ポルノグラフィティが歌う「サボテン」の物悲しさの表現

ポルノグラフィティが歌う「サボテン」の物悲しさの表現

ポルノグラフィティが歌う「サボテン
」の物悲しさの表現

デビューから精力的に活動を続けていた彼らが解散を考えた瞬間だった。しかし、ポルノグラフィティはただでは転ばない。
世の中の価値観は多様で音楽の好みも人それぞれである。それは、どのミュージッシャンも了承している事実だ。しかし、彼らはそこに悔しさを覚えたという。頭では「人には好みがある」と理解していても、気持ちは納得しない。
その反骨心が2人になった彼らを燃えさせた。ポルノグラフィティの熱量は楽曲やライブから伝わってくる。一瞬にして彼らの世界観になるのは、ストイックに進化を求めた結果だ。
迫力があり、華やかなイメージの強いポルノグラフィティの楽曲だが、2000年に発売された「サボテン」は物悲しい曲だ。この発売の前にも失恋ソング「サウダージ」が発表されている。
ポルノグラフィティ サボテン
サウダージは女側、サボテンは男側から見た恋の歌となっている。失恋時のチクチクと刺さる痛い思いを「サボテン」と見事に表現しているのだ。ボーカル岡野の特徴的な歌い方が逆に物悲しい雰囲気を作り出しているといえる。
彼の歌い方がなぜ「サボテン」の物悲しさにつながるのか、紐解いていきたい。
岡野はマイナー調の「サボテン」でも軸の歌い方を変えることはない。ハキハキと歌う彼の歌い方は、物悲しい同曲に一定の効果をもたらす。ハキハキと歌うことにより、言葉一つひとつが耳に残る。
真正面から向き合いたくない恋の浮き沈みも丁寧に歌い上げ、悲しみを拾い上げる。また、新藤のギターソロが心の琴線に触れる。エレキギターから流れる強いはずの音がもろく儚く聴こえる。
これは新藤自身が確固たるイメージを持ち、技術だけではない感情で弾いていることによるものだ。ボーカルだけではなくギターも物悲しさを増幅させるのに一役を買っている。
サボテンはまさに男の心
「冷たい風」「窓際の小さなサボテン」など具体的な歌詞を並べ情景をリスナーに浮かばせる。
「溢れるくらいの水」というのは、女性の愛情を指す。サボテンは水(愛情)をあげなくても、あげなさすぎても枯れてしまう植物だ。水(愛情)を与えられすぎ枯れそうになるサボテンはまさに男の心を象徴している。
サボテンはただの失恋ソングではない。最後には「ほら薄日も射してきた 小さな花を咲かそう」という歌詞が出てくる。「惜しみない愛に慣れていた」男は、失って始めて自分自身の気持ちに気づく。
大人の恋模様
「近くにいるのが当たり前」となり気持ちが薄くなっていく。そんな経験をした人も少なくないだろう。大概の場合、遠ざかればその魅力に改めて気付かされる。恋愛の不思議な現象をポルノグラフィティが歌い上げる。

その気持ちを直接的ではなく、風景や状況から浮かび上がらせる。気持ちの隠し方、見せ方が上手い大人の恋模様を描き出している。ポルノグラフィティは突き進む熱量だけではなく、包み込むような朗らかで繊細な情感さえ持ち合わせている。一流のミュージシャンである所以が此処にある。

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