T-BOLAN、キャリア初のアコースティ
ックツアーで見せた円熟味

初のアコースティックツアーをおこなった、T-BOLAN

 T-BOLANが13日、東京・Zepp DiverCityで初のアコースティックライブツアー『LIVE HEAVEN 2017 夏の終わりに「再会」~Acoustic Live Tour~』の東京公演をおこなった。アコースティックの柔和な響きでいつもとは違う、円熟味の際立つステージを展開。全19曲を披露した。また、2015年3月にくも膜下出血で倒れ闘病生活を送っていた、上野博文(Ba)もステージに上がり、メンバー4人による演奏に涙するオーディエンスも見られた。

22年ぶりの「LIVE HEAVEN」という言葉

T-BOLAN

 まだ誰もいないステージは、豊かなドレープをたたえた布で装飾されていた。T-BOLANのライブといえば、むき出しの鉄で組まれた硬質なステージが定番だっただけに、ファンの間には少しの戸惑いと、これまでのT-BOLANとは違う新たな一面を見せてくれるのではないかという期待が入り混じっているようだった。

 オープニングSEとともに会場が暗闇に包まれる。真っ暗なステージに青い光が射し、ひとり、またひとりとメンバー、サポートメンバーが集う。ボーカルの森友嵐士とドラムの青木和義が肩を組んで登場。その後ろから五味孝氏も登場し、客席からはひと際大きな拍手が贈られる。その拍手は、“おかえり”という言葉の代わりのようにあたたかい。そしてアコースティックギターとピアノの音色を合図に、一斉にステージに集中するオーディエンス。

 <じょうだんで生きてんじゃねぇ 心から 涙流せ>森友嵐士の歌声が会場中に響き渡る。待ち続けた「再会」の1曲目は、「HOW DO YOU FEEL?」。13thシングルのカップリング曲ながら、メッセージ性のある歌詞で名曲と名高いナンバーだ。

 <新しい勇気を 心に誓えば>この「再会」に向けたメンバーの思いが一気にオーディエンスの中に染み渡ってくるオープニングナンバーに続いて、森友のブルースハープと五味孝氏のギターによるブルージーなイントロが印象的な「あこがれていた大人になりたくて」。アウトロまで一貫してライブセッションさながら圧巻の演奏で聴かせた。
森友嵐士

 「T-BOLAN LIVE HEAVEN 2017 夏の終わりに『再会』へ、あらためまして皆さまようこそ!」森友が、「LIVE HEAVEN」というツアータイトルを口にするのは実に22年ぶり、1995年以来だと感慨深げに語り、「(今日は)みんなとの旅のスタート“はじまり”です」という言葉を客席のファンへと投げかけた。時折笑いも起こる等、久しぶりの「再会」にも関わらず、その距離は一気に縮まっていた。

 そして、ここからは大ヒットシングル、人気曲を次々と披露していく。「マリア」、T-BOLANの“はじまり”の曲「悲しみが痛いよ」、「Bye For Now」…アコースティックバージョンでしっとりと、よりエモーショナルに聴かせる名曲の数々。キャリアを重ね、様々な経験を重ね、歌も演奏も一層円熟味を増した彼らだからこそ出来る深みある表現で、1曲ごとに一編の映画を観たかのような充足感に満たされていく。曲を聴き終わるごとに会場のファンからは万感の思いを込めた拍手が贈られ、その表情は輝くばかりだ。

 曲の合間のMCコーナーでは、T-BOLAN結成時の話やプレライブで演奏したという「マリア」のレゲエバージョンがサプライズで披露されたり、生まれてきた新しい命へのメッセージを込めた曲「BOY」が、実はドラムの青木の子供が生まれたことをきっかけに作られていたこと、そしてその子が大人になった時、森友の念願でもあった、本人の前で「BOY」を歌い贈ることが出来たことなど、初めてのエピソードも語られた。

奇跡の男、上野博文

上野博文

 「さてここで呼び込みますか…奇跡の男! 上野博文!」森友の言葉とともにステージに現れたのはベースの上野博文。2015年3月にくも膜下出血で倒れ、生死をさまよう闘病生活を乗り越えて文字通り奇跡の復活を果たした彼。その存在、「ライブをやりたい」という上野の言葉が今回の活動再開の大きな要因となったわけだが、本人が、家族が、T-BOLANのメンバーが回復を諦めずにいたこと、今回の「再会」に至るまでの経緯が森友を中心にステージ上で語られるのを、会場のオーディエンスは静かに聞き入っていた。

 そして、今回の「再会」がいかに奇跡的なものだったか、ここで「再会」出来たことへの感謝を改めて感じていたようだった。そしてあたたかい感謝の拍手がメンバーへと向けられると、待ちに待った瞬間が訪れる。上野を含めたT-BOLANメンバー4人が揃った「離したくはない」だ。待ち望んだ4人でのライブに涙する人の姿も見える。鳴りやまない拍手を受けながら、上野を交えてもう1曲、「Happiness」が披露されると会場は一気にヒートアップ。上野が森友とハイタッチし、また再登場することを約束してステージを後にしたその後、「じれったい愛」を皮切りにアッパーなナンバーが続く。

 「刹那さを消せやしない」では会場中がスタンディング。「SHAKE IT」では森友の前から譜面台とハイスツールが取り払われ、アコースティックライブとは思えない力強いパフォーマンスが繰り広げらると、MAXのボルテージのままに本編が終了。時を経ても変わらぬライブ力を見せつけた。
五味孝氏

 メンバーがステージを去るとまもなく、会場からはアンコールを求める拍手が湧き起こる。その声に応えて現れたのは、森友嵐士、五味孝氏、上野博文、青木和義のT-BOLANのメンバー。4人揃って登場するこの瞬間を、会場中が深い感慨をもって迎える。

 サポートメンバー、そしてT-BOLANメンバーの紹介の後、21年ぶりの新曲「ずっと君を」がついに披露された。8月16日にリリースされた初のメンバー選曲によるコンセプト・ベストアルバム『T-BOLAN ~夏の終わりに BEST~ LOVE SONGS+1 & LIFE SONGS』に収録されたこのバラードナンバーは、今回の「再会」のために書き下ろされた楽曲。その曲に込められたメッセージは、会場のファンに真っすぐに届いたに違いない。
青木和義

 最後を飾るのはT-BOLANとファンをつなぐ1曲とも言うべき「Heart of Gold」。<夢と勇気があればそれでいい 諦めはしない>ステージと会場が一体となり、大合唱で締めくくられた今回の「再会」。彼らが口ずさんだその歌詞通り、諦めないことで生まれた、まさに奇跡のライブ。

 「また会おうぜ!」森友の叫びが、再びの「再会」を期待させる感動の一夜となった。その感動は、今週末、宮城・仙台でおこなわれる追加公演が最後となる。
上野博文
森友嵐士
五味孝氏
初のアコースティックツアーをおこなった、T-BOLAN
T-BOLAN
青木和義

セットリスト

『LIVE HEAVEN 2017 夏の終わりに「再会」~Acoustic Live Tour~』
2017.9.13 at Zepp DiverCity

東京公演

01.HOW DO YOU FEEL?
02.あこがれていた大人になりたくて
03.マリア
04.悲しみが痛いよ
05.Lovin' You
06.夏の終わりに
07.Bye For Now
08.真夜中のLove Song
09.愛のために 愛の中で
10.BOY
11.遠い恋のリフレイン
12.離したくはない
13.Happiness
14.じれったい愛
15.刹那さを消せやしない
16.SHAKE IT
17.My life is My way
〜 ENCORE 〜
18.ずっと君を
19.Heart Of Gold

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