【詳細レポート】フルカワユタカ ×
ASPARAGUS、「ライブしながらちょっ
とずつ和解交渉が (笑)」

DOPING PANDAフルカワユタカ主催による2マン企画<フルカワユタカ presents 「Play With」~with Melancholy A ~>が7月28日、新宿LOFTにてASPARAGUSを迎えて行われた。
この2マン企画は、2016年にBase Ball Bearthe band apart、2017年6月4日にBenthamを迎えた「Play With」シリーズとして開催されているもの。2017年第2弾は、フルカワたっての希望でASPARAGUSとの対バンが実現した。「お互い知ってはいたが、実はそれほど交流がなかった」どころか、若干の誤解を生んでいた両者の関係が、この日のライブを経て“和解”へと至る……そんな笑い交じりのドラマも見せた一夜のレポートをお届けしたい。
開演予定時刻にSEが鳴り響くと、会場のあちこちからは笑い声交じりの歓声が上がった。登場SE「ヴァ・ジャイナ!!」は、同ライブの事前に“【連載特別編】フルカワユタカと渡邊忍 [ASPARAGUS] はこう語った -net radio-”で公開された“作詞・原案:渡邊忍/作曲:フルカワユタカ”による初共作曲だ。net radio収録中の過度な下ネタをもとにフルカワが楽曲としてまとめ上げたものであり、同番組のオープニング/エンディングテーマとして起用されたもの。また、この日のライブでは、随所でこのnet radioで語られた内容をネタにMCが展開されていたので、併せてチェックを。
「Analog Signal Processing」から幕を開けたASPARAGUSのライブは、初っ端からフルスロットル。豪快にギターを鳴らしながらメロディアスな旋律に言葉を乗せる渡邊 忍、原 直央が繰り出すアタッキーにして流麗なベースフレーズ、それらの演奏を支える一瀬正和のタイトなドラムプレイは、焦燥感すら感じさせるスリルを持つ。さらに、ダンサンブルな「JERK」、豪快なキメでバンドの一体感の高さを感じさせた「SHALL WE DANCE?」まで一気に畳みかけた。パワーポップもパンクもガレージロックも、すべてを飲み込んで振り切れたサウンドには、2017年結成15周年を迎えたバンドならではの逞しさがある。
「はじめまして、ASPARAGUSです! ついこの前までフルカワとあんまり仲良くなかったんですけど……あははは!」──渡邊忍
との渡邊のMCにフロアから笑いが。そして、ステージ後方へ振り返り、前述のnet radioでの“一瀬とフルカワの溝”に触れ、「なぜ嫌ってるの?」と単刀直入に訊いたところ、その答えは「出で立ちじゃね?(笑)」とのこと。しかし、「卑屈でトガったところが自分と似てるから敢えて避けてたけど、話してみたらイイやつ(笑)」と続けた。ちなみに、この日の一瀬はメガネスタイルで、「ニセフルカワ」と渡邊からイジられる場面も。
中盤では、5月のワンマンツアー会場発売となった新曲「小さな一歩」を披露。日本語詞を引き立たせる音数の少ないアレンジが秀逸だ。また、渡邊はレスポールスペシャルやストラトキャスターなど、曲ごとにギターを持ち替えたクランチサウンドが実に表情豊か。そうした細やかなサウンドメイクで、3ピースの単調さを全く感じさせないのがASPARAGUSのライブの魅力でもある。さらにはアコースティックギターだ。タッピングによるオリエンタルなベースリフから、アコギの音色も爽やかに始まった「FAR AWAY」は徐々に熱量を上げ、続く「LOST SHEPHERD」の無国籍感漂う幻想的なイントロへ。ラテンのリズムに乗せてアコギを掻き鳴らしながら情熱的に盛り上げた同曲の後半では渡邊がフロアに降りてオーディエンスを煽る。対照的に、静かなアルペジオに乗せたミディアムチューン「BLUE人」では甘い歌声による言葉の1つ1つを噛みしめるように聴き入る会場が印象的なものとなった。
「楽しいですね! フルカワと僕ら、ここまで仲良くなるまで何年も年月が経ちました。まあ一瀬に関してはやっと今日、ライブしながらちょっとずつ和解交渉が始まっています(笑)」──渡邊 忍
そんなMCから、オーディエンスが拳を突き上げて一体となったメロディアスなロックチューン「DIDDY-BOP」を挟み、最後のMCでは渡邊がメンバーにもまだ話していないという、とっておきのエピソードを披露して爆笑をさらった。
「奇跡ってあるんだな、っていう話なんだけど。この前、ギターケースを持ってタクシーに乗ったら、運転手さんが「バンドで飯食ったりしているんですか?」って話かけてきて。「まあ飯っていうか、ラーメン2、3杯食べれればいいかなあ~みたいな感じで」とか言ってたの(笑)。そしたら、何年か前にミュージシャンを乗せて、それが「ヘヴィメタルバンドのASPARAGUSのドラムの人で」って(笑)」──渡邊 忍
以前の沖縄ライブ当日、寝坊した一瀬が羽田まで乗車したというタクシーに、偶然、渡邊が乗ったのだ。しかし運転手が「あんまり有名なバンドじゃないらしいね」と言ったものだから、渡邊もつい「いやあ、俺も聞いたことないバンドですね」と答えてしまったというオチに場内大爆笑。ライブはMCの勢いもそのままに、「gn8」「FALLIN’ DOWN」と一気に畳みかけ、ダイバーも出現する盛り上がり。ライブハウスで鍛え上げられた揺るぎない演奏と最高にエンターテイメントなステージングでフルカワへとバトンを渡した。
約3年ぶりのフルアルバム『And I’m a Rock Star』を1月にリリースした後、東名阪ツアー、イベントライブ出演、LOW IQ 01にサポートギタリスト参加など、フルカワユタカの2017年は実に精力的だ。そして迎えたこの日のライブは、ギターに新井弘毅、ベースに4106 (SCAFULLKING / BRAZILIANSIZE / ERSKIN)、ドラムに堀之内大介 (Base Ball Bear)という、スペシャルな編成によるもの。フルカワは2016年、Base Ball Bearのツアーにサポートギタリストとして参加しており、堀之内との共演はBase Ball Bearが出演した2016年の2マン企画<play with B>以来、1年ぶりとなる。
ライブはソロ1作目の1曲目「too young to die」からスタート。強力な布陣によるバンドサウンドは、思いのほか軽やかで、極力無駄をそぎ落としたシンプルなビートがフルカワのボーカルをより一層際立たせるなど、歌心に寄り添ったもの。オーディエンスとの大合唱になったコーラスがライブを加速させる。『And I’m a Rock Star』からの「next to you」では、「いくぜ、いくぜ! I’m a Rock Star!」と叫んでからギターソロをステージ前方で披露。続くDOPING PANDAの「GAME」のイントロで狂暴なまでのスラップが炸裂すると性急なリズムに会場が高揚、「Say、Rock Star!」のコール&レスポンスで一体感に包まれた。
「いつもだったらここで、「愛してるぜー、新宿!」なんて始めるんですけど、今日は先輩がいっぱいいるので、ゴツンとやられますから(笑)」──フルカワユタカ
と会場の笑いを誘う。事実、この日のライブにはLOW IQ 01をはじめ、重鎮たちの姿も会場に。そしてステージは、“君を傷つけたボクのそばにいて”と歌うミディアムチューン「ボクは少しズルくなる」、「最近やってなかった曲」との紹介の後に披露された『emotion』のラストを飾るメッセージソング「farewell」といったナンバーを披露。このセクションではフルカワの人間臭さやジェントルな部分を感じさせる場面となった。
しかし、続くMCで、先ほど爆笑をさらった渡邊のタクシーネタを「落語のようにカバー」しようとするも、観客の雰囲気を見て途中で挫折。そんな愛らしい姿を見せつつ、ユーモラスなMCとノリの良い楽曲による緩急豊かなステージングには、長年音楽シーンで生き抜いてきたミュージシャンのタフさを感じることができた。
「「Play With」は“ASPARAGUSと”という意味もあるけど、“おまえらと”でもあるんだから、盛り上がって行こう!」──フルカワユタカ
こう呼びかけると、後半戦はアッパーチューン「I don't wanna dance」からスタート。重い4つ打ちビートが、サビのボーカルフレーズと呼応する小気味良いギターリフをより立体的に浮き立たせ、フロアの隅々までダンス空間と変貌させていく。さらに、「踊るぞ踊るぞ!」との掛け声で始まった「fusion」では新井とユニゾンでタッピングソロを響かせる。とはいえ、単なるテクを見せつけるようなものではなく、続くダンスロック「Beast」へ橋渡しするインターとして構成されているところが心憎い。カオスに包まれるフロアに向かって、「愛してるぜー!」と直情的に叫ぶフルカワのカリスマ性には、先ほどまでのゆるいムードは微塵もない。ボーカリストとしてギタリストとしてフロントマンとしての魅力を存分に発揮して、ラストの「サバク」まで一気に駆け抜けた。
アンコールでは、フルカワとメガネ姿の渡邊が登場。さらにそこへ、「誤解を解こう」と一瀬がパーカッションとして呼び出され、3人でアコースティックアレンジによる山崎まさよしの「セロリ」のカバーへ。その曲紹介で「パセリ」とボケるフルカワに、困った表情を浮かべながら「そういうとこだよ?」とツッコむ渡邊のやりとりに、またも場内爆笑。
そして演奏された「セロリ」では、その一節を渡邊が“つまりは単純にフルカワのこと好きなのさ”と歌詞をチェンジしたものだから客席からの歓声が止まない。思わずフルカワも後ろを向いて照れ笑いだ。2番ではフルカワ自ら観客に「一緒に」と合唱を求め、“フルカワが好きなのさ”との大合唱が沸き上がり、見事にフルカワユタカとASPARAGUSの完全和解が成立した。その証に3人で握手する姿をオーディエンスに撮影させ、「この和解は次のツアーに繋がる」との言葉を残して、渡邊と一瀬がステージを降りた。
これに対して「普通に……嬉しい!」と感想を述べるフルカワ。アンコールは再びフルカワバンドの面々が登場して新曲が披露された。オリエンタルな雰囲気を感じさせながらも明るくラウドな日本語歌詞による新曲は、フルカワユタカの新たな側面を感じさせるもの。ラストは「candy house」で盛り上がり、大団円を迎えた。
「愛してるぜ、普通に!」と叫んだフルカワは、なんとも心温まる多幸感を余韻としてステージを降りた。なお、同公演のMCでは、11月に下北沢シェルターでの3Daysライヴを行うこと、2018年1月28日に新木場コーストにて自身主催イベント<フルカワユタカ 5×20 (ファイヴ バイ トゥエンティ)>を開催することも発表となっている。
取材・文◎岡本貴之
撮影◎浜野カズシ
■<フルカワユタカ presents 「Play With」~with Melancholy A ~>
2017年7月28日(金)新宿LOFTセットリスト
【ASPARAGUS】
01.Analog Signal Processing
02.JERK
03.SHALL WE DANCE?
04.小さな一歩
05.MAY BE OR MAY BE NOT
06.FAR AWAY
07.LOST SHEPHERD
08.BLUE人
09.DIDDY-BOP
10.gn8
11.FALLIN’ DOWN
【フルカワユタカ】
01.too young to die
02.next to you
03.GAME
04.ボクは少しズルくなる
05.lime light
06.farewell
07.walk around
08.I don't wanna dance
09.fusion
10.Beast
12.Transient Happiness
13.サバク
encore
en1.セロリ(山崎まさよしカバー) with 渡邊 忍 / 一瀬正和
en2.新曲
en3.candy house
■<フルカワユタカ SHELTER 3days>
11月28日(火)下北沢 SHELTER「バック・トゥ・ザ・インディーズ」
11月29日(水)下北沢 SHELTER「フルカワユタカはこう弾き語った」
11月30日(木)下北沢 SHELTER「無限大ダンスタイム’17」
▼チケット
全公演 前売り¥3,500(税込、D別)
※3日間連続ご来場のお客様にはプレゼントあり
【オフィシャルHP先行(先着)】
7月28日(金)22:00~8月16日(水)23:59
http://eplus.jp/rockstar17hp/ (PC・携帯・スマホ)
※イープラスの会員登録(無料)が必要です。
※受付に関する詳細は受付画面にてご確認下さい。
※先着制の受付になりますので、予定枚数に達し次第販売終了となります。
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00~19:00)
■<フルカワユタカ 5×20 (ファイヴ バイ トゥエンティ)>
2018年1月28日(日)新木場コースト
※出演者を含む詳細は後日発表
■6thフルアルバム『ASPARAGUS』
2017年9月27日(水)発売
3P3B-81 2,800円+税
発売元:3P3B Ltd. 販売元:PCI MUSIC
全12曲収録予定
■<ASPARAGUS TOUR>
2017年10月30日(月)宮城・石巻BLUE RESISTANCE
2017年11月05日(日)富山 MAIRO
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD
2017年11月06日(月)新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD
2017年11月10日(金)宮城・仙台 enn 2nd
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD / フルカワユタカ
2017年11月11日(土)岩手・大船渡 KESEN ROCK FREAKS
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD / the band apart / フルカワユタカ
2017年11月12日(日)岩手・宮古 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD / the band apart / フルカワユタカ
2017年11月14日(火)北海道・札幌 BESSIE HALL
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD / フルカワユタカ
2017年11月18日(土)奈良 NEVER LAND
2017年11月19日(日)兵庫・神戸 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
2017年11月26日(日)静岡 UMBER
2017年12月01日(金)東京・新代田 FEVER
2017年12月08日(金)神奈川・横浜 F.A.D YOKOHAMA
2018年01月13日(土)栃木・宇都宮 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
2018年01月19日(金)千葉 LOOK
2018年01月24日(水)広島・福山 Cable
2018年01月25日(木)愛媛・松山 Double-u studio
2018年01月27日(土)福岡 Queblick
2018年01月28日(日)鹿児島 SR HALL
2018年02月24日(土)愛知・名古屋 APOLLO BASE
2018年02月25日(日)大阪・心斎橋 Live House PANGEA
2018年03月03日(土)東京・渋谷 CLUB QUATTRO
※ゲスト未定公演は後日改めて発表

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