【レポート】BiSH、ツアーファイナル
幕張メッセ公演「私、ここで止まりた
くない」

BiSHが7月22日(土)に単独ワンマン公演として自身最大キャパシティとなる幕張メッセイベントホールにてツアーファイナル<BiSH NEVERMiND TOUR RELOADED THE FiNAL "REVOLUTiONS">を開催した。
<BiSH NEVERMiND TOUR RELOADED THE FiNAL "REVOLUTiONS">は4月から開催していた全国21箇所22公演のツアー千秋楽。チケットは公演1週間前にはソールドアウトし、会場は7,000人の清掃員(=BiSHファンの総称)で埋め尽くされた。さらに当日は午前中から「#BiSH幕張」がTwitterトレンド上位に位置し続けるほど話題に。
そんなツアーファイナル公演は、最初から予想外の展開。オープニングムービーが流れたあと、突如名曲「オーケストラ」から始まったのだ。「オーケストラ」はBiSHの楽曲の中でも特に“感動的”と名高い曲だったが、WACK合同オーディションにてBiS、GANG PARADEに剥奪されるという紆余曲折があった曲。勝負に負け、この曲を他のグループに渡さなければいけなかった悔しさは、清掃員もメンバーも当時同じ気持ちだった。しかもライブのトップに披露されるには珍しい、バラード寄りの曲だ。そんな「オーケストラ」を冒頭に持ってきことからも、BiSHがこの幕張メッセにかける覚悟が伺える。清掃員もこの意外な始まりに、最初どよめきを起こしたが、その覚悟を感じ取ったのかアウトロでは一緒になって声を張り上げて歌う。
曲終わりにBiSHポーズを決め、ハシヤスメ・アツコが「BiSHの番狂わせ始めようぜ!」と叫ぶと、雰囲気は一転。「社会のルール」「DEADMAN」の爆音とスピード感に、気持ちが激しくのせられていく。そこから「Marionette」ではその曲名通り、人形のような振り付けを無表情で表現し、がらっと世界観を変える。めまぐるしく自身の持つ魅力をすべてぶつけてくるBiSHに、ただただ圧倒されていく。
もちろん激しくぶつかってくるばかりではない。モモコグミカンパニーが「まだまだBiSHと踊りましょう!」と言って始まった中盤では「VOMiT SONG」のどこか懐かしさを感じさせる切ないフレーズに耳を奪われ、「Nothing.」では語りかけるような歌声で伝えられる“諦めたくない”というメッセージが心に響く。そしてしっとりと始まる「ALL YOU NEED IS LOVE」では7000人の清掃員たちが一斉に肩を組んで飛び跳ねる、一体感ある光景に息をのむ。
BiSHの楽曲は、ダメな自分の姿やどうしようもないマイナスな気持ちなども包み隠さず伝えてくれるのが魅力だと思っている。“ただ必死に生きている”それがすべてと言わんばかりに、着飾ることなく気持ちをリアルを伝えてくれるので“アイドルらしい”あざとさもなければ、“前向きさの押し売り”もなく、誰の心にもある孤独や切なさ、やりきれない思いに共鳴していく。
MCではお馴染みの、アツコいじりも。ツアーの移動中、アユニ・Dが自分の肩に寄りかかって寝ていたことを明かしたアツコが「私のこと好きなんでしょ?」とアユニに詰め寄り、「いや、むしろ嫌い。ホントに嫌い」とあしらわれている姿には、ファンから大きな笑いが起こる。リンリンもアツコに「一生独身」「クソメガネ」など暴言を吐き、アツコはさらに暴走。リンリンのピアスの穴を見て「私にも穴が欲しい!…あった、鼻の穴!」と大騒ぎしたアツコに向かって、アユニが「うるせえんだよ、この鼻の穴モンスター!」と叫ぶとそのまま「MONSTERS」が始まった。
激しいヘドバンも繰り出される「MONSTERS」、そのままの勢いでアイナ・ジ・エンドのシャウトから始まる「OTNK」。この流れ、パンク感全開でとてもかっこいい。かと思うと「やなことあってもそんなのに負けないで生きていこうよ!」と名曲「beautifulさ」で感動を与え、はたまたロック色強めの「GiANT KiLLERS」では会場全員でシンガロングするほどの大盛り上がり。本編ラスト「BiSH -星が瞬く夜に-」まで一気に駆け抜けた。
アンコールは“そこに立つための資格を掴みたいんだ”の歌詞が印象的な「BUDOKANもしくはTAMANEGI」。この曲を幕張メッセのアンコール一発目に披露するのも、BiSHらしさか。曲が終わるとアユニが「お話させてください」と口火を切る。アユニはBiSHに新メンバーとして加入して1年がたち、人間として成長できたとこれまでの道のりを振り返る。加入からたった一年にも関わらず目覚ましい成長を続けているアユニの言葉に、清掃員からも大きな同意の声があがる。そんな清掃員たちに「私がBiSHでいられるのは、BiSHを作ってくれる方と清掃員、メンバーがいるから。本当にありがとうございます」と感謝を伝えたあとは、涙に声をつまらせながら「これからもBiSHが人生の一部、生きがいって思ってくれる人がいるように、頑張っていきたいと思います」と決意を述べた。
続くリンリンは今回のツアーを周っている間、2日に1回くらいのペースで涙が止まらなくなるほど“自分がBiSHのリンリンでなくなる”ような想いをしていたと明かす。だが今日このステージに立てたことで「明日からは幕張メッセに立ったBiSHをバカにできるように、一生懸命頑張っていきます」と思い返せたと語る。アツコも芸能の世界に入ろうと思ってから何度も挫折を味わった経験を明かし、今BiSHとして活動できていることを奇跡だと感じている。そして「これからもいろんな壁とかあるだろうけど、全員BiSHとともに青春していきましょう!」と前向きなコメント。モモコもBiSHとして初めてワンマンライブに立った日、自分のふがいなさに泣きながら帰ったこと、でも逃げずに目の前にあることを精一杯頑張ってきて「あの日逃げなくて良かった」と強い言葉を口にした。
アイナは「歌とダンスしかないって思ってた私の人生で、幕張メッセに立てて嬉しい」と心からの喜びを露わに。そして泣きながら「私、ここで止まりたくないです。今の音楽業界でBiSHは圧倒的な存在になりたい。アイナ・ジ・エンドも圧倒的になりたい。清掃員の人たち、行けるとこまで一緒に行ってください!」と訴える。セントチヒロ・チッチも「BiSHが誰かの生きる理由になりたい。毎日の憂鬱を吹き飛ばす、そういうお仕事ができているのが幸せです。これからもこの6人で最高の音楽を届け続けていきたいです」とこれからの未来を誓ってくれた。
そしてチッチの「BiSHはまだまだ止まりません。最高のその先へ行くことを約束します」という言葉から「プロミスザスター」が始まる。ひとりひとりの願いを空に届けるような力強い歌声に、アイナの絶叫。MCで各自が話していた通り、つらいことや苦悩を努力で乗り越えてきたBiSH。この先には、きっと明るい未来があると予感させられる瞬間だった。ラストは「生きててよかったというのなら」。清掃員のかざすスマホの光の中、“何もかも嫌になってる”“幸せになっちゃいけない?”“俺は何で生まれたか”と胸に突き刺さるようなフレーズを歌いながら、一段ずつ歩いてステージの下に消えていくBiSH。その姿には、幕張メッセ公演を終えたこの瞬間から、次のステージへ歩いていく彼女たちの未来が見えた。
取材・文◎Yoko Hattori(BARKS)

セットリスト

1.オーケストラ
2.社会のルール
3.DEADMAN
4.Marionette
5.ウォント
6.本当本気
7.DA DANCE
8.ヒーローワナビー
9.VOMiT SONG
10.Nothing.
11.スパーク
12.サラバかな
13.ALL YOU NEED IS LOVE
14.MONSTERS
15.OTNK
16.beautifulさ
17.GiANT KiLLERS
18.BiSH -星が瞬く夜に-
ENCORE
19.BUDOKANもしくはTAMANEGI
20.プロミスザスター
21.生きててよかったというのなら

BARKS

BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着