栗山千明が5年ぶりの舞台『ミッドナ
イト・イン・バリ』を大阪で大いに語

「みんなで毒舌を言い合うけど、最後は家族愛を感じる作品です」
現在放映中の、NHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』の脚本を手がける岡田惠和が「舞台でどうしても描きたかった」という作品『ミッドナイト・イン・バリ』。バリ島での結婚式を翌日に控えたカップルが、2人の親も巻き込んで激しく本音をぶつけ合う四人芝居コメディだ。ここでカップルの片割れである「こじらせ系」の女性・幸子を演じるのが栗山千明。2008年に初めて演劇の舞台を踏み、今回が4度目の舞台への挑戦となる。9月15日の東京初日を迎える前に、大阪で行われた栗山の会見の模様をお届けする。
『ミッドナイト・イン・バリ』出演者。(左上から時計回りで)栗山千明、溝端淳平、中村雅俊浅田美代子
■幸子は身近にいたらちょっと大変な人で、エネルギーのいる役。
──今回の役どころについてお聞かせ下さい。
チラシには「こじらせ系」と書いてますけど、何でも思ったことを言ってしまう、喜怒哀楽の激しい女性です。その「何でも思ったことを言ってしまう」がゆえに、嵐を引き起こしてしまうという。バリ島の天気が悪くて、明日本当に結婚式ができるのか? とソワソワイライラしているのに、婚約者の治(溝端淳平)はのほほんとしてるので、そこでバトルがいきなり始まります。そこからどんどんどんどん「そんなことまで言っちゃうの?」というような本音が飛び交う会話劇が繰り広げられていく……という内容です。
──台本を読んでみて、どこに面白さを感じましたか?
読み合わせでいつも笑ってしまうのは、治が私とお母さん(浅田美代子)の間で、すごく一生懸命ワタワタしている所ですね。それが面白いというか、気を使わせているのが「あるある」という感じです。あとはこの関係に、中村(雅俊)さんが演じる治のお父さん……本当に自由奔放なキャラの人が入ることによって、またゴチャゴチャしていくんですね。読み合わせが終わった後、(演出の)深川(栄洋)さんは「すっごい大笑いじゃないけど、ずっとニヤニヤしてました」とおっしゃってました。あと「あるある」という共感で言うと、母と娘の関係というのがすごく散りばめられています。
──どんな母子関係なんでしょう?
お母さんの敏子は、(幸子と)同じように物事をスパッと言い切る、思ったことを全部言っちゃうという共通点があって。でも幸子は敏子と似たくないと思っていて「私がこういう人間になっちゃったのは、お母さんのせいだ」と思ってるところがありますね。でもそういう「お母さんみたいになりたくない」と言えちゃうところが、もしかして仲いいんじゃないかなという気もするので。当人たちは気づいてないけど、端から見たら結構仲良しなんじゃないかなあと思います。
栗山千明。 [撮影]吉永美和子
──脚本の岡田さんは、この作品を「舞台で描きたかった」とおっしゃってますが、脚本を読んで「舞台だからこそ」と思ったところはありましたか?
たとえば一つの話をしていたのに、すごく脱線して「そういえば、今何話してたっけ?」みたいなことがあるんです。面白いだけじゃなくて「あー、こういう感じあるよなあ」と、皆さんが思うような会話ですね。そのやり取りのナチュラルさとか、間(ま)とかスピード感は、多分映像だと編集されてしまうと思うんです。それが舞台だからこそ、ダイレクトに体感していただける……という部分じゃないかと、私はとらえています。
──幸子と栗山さんは、似ている部分はあるんでしょうか。
ざっくりいうと、あんまり似てないかな? 幸子は本当によくつらつらつらつら言葉が出て来るなあと思うほど、感情が高ぶるとバー! と言葉があふれ出る人なんで。そのすごさは、ぜひ(舞台で)体感していただきたいです(笑)。ある意味「ああ、怒ってるな」「楽しんでるな」というのがわかりやすいので、その点は可愛いんですけど、包み隠さずいろいろしゃべり過ぎるなあと。個人的には、身近にいたらちょっと大変な人だと思うし、エネルギーのいる役だと思っています。
──ご自身は、幸子のような「こじらせ系」ではないと。
「こじらせ」という部分で言うと、私もお家が好きでなかなか人と交流を持たないとか、そういう幸子とは違うこじらせ方をしているかも(笑)。どちらかというと溝端さんが演じる治の方が、私自身に近い。舞台と同じ状況に置かれたら「うん、そうだね。でもさあ、こういうこともあるじゃない」って、柔らかく軌道修正しようとすると思います。
栗山千明。 [撮影]吉永美和子
■舞台ならではの楽しみを、じょじょに見出しています。
──現在苦労されている点などは。
台詞の量がものすごいので、(役者の)皆さん頭を抱えている状態です(笑)。小難しいことは一切言ってはいないんですけど、さっきも言ったように話が前後したり、急にあっちに行ったりこっちに行ったりするし。本当にそこが(会話の)リアリティなんですけども、台詞を覚えるには苦労する感じかなあと。あと、この話の冒頭は「(幸子は)そんなに不安になってイライラしてるんだ」という所から始まるんですが、日常でここまでイライラする体験がないので、今のところ全然想像がつかないというのもあります。なのでここに至るまでに何があって、どういうことでイライラしてるのかということをしっかり考えて、表現できたらなあと思います。
──5年ぶりの舞台となりますが、舞台に対してどういう思いを持ってますか?
私が一番最初に舞台に出させていただいたのは意外と最近で、本当に遅いデビューだったんです。それまでは「舞台は怖い、自分にはできない」って感覚がありました。そんな状態で初めて舞台を踏ませていただいて「それは無理でしょ!」と思っていたことをやり遂げるという体験ができたことで、自信につなげることができました。やはりドラマや映画だと、観てくださってる方がどういう感じで観ているのかがわからないんですけど、舞台の時はそれが空気として感じられるし、反応があると「嬉しいな」と思ったり。「あ、今度はこういう言い方をしてみようかな」という、遊び心がちょっとずつですけど芽生える時があって(笑)。まだ緊張や不安の方が多いですけど、舞台ならではの面白さ、楽しさってこういうことなのかなあと、じょじょに楽しみを見出すことができてきたと思います。
──栗山さんご自身は、この作品を通して結婚願望が出てきたりしましたか?
ないです(笑)。私本当に、一人の時間が好きなんですね。大好きなアニメを観るとか、誰にも気を使うことなく、自分のタイミングでお風呂に入ったりとか。誰かがいると、お風呂の順番とか起きる時間とか、気を使ってしまうじゃないですか? 一人だと自分勝手に、自分のタイミングで動けるというのが心地いいです。今回の舞台の話で言うと、もちろん「結婚っていいな」とも思うんですけど、やっぱり大変なこともあるんだなって。両方の面が、多分見えるんですかね? だから素直に軽く「いいなあ」と憧れる感じは、正直ないです。
栗山千明。 [撮影]吉永美和子
──観客も、結婚をちょっとためらうような感じになっちゃうのでしょうか?
それはないと思います。結末が……言いたいんですけど、言ってしまうともったいない(笑)。みんなで「人間関係おかしくなっちゃうんじゃないか?」というぐらい毒舌を言い合ってるのに、「あ、家族愛だなあ」という愛を感じる最後になってるんです。これぐらい大変なことも乗り越えていける相手とだったら、幸せになれるんじゃないかなあ? っていう。なので「居心地がいいから」とか流れに乗ったように結婚するんじゃなくて、これぐらいお互いがぶつかったら、強い家庭を築けるんじゃないかなあ……という風に見ていただけるんじゃないかと思います。
──特に結婚を考えているカップルが観に来たら面白そうですね。
あ、面白いと思います! たとえば幸子と治のケンカを見て「あー、こういうのあるよね」「この気持ちわかる」と言い合うことになるかもしれない。観ていただいた後に会話の一つが生まれるかもしれないですし、きっと楽しめると思います。
栗山千明。 [撮影]吉永美和子
取材・文・撮影=吉永美和子

公演情報

『ミッドナイト・イン・バリ~史上最悪の結婚前夜~』

■日程・会場
9月15日(金)~9月29日(金)東京 シアタークリエ
10月03日(火)静岡 富士市文化会館 ロゼシアター
10月05日(木)愛知 愛知県芸術劇場
10月07日(土)~08日(日)大阪 サンケイホールブリーゼ
10月10日(火)福岡 久留米シティプラザ
10月12日(木)鹿児島 鹿児島市民文化ホール第2
10月14日(土)山口 ルネッサながと
10月17日(火)岡山 岡山市民会館
10月19日(木)愛知 豊川市文化会館
10月22日(日)新潟 りゅーとぴあ
10月24日(火)岩手 岩手県民会館
10月29日(日)千葉 印西市文化ホール
10月31日(火)~11月01日(水)金沢 北國新聞赤羽ホール
■脚本:岡田惠和
■演出:深川栄洋
■音楽・演奏:荻野清子
■出演:栗山千明 溝端淳平 浅田美代子 中村雅俊
ピアノ=荻野清子 ギター=阿部寛 パーカッション=藤井珠緒

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