【ライブレポート】SuG、無期限活休
前に武道館から贈る最後の“無理やり
前向き”なメッセージ

9月2日(土)。SuG初の日本武道館ワンマンライブ<HEAVY POSITIVE ROCK>。バンド史上もっとも無謀な挑戦といわれながらトライした武道館は、蓋を開けてみれば、会場には全国及び海外から約7000人のファンが集結した。
◆SuG <HEAVY POSITIVE ROCK>@日本武道館 写真
新旧の楽曲を織り交ぜたセットリストにはレアな曲たちをつないだメドレーもあった。レーザーが飛び交う中、ステージ後方にはメンバーの姿やMV、大事なリリックを映し出していく大型スクリーンを設置。音玉が爆発すれば炎も上がり、銀テープだけじゃなく天井から星型の紙吹雪も降ってきた。ライブの途中からは、総勢100人というロックバンドでは見たことがないようなものすごい数のダンサーも加わり、曲調に合わせたダンスと衣装で入れ替わり立ち替わりSuGと共演。ダンサーがいてもまったく違和感を感じさせない。むしろ、その方が曲に似合ってしまうヴィジュアル系バンドなんて、彼らしかいないだろう。こうして、SuGにしかできないスタイルでショーアップしたパフォーマンスで無謀といわれていた初の武道館公演を大成功させたSuG。
日本武道館という夢の舞台が叶うPOSITVEな現実と、そのあとには、バンドが無期限の活動休止に入るという残酷な未来しか待ち受けていないHEAVYな現実————。その間で、ステージに立つメンバー自身も、ファン、さらにはスタッフや関係者、いろんな想いが交錯していた武道館公演だからこそ、BARKSではライブ中に彼らが発した生の言葉。そこにスポットをあてて、SuGがこの公演を通して、10年間の音楽活動の締めくくくりに泣きながらファンに送り続けたPOSITIVEなメッセージをレポートとしてお届けする。
ライブは「MARK」のSEが流れるなか、武道館の舞台後方からバックライトを浴びてメンバーが登場。SuG史上もっともSuGらしさを打ち出したヒップホップソウルなダスチューン「AGAKU」からスタート。「不完全Beautifool Days」で使われていた赤く塗った安全ピンで縁取りをしたスクリーンの演出も含め、オープニングのブロックでは、この日まで足掻き続けてきた最新のSuGを打ち出していった。「こんばんは、SuGです」という挨拶からこの日初めての武瑠(Vo)のMCへ。
武瑠「去年5月、俺たちSuGは武道館という無謀な挑戦を打ち出しました。そのときから伝えていたのは、結成したとき15人しか動員がなかった俺たちが、初のワンマンで目黒鹿鳴館をやったとき、半年で300人を集めてソールドさせるという奇跡を起こした。その奇跡を起こすだけだといってきて。今日ここに7000人が集まっています。SuGの10年の歴史が、奇跡を起こしました!(会場拍手)会場が変わってもやることは一緒。遊ぼうぜー」
武瑠が観客に呼びかけ「Toy Soldier」からはパーティーチューンブロックへ突入。ダンサーが加わることで、曲がよりモダンになり、ストリート色を増していく。Chiyu(Ba)が「タオル出せ! ないヤツはブラジャーや!」といってオーディエンスを笑わせて始まった「無限Style」では回していたタオルが宙に舞い、武道館はたちまちいつものSuGの“遊び場”になっていった。「武道館は、美しい景色です」。客席を見渡しながら武瑠が話し出す。
武瑠「この場所で、心を込め、心を削って、心を引っ掻いて書いた曲を歌えるのは幸せだなと思います」
客席の拍手に包まれるなか「では聴いてください」といって始まったのは、ラブソングパート。前半は「桜雨」、「無条件幸福論」というバラードを熱唱。こんな状況だからこそ、誰もがSuGと自分との想いを歌に重ねていくなか、「無条件~」では“だからこそ 瞬間を愛していこうよ 1秒でも長く”のところでスクリーンの景色がパーンと武瑠のアップに切り替わり「この想いよ、届け」といわんばかりに歌い上げた。
そうして、武瑠がギターを弾きながら歌う「Howling Magic」、楽器隊各々のソロとダンサーがコラボしていくセッションコーナーを挟んで、SuGの音楽性の武器を決定づけた「sweeToxic」へ。武瑠もダンサーとともに踊ったこの曲からは、彼らのヒップホップでソウル、ファンクネスなオシャレなSuGを楽しそうにプレイしていった。
「誰がこんな景色を想像したでしょう。“SuGが武道館? 3000人でしょう。よくて”といわれました。7000人ですよ? 幻じゃないよね」と武瑠がいうと「みんな分身の術が使えるんちゃう?」といってChiyuが笑いを誘う。また、海外からやってきたファンに向け武瑠が英語で挨拶すると、横からyuji(G)が「いまの言葉、俺が訳そうか?“ライブハウス武道館へようこそー!”」とBOØWY時代の氷室京介のポーズを真似ていうと「それがやりたかっただけでしょ」とメンバーから総ツッコミを食らって場内は大笑い。さらに、武瑠からはshinpei(Dr)が加入する前、SuGとしてどうなりたいかという話をしていたとき「武道館やドームをやりたい」といったyujiが、ここでLUNA SEAやL’Arc-en-Cielのようにというのではなく「“ayu(浜崎あゆみ)みたいに!”っていうんだよ?」と結成当時のおもしろエピソードも明かされ、場内が和んだところでトークは終了。
「SuG史上最高の夜にしようぜ」と武瑠が叫び、イントロで音玉が爆発した「gr8 story」からはポップでカラフルなSuG炸裂のブロックへ。活休発表以降涙が出るほど痛みの深さがリアルさを増した「SICK’S」は、SuGのPOSITIVE HEAVY ROCKの真骨頂。ここではダンサーがアリーナ席にも現れ、ファンと一緒にゾンビダンスを踊った。そして、後半は封印していた「Alterna」、武瑠がホイッスルを吹く「俺式Continue」などインディーズ時代の初期ナンバーを含むメドレーでSuGの歴史を振り返り、本編ラストは星型の紙吹雪が舞い落ちる中で「39GalaxyZ」をポップにカラフルにパフォーマンスした。
アンコールに応え、再び舞台に姿を現した彼らは、目黒鹿鳴館で行なった初ワンマンの題名をタイトルにした「dot.0」で、SuGをスタート地点へと戻す。武瑠が「アンコール、ありがとう。一瞬一瞬が愛おしいです」と話した後、メンバー各々が想いを伝えていった。
shinpei「今日が最後って、まだ実感わかないんだよ。みんなもそうでしょ? 今日のライブをもって俺らは止まってしまうから、これが5人で立つ最後のステージ。不安だった武道館が、蓋を開けてみたらこの景色。でも、この景色が5人だけじゃあ作れなかった。いつも言ってるけど、みんなのお陰。本当に幸せしかない。俺の人生、今まで生きてきた中で本当に幸せ。俺(涙が溢れ出す)に、こんな幸せをくれたみんな、ありがとうございました」(深々と頭を下げる)
Chiyu「俺は口ベタだから。(客席から「えー!!」)えーじゃねぇよ(笑)。俺は“ありがとう”を第一に伝えたいって、そんで活休を発表したやん? その後、これからどうすんのって思って。いっときは音楽から離れようと思ってたんですけど。“お前やれよ”とか“ステージ立ち続けてください”ってありがたいことにいろんな人に声をかけてもらいまして。SuGが無期限の活動休止してる間、自分は表でベースを弾き続けることにしました。SuGのベースとして、SuGの名前を守っていきたいと思います」
yuji「今日は3つ言いたいことがあります。1つ。みんなありがとう。メンバーも。2つ。活休決めた時ほどいまの自分はしんみりしてなくて。やり残したことはないです。いま思いました。思い残すことはないです。3つ。特にありませーん(笑)。でも今日演って思ったことがあります。10年やって、今日これだけ集まってくれた人たちの、SuGがあったからこそのつながり。楽曲よりも、SuGをやってきた意味はこれかと今日思ったんで。SuGで出会った人との繋がりを大事にしていって欲しいと思います」
masato(G)「いろんな感情があるんですけど、一番感じているのは“悔しい”ってこと。ここを超えられなかったのが悔しい。武道館で止まることが、腹立たしいレベルで悔しい。SuGが一番キレイでいられるところと捉えたのがこの武道館。だから、10年分の気持ちをぶつけて、全部やりきって。ここで終わらせたことを一生悔しみたいと思います。まだまだこのバンドで見たい景色がいっぱいあったので、悔しいです」
武瑠「できること、できないことすべてを注いでやってきてもSuGを守れなかったこと、心から申し訳なく思ってます。武道館というものすごい賭けをして。その賭けに負けて状況が悪化して。バンドが続けられないぐらい大変な、とっくに諦めてもおかしくないレベルの状況になっても、それでもみんなにバレないように(目に涙を浮かべて)なんとか強がって。誰も逃げずに、この無謀だった武道館に挑戦した5人を誇りに思います。だから、みんな実感してください。13年前。人生で初めてプロのライブをここで観ました。HYDEさんだったんですけど。それまで無気力病だった少年が“この景色、知らない”と思って。やりたいこととか何もなかった少年が、13年前この場所で踏み出しました。そこから一歩進んでいくたびに、いつの間にか目標ができて、夢ができ、その夢が今日叶えられました。こんな無気力病だった少年が叶えられたんだから、ここにいる人たちも絶対にできると思ってください」


この後、曲は武瑠が13年前の自分に歌うイメージで書いた「teenAge dream」へ。メンバーと次々に出会い、SuG結成に至るまでを忠実に再現したMVには“こっち”の後に“(武道館)”という文字がつけ加えられていた。そして「CRY OUT」で“僕ら一人じゃない”と伝えた後、武瑠が改めて「これはみんなが叶えた景色。だから、自分のこととしてこの景色を幸せに思ってください。見渡して、みんな! これがSuGの集合体だ」と伝えた後、彼らがメンバー5人で初めて作った「Smell Like Virgin Sprits」を観客のシンガロングとともに歌ったとき、武道館にいた全員の魂が重なり、一つになっていった。
ダブルアンコールに迎えられ、5人が再びステージに姿を現す。「湿っぽい終わり方じゃなく、SuGらしくあろう。最後はカラフルな景色作ろうぜ!」と武瑠がいい「LOVE SCREAM PARTY」、「ときどきすてきなこのせかい」をパフォーマンス。そうして、武瑠が「今までSuGとして戦ってきて。最期までカッコつけて終われない、こんな不器用で弱くて。それでも前を見て俺たちを支えてきてくれたスタッフ、ファンのみんな(生声で)ありがとうございました!」と叫び、SuG初の武道館ライブはとうとう幕を閉じた。そして、そのあとはいつものようにみんなで手を繋ぎ、武瑠の「せ~の」の合図で一斉にジャンプ。
Chiyu「ありがとうございます。あえて、これからもよろしくお願いします」

yuji「お疲れー(デスボイスで叫び、マイクを床に投げるパフォーマンス)」

shinpei「(生声で)ありがとう!」

masato「びっくりするぐらい幸せにバンドができた10年でした。ありがとうございました」

武瑠「10年間、夢もなにもなかった一人の男の子の生きる糧になってくれてありがとう。ただの男の子5人が集まって、この場所に立ちました。みんなも絶対にできます。“自分なんかどうせ…”とか“俺なんか”“私なんか”とか、そんな風に思わないでください。こんな、無料で音楽も聴けるし何でも味わえる時代に、ちゃんとお金払って、時間使って、想い持って、会いに来て、応援する熱量がここにいるみんなにはあります。だから絶対に大丈夫です。一歩踏み出してください。それがSuG武瑠の、そしてSuGからの、最後の“無理やり前向き”なメッセージです。10年間ありがとうございました」
こうして、彼らは最後の最後までSuGの生き様をとおして、本気で夢を追えば追うほどHEAVYであること、でもそこに向かって一歩を踏み出すことで目の前にPOSITIVEな世界が広がることを身をもって示していった。
そして、このライブをもって、SuGは無期限の活動休止期間に入った。
取材・文◎東條幸恵
セットリスト<HEAVY POSITIVE ROCK>


2017年9月2日 日本武道館

SE.MARK

1.AGAKU

2.HELLYEAH

3.不完全 Beautyfool Days

4.Toy Soldier

5.小悪魔 Sparkling

6.B.A.B.Y.

7.無限Styles

8.桜雨

9.無条件幸福論

10.Howling Magic

11.セッションコーナー

12.sweeToxic

13.契約彼女、生贄彼氏

14.FRIDAY!!

15.gr8 story

16.☆ギミギミ☆

17.SICK’ S

18.mad$hip

19.メドレー(Alterna~俺式Continue~R.P.G. ~Rockin’ Playing Game~~Vi-Vi-Vi ~武士道 -bushido- FREAKY~Fast Food Hunters~Crazy Bunny Coaster)

20.39GalaxyZ

EN1.dot.0

EN2.teenAge dream

EN3.CRY OUT

EN4.Smells Like Virgin Spirit

WEN1.LOVE SCREAM PARTY

WEN2.ときどきすてきなこのせかい

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