。
“第1部”はショーの導入部で、新旧取り混ぜた楽曲で我々をアクセプト・ワールドへと引き込んでいく。アクセプトが現在進行形のバンドであり、マーク・トーニロがバンドの一員として受け入れられていることは、オープニングの「ダイ・バイ・ザ・ソード」「スターリングラード」から観衆が総立ちになったことからも明らかだ。それから1980年代の「レストレス・アンド・ワイルド」「ロンドン・レザーボーイズ」へと続いていき、ピークはどこまでも続いていく。
「ザ・ライズ・オブ・ケイオス」から始まる“第2部”は、マーク期のナンバーで固めたパートだ。ベテラン・バンドのステージでは過去のクラシックスが求められる傾向が少なからずあり、『ザ・ライズ・オブ・ケイオス』から4曲、そして「ファイナル・ジャーニー」「シャドウ・ソルジャー」という新しめの曲を並べることはリスキーだったりもする。だが、それをあえてやってみたのは、彼らの自信によるものだろう。事実、この日の観客は「クールエイド」「アナログ・マン」などに熱い声援を送っていた。ウルフ・ピーター・マークの鉄壁のトライアングルは現在もアクセプトを止めることのできない運動体たらしめており、クリストファーはダイナミックなビートでバンドのサウンドをさらに増強、ウヴェも単なる積極的に前に出てきて、ウルフとのギター・ハーモニーでスポットライトを浴びるなど、単なるサポートの域に留まらない存在感を放っていた。
そしてショーのハイライトは本編最後を飾る“第3部”である。「ネオン・ナイツ」「プリンセス・オブ・ザ・ドーン」「ミッドナイト・ムーヴァー」「アップ・トゥ・ザ・リミット」と、アクセプトの名前を世界に響きわたらせたナンバーの数々がプレイされる。当時のシンガーだったウド・ダークシュナイダーはもはやバンドにいないが、マークの歌唱とヴィジュアルはウドに負けない個性的でアクが強いものであり、往年の名曲と化学反応を起こして新たな魅力を生み出していた。
この日最大のビッグ・サプライズは、「オブジェクション・オーヴァールールド」だろう。1990年代のウド復帰再結成アルバム3部作についてウルフとピーターは「あまり良い思い出がない」と語っていたのもあって、近年ではあまりプレイされることがなかったが、この日突如飛び出して特別に大きな歓声を浴びていた。
マークが加入してからの「パンデミック」は既にアクセプトの名曲のひとつとして受け入れられているが、ファンだったらお馴染みの「ハイディ、ハイド、ハイダ♪」テープが流れると、クレイジーになるボタンを押されてしまったようなものだ。「ファスト・アス・ア・シャーク」はまさに“サメよりも速い”スピードで疾走する鋭角的なメタル・ナンバーだ。
時にロック・コンサートではアンコールは“オマケ”だったりすることもままあるが、アクセプトの場合は絶対に必要不可欠なクライマックスとなる。もしジャーマン・メタルが国だったら、国歌の候補として真っ先に「メタル・ハート」が挙がるであろう。現在のドイツ国歌はハイドンの作曲によるものだが、ベートーヴェンの「エリーゼのために」を挿入したこの曲ならば、まったく遜色がない。
続く「チュートニック・テラー」はマークが加入してからの曲だが、「奴らに斧をくれてやる!」と宣言するアンセムは、このポジションで演奏されるに相応しい代表曲のひとつとなっている。
ボールズ・トゥ・ザ・ウォール」で会場が一体となって勝利のVサインを掲げ、ショーは終わりを告げた。バンドがデビューした頃、ヘヴィ・メタルは公序良俗に反する音楽だった。だが21世紀の“混迷の時代”において、ヘヴィ・メタルはたったひとつの真実のように輝きを増している。まっすぐにジャーマン・メタルを世界に伝道してきたアクセプトが何ひとつ間違っていなかったことを確信させるステージは、真摯でカタルシスに満ちたものであった。
文:山崎智之

Photo by Mikio Ariga

編集:BARKS編集部

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