【特集:公共の場での授乳問題(4)】
「自分の幸せをガマンしないで!」マ
マも社会も笑顔になれる、授乳プレッ
シャー解決法

「この問題は解決できる!」と断言する女性がいます。自ら「公共の場での授乳」で辛い経験をし、日本初の授乳服専門ブランド「モーハウス」を起業して20年。育児と社会の共存を目指すNPO法人「子連れスタイル推進協会」代表も務める光畑由佳さんに聞きました。

「この問題は解決できる!」と断言する女性がいます。
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自ら「公共の場での授乳」で辛い経験をし、日本初の授乳服専門ブランド「モーハウス」を起業して20年。育児と社会の共存を目指すNPO法人「子連れスタイル推進協会」代表も務める光畑由佳さんに聞きました。
「【特集:公共の場での授乳問題(3)】ママたちは「気遣って欲しい」なんて思ってない!? 本音から生まれた超簡単解決法」に続く、インタビュー後編です。
「授乳服」はこんなにお役立ち!でもそのアピールが困難を極めるワケ光畑:私は20年来、授乳服の開発に携わりながら「公共の場での授乳」問題に関わり続けてきたわけですが、生産者としては「授乳服」を“バレたら負け”だと思って作っています。
つまり「すぐそばにいる人にも、ママが授乳中だとバレない」ように。自分の苦い経験から、これは絶対に譲れません。
でもそれが却って、世に広めてゆくためには妨げとなることもあるようで。
というのも、これだけ「公共の場での授乳」問題がヒートアップして、ありがたいことにあちこちで授乳服メーカーの先駆けとしてモーハウスを取り上げていただいているにも関わらず、じゃあ「授乳服」がバカ売れしているかというと、残念ながらそうではないのですね。
それで、さまざまな分野の方々からご指摘を受けたその理由というのが、メディア等でご紹介いただく「授乳服」を着用しての授乳シーンが、まったく「授乳中」に見えず、抱っこしているようにしか見えないために“新聞の育児欄によく載る親子写真”としてスルーされてしまっているらしい……と。
写真のわきの細かな説明まで読んでいただかないことには「エッ授乳中だったの?コレならいいね!」という反応にまでたどり着けないから、だというのです。
モーハウスの本社は茨城県つくば市にあるのですが、茨城の良さをご紹介するイベントとして、銀座で「授乳パレード」をしたこともあります。
でもこの時も、傍からはただ「ママが赤ちゃんを抱っこして歩いている」だけにしか見えなくて、これではいかん!ということで、急遽「いま授乳中です」という看板を作成して、後半はそれを掲げながら歩いたなんてこともありました。
つまり機能を追求すればするほど、パッと見でお伝えするのが難しくなるというか。販売者としてはなかなか、マーケティングとして厳しいところがあるんですよ……世のママたちのため、赤ちゃんたちのために、我々もアプローチ方法を考えなければ!とあらためて感じているところです。
「公共の場での授乳」問題は解決できる!ママは自分の幸せをガマンしないで!――では授乳服が“当たり前のママグッズ”になっていないもうひとつの理由、ママを取り巻く社会問題というのは何でしょうか?
光畑:ママが、自分のためにお金を使わなさ過ぎる、ということです。
以前のインタビュー(「ママ、頑張りすぎてない!? 子どもが幸せになるために大事な「ラクする子育て法」」)でもお話ししましたが、子どものミルク代なら躊躇なく出す金額でも、ママ自身が不安やストレスから解放されるためには使わない。なぜなら常に、
「自分にお金を使うなんて、もったいない」
「できるだけ、安いモノを選ばなきゃ」
「私は、我慢すればいい」
と思っているから。
社会が、ママに「ガマン」を求めているから、ともいえるかもしれません。悲しいことに自分の幸せは後回しにして、我慢ばかりしてしまうママが、圧倒的に多いんですよ。
ママの幸せや笑顔こそが、赤ちゃんの幸せと笑顔に直結します。だから、だからこそ!
ママも安心してリラックスできて、赤ちゃんも好きな時に満足できるだけのおっぱいが飲めて、周りにも迷惑を掛けずにお出かけが楽しめるように!
モーハウスの商品でなくても構いませんから(笑)いつでもどこでも“自由”に授乳できる「授乳服」を、ぜひ活用していただきたいな、と思いますね。
私たちは専門メーカーとして「モーハウスの10か条」に基づく製品作りをしているのですが、そこまで求めなくとも最低限「胸やお腹を露出しないで済むこと」と「すぐ(1~2秒で)授乳できること」、この2点のみ押さえておけば、便利で高機能な「授乳服」にきっと巡り合えるはず。
そうしたらママと赤ちゃんの生活が、一変しますよ!
授乳問題の「解決策」って?
――光畑さんが「解決策はある!」と断言されるのは、そういうことだったのですね。ではあらためて「公共の場での授乳」に悩むママたちへ、コメントをいただけますか。
光畑:私は、この20年余りずっと「公共の場での授乳」に向き合ってきました。とりわけ今回について、これまで以上に論争が大きく発展したのは、近年、母乳育児をしているママが増えて、当事者の数自体が増えたから、という背景もあるのかもしれません。
いずれにしても老若男女を問わず自分の立場と主張をぶつけ合うバトルは、いつも同じような過程をたどってきたように思います。
社会は、良くも悪くも、この点についてはあまり変わっていないのかもしれませんね。
ただ、ここまで大なり小なりバッシングをされながらも「公共の場での授乳」が完全にシャットアウトされずにいるのは、裏を返せば、ママたちが恐れているよりずっと、社会は“寛大”だから、とも言えると思います。
いや、正確にいえば、思うところはあるけれどもできるだけ“寛大”であろうとしているのではないでしょうか。だから、必要以上に怖がることはないし、萎縮することもないのです。
そしてこの問題には「解決策がある」ということを、ひとりでも多くのママに知って欲しいし、体感してもらいたい。
たとえ「赤ちゃんは泣くのが仕事」と考えていたとしても、公共の場で「泣いて欲しい」なんて願うママはいません。
ママになったから「赤ちゃんと私に気遣ってよ!」なんて、そんな風に感じるようになるわけではない。周りにイヤな顔をされないで済むのなら、誰だってそうしたいでしょう?ママだって、本当のところは同じなんです。
そうであれば、ママも赤ちゃんも、そして周りの人も、みんながハッピーになる解決策を試してみませんか。
ママも社会も笑顔になれる!Nursing Freedom(授乳の自由)を目指して光畑:外での授乳にプレッシャーを感じなくなると、ママ自身が周りに神経を使っていた分、赤ちゃんの顔や仕草をよく見てあげられるようになります。
気持ちがピリピリしなくて済むので、心に余裕ができるというのでしょうか。「赤ちゃんが、もっと可愛くなりました」なんてコメントをいただくこともあって、こちらもうれしくなってしまいますね。
「公共の場での授乳」については、根っこから解決できるソリューション(解決策)があります。解決策は、あるんです!ママたちにはぜひ「授乳服」を上手に活用して、気軽にどんどん、お出かけをしていただきたいですね。
私たちも授乳服ブランドとして、ママたちを応援できるような商品をご提案してゆくと同時に、子連れスタイル推進協会として、子どもと一緒に社会に出られる機会を「お出かけ」にしても、さらには「仕事」にしても、積極的に作ってゆきたいと思っています。
モーハウスでもスタッフのおよそ4割が“子連れ”で出勤して、オフィスやショップで授乳しながら、大きな戦力として働いています。
広がれ!ママの活躍の場!
この「ワークライフミックス」のスタイルは、昔は店番にしても農作業にしても赤ちゃんを連れてゆくのが当たり前だったわけですから、古くて新しい取り組みなのですけれども、“子連れ”の力を企業経営に効果的に活かす選択肢のひとつとして、これからも広げてゆきたいですね。
※モーハウスの「子連れ出勤」についてはコチラのインタビューをご覧ください。「復職後のおっぱい、無理にやめなくても大丈夫! 「母乳育児」を続ける大きなメリット|光畑由佳さんインタビュー(4)」
――「公共の場での授乳」問題、解決できそうな気がしてきました!「授乳服」って、すごいですね。
光畑:最後の最後にごめんなさい。でも、それは違います。
すごいのは、なんといっても……「ママ自身の力」なのです。
こうやって赤ちゃんをサッと安心させることができるのは、抱っこやおっぱいという「ママ」自身の力。授乳服はそれを、今の世の中に、社会にフィットさせるよう、ほんの少しお手伝いしているに過ぎません。
授乳服を「道」に例えてくれた人がいます。国や自治体が地方と地方を道路でつなぎ、人や物の流れが生まれ、そこから地域社会全体が拡がってゆくように、授乳服がママと社会をつなぐ「道」になるのだと。
授乳服を着ることでママは「道」を得て、「“育児の世界”から“公共の場”へ出かけていって授乳をする」ようになり、社会が徐々に広がって「授乳をし、育児をするその場が社会の一部、つまり“公共の場”になる」のだと。
これも「道」や、ましてや国や自治体がすごいワケではありませんよね(笑)。地方社会と地方社会が分断されてしまっているから、それぞれの力を活かし合う社会ができていないだけですよね。
「“ママ”と“社会”」、「“育児の世界”と“公共の場”」の間の壁がなくなることで、ママは目に見えない“ガラスの天井”を打ち破って“自由”になれるし、社会も「ママの力」を活かすことができる。私たちは、その橋渡しをしたいと思っています。
「Nursing Freedom(授乳の自由)」によって、ひとりでも多くのママと赤ちゃんが笑顔になれますように!そしてママたちの活躍の場が、ずっとずっと広がりますように!!!
【記事企画&取材協力】光畑 由佳(みつはた ゆか)氏 プロフィール
子連れスタイルで子育てと社会を結びつけ、多様な生き方や育て方、働き方を提案するNPO法人「子連れスタイル推進協会」代表理事&授乳服ブランド「モーハウス」代表。産後の新しいライフスタイルを提案し、授乳服の存在を国内に広めてきたパイオニアとして知られる。
社会と授乳、公共の場での授乳についても、自社で実践する「子連れワークスタイル」が国内外から注目され、女性のチャレンジ賞など受賞歴多数。
「暮らしの質」向上検討会など政府関係の有識者会議委員を歴任するほか、2014年に北京で、2016年にペルーで開催された「APEC女性と経済フォーラム」にも参加。内閣府男女共同参画担当大臣表彰(女性のチャレンジ賞)審査員。中小企業経営支援分科会委員。茨城県ユニセフ協会評議員。茨城県行財政改革推進懇談会委員。つくば市行政経営懇談会委員。茨城大学社会連携センター特命教授。筑波大学大学院非常勤講師。
著書に『働くママが日本を救う! ~「子連れ出勤」という就業スタイル~ (マイコミ新書)』。

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