小山田壮平が弾き語りツアー直前に語
った、ALの現在地と「ひとりでも」歌
う理由

小山田壮平が弾き語りのツアーに出る。9月27日福岡BEAT STATIONからスタート、10月3日大阪umedaTRAD、10月7日名古屋X-HALL、10月13日渋谷クラブクアトロの4本。福岡と大阪は関取花、名古屋と東京は折坂悠太がゲストで出演。1年前にもALの活動の合間を縫って4本の弾き語りのツアーを行ったところを見ると、バンドと並ぶライフワークとして継続していきたい、というふうにも捉えられる。その動機や思いや衝動のありかなどについて訊きたく、インタビューをオファーした。でもリリースとかないので難しいかも……と思っていたら、意外とすんなりOK。受けてくれた。というわけで、じっくり話を訊いたのが以下です。

すごく自分の表現というか、本質が歌えたような気持ちになった
──ALは、バンドとしては、わりとゆっくりしたペースであせらずにやりましょう、っていう方針なんでしょうか。
基本的にはそうなんですけど、今、どっちかっていうと、自分たちのビジョンよりは遅れてる感じで。制作のペースだったり、もうちょっと上がるといいんですけどね(笑)。
自分たちで出来るだけのことをやっているし、みんなそれぞれのことをやりながらだから、かなり絆も試されるというか。
──かといって、「2年後のこの時期にリリースするために、ここを制作期間にして、リリース後に今からツアーを組んで」みたいに、普通のプロのバンドのようにスケジュールを決められても、それはそれで困りません? まあ、かつてはandymoriでそれをやっていたわけですけども。
そうですね、そうなるとけっこうストレスフルになっちゃうかもしれないですね。
──じゃあ、よかれと思ってフリーな状態にしているんだけど、それはそれでなかなか進まないな、と?
それなんですよね。前アンディをやってた時は、事務所がしっかり予定を組んで、自分たちをひっぱっていってくれてたので、まあストレスにもなったんですけど、それが創作につながってもいったな、と思います(笑)。でも、実際今は制作にも入っているので。
──で、その合間に年に1回ペースでひとりでツアーをやる、というふうになっていますけれども。
弾き語りでツアーとか行って、いろんな場所でやってみたいなっていう気持ちは、昔からあったんですけど。去年は時間ができたんで、ちょっとやってみたんですけど。
「うまくできるかな」と思って、かなりドキドキしながらやってたんですけど……試行錯誤しながら4ヵ所回って。最後の熊本が、すごくいいライブができたんです。すごく自分の表現というか、本質が歌えたような気持ちになって。それで今年もやってみようと思ったんです。
ほんとはもっと全国津々浦々回りたかったんですけど、ALの制作のタイミングと重なってるんで、これくらいの本数にして。来年以降はスケジュールを考えて、もうちょっと多めにやりたいと思ってます。
小山田壮平 撮影=風間大洋
飛び込みで歌うのが好きなんです
──弾き語りであちこち行ってやりたいというのは、だいぶ前からあった思いですか?
ありましたね。路上で歌ったり、海外、インドとかカナダとかに行って弾き語りをしたりとか。それはandymoriをやる前なんですけど、そういう感じも好きだったので。フラッと行って歌うみたいな、気ままな感じで音楽ができるっていうのが、憧れでもあって。
ひとりだと「この曲カヴァーしたい」って思っても、パッとできるし。ツアーでも、「セットリスト、ちょっと違うな」とか思ったら、自分の都合でどんどん変えていける。バンドでそれをやろうと思うと、なかなか難しいじゃないですか。
去年のツアーも、4ヵ所回りながらだんだん理想どおりのセットリストとライブに持って行くことができて。「ここをこう変えてこう終わろう」っていうセットリスト全体が見えて、それで最後の熊本をやりきったときに、すごい、これまで感じたことがないような充足感というか、やりきった感じがして。ライブで自分の思いを100%表現できたような、伝えられたような気がしましたね。
バンドの楽しさは……メンバーの思いとか、そういうものが合わさって、すごい力が出せるものだから。それとは違う感じがあったんですね。
──そういえば昔、夜中に、三宿のWebって小さなクラブで、飛び入りゲストみたいな感じで、ステージもない状態で、床にマイクスタンド置いて弾き語りやっていたのを観たことがあります。
ああ! ありましたね。知り合いのイベントで。ああいう感じで飛び込みで歌うのが好きでなんです。
この間も、石崎ひゅーいくんに連れられて、新宿ロフトに――茨城出身の人たちがみんなでやる、水戸ライトハウス主催のイベントがあったんですけど。aflood of circleの佐々木(亮介)くんのステージに飛び入りさせてもらって、ひゅーいくんと「踊るポンポコリン」を歌ったんです。それが、楽しかったです(笑)。
──7月22日に、千葉の『PEANUTS CAMP』(キャンプフェス)で、andymoriの曲を歌っておられたのを観て、「ああ、そうか」と思って。たとえば今、ALでandymoriの曲ができるか?っていうと、微妙じゃないですか。
ああ、今はそうかもしれないですね。
──でもひとりで弾き語りだったらできるよな、そりゃいい曲だし歌いたいよな、って。
あ、そういうのもあります。弾き語りだったら……今まで自分が書いてきた曲なので、それができる場所になる、っていうのもありますよね。
小山田壮平 撮影=風間大洋
インドの道端で200人ぐらい集まった
──曲を書く時は、別にソロ用とかバンド用とか分けてないと思うんですけども──
そうですね。ソロ用とかはないですね。
──でも、曲調とか歌詞とかも含めて、歌っていると「あ、ひとりだとこうなるのか!」っていうドアが開く時ってあったりします。
あ、あります、あります。テンポを変えて歌うとか、ここで止めて間をとるとか、そういうことが自由自在なので。そこはバンドではできないところですね。だから、曲と歌っていうシンプルな部分が、すごい生々しく表現できるのが、いいなあと思います。
──ちなみに、昔インドで歌ったっていうのは道端で?
そうです。かなり若いとき、学生の頃ですけど、インドに行って、向こうでギターを買ったんですよ。アコギの、ヘッドがストラトキャスターになってるギターを買って(笑)、それでインドの道端で歌ったりしたんですけど。それ、楽しかったですね。
小山田壮平 撮影=風間大洋
──けっこう立ち止まってくれるもの?
ものすごい立ち止まることもあって。オフシーズンの観光地だったから、みんなわりとヒマしてたみたいで。けっこうすごい人数が……「これ、何人いるんだ?」って思って、数えたんですよ。そしたら200人ぐらい集まっていて。
で、そこで歌ってたら、村長的な雰囲気の人に「ちょっとうちに来いよ」って、連れて行かれて。その人の家に行ったら、お酒を注いでくれて、「おまえ何やってんだ?」「学生なんですけど」「そうか。うちの娘と会わないか?」って言われて。
そしたら、娘が奥から出てきて、すごいきれいな人で。「どうだ?」「いや、お美しい方ですね」って言ったら、「おまえがその気なら今夜ベッドインしていいから」って。
──(笑)。うわあ!
インドで、日本人と結婚して玉の輿に乗って財産を築く――みたいなのが流行ってた時期もあったらしいんですよ、バブルの後とかに。その話を知ってたから「これはまずい!」と思って、「いやいや、まだ学生なので僕は無理です」って言ったら、「俺でもいいぞ」とか言い出して。
──ははははは!
「とにかくズボンを脱いで出せ!」みたいになって、あせって逃げたんですけど(笑)。あと、カナダ・ツアーに行った時も……4バンドぐらいで一緒に行ったんですけど、みんなでライブハウスの前に出て、路上で歌って。夜の7時頃だったんですけど、まだ明るくて、そこでみんなで「Stand by me」とか歌ってたら、けっこう立ち止まって観てくれて。そういうのも楽しかったですね。弾き語りはけっこういい思い出が多くて。
──日本では? ……あ、ツイッターで見たことあります。「小山田壮平が道端で歌ってる!」っていう(笑)。
ああ、それはたぶん、天神で酔っぱらった勢いで歌ったやつですね。けっこうアップされてました(笑)。まあ、そういうのも楽しいですよね。
そういえば、バンドを始める前も、寛(藤原寛/AL)と一緒に、新宿とか原宿の駅前とかでやったりしてましたけど。アンプを持って行って、寛にベースを弾いてもらって、やったりしてましたね。だから、そういうのが好きみたいです。

取材・文=兵庫慎司 撮影=風間大洋
小山田壮平 撮影=風間大洋
ツアー情報

小山田壮平 弾き語りツアー2017
9月27日(水)【福岡】BEAT STATION ※SOLD OUT
開場18:30/開演19:00
出演
小山田壮平
ゲスト:関取花
チケット代:\4,000(ドリンク別)

10月3日(火)【大阪】umeda TRAD ※SOLD OUT
開場18:00/開演19:00
出演
小山田壮平
ゲスト:関取花
チケット代:\4,000(ドリンク別)

10月7日(土)【名古屋】X-HALL ※SOLD OUT
開場17:30/開演18:00
出演
小山田壮平
ゲスト:折坂悠太
チケット代:\4,000(ドリンク別)

10月13日(金)【東京】SHIBUYA CLUB QUATTRO ※SOLD OUT
開場18:00/開演19:00
出演
小山田壮平
ゲスト:折坂悠太
チケット代:\4,000(ドリンク別)
全席オールスタンディング、未就学児不可

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