【アニソン】名作に欠かせない存在!
“作詞家・藤林聖子”の魅力を語り
尽くす厳選10曲【特ソン】

ONE PIECE』に平成仮面ライダー、そして、有名アニソンシンガーや人気アイドル、声優への曲提供まで。名曲を生み出し続ける作詞家、藤林聖子さんの魅力を語り尽くします。

ポップ・ミュージックを、その言葉と感性で支える「作詞家」という職業。
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数多くの才能ある作詞家さんが、アニソンや特撮ソング、あるいは声優ソングの世界においても大活躍されていますが、その中でも、その特異な言語感覚や描写の巧みさ、そして、作品やキャラクターに深く入り込んだ歌詞世界でファンを魅了し続けているのが、藤林聖子さんです。
アニメや特撮ヒーロー作品のファンならば……否、ポップ・カルチャーに少しでも触れた経験のある方ならば、その歌詞を耳にしたことがない人は、この世の中にいないハズ!
藤林さんが生み出した数多くの名曲の中から、そのリリックの大ファンである筆者が、藤林作品の魅力を語りつつ、オススメの10曲をご紹介いたします。
きただにひろし『ウィーアー!』(『ONE PIECE』OP)国民的人気を誇る少年漫画『ONE PIECE』。アニメ版の初代オープニング曲に使用され、こちらも絶大な人気を得る主題歌、それが『ウィーアー!』です。
アニソンの定番曲のひとつですが、実は、この曲の歌詞も藤林聖子さんのペンによるもの。そして、この曲を聴けば、その作詞家としての才能と魅力を端的に窺い知ることができます。
藤林さんが生み出すリリックの凄いところは、作品の世界観や登場人物のキャラクター性を丁寧に拾い上げ、それを言葉へと変換してみせる、その巧さにあります。
アニソンの歌詞を作る上で、最も大切で、それ故に最も難しい部分。それを的確に、尚且つ、作品やキャラクターへの愛情が感じられる程、見事に表現してみせる。だからこそ、藤林さんが作る歌詞は、アニメや特撮に強くフィットするのだと思います。
そうした作詞家としての強みと表現力の豊かさが、この『ウィーアー!』には溢れています。
東方神起やAAA、i☆Risなど、この曲をカヴァーしたアーティストも数知れず。また、こちらも藤林さんが作詞を担当した『ウィーゴー!』や、氣志團ときただにひろしさんによるコラボソング『ウィーキャン!』といった本曲の続編的なナンバーやアンサーソングも生み出され、『ONE PIECE』の世界を彩りました。
まさに、『ONE PIECE』に欠かせない超名曲です。
藤林さんの特ソンの魅力を徹底解説!
YU-KI『NEXT LEVEL』(『仮面ライダーカブト』OP)自身が手掛ける作品のコンセプトやストーリーを深く理解し、そこからリリックを生み出す語彙力の豊富さと先見的な目線を持つ藤林さん。
図らずしも、楽曲を使用した作品のストーリーが藤林さんが書いた歌詞の通りに進むことすらあり、これまでにも度々、ファンを驚かせてきました。
そんな藤林さんに対して、尊敬と驚愕の思いを込めてファンが付けた渾名は「預言者」。藤林さんの預言的な作詞能力は、平成仮面ライダーシリーズにおいて度々、顔を出します。
例えば、平成ライダーシリーズ第7作目として放映された『仮面ライダーカブト』のオープニング主題歌『NEXT LEVEL』などは、"預言者"たる藤林さんの才気が発揮された楽曲といえるでしょう。
TRFのヴォーカリストであるYU-KIさんが、性急かつハードなテクノサウンドに乗せて闘いに挑むヒーローの姿を歌い上げる正統派のヒーローソングなのですが、テレビシリーズの最終回(と、本作の映画版である『劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE』)を観た後に聴き返すと、歌詞の内容が……特に、2番以降に綴られる言葉が作品の終盤における展開を物の見事に言い当てていることに気付かされます。
こうした予見的な歌詞を書くことができるのも、作品を深く理解し、その物語に入り込むことができる故なのでしょう。
藤林さんの預言は、単なる偶然ではなく、作詞家として真摯に作品に向かい合うからこそできる必然的な奇跡なのです。
AAA DEN-O formClimax Jump』(『仮面ライダー電王』OP)平成ライダーシリーズで、数多くの主題歌を手掛け、幾多の名曲を生み出してきた藤林さん。その中から「ベスト」を選ぶとなると、ファンの好みや作品に対する思い入れから、その票は大きく分かれることになるでしょう。
しかしながら、この『Climax Jump』は、多くのファンにとって特別な1曲であり続ける……まさに、歴代シリーズを代表する「名曲中の名曲」なナンバーではないかと思います。
本曲は、人気男性声優が多数出演したことで、メインターゲットの児童層や男性特撮ファンだけでなく、女性ファンからも高い支持を得た人気作『仮面ライダー電王』の主題歌で、ファンからも長く愛される楽曲です。
オリジナルアーティストのAAAのバージョンは勿論のこと、主演の佐藤健さんや出演声優陣によるカヴァーバージョンやアレンジ版など複数形態でリリースされ、ファンの耳を大いに楽しませてくれました。
AAAの歌声とメロディが素晴らしいのは勿論のこと、この曲を何よりも印象的なものに仕上げているのが、曲間で度々リフレインされる「○○じゃん?!」という超キャッチーなフレーズでしょう。
歌詞世界をより取っ付き易く、子どもたちからも愛されるものになるように、特撮ソングの歌詞世界ではフランクな話し言葉や若者言葉を頻繁に取り入れる藤林さんですが、そのポップな感性をフルに感じられる名フレーズだといえるでしょう。
幡野智宏(Project.R)『LUCKYSTAR』(『宇宙戦隊キュウレンジャー』OP)東映の特撮ヒーロードラマでは、スーパー戦隊シリーズでも数多くの"作品"を残している藤林さん。手掛けた楽曲は、主題歌、挿入歌、キャラソン……と多岐にわたりますが、その最新作となる楽曲が、現在好評放送中のシリーズ最新作『宇宙戦隊キュウレンジャー』のオープニング主題歌『LUCKYSTAR』です。
様々な新要素を盛り込んだ意欲作に相応しい『キュウレンジャー』の主題歌らしく、ここにもある"仕掛け"が。実は、この曲、これまでの主題歌における恒例であった「タイトルや歌詞に戦隊ヒーローの名前を盛り込む」という"お約束"を敢えてオミットした楽曲なのです。
「キュウレンジャー」というキーワードは、コーラス部分で出てくるのみ。これまでのフォーマットに縛られない自由度の高い楽曲といえます。
だからこそ、その歌と音楽の中で、藤林さんのリリックは一層の躍動感を放っているように思います。
歌詞の内容は、本作の主人公であるラッキー(シシレッド)の「超ポジティヴで、何事にも前向きな性格で幸運を引き寄せる」というキャラクター性を踏まえた、聴いているだけで元気が出てくる陽性の楽曲となっています。
一方で、子どもたちだけでなく、幅広い層にとって胸に響くメッセージ性を持つ言葉が顔を出すのもこの曲の凄いところ。
壮大なスケール感を聴く者に抱かせるエモーショナルなメロディと、幡野智宏さんの爽やかな歌声も含めて、異色ながらもスーパー戦隊の正道を征く真っ直ぐなヒーロー賛歌です。
アイドルソングも名曲ばかり!
サイキックラバー『侍戦隊シンケンジャー』(『侍戦隊シンケンジャー』OP)続けて、スーパー戦隊シリーズから、もう1曲。『侍戦隊シンケンジャー』は、藤林さんによる特撮ヒーローソングの中でも、とりわけリズミカルな言葉の使い方が楽しいナンバーです。
スキャット的に用いられる「チャンバラ」というリズミカルなフレーズや、韻を踏むことを強く意識した言葉の展開は、この曲に特別なグルーヴ感を与えています。
藤林さんの歌詞は、作品の世界観やキャラクター性を重視する為、物語性が強いのも作風における大きな特徴となっているのですが、この曲の場合は、そこに"リズム"という音楽要素が色濃く出ており、他の藤林さん作詞のアニソンや特撮ソングとは、また少しばかり異なる魅力を持つ1曲となっています。
サイキックラバーによる明るく、そして、ロックなサウンドもカッコ良く、歴代戦隊の中でもファンからの評価が高いそのドラマ性と共に、観る者のテンションを大いに上げてくれました。
BRILLIANT4『エレメンタリオで会いましょう!』(『甘城ブリリアントパーク』ED)藤林さんが作詞家として作品をバックアップしたアニメといえば、京都アニメーションが2014年に制作した『甘城ブリリアントパーク』です。
魔法の王国「メープルランド」の住人が運営する潰れかけのテーマパーク「甘城ブリリアントパーク」を立て直す為に登場人物たちが奮闘する「ファンタジー+経営モノ」なライトノベル作品のアニメ化で、藤林さんは、関連楽曲に数多くの歌詞を提供。
中でも、オープニング主題歌とエンディング主題歌は、どちらもその音楽性を含めて素晴らしいナンバーとなっています。
AKINO with bless4が歌う『エクストラ・マジック・アワー』の歌詞世界も捨て難いのですが、ここでは、エンディング主題歌として使用された『エレメンタリオで会いましょう!』をご紹介させていただきます。
劇中に登場する水・風・土・火の妖精によるユニット「BRILLIANT4」によるナンバーで、各キャラクターを演じた女性声優(相坂優歌さん、黒沢ともよさん、三上枝織さん、津田美波さん)がキャラ名義で歌唱を担当。
4人のコーラスが素晴らしく、"声優アイドルソング"としても高い完成度を誇る1曲なのですが、そこに更なる力強さを与えているのは、藤林さんのペンによるリリックに他なりません。
"妖精"というキャラクターに寄り添ったファンタジックな歌詞は本曲の多幸感をより一層盛り上げており、愛らしくも独自の世界観を築き上げています。4人の妖精が持つ自然のモチーフを極々ナチュラルに歌詞の中に盛り込む技量にも驚かされます。
同じく歌詞の中でファンタジーの要素を聴かせてくれた『仮面ライダーウィザード』の主題歌『Life is SHOW TIME』(鬼龍院翔 from ゴールデンボンバー)と聴き比べてみるのもおもしろいと思います。藤林さんのファンタジー世界を描く、その筆致にも要注目です!
Luce Twinkle Wink☆『1st Love Story』(『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』OP)特撮ファン的には、やはり"ヒーローソング"の印象が強い藤林聖子さんですが、そのペンからは、数多くの優れた"ラブソング"も生み出されています。
この『1st Love Story』は、藤林さんの情景描写と心理描写の巧みさが、リスナーに強いインパクトを残す秀逸な恋の歌です。
女の子の一人称視点から、恋人との幸せな日々を描く内容で、サビのパートにおける恋の高揚感を描き出すパンチラインとキラーなフレーズの連続には、ラブソングとしての特別なパワーが宿っています。恋人と同じ時間を過ごすことで、平凡な日々や日常風景が特別な輝きを放つものになる。その瞬間のエモーションがここでは見事に描かれているのです。
一方で、2番のAパートでは、携帯メールやデジタルのメッセージならば好きな気持ちを相手にストレートに伝えられるにも関わらず、いざ面と向かってでは、自身の恋心を上手く言葉にできないという描写で、奥ゆかしい乙女心を描き出すと同時に、メールやSNS世代特有の若い感性を的確に描き出す。その巧みな描写に、思わず感動してしまいます。
そんなリリックが、Luce Twinkle Wink☆の全力な歌とパフォーマンスで歌い上げられるのですから、その幸福感たるや……。アイドルへの歌詞提供も多い藤崎さんですが、その中でも特にオススメできる1曲です。
アニソンシンガー・人気声優への提供曲も!
May'n『ViViD』(『ブラッドラッド』OP)藤林聖子さんと何かと縁があるアニソン界の歌姫といえば、May'nさんです。藤林さんの作詞曲で、オススメの楽曲を挙げるとなると、May'nさんのナンバーを入れないわけにはいきません。
May'nさんが、本格的にアニソンシンガーへと転向し、数多くの名アニソンを世に送り出す前史、R&Bシンガー「中林芽依」として歌謡界で活動していた頃から、藤林さんは歌詞を提供しており、その付き合いは10年以上に及びます。
アルバム収録曲も加えると両者のコラボはかなりの曲数を誇るのですが、今回は『ブラッドラッド』のオープニング曲として使用された『ViViD』を取り上げます。
音楽的には、アッパーなシンセサウンドが特徴のダンスナンバーで、May'nさんの歌唱力の高さとダンサンブルなメロディの相性が抜群の1曲。単体でも十二分に通用する程、ポップソングとして完成度の高い楽曲なのですが、歌詞をよく読むと、ここでも『ブラッドラッド』という作品の世界観が楽曲の基盤となっていることに気付かされます。
男性主人公の視点から、大切な「君」との関係性を描くリリックは、そのまま『ブラッドラッド』の男性主人公とヒロインのやり取りを思わせ、更に、アニメ版でのカラフルかつ奇抜で派手な演出を連想させる"色彩"に重点を置いた言葉の数々も、この曲を印象を一層色濃いものにしています。
サビのコーラスでさり気なく<blood-lad>というフレーズを入れる演出も粋で、「May'nさんの歌」と「陽性のメロディ」、そして「藤林聖子さんの歌詞」と「『ブラッドラッド』というアニメの作品性」の4つが見事に調和したナンバーです。
悠木碧『クピドゥレビュー』(『彼女がフラグを折られたら』OP)女性声優への提供曲として、特にオススメしたい1曲が、悠木碧さんのセカンドシングル『クピドゥレビュー』です。
この曲は、テレビアニメ『彼女がフラグを折られたら』でオープニング主題歌として使用された楽曲。スウィング・ジャズ調のホーンセクションを多用したメロディラインに、悠木さんのエキセントリックなキャラクターが融和。その特異な音楽性が一度聴いたら耳から離れなくなるような、キャッチーな愛らしさを有したナンバーです。
悠木さんのコケティッシュな歌声も相まってか、どこか童謡的なニュアンスが感じられる曲でもあり、"声優ソング"としても非常に奇抜な仕上がりとなっています。
歌詞の面で注目すべきは、「モブキャラ」や「フラグ」といった『彼女がフラグを折られたら』の象徴であり、恋愛シミュレーションゲームにおける定番のキーワードが印象的に使用されている点で、この若々しくも的確な言葉の選び方は、如何にも藤林聖子作詞曲らしい"良い仕事"になっています。
特撮ソングにおける口語体の若者言葉の使用や、ラブソングでの少年少女の気持ちを汲み取った言葉の選び方もそうですが、藤林さんが書く歌詞の感性は決して古びることがなく、時代時代に合わせて、瑞々しい感覚を保ち続けています。
そうした面も、藤林さんのリリックが多くの人を惹き付ける理由になっているのでしょう。
JO☆STARS~TOMMY,Coda,JIN~『ジョジョ その血の記憶~end of THE WORLD~』(『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』OP)人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』がアニメ化された際にも、藤林さんが作詞家として主題歌の制作に参加。原作漫画は、主人公が代替わりしながら、その歴史と血が脈々と受け継がれていく「大河ロマン」形式の長編作です。
更に、熱狂的なファンが世界中に存在しており、そうした作品の主題歌を書き下ろすというのは、なかなかにハードな仕事に思えたのですが……藤林さんは、劇中のキーワードを歌詞に盛り込むという形式で、『ジョジョ』という作品に敬意を払いつつ、見事にアニメ版『ジョジョの奇妙な冒険』に相応しいアニソンを作ってみせました。
中でも、第3部の後期に使用された『ジョジョ その血の記憶~end of THE WORLD~』は、"ロックオペラ"とでもカテゴライズすべき変幻自在かつ奇抜な曲展開と、それまでの主題歌を担当した3名のヴォーカリストの共演による迫力の歌声が物語終盤の盛り上がりを更に加速させて楽曲です。
"スタンド"と呼ばれる特殊能力にまつわるワードを散りばめた歌詞と、劇中の名台詞「オラオラ」(通称「オラオララッシュ」)を取り入れた大胆な構成は、この曲に圧倒的な個性を与えました。
シリーズを通して、エンディング曲では洋楽の名曲が使用されていたこともあり、そのコントラスト的な意味でも、藤林さん作詞のオープニング曲は本作において異色の輝きを放っていましたよね。
『ジョジョ』という超個性派作品のパワフルな作品性に負けない、良い意味で"濃い"歌詞世界は、藤林さんだからこその名作と言えるでしょう。

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