今期のドラマ、1本だけ見るとしたら
TBS『わにとかげぎす』

7月より、各テレビ局で今夏の新ドラマが一斉にスタートしている。今期もたくさんの注目テレビドラマがあり、そのうちのいくつかはすでにかなり話題を呼んでいる。しかし、当たり前のことだが、現代人はとても忙しい。やるべきことがたくさんある上に、夏はフェスも毎週のようにあるし、何なら旅行だってしたいし、楽しいことが目白押し。そんな中、すべてのドラマを見るのはほとんど不可能。じゃあ、限られた時間の中で1本だけ見るとしたら?
その疑問にはこう答えましょう。
今期のドラマ、1本だけ見るとしたらTBS『わにとかげぎす』でしょ!
(TBSドラマ『わにとかげぎす』予告編。有田哲平×本田翼という組み合わせが絶妙)

『わにとかげぎす』とは?
原作は『行け!稲中卓球部』や『僕といっしょ』、『ヒミズ』、『ヒメアノ〜ル』などの古谷実による漫画。2006年から2007年にかけて講談社『ヤングマガジン』に連載された。
古谷実作品は、大きく分けると『行け!稲中卓球部』などのギャグ路線のものと、『ヒミズ』など人間の心の暗い部分に焦点を当てたシリアスものの二種類がある。『わにとかげぎす』は前者の要素を含みつつも、明らかに後者にあたる作品。1話目のほのぼのとした雰囲気は、回を追うごとに予想もつかない方へと振れていく。

Amazonによる内容紹介は以下の通り。

富岡ゆうじ、32歳、独身、職業は深夜の警備員。 つい先週、人生に遭難していることに気がついた。 これはどうにかしなきゃいけない。 タダだからって筋トレばかりしてる場合じゃない。 孤独は罪だ。その罪は償う気持ちはある。 だから‥‥、『友達をください!』 と、流れ星にお願いした夜、手元に届いた一通の呪いの手紙。 犯人は誰ですか? (Amazonページより引用)

また、こちらがTBS公式サイトによる、ドラマ版のあらすじからの抜粋。

深夜のショッピングセンターで警備員をしている富岡(有田哲平)は、個性豊かな新人警備員の花林(賀来賢人)、雨川(吉村界人)に振り回されながらも、彼らと過ごす時間も悪くないと思うように…。 ある日、雨川は理想の女・吉岡(コムアイ)からラブホテルに連れ込まれ「私を助けて!」と懇願される。吉岡は、ヤクザの東金(村上淳)から逃げるため、ある計画を企てそれを雨川に実行させようと言うのだ。その計画とは…、東金の部屋に忍び込み、そこにある金庫を運び出すというもの。雨川は、富岡の心配をよそに、花林を相棒にして計画を進める。 一方、羽田(本田翼)は、鈍感な富岡に猛アタックを開始!!自分の携帯番号を記した紙を富岡に渡し、散歩に連れ出す。ようやく二人の距離が近づいたかに見えた矢先、富岡は羽田を避けるように…。38歳にして初めて感じる胸のドキドキ。富岡と羽田の恋の行方は、いったいどうなる!? (TBS公式:テッペン!水ドラ!!『わにとかげぎす』あらすじより引用)

ワニ?トカゲ?

『わにとかげぎす』って、ちょっと言いにくい。どこで音を切れば良いのかわからない。

「わに/とかげ/ぎす」? それとも「わにと/かげぎす」?

正解は、「わにとかげぎす」でした。

まんまやーん!
て突っ込まれそうだけど、ほんとその通りなんですよ。息継ぎなしでお願いします。「わにとかげぎす」。

これ、実は深海魚の種類のことで、「ワニトカゲギス」目という分類のひとつ。一度カタカナで読むと覚えやすいですね。「ワニトカゲギス」。深海で発光する魚らしい。
画像検索すると結構イカツイ写真が出てくる。
(出展:Wikipedia。2017年8月9日最終アクセス)


つまりはこの「ワニトカゲギス」という深海魚と、本作の主人公(原作では32歳、ドラマでは38歳、恋人ナシ友達ナシ童貞の男)を重ね合わせているわけ。

こういったタイトルのつけ方はいかにも古谷実作品という感じ。
古谷実作品には他にも、『ヒミズ』=日不見:日見ず:トガリネズミ目モグラ科や、『ヒメアノ〜ル』=ヒメ・アノール:体長10cmほどのヒメトカゲ、さらには『シガテラ』=食中毒、などがある。

役者陣が話題

本作で主役を演じるのは、くりいむしちゅーの有田哲平。彼にとって初のドラマ主演となる。
情報ワイド・バライエティ番組『王様のブランチ』の企画の際、スタッフ用に「わにとかげぎす」オリジナルキャップを作ってしまうほど気合いが入っている。
また、『恋仲』や『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』などの熱演も記憶に新しい、近年ドラマで好調の本田翼がちょっと変わったヒロインを演じる。

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さらに謎のホームレス役に光石研、ヤクザ役にムラジュンこと村上淳といったベテラン、同僚役に賀来賢人や吉村界人といった若手が、かなり個性的なキャラクターで出演。
ちなみに吉村界人はぼくのりりっくのぼうよみの『sub/objective』、『CITI』、『Sunrise(re-build)』のMVに出演しているが、この時のイケメンぶりからは想像できないほど、ドラマではヘンなキャラクターを演じている。

その他の出演者が今の音楽シーンの縮図に

本作は第1話の冒頭、主人公の富岡ゆうじを演じる有田哲平が、ラジオを聴きながらスーパーの屋上でランニングするシーンで始まる。富岡はそのラジオ番組を気に入っていていつも聴いているらしい。ラジオMCは、放送時期が夏のせいもあってか、蝉について話している。その蝉に関する、わりと衝撃なうんちく。

「実は37%は童貞のまま死んでいくらしいよ」

この言葉が、富岡にとって痛い言葉となる。なぜなら彼は38歳で童貞だからだ。
どうやら富岡が聴いているラジオ番組は、このドラマ内において、主人公の行く末を暗示したり警告したりするようなポジションらしい。
そして、そのラジオの最後にしれっと付け加えられる一言。

「尾崎世界観でした」

……えっ?
これって尾崎世界観のラジオ番組だったの?
本人役で声出演ってこと?

そう、本作ではクリープハイプの尾崎世界観が、ラジオパーソナリティ尾崎世界観として声で出演しているのだ。
もちろんドラマ内のラジオは架空のラジオだけど、普段から週に一回、月曜日、J-waveでラジオ番組を担当している尾崎にぴったりなキャスティング。そう思うと、ドラマの中と現実の世界が微妙にリンクしてきて、ドラマ自体に不思議なリアリティを与えることになる。

また、非常に重要な役どころで、水曜日のカンパネラからコムアイがドラマ初レギュラー出演。村上淳演じるヤクザの愛人という設定で、物語の鍵を握る(ちなみに尾崎世界観が月曜日に担当しているJ-waveのラジオ番組を水曜日に担当するのが、水曜日のカンパネラ)。

コムアイにとって芝居の仕事はこれが初めてだが、彼女の大胆な演技は製作陣を驚かすほどで、当初の予定より出演シーンが大幅に増えたとのこと。3話の終わりには、かなりセクシーなシーンも……。
(コムアイによる放送前スペシャルコメント)

さらに第一話にはラッパーのDOTAMAとACEがヤミ金業者役で出演。特に、メイクで顔に傷をつけて迫力あるニラミを効かせたDOTAMAは印象的だった。

このように、エレクトロニカやポップハウス、フリースタイルラップにロックと、今の音楽シーンの縮図のようなジャンル構成で、しかもその中のトップランカーたちが集結。原作はまったく音楽に焦点を当てた作品ではなかったが、ドラマ版にはこれほど多彩で多才なミュージシャンが集まった。『わにとかげぎす』を見ていれば、現在の日本の音楽がある程度見えてくる……かも?

ファッション、特にTシャツに注目

本田翼が出ている以上、彼女のファッションは注目すべきだけれど、きっとそれは別のメディアがやってくれると思うので、ミーティア的には有田哲平の、めまぐるしく着替えまくるロックTシャツに注目。

有田演じる富岡ゆうじは、第一話からガンズ&ローゼズ、ヴァン・ヘイレン、ニルヴァーナ、ジミ・ヘンドリックス、モーターヘッドなど、バンドTシャツしか持ってないんじゃないか?と思うほどのロックTコレクションを披露。

(セックス・ピストルズのTシャツにSubcietyのエンブレムシャツ)
(ヴァン・ヘイレンのTシャツ)
(モーターヘッドのTシャツ)
(ACDCのTシャツ)
という感じで、ほぼロックTで統一。
愛聴しているのは尾崎世界観のラジオ番組だし、部屋にはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのポスターが貼ってあるし、ドラマ版の富岡ゆうじが相当なロック好きだということがわかる。

もしかすると、ドラマ版『わにとかげぎす』は、音楽をめぐるドラマなのかも?

忙しい人にもオススメ

そして最後のオススメポイントは、ずばり、短いこと(笑)。

水曜深夜枠で、だいたい20分程度。これなら忙しい人でもサクッと見られる。

深夜は眠いな〜という人も大丈夫。翌日から一週間は、TBSオンデマンドで最新話を無料で見ることが可能。プレミアム見放題プランに入れば全話を視聴可能。
通勤中、昼休み、ちょっとした空き時間なんかに楽しんでもらえたら◎

まとめ

・そもそも原作が面白い
・役者陣が豪華
・現在の音楽シーンを代表するミュージシャンが特徴的な役で出演
・有田哲平のロックTコレクション
・短いのでサクッと見られる

以上の理由から、今期のドラマ、1本だけ見るとしたらTBS『わにとかげぎす』で決まり!!
(3分でわかる!『わにとかげぎす』)


作品情報

出演:有田哲平(くりぃむしちゅー)、本田 翼、賀来賢人、吉村界人、コムアイ(水曜日のカンパネラ)、DOTAMA、福山翔大、ACE、尾崎世界観(クリープハイプ、声の出演)、淵上泰史、村上 淳、光石 研
脚本:高橋泉
音楽:眞鍋昭大
主題歌:TOKIO「クモ」
プロデュース:峠田 浩
演出:坪井敏雄、熊坂 出、泉 正英、松木 彩
TBSドラマ『わにとかげぎす』公式サイト
公式twitter
公式Instagram


書籍情報

著者:古谷実
出版社:講談社
一巻試し読み


Text_Sotaro Yamada

今期のドラマ、1本だけ見るとしたらTBS『わにとかげぎす』はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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