池田理沙子にインタビュー ~新国立
劇場バレエ団注目のバレリーナが語る
、いまの心境と将来目指すところ

新国立劇場バレエ団に2016/2017シーズンから加入し、愛らしく生き生きとした表現力を持ち味に活躍するバレリーナ池田理沙子。2016年12月の『シンデレラ』全幕を皮切りにバレエ団公演で相次いで主演を務めている注目株に、これまでの軌跡や最近の舞台の印象、2017年秋からの新シーズンに向けての抱負を聞くと共に将来の目標を語ってもらった。
新国立劇場バレエ団『シンデレラ』(撮影:瀬戸秀美)
新国立劇場バレエ団に入るまで
――プロのバレエ・ダンサーを目指そうと思ったのはいつですか?
4歳からバレエを習い始め小学3年生からコンクールに出始め、現在国内外で活躍されている方々と一緒で、良い刺激になっていました。高校1年生の時に出たコンクールでスカラシップをいただきハンガリー国立ブダペスト・バレエ学校に留学しました。国立バレエ団付属だったのでバレエ団の稽古場でクラスを受けたり、公演を観る機会があったりして、そこでプロの舞台のすごさを肌で感じて衝撃を受けました。「バレエをやるなら、プロになりたい」と強く思いました​。
――その後、Kバレエカンパニーを経て、2016/2017シーズンより新国立劇場バレエ団にソリストとして入団します。志望理由を教えてください。
ハンガリー留学中にヨーロッパのバレエ団を観て回りましたし、今まで国内外の多くのバレエ団の舞台を観させていただきましたが、新国立劇場バレエ団の舞台は綺麗で凄くドラマティックでした。芸術性が高く名舞台が多いので「絶対にここに入って踊りたい!」という気持ちでオーディションを受けました​。
入団早々『シンデレラ』で大抜擢
――新国立劇場バレエ団に入っての印象はいかがでしたか?
リハーサルをしていくなかで先輩方から本当にたくさんのアドヴァイスをいただきました。芸術監督やバレエマスター、バレエミストレスの方のご指導がもちろんあるのですが、ダンサー同士でさらに高め合っていく環境が素晴らしいと思います。それから初めて新国立劇場の舞台に立った時、空間自体が自分の想像していた以上のものでびっくりしました。初舞台の『ロメオとジュリエット』(2016年10月~11月)にはジュリエットの友人役として出させていただきましたが、大きな空間に圧倒されないように頑張らなければいけないと感じていました。
――入団から程なくして『シンデレラ』(2016年12月)の主役シンデレラに抜擢されました。配役を知った時の気持ちは?
びっくりというか頭が真っ白になりました。自分にできるのかな……と練習が始まる前は不安でいっぱいでした。
――新国立劇場バレエ団が上演しているフレデリック・アシュトン版の『シンデレラ』は、振付が難しいし演劇性も求められます。しかも、いきなり主役というのは大変だったと思うのですが、いかがでしたか?
全幕ものの主役を一度も踊ったことがなく、またアシュトン版ということもあり、アシュトンならではの振付、音の取り方、演技などすごく難しくて、本当にいっぱいいっぱいでした。これまでに演じられた先輩方の舞台の映像を観させていただきましたが、それぞれの方のシンデレラ像があって、私も自分が感じたシンデレラをお見せできればと思いました。王子役の奥村康祐さんや義理のお姉さん役の方々とリハーサルをして実際に感じたことを掘り下げ“池田理沙子のシンデレラ”を出していきたいなと。音の取り方一つにしても王子との掛け合いで間(ま)をちょっと置いたり、逆に早取りして余韻を残したりしましたし、どういう風に物語をお客さんにお届けしたいかを奥村さんにリードしてもらい、たくさんの話し合いをさせていただきました。リハーサルの時と、ゲネプロ(舞台での最終通し稽古)の時、そして本番での感情が自分の中で少しずつでも変わっていったので、自分の感情を舞台に生かしていかなければと思いました​。
入団1年目を振りかえって
――その後も深川秀夫振付の『ソワレ・ド・バレエ』(2017年2月)、ローラン・プティの『コッペリア』(2017年2月)、ウエイン・イーグリング版『眠れる森の美女』(2017年5月)と主役が続きました。1年目のシーズンを振り返って思うことをお話しください。
もう1年経ってしまったのかという気持ちです。いろいろ勉強させていただきました。バレエは音楽が重要な要素ですが、生のオーケストラに合わせて表現することの難しさを感じました。主役をやらせていただくと、技術はもちろんのこと毎回本番で自分の最大限の力を出し切る精神力が大変だと感じます。終わった後に「もっとこうしたかったな、ああしたかったな」ということがたくさんあった1年目だったので、それを次のシーズンに生かしていけるよう努力します。
――大役が続き「プレッシャーはないのですか?」と聞かれることもあるかと思います。実際のところいかがですか?
プレッシャーは物凄くあります。でもパートナーの方とリハーサルするなかで、いろいろ教えていただいて、自分のなかで少しずつでも「ああ、ちょっとずつでもよくなってきているのかな」という実感があると、プレッシャーが嬉しさや喜びに変わります。もっと研究して、相手の方とたくさん話して、良くしていきたいなというワクワク感もありますし、毎日のリハーサルが楽しみでもあります。
――1年経って自信がついたことはありますか?
『ジゼル』(2017年6月~7月)で村人のパ・ド・ドゥを2回踊らせていただく機会がありました。1回目が終わり2回目の時に、パートナーを組んでいた福田圭吾さんと「ああしよう、こうしよう」と話して“遊ぶ”ではないですけれど、自分の中で音の使い方を少しずつ違うようにしたり、脚の魅せ方をちょっとずつ変えていったりしました。自信はまだまだないのですが、少しずつでも余裕を持っていけるようにはなったかなと思います​。
人気作品『しらゆき姫』の魅力を語る!
――平成29年度こどものためのバレエ劇場『しらゆき姫』のタイトル・ロールを7月の新国立劇場公演に続いて、9月23日(土・祝)、ウェスタ川越大ホールでも踊ります。しらゆき姫役を踊った印象を教えてください。
小さい頃、母に絵本を読んでもらっていたので大好きな物語です。新国立劇場で上演している『しらゆき姫』には動物たちがいっぱい出てきますし、小人たちも男性が演じて迫力がありますし、魑魅魍魎の出てくる森のシーンがあって客席から小さなお子さんの泣き声が聞こえてくるくらい怖かったりします。子供だけでなく大人の方も楽しんでいただけると思います。しらゆき姫は最初14歳で、かわいらしく無邪気な感じですが、最後はレックス王子との結婚の場面になり、そこでは成長した、少しだけ大人の要素を持った綺麗なしらゆき姫をお見せできればいいなと思って演じています。
新国立劇場バレエ団『しらゆき姫』(撮影:瀬戸秀美)
――好きな場面はどこですか?
義理の母であるお妃と絡む場面は少ししかないのですが、魔女に化けたお妃からもらったリンゴをかじって死ぬまでのシーンと、最後にお妃を許してあげるところは特に大切に演じています。小人たちとの絡みは好きですね。彼らが一人ずつ自己紹介する場面は楽しいです。しらゆき姫は出てきませんが、お妃とお付きのワルとガキが毒リンゴを作ろうと実験するシーンもお気に入りで、装置に薬品を入れたり煙ったくしたりと本格的です。お妃が「世界で一番美しいのは誰?」と問いかけるミラーが消えたり見えなくなったりするのも面白いと思います。
――レックス王子を踊る奥村康祐さんはどんなパートナーですか?
『シンデレラ』の時からたくさん組ませていただいています。音の取り方や自分たちが一番きれいに見えるにはどのようにポーズ・角度を見せるかといったことまで、何から何まで、いつもリードして教えてくださいます。自習にもいつも付き合ってくださるとても優しい方で、本当に尊敬しています​。
今後目指していきたいこと
――2017/2018シーズンに向けての抱負をお聞かせください。
昨シーズンは駆け抜けた1年だったので、2年目は1年目で感じたことを繋げていきたいです。新制作のウエイン・イーグリング版『くるみ割り人形』(2017年10月~11月)の主役クララ役は踊るところが多いので大変だと大原永子芸術監督がおっしゃっていますが凄く楽しみです。『シンデレラ』(2017年12月)ではシンデレラ役を踊る機会を再びいただけたので前回の経験を生かしたいです。「ニューイヤー・バレエ」ではジョージ・バランシン振付『シンフォニー・イン・C』第3楽章で渡邊峻郁さんと初めて踊らせていただくので楽しみです。『ホフマン物語』(2018年2月)のオリンピアは自動人形の役ですが、人形っぽさが出れば出るほど滑稽さも出るといいますか、物語的におもしろさ・ユーモアが出ると思うので、オリンピアの人形らしさを出していけたらと考えています​。
――プロとして踊る夢を叶えましたが今後どのようなダンサーを目指したいですか?
新国立劇場バレエ団の先輩方は全然キャラクターの違う役でも毎回その都度変わっていけるのが凄いです。今はあたえていただいた役を一生懸命こなすのに精いっぱいですが、どんな役にでもパッと変わることができるダンサーになっていけたらと思います。そのためにはピルエットひとつ回るにしても役によって変わってきますし、歩き方にしても脚の出し方にしてもそうだと思います。日々のレッスンから技術を高めつつ身体のコントロールをもっと精密にしてレベルアップさせていきたいです。
取材・文=高橋森彦  写真撮影=荒川潤
<池田理沙子 プロフィール>
東京都出身。バレエスタジオDUOで田中洋子に師事。2009年 ユース・アメリカ・グランプリNYファイナル シニアの部 銅メダル、10年第13回NBA全国バレエコンクール 高校生の部 1位とコンテンポラリーの部 2-2位を受賞し、10年より1年間 スカラシップにてハンガリー国立ブダペスト・バレエ学校に留学。Kバレエカンパニーを経て、2016/2017シーズンより新国立劇場バレエ団にソリストとして入団。16年アシュトン『シンデレラ』で主役デビューを果たし、その後、プティ『コッペリア』、『眠れる森の美女』、こどものためのバレエ劇場『しらゆき姫』を踊っている。2017年9月23日にはウェスタ川越にて『しらゆき姫』を主演予定。
2017/2018シーズンでは、『くるみ割り人形』『シンデレラ』での主演が決定している。

公演情報
新国立劇場バレエ団 平成29年度こどものためのバレエ劇場『しらゆき姫』
​■日時:2017年9月23日(土・祝)14:00
■会場:​ ウェスタ川越大ホール
■出演: 池田理沙子(しらゆき姫)&奥村康祐(レックス王子)他
■公式サイト:http://www.westa-kawagoe.jp/

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』
​■日程:2017年10月28日(土)~11月5日(土)
■会場:新国立劇場オペラパレス
■日時・出演:
10月28日(土)14:00 小野絢子&福岡雄大
10月29日(日)14:00 米沢唯&井澤駿
10月31日(火)13:30 池田理沙子&奥村康祐(貸切公演)
11月03日(金・祝)13:00 米沢唯&ワディム・ムンタギロフ
11月03日(金・祝)18:00 小野絢子&福岡雄大
11月04日(土)14:00 木村優里&渡邊峻郁
11月05日(日)14:00 米沢唯&ワディム・ムンタギロフ
■公式サイト:http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/

新国立劇場バレエ団『シンデレラ』
■日程:2017年12月16日(土)~24日(日)
■会場:新国立劇場オペラパレス
■日時・出演:
12月16日(土)13:00 米沢唯&井澤駿
​12月16日(土)18:00 小野絢子&福岡雄大
12月17日(日)14:00 柴山紗帆&渡邊峻郁
12月20日(水)13:00 小野絢子&福岡雄大​
12月22日(金)19:00 小野絢子&福岡雄大
12月23日(土・祝日)13:00 米沢唯&井澤駿
12月23日(土・祝日)18:00 木村優里&中家正博
12月24日(日)14:00 池田理沙子&奥村康祐
■公式サイト: http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/

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