「あいみょん」ってなんだ?「あいみ
ょん」がわかる9つのコト

「あいみょん」をつくるものってなんだ

2016年11月に『生きていたんだよな』でセンセーショナルにメジャーデビューを果たして以降、各所で話題を集める新星シンガーソングライター「あいみょん」。僕が彼女を知ったのは、『愛を伝えたいだとか』がリリースされたとき。
あいみょん – 『愛を伝えたいだとか』

この動画のコメント欄にも多く書かれているように、この曲はブラック・ミュージックのマナーに裏打ちされたナンバーだ。以前までの「あいみょん」の質感を踏まえつつ、「横揺れ」や「グルーヴ」という極めて同時代的なキーワードが盛り込まれている。一聴しただけで情報量の多さが窺える内容だ。インディーズ時代から過激な歌詞と感情むき出しの音楽を武器に突き進んできた彼女だが、ここへ来てさらにさらに表現への磨きがかかっている。尖っているけれど、どこか柔らかい。
あいみょん22歳。いったい「あいみょん」は何がどうなってああなって「あいみょん」たるのか。そんな疑問を解消すべく、あいみょんの構成要素に迫ることにした。結論から言うならば、合点がいきました。しっかりとした筋が通っているのでした。

父と家族と西宮
あいみょん : 音楽への影響はお父さんから受けましたね。小さい頃、テレビでかかっていた曲をメモってお父さんに渡すと、2日後ぐらいにCDが出来上がってた。焼いてくれてたんです。当時、お父さんは音楽を作る人だと思ってました。


ーー彼女が手に持っているのは、かつて兵庫県の尼崎にあったライブバーのチラシ。あいみょんのお父さんが経営していたお店で、実際にお父さんもステージにも立っていたのだとか。
時代を感じるチラシである。

ーー6人兄弟という大家族の中、あいみょんは様々な価値観に揉まれて育った。お姉さんからは西野カナを共有され、妹はパリピ属性だという。そんな中、あいみょんはフォークに魅了されていった。

あいみょん : 吉田拓郎さんや尾崎豊さんにはガッツリハマりましたね。あといわゆる「懐メロ」って言われる音楽。ジッタリン・ジンとかも好きです。ちょっとキャッチーだったり、フォークソングで言うとギターと声のみっていうシンプルさですごく伝わってくる何かとか。
あいみょん : MDとかiPodが出始めた頃、お父さんに曲を入れてもらうんですけど、リクエストした曲じゃないものが入ってるんですよ。それはお父さんが「これは聴いとけよ」っていう暗黙のメッセージやったんかなって今では思ってます。


ーー音楽って、そういえば誰に教えてもらったんだっけな。つい最近まで当たり前だったコミュニケーションの在り方に、思わずはっとする。

あいみょん : お父さんが勝手に入れてたのだと、それこそ「島唄(THE BOOM)」とか入れてたし「満月の夕(ソウル・フラワー・ユニオン)」とかもそうです。あとはクール・ドライブ・メーカーズ(のちにクール・ドライブと改名)っていうバンドがいて、そのバンドの「スーツケース」っていう曲が良かったです。お父さんがきっかけで聴いてたんですけど。やっぱりいろいろありますね。
THE BOOM – 『島唄』

ーー過激な歌詞とは裏腹に、「普通の女の子」の一面も覗かせる。同級生から見ると偏った音楽の趣味かと思いきや、あいみょんは普遍的な青春時代も通過していた。

あいみょん : 当時流行ってた音楽も聴いてましたよ。私の世代はORANGE RANGEとかGReeeeNとか、大塚愛さんとかですね。だから、友達と話が合わなかったっていうのはなかったです。むしろ、地元の友達が大好き。正直言うと、西宮から出たくなかった。家族も友達も、そこにしかいないから。
あいみょんの地元、西宮にて。
アコースティックギターとの出会い
あいみょん – 『生きていたんだよな』

ーー圧倒的な存在感を放つギターボーカリストが存在する。そのボーカリストがギターを持つと、何かを期待せずにはいられない。あいみょんもそんなアーティストの一人だ。あいみょんがアコギを持つと、その場の空気が変わる。

あいみょん : 音楽をほんまにやろうとしたきっかけは、初めてのギターが手に入ったときじゃないかな。ギターに触りたくなったのが14歳か15歳ぐらい。そのときお父さんがアコギ上手だったんで、「ギター貸して」って言ったら、「嫌や」ってなぜか拒否されたんですよ(笑)。「えー、ギターもベースもこんなにあるのに!」って。楽器全般出来るんですよ、お父さん。ドラムまであって。
2017年5月2日に代官山のUNITで開催された、自身初フリーライブの模様。

ーーその後ようやくお父さんから受け取ったギターは、彼女が希望するアコースティックギターではなかった。フェルナンデスのZO-3。いわゆるエレキギターである。当時からアコギに得も言われぬ魅力を感じていたため、エレキでは満足できなかった。途方に暮れていたあいみょんを救ったのは、アメリカ人の先生だった。

あいみょん : アメリカから英語の先生が来るじゃないですか。学校に。その先生の授業は、最後にバックストリート・ボーイズをアコギで弾いて歌うコーナーがあったんです。「すごい!私もギターやりたいねん」っていう感じで仲良くなって。で、その先生がアメリカに帰るときに、「あっちに送るよりも、あっちで買った方が安いからこのギターあげる」って。
あいみょん : セーラー服ででっかいギター抱えてわーって家に帰って、「貰ったねん!」って大はしゃぎで。ヤマハのアコギでした。そこから一気にのめり込みましたね。その先生とはそれっきりなんですけど、いつかまた会いたいんですよ。似顔絵とか自分で描いたりしてたから、まだその絵は残ってるんです。それを頼りに、「この人知りませんか?」ってやりたい(笑)。

ーーかくして、あいみょんは暫定最強の武器を手に入れ、シンガーソングライターの道を邁進してゆくこととなる。お父さんのコミュニケーションとはまた違う形だが、アメリカ人の先生との触れ合いもまた、人の体温を感じるものであった。

自由が丘のブックオフで手に取ったのは「官能小説」
ーーアーティストの話を聞いていると、意外なところにヒントが転がっていることが分かる。あいみょんが自由が丘のブックオフで発見したのは、官能小説の妙技であった。

あいみょん : ブックオフが好きなんですよ。広島とかにライブで行っても「ちょっとブックオフ行ってきます」って(笑)。地域によって値段とかも違うんですよね。物価が違うから、高かったり安かったりする。で、一番よく行ったのが東京の自由が丘のブックオフ。「あ、あそこのブックオフにはピカソなかったのにここにはめっちゃある!」とか、そういう出会いがありました。
あいみょん : ブックオフでCDを買うことはなくて、本を買います。しかもほとんどがジャケ買い、タイトル買いとかです。もちろん目的があって行くこともあるんですけど。あとは美術とかデザインの本とか、そういう本たちもざっくばらんに買います。いろんな知識が欲しくて、はい。一番影響が大きかったのは官能小説ですね。

ーー臆面もなくそう言うので、少々面食らってしまった。

あいみょん : 比喩表現っていうのを上手にできたらなって思うんです。官能小説ってすごいんですよ、本当に。いやらしいことをどれだけオブラートに包んで綺麗に表現するかってところに挑んでる気がして。そこはすごく勉強になるんで、官能小説を読んで出来た曲もあります。自由が丘で初めて買いました。雑誌の『ブルータス』と一緒に(笑)。

「あいみょん」ってなんだ?「あいみょん」がわかる9つのコトはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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