【インタビュー】KENZI (かまいたち
)、ラストライブを語る「美学に反し
て活動するのは嘘になる」

かまいたちが2017年8月5日、赤坂BLITZにて<最終公演「THE END」>を開催する。同公演はそのタイトルが示すとおり、バンドの完全終焉を意味するラストライブとなるものだ。
1985年に結成したかまいたちは“はちゃめちゃ狂”を掲げた型破りな活動でヴィジュアル系黎明期を牽引し、'92年9月6日に解散。それから約23年後の2015年、KENZI(Dr)の活動30周年記念を機会にオリジナルメンバーを含む面子にて復活を果たした。同年10月開催の新宿BLAZE公演は当初一夜限りを予定していたが、その後も<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016>出演や、その際の新宿ロフトワンマン発表、地元・京都MUSEでの26年ぶり凱旋ワンマンなど、現在まで旋風を巻き起こし続けている。
BARKSは、赤坂BLITZ公演が間近に迫った7月下旬、CRAZY DANGER NANCY KENchanことKENZIに、バンド復活のこと、<VISUAL JAPAN SUMMIT>やV系シーンの過去と現在、そしてかまいたちというバンドの本質と<最終公演「THE END」>についてじっくりと話を訊いた。“知らないうちに、皮膚がカマで割かれたような切り傷ができる現象”とも、“それを引き起こす妖怪”ともいわれる“かまいたち”のごとく、KENZIの発言は痛快にバンドシーンを斬り、<最終公演「THE END」>でつむじ風を呼び込む意欲に満ちている。
   ◆   ◆   ◆
■最後に神様からのプレゼントやな
■<VISUAL JAPAN SUMMIT>に感謝です
──8月5日に赤坂ブリッツで、かまいたちの最後のライブ<THE END>を行ないます。2015年の復活以降、何度かステージも行なっていましたが、正式に解散を決めたその理由は?
KENZI (CRAZY DANGER NANCY KENchan):いや、すでに'92年9月6日にかまいたちは解散しているんですよ。でも、僕のロック30周年のイベント(<KENZI 30th Anniversary Project 元祖ビジュアル系かまいたちKENZI伝説>/2015年10月12日)を新宿BLAZEでやるとき、かまいたちとしてのライブもやりたいなと思って、SCEANAと山ちゃん(クレクレMOGWAI)に声を掛けたら、「KENchanのお祝いやったらいいよ」って言ってくれてね。
──CEANA、クレクレMOGWAI、CRAZY DANGER NANCY KENchanといった黄金期のメンバー3人にゲストギタリストとして屍忌蛇が参加しての復活ですね。
KENZI:その1年後に、<VISUAL JAPAN SUMMIT>(2016年10月14日)へ「かまいたち、出演して」とお話をいただいて。どちらも20分ぐらいのステージだったんで、ケジメで、ワンマンで終わろうと思ったんです。それですぐに新宿ロフト(<独罰視姦二〇一七>2017年1月14日)をブッキングして、僕らは京都出身のバンドやから地元(追加公演<狂乱舞踏二〇一七>2017年4月1日@京都MUSE)でもやろうって。ただロフトはキャパが550人で、ソールドアウトで関係者も入れないような状況だったんですね。それなら最後の最後にでかいところでやろうかって、わりとポンポンと決まっていったんです。
▲KENZI (Dr)
──なるほど。
KENZI:当時の解散を振り返ると、みんなに悪いって気持ちがあって。年齢を重ねれば重ねるほど、そういう思いにもなるじゃないですか。SCEANAともよく話をしているんやけど、「あのときは若かったな。お互いにごめんね」って感じで(笑)。この前も音楽誌の取材をやらせてもらったんやけど、カメラマンがかまいたちのファンだった子で。「最後のツアーで名古屋に来たとき、メンバーはバラバラにタクシーで会場入りしましたね」とか、「SCEANAさんとKENZIさんが仲悪かったという噂は本当ですか?」とか、もう単刀直入に質問されて(笑)。まあ、あの頃はそんな感じやったんですよ。だから今、最後にこうやって解散ライブをできることは、メンバーみんなとも、いろんな人達のバックアップがあってこそやなって、ありがたいし、光栄やなと話をしてますよ。
──つまり、'92年以降から抱え続けてきた積年の思いから形になったのが、ここ最近のライブ活動だと。2015年にKENchanの<ロック30周年>というライブで、かまいたちが一夜限りの復活をしたとき、メンバーでいろんな話も膨らんだんですか?
KENZI:いや、あのときは自分のお祝いとして、そのステージだけでかまいたちのライブもやったということです。ただ、その後に<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016>に誘われて、SCEANAと山ちゃんに話をしたら、「エクスタシー・レコードのみんなにもお世話になったし、出るのはいいんじゃないかな」って。だから、その話が来るまでの1年間は、またやろうとか、そういう話もメンバーの中から出ることはなくて。もし<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016>に誘われなかったら、2017年に入ってからのかまいたちとしてのライブや、8月5日の<最終公演「THE END」>もなかったと思いますよ。メンバーで言ってますよ、最後に神様からのプレゼントやなって。ほんまに<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016>に感謝ですね。あのステージで今後のことも発表したくて、急いで、2017年1月の新宿ロフトをブッキングしましたから。
■ステージに立ったときのパワー
■そこしか生きていることを感じられない
──その<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016>では、’80年代から活動していたバンド達はもちろん、かまいたち解散後に誕生した若手バンドとのコミュニケーションもあったと思うんですよ。KENchanから見て、若手バンドや現在のヴィジュアル系シーンはどういうふうに感じますか?
KENZI:<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016>の当日はわりと忙しかったんですよ。写真チェックとか、YOSHIKI公式チャンネルとかTOSHI公式チャンネルとかも現場で出演してたりして。あとBY-SEXUALと同じ楽屋だったんで、すごく同窓会みたいな感じで楽しくて。デビューしたのもほぼ同時期のバンドなんでね。未だにBY-SEXUALのメンバーとも交流は深いし。中打ち(楽屋打ち上げ)でYOSHIKIも「KENchan、身体は大丈夫?」とか来て話をしてくれて。ほんまやったらこっちから行かなきゃいけないんですけど、みんな、向こうから声を掛けて来てくれたんですよ。嬉しかったですね。あい変わらず、SEXX GEORGE(LADIESROOM)が現場を仕切ってるのも(笑)。
▲<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016>10月14日(金)@千葉・幕張メッセ9-11ホール/かまいたち 画像5点
──ははは。変わらない感じ?
KENZI:そう。でね、僕は新宿の歌舞伎町でSTAR CAFEというお店をやっているんで、いろんなバンドの若い子らも来てくれるし。THE DEAD P☆P STARSで若い子らとの交流もあるんですよ。でも、昔はバンド=不良やったんですね。一般社会がイヤでバンドをやっていたところも大きいんです。ところが今のバンドマンは不良じゃない。オタクなんですよ。昔はバンドマン同士で殴り合っても、熱血な感じで、最後にはお互いに「よっしゃ!」みたいなノリやったじゃないですか。今そんなことやったら訴えられるし、親も出てきそうやし(笑)。あとパソコンで書かれる。今、僕はアイドルのプロデュースとかもやっているんですよ。その視点から見ると、今はヴィジュアル系バンドがアイドルに向かっていって、アイドルがヴィジュアル系バンドに向かっているような感じもあって。歌舞伎町で店やっているから余計に思うんですけど、ヴィジュアル系バンドはホストですね。写真の映り方もそんなノリじゃないですか。それが時代といえば時代なんやろうけど、今のヴィジュアル系バンドはアイドルかホストみたいな感じ。その手の話をすると、話せないことも書けないこともいっぱいありますよ(笑)。
──もともとKENchanがバンドを始めたのは?
KENZI:自由になりたかった。それがイコールでロックすること。僕は遠藤ミチロウさんに出会って、人生が180度変わったんで。ザ・スターリンが大好きやし、ミチロウさんは僕にとって神みたいなもんなんで。あの人に会わなかったら、親の仕事を継いで、普通に生活してたと思います。でも僕はロックに出会って自分が強くなりました。ザ・スターリンもやった西部講堂でかまいたちがライブをしたときは、すごく嬉しかったし。パンク雑誌『DOLL』に載せてもらったときもムチャ嬉しくて、今も宝物として取ってありますよ。
▲SCEANA (Vo)
──でも、かまいたち自体は、決してザ・スターリンの遺伝子を強く感じさせるバンドではなかったですよね。自分達で“はちゃめちゃ狂”と名乗り、映画『ザ・ウォリアーズ』に出てくるベースボール・フューリーズのような格好でライブハウスに乗り込んだり、どこか生粋のパンクスとは違った雰囲気や楽しさを持ってました。
KENZI:そうですね。僕は映画とかプロレスとか、いいものは何でも採り入れてたんですよ。それで人を楽しませるとか、人が笑ってくれたらいいなって。そこからのスタートだったんで、僕にとってのバンドは。それでワケ分からん格好をしたり、ビックリさせるようなライブもやったり。歌舞伎のカツラをかぶってブリーフ姿で出ていったこともあるし。“いい曲を作ろう”とか“聴かせてやろう”って音楽的なことよりも、“今度はこんなことしてお客さんを楽しませよう”って。ヘヴィメタルとかのうまい人達からしたら、僕らはご法度なことばっかりやってた。だから、かまいたちはメンバー全員、遊びの延長でメジャーまで行ったんですよ。僕は今もそうなんですけど、ジャイアンツが好きだから、コードもGぐらいしか知らないんです(笑)。
──ははは。
KENZI:音楽をよく知っている人から見たら、かまいたちはナメられていたと思うんですね。でも、そこからもう32年もバンドやってきたら、周りからも「KENchan、凄いな」とか言われたりするんですよ。自分でも、ようできているなって思うときもありますね。それはやっぱりメンバーがいるからで、ありがたいなと思います。ただ、かまいたちのときもそうだったんですけど、失礼な話、僕はドラム嫌いだったんですよ。表現方法としてやっているだけで。プレイ的なうまさよりも、叩いているときの表情を見てくれと。あとステージに立ったときのパワー。そこしか生きていることを感じられない場所でもあるんで。
──その表現欲求は未だに止まらない?
KENZI:そうなんです。周りの人達からも、全然変わらないねって、よく言われるんです。いつまでも少年やな、とか。その通りで、僕はいつまでも子供と思ってますから。あと表現ということで言えば、僕はやっぱりインディーズが大好きですね。かまいたちもTHE DEAD P☆P STARSもメジャーで活動した時期もあったけど、自分の好きなことをやるにはインディーズが良くて。メジャーでもできるんやろうけど、お給料をもらっていたら、お仕事としてこなさなきゃあかんときも出てくるじゃないですか。本当に好きなことを手作りでやるにはインディーズで。今まで好きなことをほんまにできていて、後悔もない。多分、いろんな人から見たら、かまいたちも僕も負け組やと思うんです。でも、僕自身はこれで良かったと思いますね。お金持ちになったわけでもないし、地位があるわけでもないけど、こうやって今もステージに立てるのが一番の財産。それは良かったな、と50歳を超えて思うところですね。さっきもSCEANAと山ちゃんから連絡が来たんですけど、今度のステージも全力でやらなあかんなって。
■<最終公演「THE END」>が
■かまいたちの本当の最後です
──今の段階で<最終公演「THE END」>にはどんな思いで臨みたいと考えています?
KENZI:胸いっぱいの思いをさらけ出す。最初は泣いたりいろいろあったりすると思うけど、最後はやっぱりお客さんも全員笑顔で僕らを送り出してほしいなっていうか。8月5日が終わり、みんな新たなスタートラインに立てると。違う気持ちが出るのかなって、僕自身も楽しみにしているところなんです。
▲MOGWAI (B)
──解散させずに、活動は不確定なもののバンド自体を存続させるパターンも、最近はあったりするじゃないですか。その選択肢は最初から考えなかったんですか?
KENZI:ないですね。バンド名と一緒でね、姿形も分からへんのに、いつの間にか傷だけ付けていなくなるという妖怪が、かまいたちで。そういうところに美学も感じていて。大好きなバンドマンから、「オリンピックみたいに4年に1回ぐらい」とか言われたりしたんですよ。でも、そういうことに美学は感じない。活動すれば記念の物販とかそれなりに売れると思うけど、美学に反して活動するのは嘘になるじゃないですか。お客さんにも失礼なる。SCEANAも山ちゃんも、その考えは一緒やしね。だから<THE END>がかまいたちの本当の最後です。ライブ終わったとき、メンバーとステージで抱き合ったりしたとき、何が頭をよぎるのか、何を感じているのか、そこが一番楽しみですね。
取材・文◎長谷川幸信

■<かまいたち最終公演「THE END」>

2017年8月05日(土)赤坂BLITZ
開場17:00 / 開演18:00
▼チケット
1Fスタンディング¥6,500(ドリンク別)/2F指定席¥7,000(ドリンク別)
※2F指定席はSOLD OUT

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