KEYTALK 出会って10年目の大舞台・
横浜アリーナは武道館を超えるチャレ
ンジでもあった

10th anniversary KEYTALK 横浜アリーナ ワンマンライブ 俺ら出会って10年目~shall we dance?~

2017.9.10(SUN)横浜アリーナ
『10th anniversary KEYTALK 横浜アリーナ ワンマンライブ 俺ら出会って10年目~shall we dance?~』というタイトルに含まれた文字列以外の情報が実はこの日のライブを象徴していたように思える。10年前、小野武正(Gt)、八木優樹(Dr)、首藤義勝(Vo、Ba)、寺中友将(Vo、Gt)の4人が出会ったとき、彼らはまだKEYTALKではなかった。改名前のバンド“real”であり、4人が出会ってから10年。そしてサブタイトルの「shall we dance?」は2015年10月28日に行なわれた初の日本武道館公演のサブタイトルと同一だ。この4人にしかできないこと、さらに武道館公演をキャパシティ的にも内容的にも超えていくこと――そんな意思を公演タイトルからも読み取ることができる。見所はいかにそれを体現するか?だ。
KEYTALK 2017.9.10 横浜アリーナ 撮影=後藤壮太郎
KEYTALK 2017.9.10 横浜アリーナ 撮影=後藤壮太郎
12,000人収容の横浜アリーナはさすがに広い。ステージ上にはステージの幅ほどあるワイドビジョンが設置され、バンドロゴや炎が映し出されたかと思うとモノクロの映像で今まさにステージに向かう4人が投影され、会場は悲鳴と歓声に包まれる。そして4人の開いた扉はなんとフロア後方。いきなり会場全体を掌握するようにファンとハイタッチや握手をしながら二人ずつ左右の通路に分かれてステージ向かう4人。どこかファンに祝福されて歓迎されていた武道館公演とは違い、自らファンを迎え入れている、今日この横浜アリーナのホストは自分たちなのだというわかりやすい演出が、彼らの成長を冒頭から体現していた。セットリストも1曲目から強烈なクラップ音から始まり、途中でEDM的な展開を見せる「Summer Venus」で、アリーナが揺れる揺れる。ドーピング気味の映像、スタンドに続く花道に早速走っていく小野などなど、オープナーからなんて情報量の多いステージだよ!と声に出して笑ってしまった。そのまま最新アルバム『PARADISE』のアッパーサイドなモードを繰り出すテンションは、アルバムツアーでつかんだ感触をさらにビルドアップしたかのよう。
序盤でインディーズ時代からの人気曲「fiction escape」を演奏し、そのボッサや7thのおしゃれなコード感がビッグキャパにも届いていることが頼もしい。当時のプロモーションビデオが背景に流れ、そのビジュアルデザイン(長方形で切り取ったカットを組み合わせる手法)が、リアルタイムの彼らの映像につながっていく演出も心憎い。続けざまにインディーズ時代のこれまたセンスあふれる「sympathy」に繋げた流れは序盤のハイライトだった。
KEYTALK 2017.9.10 横浜アリーナ 撮影=後藤壮太郎
KEYTALK 2017.9.10 横浜アリーナ 撮影=後藤壮太郎
それにしてもワイドビジョンに映し出される4人の楽しそうな表情が言葉以上に楽しさを伝えてくる。しかも全員、表情が引き締まっているのが頼もしい。この日は映像撮影用に多くのカメラも入っていたし、当然リアルタイムでスタンドの後方のファンにもその表情を届ける工夫がなされていたわけだが、そうしたことにも臆するどころか、かっこいいところだけじゃなくどんな表情だって見せようじゃないか、そもそもかっこつけるバンドか?(半分想像です)、そんな4人やスタッフの声が聞こえてきそうな演出がいい。
また、「桜花爛漫」「茜色」といった和メロ、転調がポジティブな気持ちの躍動を生み出す「Monday Traveller」などが並ぶブロックは、首藤、寺中のメロディメーカーとしての引き出しの多さを再認識させてくれた。アッパーな四つ打ち、踊れるリズム、ひたすら高いテンションもKEYTALKの持ち味だけれど、この日は聴かせる曲のメロディの良さ、そしてそうしたレパートリーを数多くセットリストに盛り込んだことも、スケールの大きな会場で威力を発揮することも証明したのではないかと思う。
KEYTALK 2017.9.10 横浜アリーナ 撮影=後藤壮太郎
そしてこの日のもう一つのハイライトは、real時代の楽曲でもちろん未発表の「view」を披露したこと。影響を受けたことをメンバーが口にしているthe band apartそのまんますぎるフュージョンや16ビートのグルーヴを感じさせるナンバーで、確かにそのままだとバンドとして突出するのは難しかったかもしれないが、高校時代にこんなハイスキルな曲を書いたこと自体はやはり驚きだ。そうそう、この曲を演奏する前に小野が超早口でザッとバンド結成からKOGAとの契約に至るヒストリーを話したのだが、出会った頃の首藤の“ウルフカットと巻きスカートみたいな衣装”とか、反論を許さないマシンガントークもすっかり役回りとして確立された印象だった。お見事。
KEYTALK 2017.9.10 横浜アリーナ 撮影=後藤壮太郎
KEYTALK 2017.9.10 横浜アリーナ 撮影=後藤壮太郎
後半は上昇するドラムセットの上での八木ドラムソロからのKEYTALKのマッドな部分全開な「YGB」、そしてクレイジー度合いで言えば最強な「マスターゴッド」ではブギーな首藤のベースが唸る。寺中も小野も首藤の元に集まり、八木もドラムセットから離れて首藤の元に来たものの、演奏に戻ろうと振り返るとドラムセットが再び上昇。フロント3人に「早く戻れよ」と促される様子はなんだかドリフのギャグである。そこで首藤が発する「僕ら20年後も30年後も一緒にバンドやろうな!」の一言が感動より笑いに包まれるのがいかにもKEYTALKらしい。そう言えばこの日、4人が出会って10年、順風満帆に見えるし急成長したように見えるそのプロセスも決して平坦ではなかった――的な涙を誘うMCはなかった。それに替わるものとして、2009年当時、遠征の移動は小野家のマツダ・カペラが使用されていた頃の映像が流れた。ハタチの4人が車中泊をしながら初めてツアーに出た映像だ。もうそれが必要十分に初期のKEYTALKを物語っていたのだ。
リアルなドキュメントも、焼肉の部位やらまさに焼いている最中の映像やら(しかも火柱も)笑わせるための演出に徹した映像も(「One side grilled meat」時)、どちらもKEYTALKだし、そのことを視覚化したのも今回の横浜アリーナ公演がメンバーからファンに寄っていく、包み込んでいく意思を大きくサポートしていた。“僕らの音楽で一緒に遊びましょう”と言い切れる強さをあらゆる手段を使って立体化することにてらいがなくなった今のチームKEYTALKは強い。
KEYTALK 2017.9.10 横浜アリーナ 撮影=後藤壮太郎
終盤、今夏の新曲「黄昏シンフォニー」の歌詞を夕景とともにビジョンに投影したのも新鮮だったし、「Love me」から「MATSURI BAYASHI」までの会場の“待ってました”感に裏打ちされたジャンプは序盤以上に凄まじいものがあった。本編ラストはまさにKEYTALKからファンへの応援歌=「Oh!En!Ka!」。彼らにしては直球のこのナンバーが、出会って10年、つまり彼らが出会ってくれたから今こうして12,000人が一つのステージを共有して笑い、歌い、踊ることができるし、また自分自身もKEYTALKヒストリーの一つのピースとして物語を彩っている――そんな気持ちがハマる曲に成長していたのだ。バンドが変化・成長すれば曲の聴こえ方も変わる、そんな体験をした。
KEYTALK 2017.9.10 横浜アリーナ 撮影=後藤壮太郎
アンコールを求める声と同時に武道館公演でメンバーへのサプライズとして会場中でスマホのライトを点灯したことが再び横浜アリーナでも繰り返される。美しい景色だ。それを「鳥肌立った」と言いながらメンバーが再登場。感動しつつも「大丈夫ですか? 充電」と笑わせるのも小野の役目か素の発言だったのか。アンコールに最新曲にして、KEYTALKの美しい和メロと自然な展開に瞠目する「セツナユメミシ」を持ってきたあたり、またここから始まるバンドヒストリーを予感させるようだった。そして正真正銘のラストは、バンド最大のヒットにして、バンドの看板ナンバー「MONSTER DANCE」。再び火柱が上がりミラーボールも周り、派手にレーザーがアリーナの隅々まで届いた強力な演出以上に、フロント3人が八木のドラムセットに集まった瞬間、このバンドを見続けたい思いに囚われた。涙を誘うような物語とか、何万人の感情を束ねるメッセージとか、そんなものがなくても、KEYTALKは曲と演奏でこの先も道なき道を切り拓いていって欲しいと願う。

取材・文=石角友香 撮影=後藤壮太郎
KEYTALK 2017.9.10 横浜アリーナ 撮影=後藤壮太郎
セットリスト

10th anniversary KEYTALK 横浜アリーナ ワンマンライブ 俺ら出会って10年目~shall we dance?~
2017.9.10 横浜アリーナ
01. Summer Venus
02. ASTRO
03. ダウンロードディスコ
04. fiction escape
05. sympathy
06. SAMURAI REVOLUTION
07. 金木犀
08. HELLO WONDERLAND
09. 桜花爛漫
10. 茜色
11. boys & girls
12. OSAKA SUNTAN
13. Monday Traveller
14. view
15. YGB
16. マスターゴッド
17. color
18. One side grilled meat
19. バイバイアイミスユー
20. 黄昏シンフォニー
21. プルオーバー
22. ミルクティーは恋の味
23. Love me
24. YURAMEKI SUMMER
25. 太陽系リフレイン
26. MATSURI BAYASHI
27. Oh!En!Ka!
<アンコール>
28. セツナユメミシ
29. スポットライト
30. MONSTER DANCE

リリース情報

ライブBlu-ray / DVD『横浜アリーナ ワンマンライブ 俺ら出会って10年目~shall we dance?~』
2017年12月20日発売
【Blu-ray】
完全限定生産盤(2BD) VIZL-1278 / 6,400円+税 / 通常盤(BD) VIXL-205 / 4,900円+税
【DVD】
完全限定生産盤(2DVD) VIZL-1279 / 5,400円+税 / 通常盤(DVD) VIBL-871 / 3,900円+税
■完全生産限定盤特典 ※Blu-ray盤/DVD盤共通
・ボーナスディスク付属 ・フォトブック付属 ・スリーブケース仕様
■完全生産限定盤&通常盤共通封入
・LIVE映像作品&CD W購入者豪華プレゼントキャンペーン応募券封入(2018年1月10日(水)消印有効)
【CD】
CD2枚組 VICL-64892~64893 / 2,900円+税 ※初回出荷生産分特殊パッケージ
■LIVE映像作品&CD W購入者豪華プレゼントキャンペーン応募ハガキ封入(2018年1月10日(水)消印有効)

ライブ情報
KEYTALK 灼熱の小旅行 運転技術向上委員会 冬の陣 〜ハンドルを片手に〜
チケット最速先行抽選予約対象公演
2017年12月9日(土) OPEN 17:00 / START 18:00 愛 知 名古屋CLUB QUATTRO
2017年12月10日(日) OPEN 17:00 / START 18:00 大 阪 梅田CLUB QUATTRO
2017年12月12日(火) OPEN 18:00 / START 18:30 福 岡 DRUM Be-1
2017年12月15日(金) OPEN 18:30 / START 19:00 宮 城 仙台MA.CA.NA
2017年12月18日(月) OPEN 18:00 / START 19:00 東 京 渋谷CLUB QUATTRO
チケット代金:前売4,500円(税込) 当日5,000円(税込) ※ドリンク代別途
一般発売:2017年10月1日(日)
※未就学児童の入場不可/小学生以上はチケットが必要になります。
​※その他ライブ情報など詳細はオフィシャルサイトへ http://keytalkweb.com/
 

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