【音踊人 54】<千歌繚乱vol.13>レ
ポート:初めてのV系イベント参戦!
(平岡絹&篠田ひかる)

8月29日(火)にBARKS主催の若手ヴィジュアル系イベント<千歌繚乱vol.13>が開催された。
この日は若手ヴィジュアル系バンドが6組出演し、それぞれ熱いステージを魅せてくれた。今回“初めてヴィジュアル系のイベントライブを見る”という学生2人も見学に来ており、その視点でのライブレポを書いてくれた。
ヴァージュは私が想像していたヴィジュアル系バンドのイメージそのもの。ダークなサウンドで観客を煽りデスボイスをあげサビで歌を聴かせる…そんな姿にそう思わされた。ライブが始まるやいなやメンバーは観客を煽り、会場の熱気をあげていく。MCは無く次々と曲を演奏していきファンも最初から激しくのっている。ファンの振りは完璧で、まるでそれがステージの演出の一部になっているかの様にも見えた。後ろで観ていてその光景に美しさを感じ、改めてバンドはファンがいないと成り立たないのだなと感じた瞬間だった。
ヴァージュの楽曲は歌もギターソロも聴かせる所が多く、いい意味で癖が無いので違うジャンルのファンにも受け入れてもらいやすいバンドだと思った。ライブ後に紫月(G)に今日のライブの感想を問うと「トッパ―だったので最初から飛ばしていきながらも次のバンドに繋げられるように、そして食ってかかっていく気持ちでライブをした」と言っていた。確かにその意気込みが伝わってくるライブだった。トップがヴァージュだからこそ<千歌繚乱>が最初から会場を熱気でパンパンに出来たと思うし、これだけ最初から煽るバンドは中々居ないと思った。私が今まで観てきた他ジャンルのバンドの煽りが煽りに聞こえなくなる程、遼(Vo)は「叫べ」「もっと」「全然聴こえねーぞ」等とドSに煽っていて、ハマる人にはどんぴしゃでハマるバンドではないかと思う。初めて見たながら、これからがとても気になるバンドだと思った。(篠田)
ライブを見る前にMEIDARAの楽曲を聞いたとき、ラウドやメタルの中に和の要素が組み込まれていて、かつデスボイスや英語の歌詞が少ないためあまり抵抗がなく聴きやすい印象だった。いざステージが始まってみると、最初に思ったのは「見た目が怖い」ということだった。なぜならステージ上に立っていたのは般若の面をつけ血しぶきのとんだ白装束を着たメンバーだったからだ。だが同時にこの衣装を着たメンバーがどのようなライブパフォーマンスをするのかに興味が沸いた。
実際のライブでも歌詞が頭の中にすんなり入り聴きやすかったが、ヴィジュアルの強烈さに圧倒された。またCDと違い重低音が身体に響く感じがあり迫力があった。この日は初めて新衣装を披露したライブで、演奏中の激しい動きで白装束がはだけてしまう場面が何度かあり、Yagami(Vo)は「(衣装との)相性が悪くてこんなんなって恥ずかしんですけど…笑」と照れながら話していた。その姿には角を付けた恐ろしい見た目とは違い、彼の人間らしさがでていた。そのあと「ほかの出演者さんもかっこいいバンドばっかりだけど負ける気がしない」と強気な一面をみせ「ENNMA」を披露した。この曲は「お腰につけたきびだんご」という誰もが一度は耳にしたことがあるフレーズがありとても印象に残っている。この日のライブはYouTubeを使って生配信されていたのだが、ライブ後Yagamiに突撃取材をすると「画面越しで見ている人に後悔させてやろうと思ってライブしました」と述べていて、その言葉通りその場にいたからこそ伝わってくるパフォーマンスの迫力や楽しさがあった。(平岡)
DIMLIMはダークなイメージのバンド。事前に楽曲を聴いた時の激しい印象とライブで観た印象はあまり変わらず、迫力のあるライブパフォーマンスをするバンドだった。そしてパフォーマンスはもちろん、見た目のヴィジュアルにも圧倒された。ヴィジュアル系バンドはメイクが特徴的だとは知っていたが、真っ白な羽の様なつけまつげや血のようなメイク等、それら全てが合わさってステージに立った彼らの姿には体全体で自身の音楽を表現するという気合を感じた。
幕が開くと同時に観客の歓声があがり、聖(Vo)のデスボイスや重いサウンドで観る者すべてをのせていた。ダークな楽曲で、サビでは力強く歌い上げギターも繊細なメロディーを弾きあげるのが印象的だ。演奏中も観客を煽り、ウォールオブデスが始まったりととにかく勢いがある。しかし3曲目に演奏した「初潮」で空気が一変した。綺麗なサウンドから始まりサビでは聖の艶のある歌声が会場に響き、前の2曲との違いに魅了されていった。まさに聴き入ってしまう演奏だ。
MCはほとんど無く、メンバーは終始観客を煽りそれに対しファンも全力で声援を返していた。そして最後まで重いサウンドやデスボイスと、美しいメロディーとのギャップに魅せられ続けた25分間だった。ライブ後にメンバーに今日のライブの手ごたえを尋ねると、壱世(Dr)は「今日はしぶかった。普段はもっと盛り上がる、でもいつもより声のコールで盛り上げてくれている気がした。」と言っていた。私はライブを観ていてファンは充分盛り上がっているように感じたので、普段はこれ以上に盛り上がるのかと驚いた。ライブ構成について尋ねると「アップする所ダウンする所を意識している」と教えてくれた。実際にライブを振り返ると、確かにハードな曲や聴かせる曲等メリハリがありその構成がさらにファンを楽しませてくれていることに気付く。そして激しいのはライブだけではなくインタビューの最後に言ったこの一言だ。「2018年1月27日DIMLIMのワンマンに真髄を観たい方、聴きたい方は来ればいい。」この男らしい言葉もまたファンを魅了させているのだろう。(篠田)
メリーバッドエンドは「神・名古屋系」というコンセプトを掲げて活動しているバンド。ライブ前のフロアは、背中に大きく「神・名古屋系」と書いてあるバンドTシャツを着た多くのファンがいて、その独特な光景が今でも脳裏に残っている。ライブが始まると「殺せ、殺せ」とロキ(Vo)とお客さんが叫びだした。正直、事前に楽曲を聴いたときはメリーバッドエンドの世界観があまり見えていなかった。しかし実際にライブをみてみるとそこにはロキを神と信仰するファンの姿があり、衝撃を受けた。
曲が終わり、ロキが「声!」といった瞬間フロアからは歓声なのか悲鳴なのかわからないほど大きな声で「ロキロキロキ」と名前を呼ぶ声が上がった。他のジャンルのライブ会場ではメンバーの名前を呼ぶことはあってもこのようにひたすら何度も名前を叫ぶことはなく、生まれて初めて見る光景に驚いた。「失敗作は夢を見る」では奇凜(Mani)がフロアにおりるとそこを中心にサークルができ始め、曲が始まりロキの合図でサークルモッシュがはじまった。奇凜の動きと同じように動くフロアは不思議な光景だった。メンバーの指示に従うのもヴィジュアル系の特徴なのだろうか。ライブ終了後、ロキに神のお望み通りのものができたか尋ねると「まだまだ足りねぇ」といっていた。まだまだ物足りない“神”がいるメリーバッドエンドの今後が楽しみである。(平岡)
GRIMOIREは世界観が創りこまれているバンドだった。事前に見ていたアーティスト写真やジャケット写真などのアートワークからも、彼らがおとぎ話の世界の住人のようなイメージを抱いていたのだが、ライブもこの世界観を大切にしているのがメンバーの所作から伝わってきた。私も演奏が始まったとたん、このバンドの世界に完全に引き込まれていった。まず最初に抱いた感想は「可愛い」だ。ステージで動物に扮しているメンバーたちが演奏しながら戯れていたり、とにかく隅から隅まで計算されていて、お客さんにどう楽しんでもらえるかが考え尽くされているなと観ていて感じた。実際に私も楽しくて仕方がなかった。ライブを観ているというよりもどちらかというとショーを観ている感覚に近かったような気がする。
終演後にライブをする時に心掛けている事をメンバーに尋ねると「こういうバンドなので、激しめの曲の時にも自分たちの要素を入れていく事を意識している」と教えてくれた。その言葉通りデスボイスが繰り出される曲の時にも、Kie(G)とLune(B)の掛け合いや仕草等で夢幻的な世界を創り上げていた。最初から最後までこんなにも幻想的でファンタジーな世界観に連れて行ってくれるバンドは中々いないと思う。今回GRIMOIREを知る事が出来て良かった。ビジュアル系をあまり聴かない人達にも一度聴いてもらいたいバンドだと思うし、ステージに立つ人はパフォーマンスの勉強になる所があるのではないかと思った。自分たちを人にどう表現したいかどう観てもらいたいかGRIMOIREのライブを観れば感じるものがあると思う。是非もう一度ライブハウスに足を運びたいと思ったバンドだった。(篠田)
大人や社会が嫌いなバンド、シェルミィ。初めて彼らの音楽を聴いたとき激しい曲からバラードまで楽曲の幅が広くかっこいい反面、歌詞に「嫌い」や「馬鹿」などきれいではない言葉が多く、普段恋愛ソングや明るい曲ばかり聴いている私には少し抵抗があった。しかし実際目の前で彼らのライブを見ると、彼らがただ「嫌い」や「馬鹿」などと汚い言葉を言っているのではないことがわかった。
強い言葉には、大人に手のひら変えさせてやりたいという強い思いがあるのだ。特に3曲目の「悪い大人」では、シェルミィが言う“嫌いな大人”への思いにどこか共感してしまっている自分がいた。MCで豹(Vo)は「僕たちはバンドマンです。人間です。エンターテイナーじゃありません。幸せを与えたいとか救いたいとか思っていません。ただ普通の人間になりたくないと思ってバンドを始めました。」と言った。多くのバンドが誰かを楽しませたい、音楽で幸せにしたいと言っているのを聞くが、素直にここまで言うバンドに出会ったのは初めて。飾らずに思いをそのまま伝える姿が観客を引き付けているのだろうと思った。
ライブの開催前に<千歌繚乱>オフィシャルTwitterで行われていた投票バトルでシェルミィは1位になった。投票バトルとはTwitterのリツイート数が一番多かったバンドが会場で配布される冊子の表紙を飾ることができ、他のバンドよりも5分長くライブができるという企画である。ライブ後の取材で1位になった感想を聞いてみると、友我(G)「当たり前だと思いました。見たかと。」豹「なっちゃったかと思いました(笑)」と少し皮肉交じりに話していた。実際、この投票バトルでも飾らずに思いを伝えるツイートが見る人を引き付け、リツイートの数を伸ばしていった。場所がライブハウスでもTwitterでも変わらずに、自分たちの思ったことを飾らず伝えるところがシェルミィの魅力なのだろう。(平岡)
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正直、今までヴィジュアル系バンドのイメージは怖い、うるさいなどマイナスのイメージばかりだった。実際のライブをみて振り付けや動きが細かく初見では入りづらい、メンバーのメイクが怖いなど受け入れられないこともあった。だけどそれ以上に楽曲やパフォーマンスなど、かっこいいところもたくさん見つける事が出来た。見た目が怖いとか振り付けがわからないから曲を聴かないのはもったいない。ヴィジュアル系バンドに興味をもつきっかけとなった一日だった。(平岡)
今回初めてヴィジュアル系のライブイベントに参加して感じたのは「ジャンルの違い」だ。アーティストは勿論、観客も私が今まで通ってきた邦ロックのライブイベントとは全く違うものだった。例えば観客の服装、邦ロックは「スニーカーにズボン、髪の毛は縛る」といったルールが暗黙の了解になっている。しかしヴィジュアル系のイベントは「可愛い靴にスカート、巻き髪のヘアスタイル」。ジャンルの違いで会場の雰囲気がこんなに変わるのかと驚いた。そして、演奏が始まってからは今までに見た事ない非現実的な空間に圧倒されっぱなしだった。まるでショーを観ているようで、聴覚で楽しみ視覚で楽しむ、そんなライブだった。ライブに来るまでは「なんであんな派手なメイクしてるんだろう…」と思っていたが、実際にライブを観てみるとヴィジュアル系がメイクをしてステージに立つ理由が分かった気がした。音楽には色んなジャンルがあって、みんな色々な形で音を楽しんでいる。きっと少し興味を持って周りを見るだけで、新しい音楽との出会いは意外と近くにあるのだろう。今回<千歌繚乱>に参加してヴィジュアル系バンドにとても興味が湧いた。それは新しい自分との出会いでもあった。これからは積極的に色んなジャンルの音楽を聴いてみようと思わせてくれたイベントだった。(篠田)
なお、次回<千歌繚乱>は10月16日(月)に渋谷REXにて開催。こちらにはSick.、ZERO MIND INFINITY、ハクビシン、まみれた、未完成アリス、ラッコの6バンドが出演する。チケットの一般発売もスタートしているので、これまでヴィジュアル系バンドのライブを見たことがなかった人も訪れてみてはいかがだろうか。
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