MOROHA×エリザベス宮地、ドキュメン
タリーの魅力

これは、MOROHA×エリザベス宮地監督のタッグによる、2016年に行われた『MOROHA III』リリースツアーの様子を収めた初のドキュメンタリー映像『其ノ灯、暮ラシ』についてのインタビュー。

ある日、MOROHAのマネージャーさんから「真貝さん、MOROHAのインタビューをミーティアでお願いできませんか?」とメールをもらったことから始まりました。僕自身はMOROHAのアフロさん、UKさんとは『其ノ灯、暮ラシ』の中でインタビューをしてるし、DVDの試写会でも司会を担当したので、ぶっちゃけインタビューはしやすい。……だけど、普通のインタビューで良いのか?と葛藤がありました。自分にしかできない戦い方があるんじゃないか、と。

悩んだ末、1つの答えが脳裏に浮かびました。……はっ!エリザベス宮地さんだ! 今作の監督であり、2人の活躍をずっと見守ってきたキーマン。言うなればMOROHAの真の理解者だし、お互いを認め合う戦友同士。この3人の対談なら他では読めない、最高の原稿になるんじゃないか(ウォー!!)。ってことで、スペシャルな鼎談が実現しました。

Photography_Toyonaga Takuma
text_真貝聡
Edit_司馬ゆいか


フリースタイルの部分がどういう風に映るんだろうっていう心配があった

――MOROHAとエリザベス宮地さん(以下、宮地)が公の場所で話すのは『「其ノ灯、暮ラシ」発売記念DVD試写会&トークイベント』以来ですよね。

アフロ : そうですね。

――『其ノ灯、暮ラシ』の話をさせていただく前に、まずは2013年に公開された『三文銭』のMVについて。あの作品こそ、宮地さんがMOROHAの魅力を伝える上でドキュメントという手法が合っていることを証明した礎なのかなと思っていますが。

宮地 : たしかに。MOROHAのMVでドキュメントを使ったのは『三文銭』が初めてだよね。

UK : そうですね。

宮地 : それまでは『奮い立つCDショップにて』、『恩学』を撮って……。

アフロ : 次が『三文銭』ですね。

宮地 : それで『三文銭』なんだ。『恩学』のあとが結構空いたんだよ。

アフロ : 2年くらい会ってない時期があったもんね。

宮地 : 会ってないね。りんご音楽祭かなんかで、チラッとUKくんには会ったけど。
――元々、『三文銭』は作り込んだMVにしようとしていたけど、宮地さんが急遽ドキュメントに変えたらしいですね。

アフロ : そうっすね。覚えてます? あの時ボツになった企画。

宮地 : 覚えてる。最初の打ち合わせでは「MVっぽいのが作りたい」って2人が言ってて。で、軽トラの荷台に黒幕を張って、その後ろで2人が演奏をして、新宿あたりでバッて幕を剥がすっていう企画だったんですよ。実際にトラックを見に行ったりしたし。

アフロ : そうそう! 行ったね。

――どうしてライブ映像に変更したんですか?

宮地 : MOROHAがGUNMA ROCK FESTIVALに出演するって聞いて、土壇場でドキュメントに変えたんですよ。超でかいメインステージがある中、MOROHAは小さめのステージの出演だったんですけど。そこに出る状況が『三文銭』の歌詞と合うなって。

――今では、約150万回再生というMOROHAのイメージを決定づけるMVになりましたね。

宮地 : 当初、アフロくんは「『三文銭』のラストに語るシーンを個人的にあんまり気に入ってない」って言ってたよね。

アフロ : 多分、言ってた。

宮地 : 俺はあの映像を撮っててメチャクチャ良いぞ、と思ったけど。
MOROHA「三文銭」MV

――どうして気に入らなかったんですか?

アフロ : あの日、『三文銭』のラストで言ったことは、本当に思っていたことだからMVで使われても筋が通っているから良いなと思ったんですけど。当時、あの場で言ったことを冷静に受け止めると、ちょっと気恥ずかしい自分がいたのかもしれない。
アフロ

――なるほど。

アフロ : あそこは完全にフリースタイルだから「もうちょっと上手にまとめられるはずだ」って欲が後から出てくるんですよ。MV作品として残すわけだから、その気持ちは余計に。ライブパフォーマンスっていうよりも、フリースタイルの部分がどういう風に映るんだろうっていう心配がありましたね。

宮地 : それで言うと、『其ノ灯、暮ラシ』はフリースタイルの部分を全カットしてるんですよ。映像だと(生で見るよりも)力が弱いなと思っちゃって。すげえ良いんだけどね。

アフロ : DO IT(山形県で開催されたフェス)は?

宮地 : あ、使ってるわ!

アフロ : あはははは!

宮地 : あれも、そうだけど、曲間でフリースタイルをやってる時とか。そういうのは一切使ってない。

アフロ : 話を戻すと、元々『三文銭』のMVはいわゆるミュージックビデオ然とした方が良いかなと思ったけど……蓋を開けてみれば、あのフリースタイルの部分が良いって、みんなが言ってくれてる訳だから結果はドキュメントにして良かったっすね。

宮地 : 良かった……UKくんのおかげです。

UK : あははは! ありがとうございます。
UK

宮地さん節は、俺が使ってほしくない顔を必ず使うってことかな

――MOROHAと宮地さんはこれまで6本の作品で関わっています。アフロさんとUKさんが感じる、宮地さんらしさって何だと思いますか?

UK : 毎回違うから一概には言えないけど。構成は違っても、宮地さんにしか撮れないカットとか発想はらしさだと思いますね。

アフロ : 本当に全部違うっすよね。それこそ聞きたいのは『恩学』とか『CDショップ(奮い起つCDショップの前で)』を撮っていた時と決定的に何か変わったりしてますか? 例えば『四文銭』と比べると。

宮地 : 『三文銭』、『四文銭』、『其ノ灯、暮ラシ』もあるからドキュメントって手法が目立つんだけど、基本的には映像をくっつけることで、曲の魅力をもっと伝えたいだけ。曲によって考えることも違うし。

アフロ : ああ、なるほど。

宮地 : 『恩学』でアニメを使ったのは、当時はアレが一番良いと思ったんだろうね。
MOROHA「恩学」MV

アフロ : じゃあ、その時々によって判断してるんですね。俺は初期作品に比べて最近の映像は1点突破な感じがするな。最終的には全部伝えたいんだけど、そのためには最初に鋭利な物でグサッと刺して。そこからジワ〜っと広がっていく感じ。

宮地 : 言われたら、そうかも。友達以外でMVを頼まれたのってMOROHAが初めてだったんだよ。最初に仕事をしたのって2011年でしょ? その頃ってSEBASTIAN Xシャムキャッツ、乍東十四雄とか友達のMVしか撮ってなかったんだよね。MOROHAの場合は会ったこともない人からの初めての依頼だったから、当初はいわゆるMVっぽい作品を撮ってやろうとしたんだと思う。
エリザベス宮地

アフロ : 付き合いが長くなってくるから当然だと思うんだけど。後半になるとMOROHAの音楽性に沿った切り口の作品になってきてる気がする。

宮地 : そうだね。もっと曲に寄っていった気がする。

アフロ : そんな気がするっすね。宮地さん節は俺が使ってほしくない顔を必ず使うってことかな。

宮地 : どこか分かんないよ!

アフロ : あはははは。宮地さんが一番良いなと思ってる俺の顔って、俺は一番見たくない顔なんだと思う。

宮地 : それは『其ノ灯、暮ラシ』にも入ってる?

アフロ : うん、入ってると思う。
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MOROHA×エリザベス宮地、ドキュメンタリーの魅力はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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