SHISHAMO『BYE BYE』【単なる女性ボ
ーカルロックバンドとは一味違った「
ロックバンド」という印象】

 歌のある曲で、歌が主に位置づけられている場合イントロは歌への導入部だ。SHISHAMOは女性ボーカルだし女性ボーカルであることが重要なポジションであることは間違いないのだが、この曲を聴けばそんな事実への認識が揺らぐ。イントロの、ギターがカッコいい。特別なフレーズでもないカッティングなのだが、カッコいい。キレがある。もっと聴いていたいと思う。だが、すぐ終わる。もっと聴いていたいのにすぐ終わる。歌が始まる。ギターを弾く手を止める。ドラムとベースのみによる演奏が続き、歌が載る。昨今はギターレスのバンドもよく見かけるようになったし、事実ギターレスでも演奏は成立するものなのに、ベースとドラムだけのバンドには「事情がありまして」感が漂っていることがほとんどだ。しかし、SHISHAMOによるベースとドラムのみの演奏はそれだけで成立している。完全に成立している。曲が進むにつれギターも絡んでいく。だがその音はほとんど鳴っていないようにミックスされていて興味深い。間奏のカッティングでは音量も上げられ存在感を増すが、歌があるところでは音量がグッと下げられる。歌を前に出すためなのか、それとも曲中のメリハリのためなのか。目的はひとつじゃないかもしれなくて、で、結果的にこの引き算的意識によるミックスはとても効果的。単なる女性ボーカルロックバンドとは一味違った「ロックバンド」という印象を強めさせている。カッコいい。約1年前の「夏の恋人」ではボーカル宮崎朝子の歌にばかりスポットが当てられ、MVでも宮崎しか出てこなくて、aikoかこれと思ったし、他の曲でも誰に向かって歌っているのかわからない歌モノ感が前面に出ていたものだが、こうしてロックな曲を聴けば、そんな印象が一瞬にして吹き飛んでしまってとても心地良い。こういうのを、カッコいいと理解するリスナーはどのくらいいるんだろうかとも心配になったりするけれども、それはきっと杞憂に過ぎないはずだ。きっとこういうカッコ良さは伝わるはずだ。

(2017.8.19) (レビュアー:大島栄二)

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