©2017『散歩する侵略者』製作委員会
    1.『散歩する侵略者』
    数年前までは「SFでしょ?」って思っていたことが、「なんかありうるかもしれない」と思い出したのはいつからだろう。
    時代が混沌を極め初めて、それに対しての慣れと危機感が人々の中に極端に混在する今。劇団イキウメの舞台を観ると、前川さんは、少し前からそんな世界を俯瞰に見ていたのかもしれない、とすら思ってしまう。
    国内外で常に注目を集める黒沢清監督が、劇団イキウメの人気舞台「散歩する侵略者」を映画化。数日間の行方不明の後、夫が「侵略者」に乗っ取られて帰ってくるという大胆なアイデアをもとに、日常が異変に巻き込まれていく世界を圧倒的な映像と息をのむ展開で描く。
    これを映像化に踏み切る手腕を持つ監督が日本にいてよかったと心から思う。
    「地球を侵略しに来た」
    当たり前の日常は、ある日突然、様相を変える。
    夫に起こった「異変」に気づき、翻弄されながらも状況に立ち向かう妻というこれまでにない難役に挑むのは、長澤まさみ。侵略者に乗っ取られた男を、超然と妙なリアリティを以って演じきるのは、松田龍平。
    そして、話題作への出演が相次ぐ高杉真宙や本格的なアクションに挑んだ恒松祐里など、若き“侵略者”の存在感も要注目だ。
    同時並行で描かれる2つの物語。次第に引き寄せられ、誰も予想出来ない展開へ、そして心が震えるラスト。
    侵略者は、何を侵すのか。本質的な問いが頭を駆け巡る。
    サスペンスであり、アクションであり、ラブストーリー。
    ひとつのジャンルには収まらない、世界と愛の形がそこにはあった。
    ▼あらすじ
    どこにでもいるような不仲の夫婦・加瀬鳴海と加瀬真治。ある日、行方不明となった真治が帰ってきたところから、2人の生活は静かに異変に巻き込まれていく。一方、町で起こった一家惨殺事件を追うジャーナリストの桜井は、その取材の過程で謎の若者たちと出会い、ある「異変」に気づく…。
    ▼Information
    『散歩する侵略者』
    絶賛公開中
    原作:前川知大(劇団イキウメ)
    監督:黒沢清 出演:長澤まさみ、松田龍平、長谷川博己、
     
    ©2016 NORDISK FILM PRODUCTION
    2.『サーミの血』
    2016年東京国際映画祭で審査委員特別賞と最優秀女優賞をダブル受賞、北欧最大の映画祭のヨーテボリ国際映画祭2017では、最優秀ノルディック映画賞を獲得。その後、世界中の多くの映画祭でも人々の心を打った『サーミの血』。
    サーミ人は、ラップランド地方、いわゆるノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北部とロシアのコラ半島の先住民族のこと。トナカイを飼い暮らし、フィンランド語に近い、独自の言語を持っている。
    映画の設定となった1930年代は、スウェーデンのサーミ人が分離政策の対象になり、他の人種より劣った民族として差別された時代だ。
    監督のアマンダ・シェーネルはサーミ人の血を引き、長編映画デビュー作となる本作で、自身のルーツとなるこのテーマを扱った。
    そして、主演のレーネ=セシリア・スパルロクは、今もノルウェーでトナカイを飼い暮らしているサーミ人だ。
    北欧スウェーデンの美しい自然と、サーミ人の少女の心の成長。
    差別に抗い生き抜く姿には、国や民族を超えて、それこそ血そのものに訴えてくるようなエネルギーを感じる。
    自身の血を遡るように作品を残した監督と、内部から滲み出るような演技を超えた佇まいを以って主人公を演じた女優。画面から溢れ出すその熱に、ルーツとアイデンティティというものが与える生き方への影響を改めて考えさせる力があった。
    ▼あらすじ
    1930年代、スウェーデン北部のラップランドで暮らす先住民族、サーミ人は差別的な扱いを受けていた。サーミ語を禁じられた寄宿学校に通う少女エレ・マリャは成績も良く進学を望んだが、教師は「あなたたちの脳は文明に適応できない」と告げる。そんなある日、エレはスウェーデン人のふりをして忍び込んだ夏祭りで都会的な少年ニクラスと出会い恋に落ちる。トナカイを飼いテントで暮らす生活から何とか抜け出したいと思っていたエレは、彼を頼って街に出た——。
    ▼Information
    『サーミの血』
    9月16日(土)より、新宿武蔵野館、アップリンク渋谷ほか全国順次公開
    監督・脚本:アマンダ・シェーネル
    音楽:クリスチャン・エイドネス・アナスン
    出演:レーネ=セシリア・スパルロク、ミーア=エリーカ・スパルロク、マイ=ドリス・リンピ、ユリウス・フレイシャンデル、オッレ・サッリ、ハンナ・アルストロム
    配給・宣伝:アップリンク
     
    ©2017「民生ボーイと狂わせガール」製作委員会
    3.『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』
    奥田民生のような“力まないカッコいい大人”に憧れる雑誌編集者と、
    美貌と怖いまでの引力で男を骨抜きにしてしまう、ファッションプレス。
    ゆるくいたいのに、結局全力になってしまう男の素直な単純さと、
    自由でワガママで寂しがりやの女の性。
    主人公を演じるのは、「僕はそもそも奥田民生になりたいボーイなんです。」と公言するファンであり、幅広い役柄を変幻自在に演じる当代随一の俳優、妻夫木聡。また、その他のキャラクターを、キャラを越えたクセの強さで魅了する個性派俳優陣の揃い踏みも見逃せない!
    松尾スズキ、新井浩文、安藤サクラ、天海祐希、リリー・フランキー
    奥田民生の珠玉のナンバーにのせて、狂ったみんなのが狂った青春が走り出す。
    そして何と言ってもハマり役なのは、最強で最狂で最恐のファッションプレス【あかり】を演じた水原希子様だ!(もう、様とかつけたくなるくらいの魅惑)。抜群のスタイルに、無邪気な笑顔。キュートでセクシーなあかりの一挙一動に狂わされながら観るのが、この映画の一番の楽しみ方かもしれない。
    ジェットコースターのような恋の喜びと絶望を味わい、もがき苦しむ、うだつの上がらない男の姿は、可笑しくも愛くるしい。でも、そんな風に男を狂わせて生きてきた女に見るのは、愛の本質と男女の分かりあえなさ、だ。
    男と女によって、共感するところと反発するところが分かれる映画。
    この物語は、抱腹絶倒のラブコメディであり、見る角度によっては、シリアスヒューマンだなあとも女の私は思う。
    ▼あらすじ
    奥田民生を崇拝する33歳、コーロキ。おしゃれライフスタイル雑誌編集部に異動になったコーロキは、慣れない高度な会話に四苦八苦しながらも、次第におしゃれピープルに馴染み奥田民生みたいな編集者になると決意する! そんな時、仕事で出会ったファッションプレスの美女天海あかりにひとめぼれ。 その出会いがコーロキにとって地獄の始まりとなるのだった…。
    ▼Information
    『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』 
    9月16日全国東宝系にてロードショー
    原作:渋谷直角
    監督・脚本:大根仁
    出演:妻夫木聡、水原希子、新井浩文、安藤サクラ、江口のりこ、天海祐希、リリー・フランキー、松尾スズキ
     
    © Les Films Velvet - Les Films du Fleuve - France 3 Cinema - Kinology - Proximus – RTBF
    4.『プラネタリウム』
    アカデミー®賞受賞女優ナタリー・ポートマンと、ジョニー・デップとヴァネッサ・パラディを両親に持ち、シャネルのミューズとして活躍するリリー=ローズ・デップが、美しくも妖しい姉妹役で初共演を果たした『プラネタリウム』。
    レベッカと仕事をする日が来るのを、ずっと待っていたの」
    監督は、ナタリー・ポートマンにそう言わしめ、次世代の監督として称賛される美貌の天才レベッカ・ズロトヴスキだ。
    この姉妹は、美しい偽りか、穢らしい本物か。
    美しく聡明で野心家の姉のローラと、好奇心は旺盛だけど、純粋で自分の世界に閉じこもりがちな妹のケイト。スピリチュアリストのこの姉妹はなぜ、これほどまでに人々の心を虜にするのか。彼女たちは、本当に“見えている”のか?
    明るくないと見えないものもあれば、星のように、暗くないと見えないものもある。そして同時に、目が慣れさえすれば、明かりを点けなくとも歩けるし、光のもと白いペンで書いた文字だって見えうる。
    簡単に見失い、探し当てることもできる私たちに見えている世界ってなんなのだろうか。そして、人には見えないものが見える力は、一体誰から何のために与えられるのだろう。
    今見えている星も、もしかしたら自分にしか見えてないのかもしれないし、
    それと同じで、私にはどう頑張っても見えない星もあるのかもしれない。
    実際には見えないものをどう捉えるか。その選択で、生き方や人生の濃度は大きく変わる。
    ▼あらすじ
    1930年代、パリが最も華やかだったとき。
    アメリカ人スピリチュアリストのローラとケイトのバーロウ姉妹は、ヨーロッパツアーのため憧れのパリへと向かう。ショーでは死者を呼び寄せる降霊術を披露し、話題の美人姉妹として活躍し金を稼いでいた。一方、フランス人映画プロデユーサーのコルベンは、新しい技術や発想で、新しいフランス映画を開発するという夢を抱いていた。姉妹にセッションを依頼し、不思議な体験をしたコルベンは、2人の才能に魅せられ契約する。果たして姉妹の力は本物なのか。運命が静かに狂いだすー。
    ▼Information
    『プラネタリウム』
    9月23日(土)より新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて全国公開
    脚本・監督:レベッカ・ズロトヴスキ
    出演:ナタリー・ポートマン、リリー=ローズ・デップ、エマニュエル・サランジェ    
    配給・宣伝:ファントム・フィルム
    ©2017「パーフェクト・レボリューション」製作委員会
    5.『パーフェクト・レボルーション』
    幼少期に脳性麻痺を患い、手足を思うように動かせず車椅子生活をしているクマと、幼い頃受けた心の傷から人格障害を抱えるようになってしまった風俗嬢のミツ。子どものように自由で純粋なミツは、明るくユーモラスなクマに言う。
    「生まれも性別も、職業も能力も、お金も年齢も、幸せには関係ない。世界に証明するの。本当の幸せを!」
    障害のあるふたりは、二人にしかできないやり方で幸せを証明しようとする。
    企画・原案は、講演やイベントなどさまざまな活動を通じて、自身も脳性麻痺を抱えつつ障害者の性への理解を訴えつづける活動家・熊篠慶彦。
    これは、彼の実話にもとづく物語なのだ。
    主人公のクマを演じたリリー・フランキーは熊篠の長年の友人で、クマを演じたリリー・フランキーは、彼の活動と生きざまが映画になると聞き、役柄を問わず協力したいと本作への参加を決断したという。
    精神的な障害を持つミツの不安定な状態と、それに負けず革命を起こしたいという気持ち。混在する2つの強い思いを飼い慣らせなくて、行ったり来たり、上がったり下がったりの彼女を表情は切なくて、苦しくて、素晴らしく素敵だった。この映画は終始、愛。胸が詰まるようなリアルとポジティブなメッセージ、不器用で極端なエネルギーから溢れる愛、愛、愛だ。
    ダンスホールのシーンで流れるGOING STEADYの「BABY BABY」は、
    革命最中にいる2人のためだけにあるような歌に思えた。
    メロディーと詩のように、混ざり合って、寄り添い合って生きる二人の姿が、眩く印象的だった。
    “夢の中で僕ら手をつないで飛んでた
    目が覚めて僕は泣いた
    永遠に生きられるだろうか、永遠に君のために
    BABY BABY君を抱きしめていたい
    何もかもが輝いて、手を振って
    BABY BABY抱きしめておくれ
    かけがえのない愛しい人よ”
    ▼あらすじ
    「身体障害者だって恋をするし、セックスもしたい! 障害者はただの人間なんです!」。重度の身体障害があり、車椅子生活を送りながら、障害者の性に対する理解を訴えるために活動するクマ。彼が恋に落ちたピンクの髪の美少女ミツは、人格障害を抱えた風俗嬢だった――。障害者であるにもかかわらず生き生きと生きているクマに、ミツは言う。「あなたとわたしみたいなのが幸せになれたら、それってすごいことだと思わない?」「それを世界に証明するの!」
    クマとミツ“最強のふたり”のラブストーリーは…。
    ▼Information
    『パーフェクト・レボリューション』
    9月29日(金)TOHOシネマズ 新宿他にて全国公開!
    企画・原案:熊篠慶彦(著書「たった5センチのハードル」)
    監督・脚本:松本准平(『最後の命』)
    出演:リリー・フランキー、清野菜名、小池栄子、岡山天音、余貴美子  
    配給:東北新社
     
    Text/Miiki Sugita
    出典:She magizine

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